[配布資料]
デジタル・プラットフォーマーに関する取引実態や利用状況についての情報提供窓口の設置について(平成31年1月23日公表資料)
[発言事項]
事務総長会見記録(平成31年1月23日(水曜)13時30分~於官房第1会議室)
デジタル・プラットフォーマーに関する取引実態や利用状況についての情報提供窓口の設置について
本日,私の方からは,お手元の資料にもありますように,デジタル・プラットフォーマーに関する取引実態や利用状況についての情報提供窓口の設置についてお話しいたします。
公正取引委員会は,昨年12月12日に公表されました「デジタル・プラットフォーマーを巡る取引環境整備に関する検討会」中間論点整理を踏まえ,経済産業省及び総務省と共同して,プラットフォーマー型ビジネスの台頭に対応したルールの整備の基本原則を昨年12月18日に策定いたしました。
この基本原則におきまして,「透明性及び公正性を実現するための出発点として,大規模かつ包括的な徹底した調査による取引実態の把握を進める」とされておりますことなどを踏まえまして,公正取引委員会として,「デジタル・プラットフォーマーの取引慣行等に関する実態調査」を開始することといたしました。
その調査の一環としまして,本日,公正取引委員会のホームページ上に,デジタル・プラットフォーマーに関する情報提供窓口を設置いたしました。本情報提供窓口は,事業者・消費者の方々から,競争政策上問題と考えられる,デジタル・プラットフォーマーと事業者との取引実態や,プラットフォームサービスを利用する消費者の利用状況に関する情報を収集・把握することを目的としております。本情報提供窓口につきましては,現在のところ,設置期限を設けておりませんので,事業者及び消費者の皆様方に幅広く情報提供をお願いいたしたいと思います。
また,実態調査のパッケージとしましては,本情報提供窓口を通じた情報収集のほかに,例えば関係する事業者や事業者団体,有識者の方々からのヒアリング,アンケート方式による情報収集などを行うことも検討しており,デジタル・プラットフォーマーに関わる取引実態の把握につなげてまいりたいと考えております。
本件の担当課は,経済取引局の総務課でございます。
質疑応答
(問) 今回の調査は,プラットフォーマーといった場合,具体的にどのような企業,業種,国・地域のものになるのでしょうか。
(事務総長) まず,プラットフォーマーといわれるものには,様々な業種があろうかと思います。また,それぞれのプラットフォーマーが採っておられるビジネスモデル,それから,どこで利益を得ようとしているのか,そういったことも様々であろうと思います。今回の情報提供窓口につきましては,そうした意味では,特段の制限なり,ターゲットを設けているというわけではございませんので,例えばSNSのサービスでありますとか,検索サービスであるとか,あるいはインターネット上でのオークションや取引,そういったものも含めて,いわゆるプラットフォーマーと認識できるものは,どういう業種であれ,制限を設けることなく情報提供いただきたいというふうに思っております。また,その対象となる企業が,国籍というのも変かもしれませんけれども,どこの国で事業活動,あるいは,どこの国において会社を設立しているとか,そうしたことも特段,制限を設けているつもりはございません。
(問) 今回の調査は,任意の調査なのかどうかということと,いわゆる40条調査というのをやるというのをどういうふうにお考えなのかというところをお伺いしたいと思います。
(事務総長) ただいまお話ししましたのは情報提供窓口でございますので,これは間違いなく任意ということになります。また,今後,検討を進めていくと先ほど申し上げましたアンケート調査などの方式も,基本的には,こちらからアンケート票を送付して,その回答をお願いするという形になると思います。その上で,そうした形ではお答えしづらいというようなものがあれば,場合によっては,例えば独占禁止法第40条であるとか,そういった手法も検討する必要が出てまいるかもしれませんけれども,それは飽くまで私どもが収集したい情報,把握したい内容を実現するために,どのような手法が適切かという判断の問題であるかと思いますので,そうした意味では特段,手法,これはやってはいけない,やるつもりはないといったことの制限を設けているわけではありませんけれども,初めからそういう手法でやるんだというふうに決めているわけでもございません。
(問) 調査がですね,すぐに今月,この前の会見でも一応,月内ということを何か,月末というところですかね,おっしゃったと思うんですけれども,それで4月に中間的な報告も考えているというような報道もありましたけれども,そこの事実関係を教えてください。
(事務総長) この資料にございますけれども,実態調査全体は,大規模かつ包括的な徹底したものというふうに考えておりますので,それを取りまとめていくにはそれなりの時間がかかると思っております。そのパッケージの中には,この情報提供窓口のほかに,先ほど申しましたようなアンケート方式というのも考え得るということで検討しているところでございますけれども,以前の会見でも申し上げたかと思いますけれども,ある程度節目というのはどこかにあるんだろうと思いますので,そのときに対応できる事柄があるのであれば,それには対応していく必要性というのも出てくるんではないかとは思います。ただ,それが4月というふうに決めているということは全くございません。
