ホーム >報道発表・広報活動 >事務総長定例会見 >令和3年 >4月から6月 >

令和3年5月26日付 事務総長定例会見記録

令和3年5月26日付 事務総長定例会見記録

[配布資料]

[発言事項]

事務総長会見記録(令和3年5月26日(水曜)13時30分~Web会議形式により開催)

令和2年度における独占禁止法違反事件の処理状況について

 本日,私からは「令和2年度における独占禁止法違反事件の処理状況」について御紹介いたします。
 令和2年度独占禁止法違反事件の処理状況のポイントを挙げますと,次のような3点かと考えております。
 1点目は,医薬品の入札談合事件について,検事総長に告発をいたしました。
 2点目は,平成30年12月から導入されています確約手続を積極的に運用したということです。
 3点目は,私的独占に対する課徴金を初めて実際に適用いたしました。
 次に,お手元の概要資料に沿って御説明いたします。
 1ページ目左上の図を御覧ください。令和2年度におきましては,価格カルテル6件,入札談合1件,受注調整1件,私的独占1件,そして,不公正な取引方法6件の法的措置を行いました。
 法的措置を採った具体的な事案は2ページの一覧のとおりでありますけれども,まずポイントの3点目として挙げました私的独占事件として,マイナミ空港サービス株式会社に対して,初めて私的独占に対する課徴金の納付を命じました。私的独占は,カルテルや談合と同様に市場における競争を実質的に制限する行為でありまして,課徴金の対象となっております。公正取引委員会としましては,今後も私的独占事案に対しまして,課徴金納付命令を含めまして厳正に対処してまいります。
 また,価格カルテル・入札談合・受注調整に対して8件の法的措置を採りました。さらに,ポイントの2点目として挙げました確約手続ですけれども,令和元年度には2件について適用いたしましたが,令和2年度は不公正な取引方法の6件の事件に適用いたしました。
 3ページ目でございますが,ポイントの1点目で挙げました医薬品の入札談合事件について,医薬品の卸売業等を営む事業者3社と,これら3社で入札や価格交渉等に関する業務に従事していた7名とを検事総長に告発いたしました。
 この入札談合は,国民の保険医療を支える上で社会的に必要不可欠な医薬品を対象とし,医療保険制度の下で保険料を負担する全国民に影響を与えた事案であり,また,本件で告発された会社は,過去にも公正取引委員会の処分を受けているといったことから本件告発に至ったものです。
 公正取引委員会としましては,今後とも悪質かつ重大な事案に対して,積極的に告発を行ってまいります。
 次に,確約手続についてですけれども,これは競争上の問題をより早期に是正し,公正取引委員会と事業者が協調的に問題解決を行う領域を拡大し,独占禁止法の効率的かつ効果的な執行に資するものでありまして,4ページにありますように,令和2年度に認定した確約計画の中には,これまでの類似事件での排除措置命令では命じられていない措置が盛り込まれたものがあります。例えば,ゲンキー株式会社に対する件とアマゾンジャパン合同会社に対する件では,納入業者に対する返金等が確約計画の内容として盛り込まれました。また,ビー・エム・ダブリュー株式会社に対する件では,合理的な根拠に基づいた販売計画台数案の策定やディーラーとの十分な協議を経た上で合意することなどを内容とするガイドラインの策定が確約計画の内容として盛り込まれました。
 御承知のように,現在,デジタル関連分野への積極的な対応が公正取引委員会には求められ,5ページにありますように,このデジタル関連分野のみならず,令和2年度におきましては,プロ野球の選手契約といった人材関連分野,家賃支援給付金事業といった新型コロナウイルス感染症関連分野など,社会的ニーズに対応した多様な事件に対応いたしました。
 最後に審判・審決と審決取消訴訟について御説明いたします。
 これは本文の16ページから17ページに記載がありますけれども,令和2年度には,計154件の審決を行いました。平成25年の独占禁止法改正により審判制度が廃止されましたが,これらの審決をもって係属中の審判事件は全て終了いたしました。
 なお,審決取消訴訟の状況は,本文の17ページのところにあるとおりでございます。
 公正取引委員会といたしましては,今後とも,市場の競争を制限して消費者利益を侵害する価格カルテル・入札談合などに厳正に対処するほか,中小事業者等に不当に不利益をもたらす優越的地位の濫用や不当廉売,その他不公正な取引方法に対して,事案の特性に応じて迅速かつ的確に対処することを通じて,公正かつ自由な競争を促進していきたいと考えております。
 私からは以上でございます。

