ホーム >報道発表・広報活動 >事務総長定例会見 >令和6年 >7月から9月 >

令和6年9月18日付け 事務総長定例会見記録

令和6年9月18日付け 事務総長定例会見記録

[配布資料]

ファイルダウンロード 新規ウインドウで開きます。企業コンプライアンスに関する実態調査の開始についてpdfダウンロード(151 KB)

[発言事項]

事務総長定例会見記録(令和6年9月18日(水曜)13時30分~於官房第1会議室)

公正取引委員会、米国司法省反トラスト局、米国連邦取引委員会「反競争的行為に係る協力に関する日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の協定」25周年記念会合について

 本日は二つのテーマがございます。一つ目は、日米独占禁止協力協定25周年の関係です。それから、2つ目が、企業コンプライアンスに関する実態調査の開始のお話です。
 一つ目のテーマですが、「反競争的行為に係る協力に関する日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の協定」の25周年記念会合の開催についてお話しします。本協定は1999年に締結され、今年で25周年を迎えます。今回の会談は、ワシントンD.C.で行われ、公正取引委員会から青木委員、米国司法省反トラスト局からジョナサン・カンター局長、米国連邦取引委員会からベドヤ委員が出席しました。これまでの協力関係を振り返るとともに、今後も競争法上の課題について連携して取り組んでいくことを確認いたしました。当委員会といたしましては、競争法分野における日米の協力関係について再確認する大変有意義な機会であったと受け止めておりまして、引き続き、両国の競争法の効率的な執行や健全な市場醸成のため、米国と緊密に連携していきたいと考えております。
 

企業コンプライアンスに関する実態調査の開始について

 それから、二つ目のテーマですが、企業における独占禁止法コンプライアンスに関する実態調査の開始について御案内いたします。
 公正取引委員会は、事業者による独占禁止法コンプライアンスの推進を通じ、競争的な事業活動が自律的に行われる環境を実現するため、これまで事業者による独占禁止法コンプライアンスに関する取組の支援に取り組んでまいりました。その一環として、昨年12月には、「実効的な独占禁止法コンプライアンスプログラムの整備・運用のためのガイド」を公表しております。他方で、近年においても、独占禁止法違反行為を行った事業者に対する排除措置命令におきまして、コンプライアンス体制の構築を含む再発防止策の実行が命じられるなど、独占禁止法コンプライアンスが実効的に機能していないことがうかがわれる事案が引き続き発生しております。そこで、公正取引委員会はこのたび、事業者による独占禁止法コンプライアンスに関する取組の更なる実効性の向上に向けまして、東証プライム上場企業、今年の8月末現在で1643社ということでございますけれども、こういった企業などを対象に、独占禁止法コンプライアンスに関する実態調査を行うことといたしました。上場企業を対象に独占禁止法コンプライアンスに関する実態調査を実施するのは、平成24年以来12年ぶりのことになります。
 調査の内容でございますけれども、お手元に「企業コンプライアンスに関する実態調査の開始について」という資料を配付しておりますが、こちらを見ていただきますと、左側に①とありまして、「独占禁止法コンプライアンスプログラムの整備・運用全般」というのがございます。それから、こういった項目のほかに、右側に3点記載しておりますけれども、②から④にありますように、最近の動きへの対応状況を確認したいと考えております。
 具体的には、②につきましては、近年、AIなどのIT技術の飛躍的な発展に伴いまして、アルゴリズムやAIを利用した独占禁止法違反行為の発生が懸念されているところであります。現時点において、このような独占禁止法違反行為の未然防止、早期発見に向けて何らかの取組を実施しているかという点を確認をしたいと思っております。
 一方、独占禁止法違反行為の発見に向けた監査の際に、企業、事業者の方でAIを活用するなど、コンプライアンスに関する取組においてもこのような技術を活用することが考えられます。そのような取組を実施しているのかどうかという点についても確認をしたいと考えております。
 また、③、④に関しましては、労務費などのコスト上昇を踏まえた適正な価格転嫁に向けた取組のほか、カルテル・談合以外の独占禁止法違反行為に係るコンプライアンスの取組も重要性を増してきておりますので、これらの点につきまして、違反行為の未然防止、早期発見に向けて何らかの取組を実施しているか否かといった点について調査することとしております。
 本実態調査では、こうした最近の動きへの対応状況も収集、分析した上で、独占禁止法コンプライアンスの更なる実効性の向上に向けた方策の提示につなげていく、こういった点が重要と考えております。また、本実態調査の結果を踏まえまして、「実効的な独占禁止法コンプライアンスプログラムの整備・運用のためのガイド」の改定も予定をしております。
 今後、10月上旬から11月中旬にかけて、東証プライム上場企業の方々に対してウェブアンケート調査を実施する予定ですので、是非、この調査の趣旨を御理解いただき、御協力いただきたいと考えております。
 私からは以上です。
 

