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令和7年7月23日付け 事務総長定例会見記録

令和7年7月23日付け 事務総長定例会見記録

[配布資料]

第230回独占禁止懇話会の議事概要の公表について

[発言事項]

事務総長定例会見記録(令和7年7月23日(水曜)13時30分~於官房第1会議室)

公正取引委員会の創立記念日について

 私からは、今日は2点お話をしたいと思います。
 一つ目は、今日から3日前のことですけれども、7月20日は公取の創立記念日でございました。我が国の独占禁止法は78年前の昭和22年4月14日に公布されまして、同じ年の7月20日に施行されたものであります。この独占禁止法の施行をもって公正取引委員会が誕生したということになりますので、独占禁止法の施行日である7月20日を創立記念日としております。
 我が国の独占禁止法は戦後、財閥の解体をはじめとした経済の民主化が図られる中で、これを担保する制度として制定されたものです。独占禁止法の施行以前において、競争法を有している国はカナダとアメリカのみでしたので、我が国の独占禁止法は、世界で3番目に長い歴史を有する競争法であるということになります。
 今日における競争法の世界的な広がりについて見ますと、例えば1990年時点、実はこの年は私が公取に入職した年なのですが、この年時点においては25の国・地域にしか競争法が存在しなかったのですけれども、2020年時点では130以上の国・地域に拡大しておりまして、競争法やその根底にある考え方というのは、今日において、グローバルスタンダードになったと言っても差し支えないのではないかと考えているところでございます。もっとも、経済情勢あるいは国際情勢などあらゆることが目まぐるしく変化するこの時代環境の中におきまして、引き続き、公正取引委員会における様々な活動について、国民の皆様の御理解を賜るには、公正取引委員会として不断の努力をしていく必要があるものと考えております。現在の所管法の運用はもちろん、スマホ新法や改正下請法の着実な施行、また様々な提言の実施や事業者などからの相談への対応、更には各種広報、広聴活動といった取組を一つ一つ、着実に進めることで、今後の80年目の創立記念日、さらにその先の100年目の創立記念日が迎えられるような礎を築きたいと考えているところでございます。以上が1点目です。

第230回独占禁止懇話会の議事概要の公表について

 それから二つ目ですけれども、6月27日に開催しました第230回独占禁止懇話会の概要についてお話をしたいと思います。独占禁止懇話会は我が国経済の変化に即応して、競争政策を有効かつ適切に推進するために、公正取引委員会が国民各層の意見を広く聴取するとともに、独占禁止法の運用について、国民各層の理解を深めることを目的として、昭和43年11月以降開催しているものです。今回の独占禁止懇話会では、三つの議題について、事務総局から御説明をいたしました。本日、公表いたしますお手元の議事概要の中から、各議題における主な御意見等を御紹介いたします。
 一つ目の議題の「タクシー等配車アプリに関する実態調査」では、議事概要1頁目の三つ目の○にあります、「今後、日本版ライドシェアを始めとして、タクシーの利用の形やサービスの提供方法が変化していくと思うが、事業者間の競争が優先されることで、利用者にとって公正と感じられないような事業環境とならないように、公正取引委員会には是非監視を続けていただきたい。また今回の実態調査でヒアリング対象となった消費者団体からはどのような意見があったのか。」との御意見・御質問を頂きまして、これに対して事務総局からは、「例えば、小さい子連れの親子が配車アプリをよく利用するようだが、駅前までタクシーを配車できず、駅から離れた場所で乗り継ぎが不便であるといった意見、優先配車サービスに関して、タクシーの運賃等に最大980円が上乗せされることについて消費者の理解が得られているのかといった意見などがあった。」旨を御説明したところであります。
 それから、二つ目の議題の「企業における独占禁止法コンプライアンスの向上に向けた取組」では、議事概要3頁目の二つ目の○にあります、「法律実務に携わる中で、各企業における経営トップの在り方にはばらつきがあると感じている。独占禁止法に限らずコンプライアンス全般について、経営トップの方から「自分が言及する必要があるのか」といった反応が出ることがある。このような場合において、社内のコンプライアンス担当者や、法務担当者がそれでも対応してほしいとはなかなか言いづらい。そのため、独占禁止法コンプライアンスガイドに、経営トップの関与について記載いただくことで、「公正取引委員会のコンプライアンスガイドにも記載されている」と担当者が言えることは、貴重であると思っている。独占禁止法だけでなく、フリーランス法や中小受託取引適正化法についても公正な取引を実施していくために、経営トップのコミットメント・関与について、今後更に促していただけると大変ありがたい。」といった御意見を頂きました。
 それから、三つ目の議題の「フードサプライチェーンにおける商慣行に関する実態調査」では、議事概要3頁目の一番下の○にあります、「説明いただいた5つの商慣行のうち、特に3分の1ルールなどは消費者側の理解とともに進めていくことが大事だと改めて実感した。こうした商慣行は食品ロスの原因となることに加えて、商品の配送においても、課題が山積している物流問題の原因の一つにもなっていると思う。業界に根強く残る商慣行を改善していくためには、個々の違反行為の摘発よりも、業界全体で思い切った対策を実施することが必要となるのではないかと思っている。今回の実態調査に対する関係事業者団体における今後に向けた反応はどのようなものだったのか、教えていただきたい。」といった御意見・御質問を頂き、これに対し、「例えば、事業者団体から、3分の1ルールを2分の1ルールに改めたり、3分の1ルールを厳格に運用しないように見直したりする動きがある一方で、4分の1ルールや5分の1ルールなどもっと厳しい納品期限を強いられることもあり、報告書を公表することによって今後の取引改善につなげることができるといった意見もあった。」旨の説明をしたところでございます。
 公正取引委員会といたしましては、今回頂いた御意見なども踏まえ、今後とも、競争政策を有効かつ適切に推進してまいりたいと考えております。
 私からは以上です。