質疑応答

(問) 確約手続の関係なんですけれども,法的措置の3分の1を確約計画の認定で占めるような状況になっています。先ほど,効果的で迅速という発言があったと思うんですが,迅速性という点で確約手続に付するということについて,今のところ事務総局としてどうお感じになっていますかというのが1点目と,2点目としては,昨年度コロナ禍に見舞われたわけですけれども,コロナ禍での審査業務ということで,何かお感じになったことなどあればよろしくお願いします。
(事務総長) 確約手続につきましては,多分御質問の趣旨は,確約手続が多いけれども,その分,命令の方は少ないのではないかという前提での御質問かと思います。そのような御意見を聞くこともございますので,そういうことかなと理解いたしました。
 ただ,この確約手続は先ほど申しましたように,公正取引委員会と事業者が協調的にその事案を解明して,違反又は違反の疑いを解消するという措置であります。
 確約手続と命令が,例えば,どちらが緩いとか重いとかそういうことではないと考えておりまして,それぞれの事案に応じて適切に解決できる方法,やり方が選ばれているということかと思います。確約計画で書かれている内容は,排除措置命令で公正取引委員会が命じる内容と同程度又はそれ以上というのが,これまでの運用実績でございますので,これからも事案に応じて確約手続,それから命令の両方を活用していくということになろうかと思います。
 もちろん,確約手続というのは,事業者の方が積極的に事案の解決に取り組むことが前提でありますので,そうでない場合には,しっかりと命令をして,違反行為を排除するということを,これからも変わらずやっていきたいと考えております。
 それから,コロナ禍との関係でございます。これまでコロナ対策ということで,なるべく対面を避けたり,相手方の事情に応じてやり方を調整したりといろいろ工夫したり,立入検査においてもいろいろ工夫してやっておりました。正直なところ,少し心配はあったわけでございますが,実績から見ますと命令件数,事件処理の件数,それから審査の処理期間にしても,少なくとも一昨年度とそれほど違いのない成果が得られておりますし,多様な事件に取り組むことができましたので,結果的に,著しい影響があったということでは幸いにしてなかったかなと思っております。今年度もコロナ禍が続いておりますので,引き続き,審査局でいろいろ工夫しながら問題のある行為については適切に排除するということを進めていきたいと考えております。

(問) 先ほどの2つ目のいわゆるコロナ禍の影響についての質問に対して,幸い件数自体はそう変わらなかったというふうに,総長はおっしゃいましたけれども,一方で,公表はしていないにもかかわらず既に報道されたという意味で,これまでコロナ禍での立入検査については,大人数が集まることで,立入検査の予定が延びてしまったりとか,思ったスケジュールでなかなかできないという面もあったと思うんですけれども,そうすると,つまり最初の入り口の時点が,昨年度は少なかったのかなということで,今年度又は来年度以降の処理件数が下がってしまう,そのような憂慮もあるんですが,それについてはどう思われていますでしょうか。
(事務総長) 将来予測を語ることはなかなか難しいんですけれども,御指摘の点はもちろん間違っていないと思いまして,入口のところ,立入検査をするためにはやはり赴いて,ある程度接触しながらやらなければいけないので,感染の状況とか,緊急事態宣言の状況とか見ながら,いろいろ考慮してやっているというところはあります。それで今年度の結果の方に影響は全くないという予想をするというのはちょっとなかなか難しいかなと思っております。ただ,まだ途中でございますし,一番大切なのは,違反があるのに放置しないということでございますので,できる限り工夫しながら進めていきたいと考えております。
 決意表明みたいな言い方で申し訳ございませんが,今言えるのはこういう点かと思います。

以上

ページトップへ