[配布資料]
コネクテッドTV関連分野の実態調査について(概要)(250 KB)
[発言事項]
事務総長定例会見記録(令和5年3月29日(水曜)13時30分~於官房第1会議室)
コネクテッドTV関連分野の実態調査について
本日は、デジタル分野に関する新規の実態調査として、コネクテッドTV関連分野を対象とする調査を開始することについてお話しいたします。
近年、若年層を中心に、テレビの視聴時間が大きく減少する一方、動画配信サービスの利用率、利用時間が増加しております。消費者が動画配信サービスを利用する場合に用いる機器として、インターネット回線への接続機能を有するスマートTVや、テレビをインターネットに接続させるためのストリーミングデバイス等が近年普及しつつあります。これらのスマートTVやストリーミングデバイス等は、「コネクテッドTV」と呼ばれています。
こうした「コネクテッドTV」を通じた動画配信サービスに関しては、デバイス、テレビ向けOS、動画配信サービス、コンテンツの各階層からなるレイヤー構造が存在しており、とりわけテレビ向けOSを提供している世界規模のプラットフォーム事業者の支配力が強まっていることへの懸念などが指摘されております。
仮に、このようなレイヤー構造の中で、動画配信サービス提供事業者が不当に排除されたり、不当に不利益を受けたりすることなどにより、多様で良質なコンテンツを配信するインセンティブが損なわれる場合には、消費者に不利益が生じるだけでなく、コンテンツプロバイダーによる創意工夫の発揮が妨げられるおそれもあります。
このような問題意識の下、動画配信サービスを含むコネクテッドTV関連分野において、例えば、テレビ向けOS提供事業者が、テレビ向けOSを提供する立場を利用して、ホーム画面のランキングやおすすめ表示等を操作し、自社が配信するコンテンツを消費者に選ばれやすくする、また、著しく高額な手数料を徴収する規約変更を一方的に行うなどといった独占禁止法上、競争政策上の問題が生じていないかも含め、コネクテッドTV関連分野の取引実態・競争実態を調査することといたしました。
今後、関係事業者へのヒアリングや、ユーザー向けのアンケートなどを通じて、実態の把握を進めていきたいと考えています。また、公正取引委員会のウェブサイトには、デジタル・プラットフォーマーについての情報提供窓口を設けておりますので、この分野に問題意識をお持ちの事業者の皆様には、幅広く情報をお寄せいただきたいと考えています。
調査を通じて独占禁止法上・競争政策上の問題が認められた場合には、公正取引委員会としての考え方を取りまとめるなど、競争環境の整備に向けた必要な対応を検討していきたいと考えています。
私からは以上です。
質疑応答
(問) 調査期間はどれぐらいを想定されていらっしゃるのでしょうか。
(事務総長) 現時点で、いつ調査が終了するか、あるいは報告書が出るかといった具体的なスケジュールは未定でございます。デジタル市場は変化が速いという特徴がございますので、そういった特徴も踏まえまして、可能な限り迅速に調査を進めていきたいと考えております。
(問) 配布資料を拝見する限り、動画配信サービス提供事業者が、著しく低い利用料を設定するなどして競合事業者を排除することも問題意識として持っているということですが、コネクテッドTVのOS提供事業者における競争状況が今回の調査の一番のポイントと考えていいのでしょうか。
(事務総長) コネクテッドTVを通じた動画配信サービスについて、今後ますます視聴者が増えてくることを前提に、四つのレイヤーそれぞれの実態について、きちんと調べていこうということでございます。それぞれのレイヤー間の取引実態、レイヤーの中における競争状況のほか、レイヤーの縦横を通じた競争状況、これらを全体的に調べていこうというものでございます。その上で今、御指摘がありましたようにOS提供事業者について、今年の2月に公表しましたモバイルOS等に関する実態調査で示したような、コネクテッドTVのOS提供事業者が、その立場を利用することによって、独占禁止法上、競争政策上の問題が生じていないかという観点からの問題意識を記載していますけれども、これに限られるものではないと御理解ください。
(問) スマホだとAndroidかAppleのような感じで分かりやすいのですが、現状分かっていることとして、コネクテッドTVのOSのシェアはどうなっているのかという点、また、モバイルOS等に関する実態調査と同じような大きな問題だという意識で調査されるということなんでしょうか。
(事務総長) コネクテッドTVのOS提供事業者のシェアについて、現時点で確たる数字を持っているわけではございません。デバイスメーカー自身がOSを開発している例や、プラットフォーム事業者がコネクテッドTVのOSを提供しているといった例もあると承知しておりますが、スマホに比べるとコネクテッドTVのOSは、普段、消費者から意識されることが少ないと思います。そのような状況において、サービスの基盤となるOS部分を握ることによって、様々なレイヤーにいろいろな影響を及ぼすという点で、モバイルOSと同じような考え方が適用できるのではないかと思っています。ただ、現時点で直ちに問題が生じていると認識しているわけでもありませんし、市場支配力の強いOS提供事業者が存在していると認識しているわけでもありませんが、OSのシェア等の実態も合わせて、調査できるところは調査していきたいと考えています。