(問) 前回の会見でも,1月内もというふうにおっしゃっていたアンケート調査なりの,そちらの調査自体のスケジュール感は変わっていない,御認識は変わっていないでしょうか。
(事務総長) 先ほど申し上げましたけど,今日の情報提供窓口の設置もこの実態調査の一環でありますので,そういう意味では調査は始まったということであるといえると思います。今後のやり方として,先ほど申し上げましたようなアンケート調査などもあり得ると思いますので,そうした点においては,必要に応じて進めていかなければならないと思っております。
(問) ちょっと別件で恐縮なんですけれども,一部報道で,個人情報の収集に独占禁止法が適用できるというような認識に達したと,公取内で,というような報道がありましたが,その事実関係と,あと,もし本当であれば,どういった議論が内部で行われていたのかというのを,可能な範囲で教えてください。
(事務総長) 個人情報の収集に関して,その収集方法いかんによっては独占禁止法上の問題が出てくるのではないかということにつきましては,先ほど申しました「デジタル・プラットフォーマーを巡る取引環境整備に関する検討会」でも話題になりまして,それ以前に,「データと競争政策に関する検討会」においてもそうした議論がされておりました。そうした中で,情報を提供する側になる消費者個人について,優越的地位の濫用など独占禁止法の適用があり得るのかということで,そうした議論が提起されておりまして,少なくとも,例えば優越的地位の濫用,継続的な取引関係のもとで行われる優越的な地位を濫用して不当に不利益を与える,そうした行為が問題になるわけですけれども,そうした取引の中にですね,対消費者向け取引が頭から排除されているという考え方を採る必要はないのではないかというふうに考えているところでございます。繰り返しになりますけれども,そうした議論は,これまで公正取引委員会が設置しました検討会などにおいても議論がされてきたところでございます。
ただ,優越的地位の濫用を実際に適用するということになりますと,先ほど,要件でも申し上げましたけれども,取引上,優越的な地位にあるのかどうか,それからまた,不当な不利益が課されているのかどうか,そうした他の要件についてどのように考えていくのかということも慎重に検討する必要があるかと思いますので,今の御質問の点につきましては,幾つかある要件の1つについては,そうした考え方が採れるのではないかということだと思います。その点につきましては,これまでも私どもの議論の中では出てきた問題であったというふうに思います。
(問) もう1点ありまして,こちらも一部報道で,携帯大手の調査の話なんですけれども,携帯大手3社に対して,下取り,中古スマホの流通実態の調査を始めたというような報道がありましたが,この事実関係と,あと,実際,それが本当であれば,もう既に報告が上がっているのか,報告があるとすれば,今後,公表する予定があるのかといったような,そういったことを教えてください。
(事務総長) お尋ねの報道にありましたMNOが行っております中古端末の下取り,それに関する流通実態調査というのは,総務省と公正取引委員会で共同して調査票を送付しております。本日,1月23日までに回答を求めてきたところでございます。
これは規制改革推進会議におきまして,昨年の11月に第4次答申が出ております。その中で,総務省と公正取引委員会は,MNOが下取りした中古端末について,その流通が不当に制限されていないかどうか,その流通実態について直ちに調査すべきだという提言がされております。こうしたことを踏まえまして,総務省,公正取引委員会で今回のような流通実態調査を行っているところでございます。
ただ,その調査も今仕掛かったところでございますし,また,その提言におきましても,逐一内容を公表するように求められているものではございません。また,今後,最終的にこの調査の結果をどういうふうに取り扱うのかというのも,現時点ではまだ確定はしておりませんので,現在のところ,その中身について,調査の内容ですとか今後の取扱いなどについてのお答えは差し控えたいと思います。
(問) デジタル・プラットフォーマーの調査の件なんですけれども,改めて,この調査,どういう結果,結果は調査しないと分からないですけど,これによって,世の中,どうなっていくことを期待されて,この調査をやられるのかというのを改めてお願いします。
(事務総長) まず,デジタル・プラットフォーマーにつきましては,収集された情報がどういうふうに使われているのか,また,その収集方法についてなど,いろいろな点が問題になるんではないかというのが指摘されています。独占禁止法あるいは競争政策の観点からしましても,プラットフォーマーが競争上優位な地位にあるのか,あるいは,競争に影響を及ぼすような不当な行為であるとかをしていないのかどうか,ということが競争当局で関心を持つような話だというふうに思っておりますし,また,諸外国におきましても,いわゆるプラットフォーマーに対する競争法の観点からの法執行なども行われております。
