[配布資料]
[発言事項]
事務総長会見記録(令和2年4月1日(水曜)13時30分~於官房第1会議室)
新型コロナウイルス感染症に関連した公正取引委員会の取組
本日,私からは2点お話しいたします。最初は,新型コロナウイルス関連の公正取引委員会の取組についてでありますが,まず,新型コロナウイルス感染症に同業者が連携して対応する際に参考となる想定事例集について申しますと,新型コロナウイルスの世界的な感染拡大に伴いまして,企業の活動に様々な影響が出ておりますが,今後,同業者で協力し合って対応に当たるという取組が行われる場面もあろうかと思います。
そのような同業者による取組に関する独占禁止法上の考え方につきましては,平成24年3月に公正取引委員会が公表しました「震災等緊急時における取組に係る想定事例集」が参考になると考えております。
この想定事例集の中から2つほど事例を御紹介いたします。
まず,想定事例1のほうでございますが,これは自動車用部品の事例です。自動車用部品は,御存じのとおり,二次部品を組み合わせて一次部品を製造し,一次部品を組み合わせて完成品を製造するというように,多層構造になっております。
想定事例1は,二次部品メーカーの工場が被災して,二次部品が著しく不足した場合に,所管省庁が,時限的な対応として,関係者から情報収集を行って一次部品メーカーへの配分案を作成し,この配分案を参考にしながら二次部品メーカーが一次部品メーカーに部品の配分を行うという取組です。
この取組では,一次部品メーカーの間で二次部品の購入数量や購入価格を取り決めるわけではなく,独占禁止法上,問題とはなりません。
次に,想定事例7ですけれども,住宅用合板の事例です。この事例は,事業者団体の取組に関するものです。
この事例では,住宅用合板について,国内需要を全て賄えるだけの供給量があるにもかかわらず,一部の工場の被災をきっかけに,「品薄ではないか」という懸念が需要者に生じているという状況が前提になっております。そして,そのような状況を背景に,住宅用合板のメーカーの団体が,所管省庁の要請を踏まえて,会員から集めた情報を基に,在庫量の合計と最大生産可能量の合計をウェブサイトで公表するというのが,取組の内容です。
この取組では,会員から集めた情報が会員の間で共有されることはなく,また,会員各社の生産量を制限するものでもなく,独占禁止法上問題とはなりません。
取引先の工場の生産縮小などによって,自社商品の製造に必要な原材料が不足する,あるいは,「商品が品薄ではないか」という懸念が需要者に生じることで商品の供給に混乱が生じるという事態,これは,今回の新型コロナウイルス感染症をめぐる状況において発生する懸念がないとは言えません。
そのような事態に同業者や団体が対応する際には,御紹介しました想定事例の考え方が参考になると考えております。
この想定事例集は,公正取引委員会のホームページのトップページにトピックスというところがありますが,その一番上にあります「新型コロナウイルス感染症関連」というところをクリックすると,掲載ページに移動いたします。事業者や事業者団体の皆さんにおかれましては,是非参考にしていただければと考えております。
また,この想定事例集に掲載がない場合でありましても,独占禁止法との関係で何か気になることがありましたら,公正取引委員会の相談窓口が同じくホームページに掲載されておりますので,これらの窓口に御相談いただければと思います。
本件の担当課室は取引部の相談指導室になります。
このほかコロナウイルスに関連した取組としましては,マスク等の衛生用品の販売を行う一部の販売事業者が,マスクに他の商品を抱き合わせて販売していたとの報道があったことを受けまして,先般,公正取引委員会はこれらの事業者が所属する関係業界団体である,日本チェーンドラッグストア協会に対して,こうした行為が独占禁止法が禁止する不公正な取引方法の抱き合わせ販売等につながるおそれがあることから,今後同様の行為を行わないよう会員企業へ周知することを要請いたしました。
