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令和7年7月30日付け 事務総長定例会見記録

令和7年7月30日付け 事務総長定例会見記録

[配布資料]

なし

[発言事項]

事務総長定例会見記録(令和7年7月30日(水曜)13時30分~於官房第1会議室)

欧州委員会との協力取決めへの署名について

 本日は、欧州委員会の二つの当局との協力取り決めへの署名について、それから、スマホソフトウェア競争促進法の全面施行に向けた準備の状況についてお話をしたいと思います。
 まず1点目ですけれども、先週の7月23日に、当委員会と、欧州委員会の通信ネットワーク・コンテンツ・技術総局(通称DG-CNECT)、それから、競争総局(通称DG-COMP)との間で、スマホソフトウェア競争促進法とEUのDMAに関する協力取決めへの署名が行われたことについてお話しいたします。
 欧州委員会は、DMA、日本語ではデジタル市場法と言いますけれども、デジタル市場法を2022年の11月から運用しております。当委員会はスマホソフトウェア競争促進法の施行準備の参考とするため、定期的なウェブミーティングや当委員会職員のDMA担当部署への派遣などを通じて、欧州委員会との間で情報の収集・知見の共有を積極的に行ってきましたところ、本取決めは、日EU当局間のこのような協力関係を維持・強化させようとするものです。
 なお、本取決めへの署名と同日に東京で開催されました日EU定期首脳協議の場で交わされた両首脳による共同宣言におきましても、本取決めの署名を歓迎する、との文言が盛り込まれております。
 公正取引委員会は、独占禁止法のみならず、スマホソフトウェア競争促進法に関しても、欧州委員会ほか各国当局との間での協力関係を進展、深化させていくことで、デジタル分野におけるイノベーションの活性化や競争環境の維持につなげてまいりたいと考えております。

スマートフォンにおいて利用される特定ソフトウェアに係る競争の促進に関する法律第三条第一項の事業の規模を定める政令等の一部を改正する政令等について

 それから2点目ですけれども、昨日公表しましたスマホソフトウェア競争促進法の政令・公取委規則・指針の成案の公表についてお話しいたします。
 本法の規制対象となる事業者を指定するための規定は昨年12月に先行して施行されており、今年3月には指定事業者として、Apple Inc.、iTunes株式会社及びGoogle LLCの3社を指定しております。そして今年12月18日には、指定事業者に対する禁止行為など、本法の規定が全面的に施行される予定です。
 本法の全面施行に伴い必要となる政令・公取委規則・指針については、5月15日から6月13日までにかけて意見公募手続を実施するなど検討を進めてまいりましたけれども、昨日29日に、これらの成案及び意見公募手続の結果を公表いたしました。
 本法の円滑な全面施行に向けては、指定事業者をはじめとする関係事業者等において本法の内容を十分に把握していただきながら、法遵守のための取組や準備等を進めていただく必要があります。そこで、今回公表したスマホソフトウェア競争促進法に関する指針において、本法の禁止行為や正当化事由に係る想定例を100以上記載するなど、本法の運用に当たっての公正取引委員会の考え方を明確化しているところであります。
 公正取引委員会では、法律の全面施行に向けて、引き続き、指定事業者を含めた関係事業者等との間での緊密なコミュニケーションを継続するとともに、関係省庁とも十分に連携しながら、実効的な法運用に向けた準備を実施してまいります。また、スマホで利用するブラウザや検索アプリについての選択画面の表示のように、消費者の皆様に広く関連する内容を含めまして、法律の普及啓発のための広報を着実に進めてまいりたいと考えております。
 私からは以上です。

