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令和元年11月20日付 事務総長定例会見記録

令和元年11月20日付 事務総長定例会見記録

[配布資料]

[発言事項]

事務総長会見記録(令和元年11月20日(水曜)13時30分~於官房第1会議室)

下請取引の適正化について

 本日,私の方からは,下請取引の適正化要請についてお話しいたします。
 年末にかけての金融繁忙期におきましては,一般に資金決済や従業員へのボーナス支給などで事業者の資金需要が高まるとされており,下請事業者の資金繰りについて厳しさが増すことが懸念されます。そこで,下請代金の支払遅延,下請代金の減額等の行為が行われることがないよう,親事業者及びその関係事業者団体に対して,公正取引委員会委員長と経済産業大臣の連名の文書により,下請法順守の徹底等について,毎年要請しております。
 我が国経済は,緩やかな回復基調にあり,企業収益の拡大や倒産件数の減少などが続くなど,経済の好循環が浸透する一方,度重なる災害をはじめ,人手不足の深刻化,労働生産性の伸び悩みなど,中小企業を取り巻く環境は厳しい状況にあるものと承知しております。そのため,親事業者が下請代金を早期にかつ可能な限り現金で支払い,下請事業者の資金繰りに支障を来さないようにしていただくとともに,立場の弱い下請事業者に不当な「しわ寄せ」が生じることのないようにしていただく必要があります。
 また,政府が進める「働き方改革」においても,事業者間の取引条件の改善が課題であるとされており,例えば極端な短納期発注は取引先における長時間労働等につながる場合があり,下請法違反の背景にもなり得るので,特に注意していただきたいと考えております。
 これらを内容とする要請文書を,今月15日,下請法の親事業者となり得る事業者約20万社に対して送付いたしました。また,併せて,日本経済団体連合会,日本商工会議所等といった関連事業者団体約1,100団体に対して,親事業者に要請した内容について,所属事業者に対し周知徹底を図り,下請取引の適正化を指導されたい旨の文書を同日付けで送付しております。
 本件の担当は,取引部の企業取引課でございます。

質疑応答

(問) 個社案件になっちゃうんですけれども,ヤフー,LINEのですね,企業統合が先日,発表されました。これについて,今,巨大IT企業のですね,一定のルールの規制の強化であったりだとか,あるいは企業結合のガイドラインも示された公正取引委員会としては,この案件についてどのように受け止めていらっしゃるのか,あるいは,今後の企業結合審査の見通しについてですね,事務総長の立場からの御意見をいただけたらと思います。
(事務総長) 今,御質問にございました企業統合の計画につきまして,企業側の方から発表された,また,そうした報道があったということは承知しておりますが,今,御質問の中で御指摘いただきましたけれども,個別の案件にかかわることでございますので,今後の見通しについては,基本的にはまだ何かお話しするようなことではないというふうに思います。
 いわゆる巨大プラットフォーマーに関しては,一般的な意味合いで言えば,私ども強い関心を持っておりますし,そのために先日来と言うべきでしょうか,プラットフォーマーによる取引慣行について調査を実施してきておりまして,先般,マーケットプレイスやアプリ販売に関する調査報告を公表いたしました。また,引き続きデジタル広告の分野について調査を行っていくということも表明しております。ですので,広い意味にはなりますけれども,プラットフォーマーの,今,申し上げた,今後,直近ではデジタル広告の分野になりますけれども,そういった分野における取引慣行には,引き続き大きな関心を払っていくことになると思います。
 これも一般論になってしまいますけれども,企業統合の案件ということになりますと,通常は統合しようとする当事会社,あるいは当事会社グループ間で,どのような事業が競合しているのか,また,あるとすれば,その程度はどうなのか。同じように,当事会社,当事会社グループ社間で,取引関係があるのかどうか,また,あるとすれば,どの程度,どういう分野についてなのか。そういった点を踏まえて,競争に及ぼす影響というものを判断していくことになります。
 現在,企業結合ガイドライン等の見直しについて作業しているところでございます。その中で,デジタル分野に関して,とりわけこうした点が審査のある程度注目点になるということを,従来のガイドラインに付け加える形で案をお示ししております。ただ,現在,お示ししております案というのも,これまでの運用事例等を踏まえまして,それを明確化するというのが基本的な趣旨でございますので,その改正の前後にかかわらず,デジタル,あるいはデータ,研究開発,そういった事柄に関連するような案件については,現在,お示ししているような考え方をベースにして,判断していくということになろうかと思います。

