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令和元年6月19日付 事務総長定例会見記録

令和元年6月19日付 事務総長定例会見記録

[配布資料]

[発言事項]

事務総長会見記録(令和元年6月19日(水曜)13時30分~於官房第1会議室)

「私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の一部を改正する法律」の成立について

 本日,私の方から2点お話しいたします。
 1つは,独占禁止法の改正についてです。「私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の一部を改正する法律案」は,本年3月12日に閣議決定され,国会に提出されておりました。本日午前中に,参議院で全会一致により可決され,成立いたしました。
 今般の改正は,一律かつ画一的に算定・賦課されている課徴金制度について,事業者による調査協力を促進し,適切な課徴金を課すことができるものとすることなどにより,不当な取引制限等を一層抑止し,公正で自由な競争による我が国経済の活性化と消費者利益の増進を図るものです。
今後,改正法の施行に向けて,調査協力減算制度に係るガイドラインや,いわゆる弁護士・依頼者間秘匿特権への対応としての公正取引委員会規則等の整備を進めるとともに,説明会を開催するなどして,十分な周知活動に努めてまいります。

平成30年度における主要な企業結合事例について

 2つ目は,「平成30年度における企業結合に関する届出の状況及び主要な企業結合事例」についてでございます。
 お手元の横長の資料1頁目の表1を御覧ください。平成30年度には321件の届出を受理いたしました。平成29年度における届出の受理件数が306件ですので,前年度比4.9%の増加となっております。これは過去5年間で最多の件数でした。
 平成30年度に届出を受理した321件のうち,届出受理の日から30日以内に行われる「第1次審査で終了した件数」,すなわち「第1次審査の結果,独占禁止法上問題がないとして,排除措置命令を行わない旨の通知をした件数」が315件です。
 なお,届出会社は,公正取引委員会の届出受理の日から30日間は企業結合を実行することが禁止されていますが,届出会社は,この30日間の禁止期間の短縮を申し出ることができます。公正取引委員会としても,できる限り迅速に審査を行い,禁止期間の短縮を行うよう努めており,平成30年度においては,前年度比24.4%増となる240件において禁止期間の短縮を行っております。この件数は年々増加しておりまして,平成30年度の件数は過去最高となっております。
 また,平成30年度に届出を受理した321件のうち,より詳細な審査が必要であるとして,第2次審査に移行したものは2件でした。これは,平成30年8月に第2次審査に移行した「王子ホールディングス株式会社による三菱製紙株式会社の株式取得」と,「新日鐵住金株式会社による山陽特殊製鋼株式会社の株式取得」です。前者につきましては,平成30年12月に,特段の措置なく独占禁止法上問題ないと判断し,公表しております。また,後者につきましては,平成31年1月に,当事会社の申し出た株式会社神戸製鋼所への設備譲渡等を内容とする問題解消措置を前提とすれば,独占禁止法上問題がないと判断し,公表しております。
 このほか,平成30年度に公表を行った第2次審査案件としましては,平成28年度に届出のありました,「株式会社ふくおかフィナンシャルグループによる株式会社十八銀行の株式取得」があります。この件につきましては,平成30年8月に,債権譲渡等の問題解消措置を前提とすれば,独占禁止法上問題とならない旨の判断を公表しております。
 平成30年度に審査が終了しました事例のうち,問題解消措置を伴って,それを前提として,独占禁止法上問題はないと判断した事例は,今申し上げました2件を含めて8件ございました。
 次に,資料の2頁目を御覧ください。表2は,企業結合計画の形態別の届出件数をまとめたものです。割合としては,同じ取引分野の商品・役務を供給し,競争関係にある企業同士の水平型の企業結合の届出が最も多くなっていますが,その割合は減少傾向にあります。一方,取引段階の異なる企業同士の垂直型の企業結合の割合が増加傾向にあり,全体で4割を占めるようになっています。
 続けて,お手元の資料の3頁目を御覧ください。「平成30年度における主要な企業結合事例」でございます。この表は,一覧として概略を掲示しております。この事例集は,平成5年度以降,毎年公表しているもので,今回で26回目となります。今回,13事例を掲示しておりまして,これを含めますと,これまでに286件の事例を公表してきています。
 公正取引委員会は,企業結合審査における独占禁止法の適用の考え方を企業結合ガイドラインとして公表しておりますが,企業結合審査の透明性・予見可能性を一層向上するとの観点から,具体的な企業結合事案において,公正取引委員会がどのように市場画定し,競争への影響についてどのように判断したのかということを説明すべく,企業結合審査事例のうち,他の事業者の参考となると考えられるものの審査結果を公表しているものです。
 平成30年度の事例集の特徴としましては,近年,力を入れています経済分析について,その結果を公表している案件が4件と多いこと,また,これまで事例集では取り上げてこなかった取引分野,すなわち,業務店向け音楽放送・配信業,映画配給業,和服の店舗小売業,航空機リース業,労働者派遣業,産業廃棄物の中間処理業といった多様な取引分野における統合事案を取り上げていることなどが挙げられます。
 公正取引委員会としましては,引き続き,法運用の透明性の確保に努めるとともに,企業結合を計画している会社において,この事例集が活用され,独占禁止法上の考え方についての理解が一層深まることを期待しております。
 なお,個別の企業結合事例の内容につきましては,御関心があれば,本件の担当課でございます企業結合課の方にお問い合わせください。