質疑応答

(問) 1点目と2点目のテーマそれぞれについて質問があります。
 まず1点目についてですが、発表された内容を見ると、これまでもしてきたような協力関係なのかなと思われるところもあるのですが、改めて協力の署名にサインしたというのは、独禁法では既に協力関係があったけども、スマホ法においてはなかったから、それを法律的に明確化するという意味があるのでしょうか。あと、どのような効能があるのか教えてください。
(事務総長) 御指摘の点、1つ目はおっしゃったように、これまで公取で言えば独禁法、広く言えば競争法についての協定というのが日本とEUの間にあったわけですが、今回については、デジタル市場に関して新しく導入された規律、日本で言えばスマホの新法、EUで言えばDMAについて、これらに関連した様々な協力関係を具体的に明文化するというのが意味としてはあるということだと思います。
 また、そういうふうに具体的に明文化することによって、これまでも存在している協力関係を今後も維持していくということ、それから、取決めで記載されているような様々な協力の形態とかツールとか、そういったものを明確化して、こういったものが利用可能であるということを明らかにしていくということで、引き続き緊密な協力を採っていくということがクリアになっている点が効果といいますか、意義だと思っております。
(問) 協力の中身では、情報の交換ということが大きな柱になっているかなと思います。それぞれの法域における法執行の運用については、企業の秘密に関わるところもあるわけですが、ヨーロッパではプリビレッジがあるので秘密が守られてきたけども、EU外に出ていくと守られる保証がないという中で、事業者の許可を得たものについて共有するというふうに書かれています。そうすると、そんなに企業側が困るところもないのかなという気もするのですが、情報の共有について、どういう程度の情報共有が行われることになりそうと言えるのか、そして、その中身によっては、当局にとっては便利だけれども事業者にとっては非常に困ることもあるであろうこともあるのかなという気がするので、その辺についてお話しできる範囲で結構ですので説明をお願いします。
(事務総長) 情報共有に関しては規定上も明確にしていますけれども、ノンコンフィデンシャル、非機密情報の範囲での情報交換ということで規定しておりますし、調査対象事業者から得た機密情報という意味では、提供元が明示的に合意した場合を除いては相手方に提供しないということも明らかにしているところであります。したがって、今回の取決めによって、何か利用者として提供あるいは共有してほしくないような情報まで新たに情報交換しようとするものではないということになります。
(問) それでは、規制される側としては、そんなに恐れることはないということですか。
(事務総長) 今回の取決めによって、新たに何か相互に義務を負ったりとか、あるいは当局間以外の第三者に対して何かオブリゲーションを負ってもらうということはないということです。
(問) 2点目のスマホ新法について教えてください。禁止行為について、知財に守られている場合には、5条から9条まで違反しないと判断することとなると書かれています。これはアップルに配慮した結果だったのかなというふうに読めるわけですが、この規制が過剰な緩和にならないという理由について御説明いただけますか。
(事務総長) 知財に関する考え方というのは、独禁法でも別途規定があります。スマホ新法も、独禁法を補完する位置付けということで新しく成立しているということになりますので、そういう意味では、独禁法と考え方が変わるわけではなく、その延長線上で考えていくという整理だと思っております。
(問) ただ、もしスマホのソフトウエアに関して、特にアップルなんかが知財でがちがちに守られていたとしたら、この法律によって達成しようとする競争環境の整備という目的とコンフリクトが生じる場合があるかと思うのですが、その辺はどのように判断するのでしょうか。
(事務総長) まず独禁法の規定があり、独禁法における考え方が基本的には適用されます。知的財産権の行使と認められないような行為がもし見られた場合には、たとえ知財に関連する行為であっても、場合によっては独禁法に違反することがあるのと同じように、今回の新法でも問題になることはあるということになるかと思います。したがって、考え方としては、これまでの独禁法の運用と変わるわけではないということだと思います。
(問) ということは、対象事業者が知財を理由として制限行為をしているのだという議論をしてきた場合、その中身について個別具体的に当局としては検討していくということになるのでしょうか。
(事務総長) そうです。具体的には個別に判断していくということになると思います。
(問) 冒頭の発表と別件で恐縮ですが、スタートアップ業界におけるハラスメントと公正な取引の在り方を巡る公取委さんの対応についてお伺いさせてください。
 去る6月11日に起業家さん達でつくるスタートアップユニオンが、公取委さんなどに申入れをしたと聞いています。そこでは、ベンチャーキャピタルなどから女性起業家に対してのセクハラが多発している実情があって、ユニオンさんとしては、加害者、黙認者同士の擁護・団結、加害や黙認をすることで優位的な取引を行う行為ですとか、被害者への不当な要求、取引の停止、集団への無視や冷遇などの取引制限は独占禁止法違反に該当しているのではないかと指摘しています。この件に関して、まず公取委さんとしてはどのように受け止めているのか、また、現在何か対策を強化するなどしているのかといった検討状況について教えてください。
(事務総長) まず、個別の事案についてコメントすることは難しいのですが、独占禁止法の一般論として申し上げますと、優越的地位の濫用というのが一つ関連する規定ということになります。独占禁止法は、事業者が自己の取引上の地位が相手方に優越していることを利用して、正常な商慣習に照らして不当に取引の相手方に不利益を与えるようなことは、事業者間の公正かつ自由な競争を促進するという観点から、優越的地位の濫用として禁止をしています。
 御指摘があったようなスタートアップ事業者に関連してのハラスメント行為ということでありますけれども、いわゆる個人の人格権などを侵害する不法行為ということでありますので、基本的には、事業者間の公正かつ自由な競争に関する問題として独占禁止法上の優越的な地位の濫用になるものではないというふうに考えております。

以上

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