(問) 追加でちょっと伺わせてください。これも一般論でお伺いするんですけれども,こういったデジタル・プラットフォーマーの企業結合に対して,既にガイドラインではお示ししていると仰いましたけれども,改めて山田さんとしてどういった点が注目されるのか,ヤフー,LINE特有のものではなくとも,こういった業態の企業が企業結合したときに,どのような点が注目するポイントとなるのか,その当たりについてはいかがでしょうか。
(事務総長) これも一般論になってしまいますが,現在,お示ししているガイドラインの改定案の中でも言及しておりますが,やはりプラットフォーマーにかなり特有といいますか,強く表れるのは,それが多面市場を構成しているということだというふうに思います。ですので,多面市場それぞれについてどういう影響があるのか,また,両方の,あるいは複数の市場をつなぐという形でそれに直面しているんだということも踏まえた,統合に関する分析,評価というのが必要になってくるかと思います。それがどの程度,どういう影響を及ぼすのかというのは,個別の事情によって異なってきますので,一概には申し上げられません。

(問) ヤフー,LINEさんの案件をちょっと念頭に置いてにはなるんですけれども,ただ一般論としてお伺いしますけれども,プラットフォーマー,いわゆるGAFA的な存在と比べると,いろんな観点から見て,やっぱり規模が1桁も2桁も違うという中で,公正取引委員会さんとしては,あくまで日本市場としての中での独占というか,寡占の程度というか,を見ていくと思うんですけれども,グローバルで見たら圧倒的に規模,存在感がない中で,デジタル化が進んでいると国の垣根がフラット化している中で,日本市場だけ見て駄目というか,厳しいという場合があっても,グローバルで見たらあまり,全く影響はないというような案件もあると思うんですけれども,そのあたりの,デジタル化が進む中での,国だけで見ていくのか,国を超えた判断というのが,難しさというかですね,気になる点があれば教えてください。
(事務総長) 今の御質問というのは,まず第一義的には市場画定の問題だというふうに思います。市場画定の場合には,要するにどの場,どういう場で競争しているのかということを判断する,あるいは評価するということになります。先ほど申し上げたのは,どちらかというと,サービスであればサービスの種類の広がりというか,範囲というか,それがどういうふうになるかという観点で申し上げましたけれども,同時に,どこでどういう利用者,需要者に対して提供されているのかというのは,というものもやはり市場画定の際に問題になってくる訳でございます。
 現在のガイドラインにおきましても,それは第一義的には需要者,利用者がどういう範囲に存在しているのかということから,まず判断していくということになりますので,案件によっては,日本国内ということもありますけれども,過去の事例でもそうですが,案件全体というよりは,そこで問題になってくる事業によっては,世界市場というのが観念できるというものもありますし,また逆に,日本国内でさらに特定の地域だけで1つの区画が成立しているということであれば,そういった認定もありますので,それも事実関係によって画定していく,評価していくということになります。
 ですので,日本企業同士の統合であるからといって,アプリオリに国内市場だけだというふうに判断するわけではありません。ただ,あくまで日本の独占禁止法の違反になるのかどうかということの判断ですので,日本市場に対してどういう影響があるのか,仮に世界市場というふうに捉えた場合でも,それが日本市場にとってどういう影響があるのかというのは,当然,念頭に,前提に置かなければいけない問題にはなります。