質疑応答

(問) 企業コンプラアインスの実態調査について、東証プライムの上場企業を対象としているとのことですが、こういう大きい企業を選んだ理由について教えてください。
(事務総長) 企業の中でも、東証プライム上場企業を対象とした理由については、大きく2点ございまして、まず1点が、東証プライム上場企業が、それぞれの商品、サービスの市場において果たしている役割は非常に大きいものがあり、東証プライム上場企業において独占禁止法違反行為が発生した際の影響も大きいと考えられます。そのため、まずは東証プライム上場企業を対象に、独占禁止法コンプライアンスについて周知啓発していくことが重要であるということが第1点でございます。
 また、2点目といたしまして、上場企業におきましては、金融商品取引法上、財務報告に係る内部統制報告書の作成、提出が義務付けられておりますけれども、独占禁止法を含む様々な法令違反などに関するコンプライアンスプログラムの整備・運用に関しても、一定程度取組が進められているものと考えられます。いわば、コンプライアンスプログラムの整備・運用について模範となっていただく東証プライム上場企業における最新の取組事情を収集、分析した上で、その結果について中小企業などを含むあらゆる企業に向けて周知啓発していくことが有意義であると考えております。
(問) 今回、アルゴリズムについても対応を聞くということですが、デジタル技術が発達して、アルゴリズムの活用が広がっているということで、総長として、どういう点が独占禁止法上のリスクが高まっているとお考えでしょうか。
(事務総長) 近年、競争事業者の価格の調査、あるいは自社商品、サービスの価格設定にアルゴリズムが活用されるようになっているという状況にございますけれども、そういった状況に伴いまして、カルテルの合意や実施がより容易になったり、あるいは何らかの意思の連絡の下で、特定のアルゴリズムの販売者がそれぞれの価格を同調させるようなアルゴリズムを複数の競争事業者に提示をするといった行為、アルゴリズムの並行利用などと言われたりもしますけれども、こういった新たな形態の協調的行為というのが出現することも考えられます。このようなアルゴリズムによるカルテルにつきましては、企業が不用意に関与してしまうケースも想定されるため、アルゴリズムによるカルテルに対する現時点における企業の対応状況や、今後の対応の方向性について調査を行いたいと考えております。ただ一方で、企業の側でもアルゴリズムを使っているというケースもあると思われ、独占禁止法違反行為の発見に向けた監査の際にAIを活用している可能性もございますので、そういった状況についても調査を行いたいと考えております。
(問) 昨年12月に、コンプライアンスプログラムの作成のガイドを作成されたと思いますが、こちらについての周知をどのように進めていらっしゃるのか、また、今回の報告書を受けてどういった形でアップデートをしていきたいと考えているのか、その方向性について現時点でのお考えがあれば教えてください。
(事務総長) ガイドの周知につきましては、これまでも様々な関係者に説明会などを行って周知をしております。また、どういった内容のアップデートや改定を考えているのかという点については、もちろんこれは実態調査の結果次第ということではございますけれども、現時点では次のような点が、アップデートのポイントとしてあり得ると考えております。
 まず第1は、AIなどのIT技術を活用した最近の取組事例の追加をすること、第2に、中小企業向けの記載を充実化すること、それから第3に、行動規範、あるいは、独占禁止法コンプライアンス基本規定、独占禁止法コンプライアンスマニュアルのひな型がございますけれども、これらの記載のポイントなどを追加すること、それから、第4に、カルテルや談合以外の違反行為類型に特有のコンプライアンスに関する取組事例を追加することが考えられると思っております。
(問) 実態調査のスケジュール感について、10月の上旬から11月中旬にかけてアンケートを実施した上で、いつ頃報告書を公表するのでしょうか。また、ガイドラインの改定があるとしたらいつ頃になるのかということを教えてください。
(事務総長) 現時点で明示的に決まってるわけではございませんが、実態調査の結果を踏まえて、来年の夏頃には報告書を公表することを考えております。また、報告書の作成作業と並行して、独占禁止法コンプライアンスガイドの改定作業も進めていくことを予定しておりますので、ガイドの改定版も報告書と同時期にできれば公表したいと考えております。
