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令和2年7月22日付 事務総長定例会見記録

令和2年7月22日付 事務総長定例会見記録

[配布資料]

[発言事項]

事務総長会見記録(令和2年7月22日(水曜)13時30分~於審判廷)

 本日は,まず,公正取引委員会の誕生日について申し上げたいと思います。
 先日,7月20日は,公正取引委員会と独占禁止法にとっての満73年の誕生日でございました。独占禁止法は1947年,昭和22年の4月14日に公布され,7月20日に全面施行されましたので,7月20日が公正取引委員会の誕生日ということになります。
 本日のテーマについてお話しする前に,公正取引委員会の誕生日にちなみまして,現在までの公正取引委員会の予算と課徴金のそれぞれの合計を比べてみましたので,御紹介いたします。
 お手元の「予算額の推移」と書いた資料を御覧ください。公正取引委員会が昭和22年に誕生してから今年度までの予算の合計は約2855億円です。一方,資料の2枚目ですけれども,昭和52年に課徴金制度が導入されてから現在までの課徴金の合計額,これは約4702億円ということでございまして,公正取引委員会のこれまでの予算の合計を1.5倍以上上回っているということでございます。
 独占禁止法の目的は,御存じのとおり,公正かつ自由な競争の促進でありまして,課徴金制度の目的というのは,そのために独占禁止法違反行為を抑止するということにありますので,もちろん課徴金の額が多ければいいというものでは当然ないわけですけれども,それでも,こうした数字を見ますと,一般消費者の利益と国民経済の民主的で健全な発達を促進するために,公正取引委員会が創立以来行ってきた活動,そして,その役割,これが広く支持されてきていることがうかがえるのではないかなというふうに思っております。

令和元年度における主要な企業結合事例について

 それでは,本日のテーマのうち,まず「令和元年度における企業結合に関する届出の状況及び主要な企業結合事例について」,これを御紹介いたします。
 お手元の「企業結合関係届出の状況」と書かれた資料の1ページ目の表でございますけれども,過去5年度に受理した届出処理状況をまとめたものであります。令和元年度には310件の届出を受理いたしました。平成30年度に続き,300件を超える届出を受け付けたことになります。届出を受理した310件のうち,より詳細な審査が必要であるとして,第2次審査に移行したものは1件ですけれども,これは「韓国造船海洋株式会社による大宇造船海洋株式会社の株式取得」でありまして,令和2年3月に第2次審査に移行し,現在も審査中のものです。
 お手元の資料の2ページ目を御覧ください。「主要な企業結合事例集」,これは平成5年度以降,毎年公表しておりまして,今年度公表した「令和元年度における主要な企業結合事例」,これに掲載されています10の事例を含めまして,これまで合計296の企業結合事例を公表しております。公正取引委員会は企業結合審査での独占禁止法の適用の考え方を企業結合ガイドラインとして明らかにしておりますけれども,企業結合審査の透明性・予見可能性の一層の向上を図る観点から,企業結合審査を行った事例のうち他の事業者の参考になると考えられる事例を取り上げまして,具体的な企業結合事案において,どのように市場を画定し,競争への影響についてどのように判断しているのかなどにつきまして,審査結果を説明し,公表しております。
 令和元年度の事例集では,例えば,近年,力を入れている経済分析について,事例の3と事例の9で,その結果を詳しく公表しております。また,令和元年12月に改正された「企業結合審査に関する独占禁止法の運用指針」で,垂直型企業結合と混合型企業結合に関する考え方についての記載内容を拡充しましたけれども,他の事業者等の参考にするべく,これらの垂直型企業結合と混合型企業結合の事例を多く取り上げたということ,これらが特徴として挙げられるかと思っております。
 公正取引委員会としましては,引き続き,法運用の透明性の確保に努めますとともに,企業結合を計画している会社におかれましては,この事例集が活用されて,独占禁止法上の考え方についての理解が一層深まることを期待しております。
 本件の担当は企業結合課ですので,例えば,個別の企業結合事例の内容について御関心があるということであれば,企業結合課にぜひお問い合わせいただければと存じます。

「デジタル市場における競争政策に関する研究会」の開催について

 最後に,「デジタル市場における競争政策に関する研究会」の開催について,御紹介いたします。
 近年の急速な技術の進展により変化の激しいデジタル市場において,公正かつ自由な競争を確保し,事業者の創意工夫を促すため,デジタル市場の取引実態や競争環境に即して,競争政策を有効かつ適切に推進していくことが重要であると考えております。
 このような認識の下,デジタル市場における独占禁止法・競争政策上の諸論点や課題について研究を行うことを目的としまして,経済取引局長主催の「デジタル市場における競争政策に関する研究会」を開催することといたしました。
 当面は「アルゴリズム/AIと競争政策」をテーマとして研究を進めていく予定にしております。
 この研究会は,お手元の資料の「デジタル市場における競争政策に関する研究会」の開催についての裏面の別紙に記載のある有識者の方々で構成されまして,初回は7月29日水曜日の開催を予定しております。
 この研究会の開催につきましては,本日午後1時半,ついさっきですが,公正取引委員会のウェブサイトにもお手元の資料をアップしておりますので,そちらでも御覧いただくことができます。
 本件の担当はデジタル市場企画調査室であります。
 私からは以上です。