ですので,今後,我々が検討していく前提として,プラットフォーマーと事業者あるいは消費者との間の取引・利用関係がどういうふうになっているのかということについて,その実態を十分把握した上で検討していく必要があると思っておりますので,今,御質問の中にもございましたけれども,最終的にどういう形に仕上がってくるのかというのは,その実態を踏まえた上で判断していく必要があるかと思います。
ただ,いずれにしましても,先ほどの質問の中でもお答えしましたように,いろいろなタイプのプラットフォーマーがありますので,まず,その実態を把握した上で,その中で特に競争上の問題が生じているというのであれば,何らかの対処をしていく必要が出てくるという可能性はあるかというふうに思っています。
ただ,問題の所在は必ずしも競争上の問題とは限らない部分もあろうかと思いますので,そこは関係する経済産業省や総務省ともよく協調しながら進めていかなければならないと思います。
(問) 同じく,この情報提供窓口の関係なんですけれども,そのサイトを拝見しますと,本当に幅広く,いろんなデジタル・プラットフォーマーとして想定されているということが,但書きで書かれているんですけれども,では,実際どこから手をつけるのかということなんですけれど,例えば,ネット通販とかアプリの販売とかも含めた国内外の当局がこれまでに問題視してきたような,そういったところから手をつけるのかとも想像されるんですけど,その辺りはどうなんでしょうか。
(事務総長) 今後,調査の対象は我々のリソースに限界がありますので,絞っていかなければならないということにはなると思います。その際には,やはり,我が国市場への大きな影響を持つようなプラットフォーマーをまず手掛けていくということだと思います。これ以上具体的に言うと,個別の会社の名前を挙げなければいけなくなりますので,そこは御容赦いただきたいというふうに思いますけれども,今申し上げましたように,業種・業態,また,国内,国外ということは問いませんけれども,やはり日本において影響力があるものというところが,まず,私どもが見なければいけない対象になるだろうと思います。
(問) あとですね,今回のこの情報提供の呼びかけ,本格的な実態調査に乗り出すというのは,今後のルール整備のベースになるというか,そういう観点から,まず実態を把握されようとしているというふうに理解したんですけれども,中間論点整理とか基本原則なんかで,公正取引委員会に出されている宿題としては,優越的地位の濫用,これを企業間から消費者との取引の方にも拡大するというのはありますけれども,それ以外にも,企業結合審査の方の見直しというのも1つあったかと思いますが,審査におけるデータとか知財とか人材,ノウハウなんかも評価していってはどうかということでしたが,そちらの見直しにですね,今回呼びかけた情報が,何らか使われるというか,繋がっていくようなイメージというのはあるんでしょうか。
(事務総長) 議論の過程では,現在,企業結合審査の届出基準は国内売上高が基準となっておりますけれども,それをまた違う要素を入れるべきではないか,というような議論もございました。
ただ,今回の調査は,利用状況・取引実態に関するものでございますので,そこから直接,何かそうしたものが出てくるというふうには考えておりませんし,また,これが直接,法改正にもつながっているドイツなどでは,基本,届出されたものでないと審査ができないというような制度上の問題もあるのに対して,日本の場合には,飽くまで届出基準は届出基準であって,届出のない案件についても,独占禁止法上の企業結合審査ができるということになっております。
また,その審査の過程におきまして,いわゆる売上高だけではなくて,水平関係にあれば,その企業間で,どのような生産要素が共通化されて市場力を持つのかというのを当然,その業種・業態に応じて審査することにもなりますし,また,縦の関係にある,取引関係にあるような垂直的な企業結合の場合においても,そうした情報なども生産要素の一部だと思いますけれども,生産要素が取り込まれることによって,その川上あるいは川下の競争にどういった影響を及ぼすのかというのは,これまでも審査してきたところでございますので,そうした現状を変えていかなければならないような要素があるのかどうかというのは,しっかり見極めなければいけない問題だと思います。届出要件を変えるということは,事業者に対して,それだけ負担を課すということになりますので,その辺りは実態に即して,きちんと判断,検討していく必要があると思います。
(問) 今回の調査は,取引に関してが中心ということで,優越的地位の濫用の話がメインなのかなと思うんですけれども,情報を呼びかけた結果,例えば,過去の企業結合案件とか,あるいは,ひょっとしたら,これから検討されていくような企業結合について,実はこんな問題点があるのではないかとか,こういう観点から見ると,競争を阻害しているのではないかというような意見のようなものが寄せられるという事態も排除はされないということですよね。
(事務総長) 仮定の話ですので,お答えづらいんですけれども,先ほど申しましたように,幅広く情報を求めておりますので,その中にはいろんなタイプのものがあろうかと思います。
以上