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(平成18年6月7日)電力市場における競争状況と今後の課題について(概要)

(平成18年6月7日)電力市場における競争状況と今後の課題について(概要)

平成18年6月7日
公正取引委員会

 国民生活にとって必要不可欠なライフラインであるとともに,経済活動の基盤となる重要な産業インフラの一つである電力において,我が国においても競争を通じた電力市場の効率化の取組が始まり,漸進的に進められつつあるが,その取組は緒に就いたばかりである。制度設計を担当する経済産業省においては,大臣の諮問機関である総合資源エネルギー調査会電気事業分科会の下に制度改革評価小委員会を設置し,平成19年度を目途に開始される予定となっている電力小売市場の全面自由化の検討に向けて,これまでの制度改革の影響評価を実施している。こうした時期において,電力市場における競争状態に関する評価を行い,今後の課題について提言を行うことは,競争政策を担当する公正取引委員会の重要な責務の一つである。
 本報告書においては,まず,電力市場における競争評価を行った。ここでは,電力市場における市場画定の考え方の紹介と価格やサービスに関する評価を行っている。次に,電力市場における競争上の課題として,電力調達上の課題を初めとする7つの課題について検討を行った。

第1 電力小売市場における競争実態と評価

1 電力小売市場の市場の画定

 本報告書においては,電気事業制度改革の歴史的経緯や電気という財の特性を踏まえ,地理的範囲については一般電気事業者の供給区域ごとに市場をとらえ,商品範囲については4つの需要形態(特別高圧産業用,特別高圧業務用,高圧産業用,高圧業務用)ごとに市場を画定して,検討を行うこととする。

2 新規参入状況及び市場構造の変化

 新規参入者数の推移を一般電気事業者の供給区域ごとにみると,PPSの参入は,特定規模需要(自由化対象需要家への販売電力量)が多い一般電気事業者の供給区域への参入が相対的に多いが,その他の一般電気事業者の供給区域への参入は余り進んでいない状況にある。
 PPSのシェアについては,東京電力,関西電力及び九州電力の供給区域の特別高圧業務用では大きくなっているが,特別高圧業務用の販売電力量が,特定規模需要に占める割合は6%に過ぎず,PPSのシェアが1%に満たない市場がほとんどである。
 また,需要家アンケート調査結果によれば,切替え実績を有する需要家(事業者)は,ガス及び電気通信市場においては1割を超えているのに対して,電力では2%となっている。供給者の売り込みについても消極的であり,電気に関する選択機会は,他の分野と比べて,著しく低い水準となっている。このように,全体的な傾向としては,自由化によって需要家(事業者)にとっての供給者選択の可能性が広まったとは評価し難い状況にある。

3 価格動向

 価格動向についてみると,小売自由化が開始された平成12年度から下落傾向にあるものの,競争が行われている特別高圧業務用における料金が75.7%となっているのに対して,自由化されているものの競争がほとんど存在しない特別高圧産業用は90.7%,規制分野は91.9%となっており,下落幅には大きなかい離がみられる。また,全国規模で競争が行われるようになれば,各一般電気事業者間の料金格差は徐々に解消されると考えられるが,自由化当初の10.0%から平成16年度の9.0%へとわずかに格差は縮小したものの,依然として約1割の格差が存在する。95年(平成7年)から04年(平成16年)までの国際価格との比較をみると,格差は縮小しているものの,依然として米国の水準と倍以上の格差が存在している。需要家(事業者)の価格に対する評価をみても,「高い」又は「やや高い」とする割合が5割を超えており,他の分野と比べて高い割合となっている。

4 供給されるサービスに関する評価

 提供されるサービスに関する評価をみると,自由化分野の需要家(事業者)と規制分野の需要家(同)との間で,満足度に大きな開きがみられる。まず,料金メニューの多様性については,「多様な選択肢がある」又は「ある程度の選択肢がある」と回答した規制分野の需要家は,自由化分野の三分の一を下回っている。料金等に関する説明についても同様の傾向がみられる。

5 一般電気事業者の経営指標

 一般電気事業者の費用と収益の推移をみると,部分自由化が開始された平成12年度から平成16年度までに単位電力量当たりの費用は,1.83円/kWh減少している。減少率の高い費用項目は,支払利息,減価償却費,修繕費となっている。一般電気事業者の売上高営業利益率は極めて高い水準で推移しており,全産業平均の4.2倍,非製造業平均の5.2倍の水準となっている。