質疑応答

(問) 最後のデジタル市場の研究会の件なんですけれども,ここで成果として,例えば,報告書みたいなものを作っていくのかということと,あと,この研究テーマのアルゴリズム/AIの問題意識をちょっと詳しく教えていただきたいんですが。
(事務総長) 研究会については,これからの研究・検討・議論次第ですけれども,今のところ,何らかの形で,成果については報告書という形で公表したいと考えております。また,御承知のとおり,アルゴリズム/AIの利活用というのは,事業者の生産コストの削減ですとか,効率化とかに非常に貢献しておりまして,そういう面では競争政策上,歓迎されるものではあるんですけれども,一方で,アルゴリズム/AIの利活用の進展によって,事業者がこれを用いて,競争に悪影響を与える行為の懸念ということも広くいろいろと議論されております。
 例えば,事件の関係でいいますと,欧州委員会が,2017年に,グーグルが検索アルゴリズムを利用して,検索結果の表示ページで自らの比較ショッピングサービスの結果を目立つ位置に配置するということが問題だということで,欧州委員会は制裁金を課したという事例もあります。
 また,OECD競争委員会でも議論が行われておりますし,また,昨年2019年にはフランスとドイツの競争当局が「アルゴリズムと競争」という報告書も出しております。また,公正取引委員会も,平成29年度に公表しました「データと競争政策に関する検討会報告書」,この中で課題の例として,デジタルカルテルというのも挙げておりまして,そういういろいろ議論があり,現に欧州委員会が事件としても取り上げているということもあり,公正取引委員会としても,このアルゴリズム/AI技術の基本的な仕組み,これを確認しながら,アルゴリズム/AIと独占禁止法・競争政策上の課題の整理を進める必要性は高いと考えまして,今回,研究会を発足するに当たり,当面のテーマとしてこれを選んで,専門家・有識者の方々に御議論いただこうということでございます。

(問) 同じテーマに関することなんですけども,その報告書をいつ頃出すという目途というのはあるんですか。
(事務総長) ちょっとまだそういう目途までの段階に至っておりません。まずは,7月29日に開始して,しっかり議論したいと思っておりまして,今の予定ですと7月29日以降,おおむね月1回ペースぐらいで開催して,議論次第となりますが,今年度中に何か取りまとめができればいいかなというぐらいのペースで考えています。重要なテーマでもありますし,専門家の方々に丁寧に議論していただいた上で進めていきたいと思っています。

(問) あと,座長というのはまだ決まってないんですか。
(事務総長) 座長については,第1回の会合で委員の中から,皆さんで決めるというのがこういう研究会での決め方ですので,まだ未定でございます。

(問) あと,最後に1つ。企業結合審査に関するテーマについてなんですが,毎年,出しているわけですが,昨年の12月のガイドラインとか,届出手続の審査の改善があって初めてということで,どういうふうな性格なり,意味付けなりお持ちでしょうか。
(事務総長) 昨年12月に改正したガイドラインは基本的な考え方を変えたわけではないんですけども,デジタル分野というものを意識した要素を追加したということであります。そういう事案については,昨年度についても,そのガイドラインの該当箇所に基づいた審査をしてきたということで,今回,例えば,エムスリーと日本アルトマークの例なども御紹介しておりますが,そうした事例も御紹介しているということでは意味のある内容かなというふうに思っております。
 その他,今回,資料の中にもありますが,経済分析をしたのはこれですとか,問題解消措置を取った案件はこれですとか,これまでは,それぞれの案件ごとに,どの点が関係しているかが目次で見えにくかったんですけども,そこを見えやすくすることによって,皆さん方に関心のある分野を見ていただけるようにという工夫も今回しております。

(問) 今,そのデジタルのお話もあったんですけど,もう一度,企業結合の在り方として,特に企業の間で,これまでのように同業者の再編という形よりも異業種の形で,特にデータを意識したような形の再編や企業結合や統合というのが増えてきていると思うんですが,今後の公正取引委員会の企業結合審査の在り方として,そういった,よりデジタルとか,データに注力してとかのお考えというのは,事務総長はどういうふうにお考えでしょうか。
(事務総長) 企業結合審査は,基本的には公正取引委員会が主導するというよりは出てきたもの,まさに経済実態が反映した企業結合の形態というのがいろいろ現れてきて,それを適切に審査し,競争の面から,きちんと把握して結論を出すということだと思っております。今,御指摘の点があったように,データとか,デジタルとか,そういう関係が経済の形でも大きな比重を占めるようになりましたので,それを受けて,昨年12月にそういう点に重点を置いた改正をしましたし,また,正に従来は水平型というのが基本的に問題だという意識だったんですが,最近,混合型とか,垂直型というのも非常に多くなってきて,そこでの問題というのもいろいろ認識されてきましたので,そこを今回,大幅に変えたというところもあります。正に御指摘のとおり,今回の企業結合ガイドラインの改正というのは,最近の経済の状況の変化を反映させたもので,今後,そういうものがいろいろ出てきたら,今のガイドラインの考え方に基づいて,適切に実態を把握して判断していくということかと思います。

(問) ちょっとまだニュースを御覧になってないかもしれませんが,今日,午前中に楽天がオンラインでの事業説明会を開催されまして,その中で役員の方が例の送料一律無料化に関して,別に強制することはないですよというような意向を表明されましたが,これに関して一言いただきたいのと,それから,それを受けて,まだ進めていらっしゃる,楽天に対する調査ですか,そういったのは継続されるのかということを伺えればと思います。
(事務総長) 幸いにして報道は承知しております。ですが,報道しか承知しておりませんし,今,申していただいたとおり,現在進行中の審査案件ということでございますので,ちょっとそれ以上コメントは難しいです。

以上

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