[配布資料]
インド競争委員会との協力に関する覚書の締結について(令和3年8月6日公表資料)(PDF)
最低賃金の引上げ等に伴う不当なしわ寄せ防止に向けた中小事業者等取引公正化推進アクションプラン(令和3年9月8日公表資料)(PDF)
事務総長会見記録(令和3年9月8日(水曜)13時30分~Web会議形式により開催)
日インド間の協力に関する覚書(MOC)について
本日,私からは,2つのことについてお話しいたします。
まずは,「インド競争当局との協力に関する覚書の締結について」です。
8月6日金曜日に,公正取引委員会の古谷委員長とインド競争委員会のグプタ委員長が,オンラインにて,「日本国公正取引委員会とインド競争委員会との間の協力に関する覚書」に署名いたしました。本覚書は,両競争当局間の協力関係の進展を通じて,互いに競争法の執行を高めることを目的としておりまして,具体的な協力内容として,通報,情報交換,技術協力等を規定しております。
なお,駐日インド大使館のバルマ大使と在インド日本国大使館の宮本公使も,署名式にオンラインにて参加いたしまして,祝辞を述べるとともに,互いに,日印競争当局間の協力関係の更なる進展と,日印経済関係の更なる深化を期待している旨述べました。
公正取引委員会がインド競争当局との覚書を署名した理由といたしましては,両国間の経済関係が拡大している状況,そして,グローバル化に伴う競争当局の連携を深める必要性が挙げられます。第一に,インドには,現在約1,500社の日系企業が進出しておりまして,今後も日系企業の進出は更に増加し,両国の経済関係がより緊密になることが見込まれています。第二に,企業活動のグローバル化・デジタル経済の進展などの経済社会の変化に対応した競争政策を追求するためにも,競争当局間の協力や連携の必要が更に増しています。競争当局間の連携について,インド競争委員会は,例えば,2018年にニューデリーでICN総会を開催し成功させるなど,競争当局間のネットワーク構築に積極的に取り組み,国際的な競争政策の進展に大きく貢献していると認識しています。
このような状況の下,本覚書は,2011年2月に締結されました,「日本国とインド共和国との間の包括的経済連携協定」の競争章で示された協力関係の構築を具体化し,更なる進展を目指すものでありまして,お互いにとって有益なものと確信しています。さらに,公正取引委員会出身の職員が,本年3月から在インド日本国大使館で勤務しております。今後,本覚書を踏まえ,日印競争当局間の協力・連携を一層深めていきたいと考えておりますし,また,国際的な事案に迅速かつ適切に対処していくため,独占禁止協定や経済連携協定等と併せて,必要に応じて,こうした競争当局間での覚書を活用した協力枠組みの構築・実施に取り組んでまいります。
最低賃金の引上げに伴う公正取引委員会の対応について
続きまして,最低賃金の引上げ等に伴う不当なしわ寄せ防止に向けた「中小事業者等取引公正化推進アクションプラン」の公表についてです。
公正取引委員会は,従前から,下請法違反行為に厳正に対処するとともに,違反行為の未然防止の観点から下請法の普及啓発を行うなど,下請取引の適正化に取り組んでおります。
令和3年8月25日には,「中堅企業・中小企業・小規模事業者の活力向上のための関係省庁連絡会議」における「中小企業等の活力向上に関するワーキンググループ」におきまして,最低賃金の改定を含む労務費や原材料費等の上昇などが下請価格に適切に反映されることを促すべく,本年9月の「価格交渉促進月間」の実施に当たって,関係省庁間で連携して取り組んでいくこととされました。
公正取引委員会は,最低賃金の引上げ等に伴い,買いたたき,減額,支払遅延などといった中小事業者等への不当なしわ寄せが生じないよう,取引の公正化を一層推進するため,「価格交渉促進月間」における活動の一環として,本日,「中小事業者等取引公正化推進アクションプラン」を取りまとめ,対策を強化して進めていくことといたしました。本アクションプランは,第一に,下請法等の執行強化,第二に,相談対応の強化,第三に,不当なしわ寄せ防止に向けた普及啓発活動の拡充・強化の3つの柱からなっております。
まず,「下請法等の執行強化」といたしまして,令和3年度の下請事業者向けの定期調査において,最低賃金の引上げ等に伴い特に問題となることが想定される「買いたたき」の指導実績が多い業種やコロナ禍において特に影響が出ているとされる業種向けの調査の拡大,最低賃金の引上げを含む労務費や原材料価格の上昇の影響に関する質問の追加等を行って,下請法違反被疑事実に係る情報収集に関する取組を強化いたします。また,令和3年度における荷主と物流事業者との取引に関する書面調査やその他の優越的地位の濫用規制と下請法に関する実態調査においても,最低賃金の引上げ等に伴う影響や取引先との価格交渉の状況に関する質問を追加するなど,情報収集を積極的に行ってまいります。
さらに,公正取引委員会が親事業者に対して違反行為の改善を求める指導等を行う際に交付する注意喚起文書において,最低賃金の引上げを含む労務費や原材料価格の上昇に関連する注意事項を加え,不当なしわ寄せを行わないよう強く要請を行ってまいります。
次に,「相談対応の強化」といたしまして,最低賃金の引上げ等に伴い,取引先から不当なしわ寄せを受けやすい中小事業者等からの相談を受け付ける「不当なしわ寄せに関する下請相談窓口」を設置し,下請法に関する個別相談への対応を強化いたします。この相談窓口については,利用者の利便性向上の観点から,速やかにフリーダイヤル化を行う予定にしています。また,中小事業者等からの要望に応じ,独占禁止法上の優越的地位の濫用規制や下請法について分かりやすく説明するとともに相談受付を行うためのオンライン相談会も実施いたします。
最後に,「不当なしわ寄せ防止に向けた普及啓発活動の拡充・強化」についてですけれども,最低賃金の引上げにより労務費等のコストが大幅に上昇した下請事業者から単価の引上げを求められたにもかかわらず,親事業者が一方的に従来どおりに単価を据え置いて発注することは,下請法上の「買いたたき」に該当するおそれがあるため,この点について,新しくQ&Aを作成し,事業者への周知徹底を図ります。また,毎年11月の「下請取引適正化推進月間」の開催に併せて本アクションプランの取組を周知していきますとともに,事業者団体等との連携拡大を通じて,全国津々浦々に不当なしわ寄せ防止に向けた取組の状況が行き渡るよう周知活動を拡充いたします。さらに,下請法のより一層の普及啓発を図る観点から,下請法に関する考え方などを分かりやすく示した新しい動画を作成し,ウェブ上で公開します。
公正取引委員会といたしましては,本年9月の「価格交渉促進月間」における中小企業庁をはじめとした関係省庁による取組の成果や,以上申しましたような情報収集の成果も踏まえつつ,下請法違反行為等に対して厳正に対処してまいります。さらに,これらの対応強化の成果を踏まえつつ,今後更なる取組も検討・実施してまいります。
私からは以上でございます。
質疑応答
(問) アクションプランについて,最後におっしゃっていた更なる取組の検討は,どういった方向性が考えられるのでしょうか。
(事務総長) 更なる取組ということで,今,何か具体的に考えているわけではありません。これから,先ほど申しました3つの柱として本日公表いたしました具体的な取組を進めていくわけですけれども,その結果,足りないところやこういうところはまだといったところが出てくるかもしれません。そういうことが出てきたときに,公正取引委員会として取り組むべきものがあれば,新たなことをする,又は既存の取組を更に強化するということを想定して,この「更なる取組の検討・実施」を今から考えているところでございます。
以上