(問) 海外でも、この類いの調査は行われているのでしょうか。仮にあまり海外で調査が行われていないとしたら、今回日本が先陣を切るのは、どういう問題意識からなのかというのを教えていただけますか。
(事務総長) 海外において、今回と同じような視点を持つ実態調査が行われるというのは承知しておりません。他方、冒頭申しましたように、テレビの視聴時間が減って、その代わりにこういった動画配信サービスの利用時間が増えているといった傾向が今後も加速していくであろうということを前提に、例えばその動画配信サービスでも、広告を見ることで無料というサービスもございますので、モバイルOSや、アプリストアと同じようなところもあるかもしれません。そういった点で、まだ市場規模は大きくないのかもしれませんが、世界に先駆けてかもしれませんけれども、早々に実態を把握して、この分野に関しても関心を持っているということを示していきたいということでございます。
(問) 今回の調査の対象事業者数が、どれぐらいの規模になるのかというところを教えてください。それから、資料に「世界規模のプラットフォーム事業者」という記載があり、これにGoogleとAmazonは入るのだろうなと思います。他にも、例えばNetflixも会員数が結構多いので、こちらもプラットフォーム事業者と言えるのかなと思うのですが、その辺りの認識について教えてください。
(事務総長) 調査の対象事業者数については、どのレイヤーに何社いるか、全部で何社いるかということがモバイルOSほど単純ではありませんし、今ここで挙げることは難しいところがございます。御指摘がありましたGoogleやAmazonは、コネクテッドTV向けにOSを提供しているということは承知しております。他にも関係するストリーミングデバイスでも同様のものがあるかもしれませんが、現時点で御指摘の2社は入るということになると思います。
(問) 問題意識の例として、「著しく高額な手数料を徴収する規約変更を一方的に行う」と配布資料にありますが、これは、例えばGoogleとかAmazonの画面に、その動画配信サービスが表示されるような手数料や広告の手数料ということでしょうか。動画配信サービス提供事業者は、コネクテッドTVのOS提供事業者に対して、一般的にどのような手数料を支払っているのでしょうか。
(事務総長) どういった手数料を支払っているかということも含めて、今回の調査により実態把握に努めていきたいと思います。また、もう一つはそういう広告に関して、手数料を取る、あるいはその手数料率を引き上げるといった規約変更に関する話も聞きますので、その辺りを念頭に置いて調査していきたいと思います。いずれにしても、実態の把握と、競争法上の問題の評価といったことになりますので、まずはその事実関係をしっかりつかむというのを念頭に置いて調査していきたいと思います。
(問) 今回の実態調査は、海外ではあまり例がない調査ということなんですが、そもそも調査を始めようとされたのは、コネクテッドTVに搭載されているOSとしてGoogleやAmazonのものが多いとか、Netflixといった海外のサービスの利用者が多いということで、国内の事業者が不利益を被るようなことがあるのではないかということが念頭にあるんでしょうか。
(事務総長) 動画配信サービス提供事業者の中にも、御指摘のNetflixのような海外の企業以外にも、国内の企業もありますし、必ずしもプラットフォーム事業者だけがコネクテッドTVのOSを提供しているものではありません。御指摘のような国内、国外ということでなく、正にこの分野において、動画配信サービス提供事業者間の競争が歪められないか、そのユーザーである消費者などが不利益を被らないかといった観点から、実態調査をしたいということでございます。
(問) コネクテッドTVにおける動画配信サービスとなると、反対に、例えばテレビ局やコンテンツプロバイダーが実際に動画配信サービスを行って、自分たちの動画配信サービスでしか制作したコンテンツを流さないといった競争的なイシューもあるのかなと思ったのですが、そういったことも調査の対象になるのでしょうか。
(事務総長) 今の御質問の趣旨を的確に捉えているかどうか分かりませんけれども、コンテンツプロバイダーが自社の動画配信サービスでしかコンテンツを提供しないということだとすると、それは動画配信サービス提供事業者が、コンテンツプロバイダーに委託して制作したコンテンツを独占配信するということかと思いますが、それ自体が直ちに競争上問題になるものではないと思います。ただ、何か特定の囲い込みをするとか、そういったことがあればまた別なんでしょうけれども、現時点で問題意識として持っているわけではないということです。
以上