質疑応答

(問) 今回発表になった企業結合事例集なんですけれども,市場の縮小によって競合会社が合併によって存続しているというような例が数件あるかと思うんですけれども,その中でも,このUSENとキャンシステムの結合審査としては,見た限り,破綻企業の抗弁を受け入れるということもあり,甘いというか,とても許容的な判断を下されたのかなという印象を受けたんですけれども,これからこのような事例が多くなるという意味もあって,この参考事例の中に入っているんでしょうか。
(事務総長) 市場全体が縮小していって,その市場において多数の企業が存続していくのが難しくなるような状況というのは,いろいろなところで生じ得ることだと思います。
 今御指摘のあったUSEN・キャンシステムのケースは,必ずしも破綻企業の抗弁を正面から認めたというわけではなく,当該企業を他に買収して存続させられるようなものは存在しそうにないというようなことも含めて認めたものでございますので,破綻企業の抗弁を広範囲に認めていくということではありませんけれども,このような形での企業結合の影響を捉えるというのは,おそらくあまり示したことがなかったかと思いますので,そういう意味では,他の事例での参考になるのではないかと考えているところです。

(問) 何度も取り上げられている話で恐縮ですけれども,地域の乗合バス業者と地域銀行に対して特例措置を設けるというふうなことが,21日の諮問会議,あるいは成長戦略実行計画に盛り込まれると思うんですけれども,公正取引委員会としては,それをどういうふうに受けとめていらっしゃるのかというところを教えてください。
(事務総長) 先般の未来投資会議において,今後の成長戦略実行計画の案が提示されたと承知しております。公正取引委員会としましては,基本的には,競争が行われている場,それが確保されていくというのが非常に重要なことだと考えておりますし,それが単に消費者あるいは利用者の利益ということだけではなくて,当該産業,それからまた,当該企業を含む地域の経済の活性化という面にも基本的にはつながるのではないかと考えています。
 ただ,その一方で,種々のインフラが消失してしまうという事態に対しては,何らかの措置が必要であるということが,政府全体としてそういう判断が行われたということ,正確には行われようとしているというふうに受けとめています。細かく言うと非常に長くなりますし,また,私どもの基本的な考え方というのは,先般の未来投資会議においても,委員長の方から発言しておりますので,そこに尽きるかと思いますけれども,そうした状況の中で,政府全体としてそういう判断が行われたということなのであれば,今後は,さらに,いわゆる地域のインフラを整備しサービスを継続する上でも,規制緩和による新たなテクノロジーの支援や,新規参入の促進ですとか,そういう形での需要者の選択肢を増やしていく,そういった施策も併せて講じられるということがより望ましいのではないかというふうには思います。

(問) きっかけがFFG(ふくおかフィナンシャルグループ)と十八銀行の審査でですね,長期化したこと,あるいは問題解消措置として債権譲渡という形になったことということに対して,新たなアクションが出てきたと思うんですけれども,今回の措置が採られた場合にですね,FFGと十八銀行のような審査というのは,判断が変わる,問題解消措置を講じないというふうなことになるんでしょうか。
(事務総長) 1つには,まず,競争環境がどのように変わっていくのかということの,そういう意味での前提が変われば結論は変わるということはあるかと思いますけれども,おっしゃられたFFGと十八銀行の件については既に判断をしているところでございますし,また,今後,特例法が制定されて,それがどのような内容になるか,まだ決まっているわけではありませんので,仮定の御質問に対して,二重の仮定になりますから,そういう意味でお答えするのは適当でないと思います。

(問) まだ案ですけれども,地域銀行に対しては,「業績悪化により当該銀行の業務改善が求められるとき」云々というふうな,そういう場合に限定してというふうに書いてあるんですけれども,これは一からこの条件を満たせば,どんな銀行でもよろしいのか,あるいは,その前段としてある,業績悪化等々が前提となっているのか。それと,もう1つ,「マーケットシェアが高くなっても」というふうに書いてあるんですけれども,このマーケットシェアが高くなってもというのは,通常,合併すればマーケットシェアは高くなるわけですけれども,この文面は,どれだけ高くなってもというふうな受け止め方でいいんでしょうか。ちょっと公正取引委員会に聞くべき話ではないかもしれません。
(事務総長) 基本的には,特例法が作られるということであれば,その中でどのように規定がされていくのかということにかかっていることだと思います。ただ,基本的には,具体的な制度設計をされるに当たっては,インフラ整備,インフラ維持のために,本当に必要だというところに,やはり適用除外ということであれば限られるべきだと思います。その際に,利用者の利益が損なわれないことをどうやって担保するのかということもしっかり仕組みとして盛り込んでいただく必要があるのではないかというふうに思います。ちょっと抽象的な言い方ですけど。

(問) 地域銀行の経営統合関係に対してですね,特例法ができた後は,これまでの審査と今後の審査では変わるんでしょうか。
(事務総長) 企業結合審査が変わるのかという意味においては,基本的には変わらないと思います。例えば,今回,様々な議論がされている中で,統合の影響をどのぐらいのタイムスパンまで見るのか,そういったところで必要な知見を関係省庁の方でお持ちであるのであれば,それをお聞きするということは,これまでもやってきたつもりではありますけれども,その点はより明確にしていくということはあるかもしれません。ただ,その一方で,特例法が最終的にどのような形になるか分かりませんけれども,その特例法が適用されるということであれば,それはある意味,独占禁止法上の審査とはまた別の意味合いでなされるということになると思いますので,最初の御質問の,独占禁止法の審査が変わるのかという意味であれば,それは変わることはないということだと思います。

以上

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