[配布資料]
令和2年度上半期における下請法の運用状況,企業間取引の公正化への取組(令和2年11月18日公表資料)(PDF:430KB)
「データ市場に係る競争政策に関する検討会」の開催について(令和2年11月13日公表資料)(PDF:138KB)
事務総長会見記録(令和2年11月18日(水曜)13時30分~Web会議形式により開催)
令和2年度上半期における下請法の運用状況,企業間取引の公正化への取組等について
本日,私からは,2つお話しいたします。まず令和2年度上半期における下請法の運用状況等について御紹介いたします。
公正取引委員会では,中小事業者の取引条件の改善を図る観点から,下請法等の一層の運用強化に向けた取組を進めております。本日,「令和2年度上半期における下請法の運用状況,企業間取引の公正化への取組」を公表いたしますので,そのポイントを御紹介いたします。
下請取引におきましては,下請事業者が親事業者から下請法違反に該当するような行為を受けても,その立場上,公正取引委員会等に報告しにくいという事情がありますので,親事業者,下請事業者双方に定期的な書面調査を行って,下請法違反行為が生じていないか,情報収集を行っています。令和2年度におきましても,親事業者に対して6万通,下請事業者に対して30万通を発送しています。
このような書面調査に対する回答等から得られた情報を基に,令和2年度上半期においては,3件の勧告と5,269件の指導を行いました。勧告件数はおおむね例年並みで,指導件数は前年度上半期を若干上回る水準になっています。本年度上半期の勧告事件につきましては,11ページと12ページの別紙1に概要を記載しています。
また,14ページの別紙3に,「新型コロナウイルス感染症」,「働き方改革」,そして「金型」に関連する下請法違反の実例を5つ挙げております。
公正取引委員会としては,引き続き中小企業等に対する不当なしわ寄せ等の行為について,下請法に基づき厳正に対処してまいります。
加えまして,下請法の運用に当たっては,違反行為の未然防止を図ることも重要ですので,下請法や優越的地位の濫用規制のより効果的な普及・啓発を図るため,参加者の習熟度や業種に応じた各種の講習会を行っております。また,新型コロナウイルス感染症が拡大している状況を踏まえて,時間や場所を問わずに下請法等の基礎知識が習得できるよう,e-ラーニング資料を作成し,公表しておりますので,事業者の皆様におかれましては,ぜひ御活用いただければと思います。
最後に,令和2年度下半期における取組の予定を申し上げますと,公正取引委員会は,中小企業庁と共同して,毎年11月を「下請取引適正化推進月間」として,下請法の普及・啓発を集中的に行っております。
月間のキャンペーン標語を一般公募いたしました結果,今年度の特選作品は,「叩くのは 価格ではなく 話し合いの扉」でありまして,これをポスター等で活用しております。また,26都道府県32会場において下請法に関する講習会を開催いたします。これらに加えまして,中小企業庁はオンラインでもこの講習を開催いたします。さらに,13日には,関係事業者団体約1,400名に対して,下請法の遵守の徹底等を文書により要請いたしました。
本件の担当は下請取引調査室と企業取引課です。
データ市場に係る競争政策に関する検討会について
次に,「データ市場に係る競争政策に関する検討会」の開催について御紹介いたします。
近年,データは競争力の源泉であるとの認識が広がりつつある中で,競争の場は,データを活用して現実空間でのビジネスの高度化を図る場に移行するとの見方があります。EUがデータの重要性に着目した新たな戦略を公表いたしましたが,日本政府も本年10月にデジタル国家にふさわしいデータ戦略を策定するための検討に着手しています。
このような中,競争政策の観点からも,データを活用した事業における競争をより活発にするための方策につきまして検討を進めていくということが大きな意義を有するものと考えております。そこでこの度,競争政策研究センターの下で検討会を開催することといたしました。
この検討会は,お手元の資料の「『データ市場に係る競争政策に関する検討会』の開催について」の別紙に記載のある有識者の方々で構成されておりまして,初回は11月20日,今週の金曜日の開催ということを予定しております。
この検討会の開催につきましては,13日金曜日に公正取引委員会のウェブサイトにアップしておりますので,そちらでも御覧いただくことができます。
本件の担当は競争政策研究センター事務局です。
私からは以上でございます。
質疑応答
(問) 確約手続における情報公開について伺います。専門家の先生等に取材していると,確約計画の認定の際に公開される情報があまりにも少ないという指摘があります。場合によっては,審査を打ち切った事案よりも情報が出ていないということもあり,公取委が何を問題となる行為と見ていたのかもよく分からなくなってしまうという指摘です。確約手続における情報公開の在り方について,事務総長のお考えをお聞かせください。
(事務総長) 御存じのとおり事件が終了した際には,再発防止等にも役立てるために,その内容を分かりやすく説明するということが重要でありますので,これまでも,排除措置命令等を行った場合には,報道発表資料を公表するとともに,事案に応じて可能な範囲というのは異なるということもありますけれども,十分な説明を心がけてきたところではあります。