日本チェーンドラッグストア協会は,要請を受けて,直ちに会員企業に対し,要請内容を周知したほか,協会として今回の件を真摯に受け止め,再発防止に向け,鋭意取り組む旨を協会ホームページで表明しております。 また,コロナウイルスの拡大防止やそれに伴う需要減少等を理由に,発注事業者が個人事業主やフリーランスとの契約を変更するなどの影響も想定され得るということから,先般,経済産業大臣,厚生労働大臣,公正取引委員会委員長連名で,個人事業主やフリーランスと取引を行う事業者に対して配慮を求める要請を行いました。
公正取引委員会としましては,事業者が個人事業主やフリーランスとの取引において独占禁止法や下請法の趣旨を踏まえた適切な対応を行うことができるよう,引き続き,事業者からの相談に丁寧に対応していきたいと考えております。
デジタル市場企画調査室の新設について
次に,本日付けで公正取引委員会に設置されました「デジタル市場企画調査室」についてお話しいたします。デジタル市場への対応をめぐりましては,昨年9月に内閣官房に「デジタル市場競争本部」が設置されるなど,政府全体でルール整備に向けた取組が続けられております。その中で,公正取引委員会としては,デジタル・プラットフォーマーの取引環境等に関する実態調査,各種ガイドラインの整備などに取り組んでまいりました。
そして,本日,デジタル市場についての大規模かつ包括的な徹底した調査を行い,取引実態の把握を更に進めるとともに,外部の専門家の協力を得て,デジタル分野に関する情報を幅広く収集するなどの取組を行う部署といたしまして,「デジタル市場企画調査室」を設置いたしました。
公正取引委員会といたしましては,新設されました「デジタル市場企画調査室」を始めとする関係課室において,引き続きデジタル市場への対応に積極的に取り組んでいきたいと考えております。
私からは以上でございます。
質疑応答
(問) 今回のコロナウイルスの問題に当てはめると,事例7の住宅用合板では,今のトイレットペーパーとかの騒ぎとか,その辺で当てはめて考えていいんでしょうか。
(事務総長) 具体的に幾つか,事業者側から相談は来ているようでございますが,大震災の頃のような緊急・切迫という相談ではないようには聞いております。ただ,具体的にあった例といたしましては,その親事業者が自社の工場を一時閉鎖するなどした場合に,当初定めた納期に納品される部品を受け取ることができなくなるんだけれども,そういう事情を理由に受領を拒否することは下請法上問題になりますかというような問い合わせがありまして,これは大震災のQ&Aにも同じような問いがあるんですけれども,それについては,下請事業者に責任がある場合を除いて,受領拒否をすることは下請法上問題となるので,代替的な工場での受領なども含めて,可能な限り受領する手段を考えてくださいと,どうしても客観的にみて納期に受領することができないということであれば,両者で十分協議をして,その結果,納期を延ばすというような結論になったときには,それは公正取引委員会としても,そのことを十分考慮した対応をいたします,そういう答えをしているようでございまして,そういう個々の事例としては,幾つか相談は来ているようでございます。
(問) 今後の展開では,やっぱり下請関係が今後増えていく可能性は高いでしょうか。
(事務総長) ちょっと先の予想はできないんですが,要請もしているところですし,そういう問題ができれば起きないようにやっていただきたいと思っておりますし,また,相談が寄せられれば,丁寧に対応したいと思っております。
(問) デジタル市場企画調査室のほうなんですけれども,この調査室の規模感,何人ぐらいいらっしゃる部屋なのかということと,あと,目的としては,取引に関する調査が主な業務なんでしょうか。ほかに何かあれば教えてください。
(事務総長) デジタル市場企画調査室の定員は10人となっておりまして,そういう規模でございます。業務としては,デジタル分野の実態調査に加えまして,もう一つ,外部の専門家の協力を得てデジタル分野に関する情報収集,これを幅広く行っていくということを考えております。
実態調査のほうは,現在,デジタル広告分野の実態調査を行っておりますので,これを引き続き行っていくということでございますが,もう一つの情報収集のほうについては,外部の専門家,工学系の学識経験者とか,デジタル分野の実務に詳しい方など,そういう様々な有識者の協力を得て,お話を聞くなり,そのほか具体的なやり方は,これから検討していきたいと考えております。
以上