(問) これも,またヤフーとLINEの話が念頭になってしまう一般論のお話を伺いたいんですけれども,こういうデジタル市場の規制というのと,イノベーションの推進というのが相反するということが度々指摘されていますが,改めて規制をしていく公正取引委員会として,今後,どういった点,どのようにバランスをとっていくか,そこを改めてお聞かせください。
(事務総長) あくまで一般論ではございますけれども,カルテルや,他の事業者を排除するような,ある種,極めて悪質なものであれば,それは当然に規制していかなければいけないというのは,それによって,その行為によってもたらす便益というのは基本的にはほとんどないということが前提になっています。ただ,それ以外の,企業結合も含めて,それ以外の行為の場合には,その行為がもたらすプラスの影響というのもある場合がある訳ですから,それも含めて判断していくということになると思います。
 ただ,そのプラスの影響というのが,あくまで企業結合であれば統合によってもたらされる,あるいは,ちょっと厳しい言い方をすれば,統合によってしかもたらされないというものがあるのかどうかということにもなってくると思います。その一方で,今,御質問の中にありましたように,共同で何かをするということが技術革新であるとか,よりよい成果をもたらすために必要という場合もありますので,それは個別の事情によって判断していくことだと思います。
 とりわけ,最近,デジタル分野についていろいろ調査,勉強等をさせていただいておりますけれども,やはり変化が激しいところでございますので,静的な判断ではなくて,今後,どうなっていくのかということは,これまでもそうですけれども,御質問にあった目の前にあるケースという意味ではなくて,一般論として,十分に当事会社から話を,これまでも企業結合の案件であれば,当事会社から統合によってどういうことが生じるのか,あるいは競争上の懸念があるのか,ないのかというのは十分にお話を伺い,また,必要に応じて競争業者であるとか,取引業者であるとか,そういう人たちからもお話を伺って判断していくということになります。ただ,いずれにせよ,慎重な判断というのは必要になることだろうというふうには思います。

(問) ちょっと手続的なことについてお伺いしたいんですが,今回のケースに限らずですね,大きなIT企業が,しかも国境を越えて統合するということになると,サービス,事業の分野も幅広い上に,各国との競争当局との連携みたいなことも必要になってきて,通常の国内企業同士の統合に比べると事務作業も量も増えるのかなというふうに想像するんですけど,現段階で審査の期間がですね,一般的な国内企業同士の統合の案件に比べて長引きそうだとか,そういったことが言えるのかどうか,その辺の見通しについてお願いします。
(事務総長) これも一般論になりますけれども,企業結合案件に関する手続上の問題というのは,法律で定められている部分もございます。一定の要件を満たす企業結合につきましては,公正取引委員会への事前の届出が必要になります。この事前届出制は,ほかのほとんどの国でも採用されているものでございます。
 日本の場合には,その届出がなされて,それが受理された日から30日以内に,追加資料が必要かどうかを判断して,当事会社に通知するという仕組みになっています。要するにこういう資料を出してくださいという通知をいたしますので,その通知の対象となった資料が全部提出されたときから90日以内に公正取引委員会は判断しなければいけないと,法律上の規定では,90日を過ぎると,違反行為を排除するための手続に入れないという規定になっています。ですので,ここは全て法律で決められていますから,公正取引委員会に与えられている時間というのは,届出があってから30日間の,まず,そこを第1次審査と言っていますけれども,その第1次の,追加資料を要するかどうかという判断のための期間と,追加資料を要求して,全部資料が提出されてから90日という期間の間でそれを判断するというのが与えられています。あとは,その報告を求めてから,報告の対象となる資料が全部そろうまでにどのぐらい掛かるかというのは,これは当事会社の方がそれにどれだけの時間を掛けるかによって変わってまいりますので,それは一概には申し上げられませんけれども,若干,繰り返しになりますが,提出された資料が全部そろった段階から90日以内に公正取引委員会が判断をしなければならないということになります。
 ですので,案件によって公正取引委員会が短くすることはできるんですけれど,長くすることはできないという仕組みになっています。

以上

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