御指摘の確約計画の認定につきましては,命令と同じように行政処分ではありますけれども,独占禁止法の規定に違反することを認定したものではなく,独占禁止法違反の疑いの段階で公正取引委員会と事業者との合意によって解決するものでありますので,排除措置命令等と比べて,事件終結後でありましても,御説明できる内容に一定の限度があるということは御理解いただければと思います。
ただ,確約計画の認定というのは,平成30年12月に確約手続が導入されてからもう6件目ということでありまして,その公表の在り方については,様々な御意見があることは承知しております。事案ごとに一定の制約というものがあり,また,その制約にも一定の事案ごとに違いがあるということなんですけれども,これまでも可能な限り分かりやすくという方向で事案ごとに検討して対応してきたところでありますけれども,ただ今の御指摘を含めまして,また,様々な御指摘もありますので,それらも踏まえて,次の事件の公表以降も,可能な限り分かりやすい説明をすることができるよう努力していきたいと考えており,またそのようにしてまいります。
(問) NTTによるドコモの子会社化について,これまでドコモへのNTTによる出資比率を下げる方向で来たところ,大きな方向転換となりますが,公取委は,この政策転換にどのような役割を果たしたのでしょうか。総務省のみが決めたことなのでしょうか。この方向転換についての競争上の検討,議論が公取委とも必要ではないかと考えますが,今後,議論が行われることはあり得るのでしょうか。
(事務総長) これについては,これまでも御質問いただいて,そのときにも御説明しているかと思いますけれども,企業が株式を持つ,持たない,どういう会社を子会社にするかというのは,それは個々の企業の経営判断でございますので,それを,ああしなさい,こうしなさいとかいうことを事前に公正取引委員会が言うということは,基本的にないわけです。
ただ,それが企業結合に当たるとすれば,それが独占禁止法上問題になるかどうかというのは,公正取引委員会は,届出があれば届出に基づき判断しますし,そうじゃない場合でも問題があれば調査をするということです。
今回の件について個別具体的なことはなかなか申し上げにくいんですけども,前にも申し上げましたが,企業結合ということで言えば,既に結合関係がある事業者として,その持ち株比率が変わるという場合には,通常,競争上の問題というのは余り起きにくいということはあろうというふうに考えております。
また,出資比率を下げる方向といいますか,移動体通信を持っているドコモとNTTは独立してというようなことを,以前は確かに公正取引委員会も言っていたと思いますけれども,これも移動体通信と固定通信を巡る状況が大きく変わっているということから,20年ぐらい前だと思いますが,その頃と今とでは,状況も変わっているので,公正取引委員会の考えもそれに基づいて変わるということはあるというふうに考えております。
個別具体的なことはなかなか言いにくいという範囲内で,なるべく申し上げたつもりでございます。
(問) 今の関連で,企業結合審査の観点ではなく,むしろ電気通信事業における競争政策の観点からのお考えをお聞かせください。
(事務総長) 先ほど,20年ぐらい前と申したのは,その頃,独占禁止法に違反かどうかということではなく,競争政策上の観点から,こういうことが望ましいのではないかということを,当時,公正取引委員会は言っていたと思います。
その前提は,当時,まだ固定通信というのが強い中で,移動体通信がその競争事業者として登場してきているということを前提に,そういうことを申し上げていたと思います。
今はかなり状況が変わっていますので,今,公正取引委員会が直ちに,20年前と同じことを言うということは多分ないだろうなというふうに考えております。
(問) 今月27日から地銀とバス事業者の合併が容易となる独占禁止法特例法が施行されます。それを前に,改めてこの措置が採られる意義を教えてください。また,金融庁等が特例を適用する際には,公取委と協議が必要となりますが,どういった姿勢で臨んでいかれるつもりなのか教えてください。
(事務総長) 今,手元に法律の規定の正確な表現ぶりを用意していないので,私の言うことが,ちょっと正確さが欠けるところがあるかもしれませんけれども,この地銀,バスの特例法というのは,いわゆる地銀やバスが地方において,サービスの提供が維持されるようにということを前提に,独占禁止法上の問題があるかないかとは別の観点から,こういう特別な法律を設けて,一定の条件の下で認めていこうというものだと思います。
したがいまして,特例法の方で申請があれば,その法律に基づいて公正取引委員会に対する協議もありますし,公正取引委員会も一定の場合には意見等を言うという仕組みがありますので,その法律に基づいて適切にやっていきたいと考えております。
また,バスにしろ地銀にしろ,企業結合なり共同経営をする場合にも,この特例法に乗らずに,独占禁止法の下で行うということも当然可能でございますので,そこは事業者の方の選択だと思います。例えば,企業結合について言えば,公正取引委員会に独占禁止法の届出があれば,これまでの考え方に基づいて需要者に対する不利益にならないかというところを中心にしっかりと調査をして結論を出していくということになろうかと考えております。
以上