(問) 実態調査における質問事項について、配付資料の①の現在の独禁法のコンプライアンスの整備・運用状況について確認するということは理解できますが、例えば配付資料の②のアルゴリズムによる独禁法の違反行為への対応について、これは価格をいろいろな形でウォッチできるということで、これまでの事件の中でも他社と価格をウェブサイト等で監視していたという事例もあったと思いますが、どういうアルゴリズムを採用してるのかというのはIT部門や別の部門になると思われるので、法務部だけでなく全社的な取組について報告してもらうという理解でよいでしょうか。
(事務総長) コンプライアンスプログラム自体は、恐らく法務部で作成されていると思いますけれども、それを実施しているのは全社的であると思われます。先ほどのアルゴリズムの関係につきましても、アルゴリズムに関連するような協調的行為があるかどうかということを、どのように発見するのかというメカニズムを作られるのは法務部と思いますけれども、そのメカニズムをどのように生かしていくのかというのは、全社的な取組になると思いますので、どういう体制を作っているのかという点や、どういう取組を行っているのかという点について、恐らく法務部で取りまとめられると思いますので、そういった回答をお願いしたいと考えております。
(問) 例えば、談合やカルテルを発見するためにフォレンジックの体制を取っているところもあれば、時々導入するというところもあるかもしれないですが、それは恐らく法務部がよく御存知かと思いますけれども、最初の説明に出てきた実務の中でアルゴリズムをどのように使っているかとなると、発想としても経営企画や別の部署になるのかなという印象を持ちますが、聞くのは法務部を中心に聞くという理解でよいでしょうか。
(事務総長) 我々から法務部にお願いしますということは言わないですけれども、先ほどの例でいえば、カルテルや談合などの協調行為が行われてるかどうかということについて、実際に行為が行われているのは営業部門かもしれませんけれども、それをどのように発見していくのかとか、それをどのようにコントロールしていくのかというのは法務部で担当されてるのかなと思います。アルゴリズムの関係につきましても同じような問題かと思いますので、実際にアルゴリズムを使って行為を行っているのは営業部門などの法務部以外のところかもしれませんが、そういったところで協調的行為などの違反行為が起こらないようにどのように未然防止をされているのかというような社内の体制や取組をお聞かせいただければありがたいと考えております。
(問) 労務費の価格転嫁となると、実際に担当するのは営業部門などになり、基本的に民民のやり取りとなるため、営業部門などが決めていたことかと思いますが、近年、公取委は価格転嫁について非常に熱心に努力されており、これまですごくたくさんの実態調査が行われていたので、いろいろ社内での調査も進んでるところも多いかと思います。例えば、労務費などの転嫁に関して、サプライヤーとどのような協議をしてるのかという点についても、大きく幾つかの質問項目にわたって聞くという理解でよいでしょうか。
(事務総長) 価格転嫁そのものが行われてるかどうかという観点からの調査ではなく、適正な価格転嫁がしっかり行われてるかどうかという点について社内の体制ができていますか、あるいはどういう取組が行われていますかといった観点からの質問になりますので、質問項目はそんなに多数あるわけではありません。
(問) 配付資料の④の点について、典型的なコンプライアンスとしては、談合やカルテルが多いと思いますけれども、私的独占とか不公正な取引方法に関しては、どのような質問で聞くのですか。
(事務総長) 通常、コンプライアンスプログラムで皆さんが想定されるのはカルテルや談合が非常に多いと思いますけれども、必ずしもそれだけでなくて、再販売価格の拘束や優越的地位の濫用などの行為もあり得ると思いますので、そういった談合やカルテル以外の行為について、その問題行為を未然に防止するためにどのような取組や体制を取られているのかといった点をお聞かせいただくということでありまして、これも詳細にわたるような質問項目にはならないと思います。

以上

ページトップへ