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令和2年6月17日付 事務総長定例会見記録

令和2年6月17日付 事務総長定例会見記録

[配布資料]

[発言事項]

事務総長会見記録(令和2年6月17日(水曜)13時30分~於大会議室)

令和元年度における独占禁止法違反事件の処理状況について

 本日,私からはまず「令和元年度における独占禁止法違反事件の処理状況」について御紹介いたします。
 令和元年度独占禁止法違反事件の処理状況のポイントとしましては,3点挙げられると思っております。
 1点目としましては,令和元年度に納付を命じた課徴金額は692億7560万円で,この金額は平成22年度の課徴金額約720億円に次ぐ過去2番目ということであります。
 2点目といたしましては,平成30年12月に施行されました確約手続について,制度開始後第一号を含みます2件の確約計画の認定を行ったということです。
 3点目としましては,平成16年以来,16年ぶりとなります緊急停止命令の申立て,これを行ったということであります。
 お手元の概要資料に沿いまして,主な点を御説明申し上げます。
 1ページ目左上の図を御覧ください。令和元年度においては,価格カルテル6件,入札談合3件,不公正な取引方法3件,私的独占1件と国民生活に影響の大きい事案に対して厳正かつ積極的に事件審査を行ってまいりました。また,課徴金額につきましては,左下の図のとおりでありまして,冒頭申し上げましたとおり,過去2番目の額ということであります。これは市場規模の大きい事件が数多くあった結果と考えております。
 法的措置を採った具体的な事案,これは2ページの一覧のとおりでありますけれども,例えば楽天株式会社が運営する宿泊施設を掲載するウェブサイトの拘束条件付取引事件につきまして,第一号となる確約計画の認定を行いました。また,放射性医薬品の製造販売業者による私的独占事件につきましても,確約計画の認定を行ったところです。今後もこの確約手続という新たなツールも利用しながら的確に対応していきたいと考えております。
 価格カルテル事件のほうでは,アスファルト合材の製造販売業者に対する件につきまして,1事件としては過去最高となります約400億円の課徴金納付命令を,また,飲料アルミ缶の製造販売業者に対する件につきましては1社当たり100億円を超える課徴金納付命令を行うなど,市場規模の大きい事件がございました。
 さらに,不公正な取引方法の関係では,アップリカ・チルドレンズプロダクツ合同会社とコンビ株式会社の育児用品の再販売価格の拘束という,国民生活に密接に関連する事件も取り上げました。
 3ページですけれども,審査事件の処理としましては,排除措置命令を行うことだけではなく,事案の特性に応じて迅速かつ効果的な処理を行うことによりまして,競争秩序の早期回復を図るということも重要であります。こうした観点から,IT・デジタル関連分野のほか,さまざまな分野におきまして,社会的ニーズに的確に対応して事案を処理してまいりました。先ほどお話ししました確約計画の認定を2件,優越的地位の濫用事件等について2件の警告を行ったほか,IT・デジタル関連分野の事案につきまして,調査の過程で事業者の自発的な措置が採られたことで調査を終了した事案もございました。
 4ページですけれども,中小企業等に不当な不利益をもたらす優越的地位の濫用行為につきましては,審査局に設けました「優越的地位濫用事件タスクフォース」が効率的・効果的に調査を行いまして,必要な是正措置を講じております。
 昨年5月に警告をしました丸井産業株式会社による納入業者に対する優越的地位の濫用事件,これはこのタスクフォースが担当したものでありますし,このほか29件の注意を行いました。
 6ページでございます。公正取引委員会は技術革新に伴う競争環境の変化の激しいIT・デジタル関連分野につきまして,「ITタスクフォース」,これは平成13年からでございますが,を設置しまして,事件処理に取り組んでおります。また,平成28年10月にはIT・デジタル関連分野専用の情報提供窓口を設けまして,幅広く情報提供を受け付けております。
 IT・デジタル関連分野では,楽天株式会社がいわゆる「共通の送料込みライン」と称します施策を導入して出店事業者に不利益となるように取引の条件を変更している疑いにつきまして,平成16年以来16年ぶりとなる緊急停止命令の申立てを東京地方裁判所に対して行いました。引き続きIT・デジタル関連分野を始めとする競争環境の変化の激しい市場におきましては,必要に応じて緊急停止命令の申立てを行うことも含めまして,迅速に対応していきたいと考えております。
 7ページでございます。東京都が発注する浄水場の排水処理施設運転管理作業の見積り合わせ参加業者による談合事件におきましては,発注者である東京都の職員が入札談合に関与する,いわゆる官製談合が行われておりました。このため,本件では,発注者である東京都知事に対しまして,入札談合等関与行為防止法に基づき,再発防止策を求める改善措置要求を行いました。この改善措置要求は,平成26年3月に鉄道建設・運輸施設整備支援機構に対して行って以来5年ぶりのものであります。公正取引委員会としましては,今後とも,官製談合を始めとする独占禁止法違反行為に対して,厳正・積極的に対処しますとともに,再発防止に取り組んでいきたいと考えております。
 公正取引委員会といたしましては,典型的な独占禁止法違反行為でありまして,消費者利益を大きく侵害します価格カルテルや入札談合などに厳正に対処するほか,中小企業等に不当に不利益をもたらします優越的地位の濫用や不当廉売,その他不公正な取引方法などに対しまして,事案の特性に応じて迅速かつ的確に対処することによりまして,今後とも公正かつ自由な競争を促進していきたいと考えております。
 私からは以上でございます。

質疑応答

(問) 確約手続のほうなんですけど,実質,多分昨年度が初年度という形になったと思うんですけど,これまでの運用状況についてはどう受け止めていらっしゃるんでしょうか。
(事務総長) 御指摘のとおり,確約手続は導入されてそれほど日が経っておりません。最初導入されたときには,これがどういう案件で用いられるのか,また,いつ一号案件が出るのかということは,独占禁止法・競争法の世界の人間にはかなり深い関心があったと思うんですけれども,新しいツールが入って間もないうちに,適した案件できちんと確約手続によって確約計画というのが実現したということですので,順調に滑り出したんじゃないかなと思っております。
 もちろんあからさまな違反行為にはしっかり措置を採って,再発防止を図るということも重要ですが,一方で,事業者側が協力し,迅速に処理できるものを早く処理して,競争環境を回復するということも重要ですので,今後も事案ごとに適切に選択して,選択してといっても事業者側のほうが確約計画を出すという気持ちがないとこれはできない話でございますが,そこはよくコミュニケーションを取りながら,適切な事案があれば,この確約手続をしっかり活用していきたいと考えております。

以上

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