質疑応答

(問) この3分の1ルールについて、農林水産省とか消費者庁でもかなり問題視されているところ、実際、公取委として今どういう取組をしているのか、もう少し詳しく教えてもらえますか。また、商慣行をどうクリアしていくのかも併せてお願いします。
(事務総長) 3分の1ルール、あるいはその他フードサプライチェーンでの商慣行の問題につきまして、先ほど私が御紹介しましたように公取で行った実態調査の内容を独占禁止懇話会で御紹介しました。実態調査自体は、今年の5月に公取で公表しているものです。その中で、3分の1ルールでありますとか、リードタイムが短い問題であるとか、あるいは日付逆転品の納品の禁止とか5つのポイントを挙げて、こういったものが独占禁止法上の問題になり得るといった指摘を行ったところです。
 公取委の観点は、独禁法上の問題になるかどうか、競争政策上どうなのかという観点になりますので、なかなか直接消費者の行動に働きかけるというところにはいかないわけですけれども、今回の調査で言えばBtoBのところを中心として、独禁法上問題になるようなことは是非見直してほしいということで、例えば、事業者団体に対して報告書の中身を周知するであるとか、いろいろな説明会の場で説明していくとか、そういったことを今後もやっていきたいと思っているところでございます。
(問) この数年で何か摘発したケースというのはあるのでしょうか。
(事務総長) 今おっしゃられた3分の1ルールに関してということでは、特になかったかと思います。
(問) この問題はずっと言われ続けてまして、農林水産省も消費者庁が言ってもなかなか直らない。やっぱり公取みたいな強制力のあるところが、という気もするのですが、その辺どうでしょうか。
(事務総長) 3分の1ルールの問題自体は、かなり前から言われていると思うのですが、それが独禁法の観点で問題になり得るというところは、まだなかなか世の中に浸透していないのだと思います。もちろん「3分の1ルール=独禁法上の問題」ということではなくて、場合によりけりの部分はどうしても残るのですが、3分の1ルールもやり方によっては独禁法上の問題になるということを今回明確にしたことによって、注意喚起を行っていき、それでもやはりこういった慣行によって優越的地位の濫用などの問題が見られるということがあれば、そこはしっかり厳正に対処していくということになっていくかと思います。
(問) アメリカの関税について、一部報道で合意したという報道があります。関税を巡っては、スマホ新法が非関税障壁だというような主張も一部であり、情報が錯綜していますが、結局、今のところ影響はないということでよいのでしょうか。
(事務総長) 4月、あるいはもう少し前から、アメリカの関税の問題が出ておりますけれども、スマホ新法自体は昨年の6月に成立して、今まさに下位法令やガイドラインの整備を行っているというところです。そのプロセスで、対象となる事業者からもいろいろ意見をもらいながら進めているところですが、今のところ関税交渉の文脈で、何かスマホ新法の話が出ているというふうには私は承知しておりませんので、そこは影響なく、いろんな施行準備を進めていくというところかと思っております。
(問) 関税の関連で、一部自動車関連のメーカーが下請事業者に対して関税の一部負担を求めるような報道もありますけれども、そういう部分というのは、公取さんとするとやっぱり厳しく目を光らせていく部分になるのでしょうか。
(事務総長) 既に関税が課されている部分もありますが、例えば、輸出企業がその関税を負担する場合に、その負担のしわ寄せが、その企業の国内のサプライチェーンの他の事業者に行くということが懸念としてあるというところだと思います。今、政府全体としても価格転嫁の取組を一生懸命やっているところですが、そういったことが生じますと、価格転嫁の動き自体が阻害されることになりかねないというところがございますので、私が今申し上げたようなしわ寄せによって、困っている事業者が生じていないかどうかというのは、よく情報収集をしていきたいと思いますし、問題があれば、しっかり対応していくということになろうかと思っております。
(問) 創立記念日の関連で教えてください。参院選では、各党とも国民の生活の苦しさに基づいた訴えが多かったと思います。そういう中で、独禁法で企業を取り締まる当局として、国民の物価高による生活の苦しさを踏まえた大方針といいますか、審査の大方針がもしあれば教えてください。
(事務総長) 経済情勢ももちろん見ながら、法執行はしていく必要があるわけですけれども、まずは基本として、我々は競争を歪めるような行為があれば、あるいはマーケットを支配するような力が濫用されるようなことがあれば、そこはしっかり対応していき、それを排除するようにするというところだと思います。例えばカルテル、談合で言えば、カルテルや談合によって価格が人為的に引き上げられるということは、地方公共団体を含めた発注者、あるいはその延長線上にある一般消費者にとっての不利益というところがあるわけですので、そういったカルテルや談合を含めてこれまでも厳正に対処していたところですけども、これからも一層厳正に対処していくということは変わらずやっていきたいと思っております。

以上

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