第2 電力市場における競争の課題について

1 供給力の確保に関する課題

(1) JEPX

 電力小売における一般電気事業者とPPSとの競争を促進する上で,PPSにとって卸電力の調達についても一定の選択肢の中から,必要な調達量が安定的に確保できることが望ましく,JEPXが有力な調達手段としての役割を発揮していくことが期待される。JEPXにおける取引を活性化させていく上で,(ア)JEPXへの玉出しの増大,(イ)JEPXにおける監視機能の強化,(ウ)JEPXの情報公開の拡充が重要であると考えられる。

(2) 常時バックアップ

 JEPXが設立されたことを理由として常時バックアップを拒絶するような行為等は,独占禁止法上違法(取引拒絶,差別的取扱い等)となるおそれがあるとの考え方は引き続き維持する必要がある。また,JEPXが設立されたことに加えて,常時バックアップにおける取引量や取引形態が変化していることを踏まえて,今後必要があれば独占禁止法上問題となり得る取引について明確化を図っていくべきであると考えている。

2 連系線の制約

 JEPXの取引において,連系線の制約によって市場分断が生じた際にはエリアを分けて約定処理を行うこととなる。その際に生じるエリア間の値差は,現在JEPXの収入となっているが,本来,混雑費用の性格を有するものであることから,混雑している連系線の増強に充て,広域的な電力取引につなげること等に用いられるべきである。このほか,系統の異常等の対応として,各連系線に確保されているマージンの早期開放などの取組の実効性について注視しながら,今後とも必要な対策を講じていくことが求められる。

3 託送料金についての課題

 託送料金が適正に設定されているかどうかについて,PPSから疑念が寄せられているが,まず,現在の事前届出制が適切に機能しているか否かについて検証を行い,問題点があれば改善する必要がある。その上で,料金が適正に設定されていることへの信頼性を高めていくために必要と判断される場合には認可制とするとともに,第三者が適正に原価が算定されていることを検証する仕組みを設けることについて,検討を行うことが必要である。なお,公正取引委員会としても,託送料金の水準を不当に釣り上げることによって競争事業者を排除するなど,独占禁止法上の私的独占等に該当するおそれのある行為があった場合には,厳正に対処を行っていく方針である。

4 同時同量制度及びインバランス制度の課題

 現行の同時同量達成義務及びインバランス料金制度については,電力市場における競争促進という要請を踏まえつつ,系統の安定性確保という目的達成上合理的なものとなるように見直しを行うことが適切である。例えば,事業者の規模に応じた同時同量義務の設定や計画同量制度の導入といった対応が考えられる。

5 省CO2化対応に関する課題

 CO2排出係数をめぐる競争において,一般電気事業者とPPSとのイコールフッティングを確保するための制度の在り方についても検討を行っていくことが必要である。具体的には,現在の地球温暖化対策推進法に基づく算定・報告・公表制度による温室効果ガス排出量の算定に当たって,温室効果ガス削減等をクレジットとして取得した電気事業者により供給された電気の使用に伴う排出量の算定に当たって,当該クレジット分を勘案して算定する仕組みを導入することが考えられる。また,一般電気事業者が有する原子力発電及び水力発電については,先行者の既得権であるとも考えられることから,この点に関しても,イコールフッティングを確保する観点から検討を行っていくことが必要である。

6 一般電気事業者間競争促進上の課題

 全国規模での競争を促進するためには,連系線の容量不足への対応や供給区域外への供給に際してのリスク軽減を図るため,インバランス料金制度の改善を行っていく必要がある。また,供給区域外への供給に対しては極めて消極的な一般電気事業者の経営姿勢を踏まえると,JEPXにおける取引活性化は間接的に一般電気事業者間の競争を促進するという観点からも非常に重要である。JEPXにおける取引を通じて,より効率性の高い電源から安価な電力供給が行われることは,我が国全体の電力コスト低減の観点からも望ましい。

7 全面自由化に関する検討に向けての留意すべき事項

 平成19年度から電力市場の全面自由化に関する検討が開始されることになっている。検討に際しては,競争政策の観点からは,特に需要家の利益と競争事業者間のイコールフッティングに留意することが必要である。

【附属資料】

問い合わせ先

公正取引委員会事務総局経済取引局調整課
電話 03-3581-5483(直通)
ホームページ http://www.jftc.go.jp

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