[発言事項]
事務総長会見記録(平成22年2月24日(水曜)13時30分~ 於 官房第1会議室)
[発言事項]
ABA・IBAカルテルワークショップ及びOECD競争委員会2月会合について
(事務総長) 1点目は,ABA・IBAカルテルワークショップとOECD競争委員会の2月会合についてであります。
2月10日から12日までパリにおきまして,ABA・IBA共催の国際カルテルワークショップが開催されまして,公正取引委員会からは後藤委員と第四審査長が出席しております。ABA,IBAとは,ABAが全米弁護士会,それからIBAが国際弁護士会ということでありまして,この両者が共催して国際カルテルワークショップを2年に1度,国際カルテルへの対処等を議題として各国競争当局のトップ及び審査実務担当者,あるいは競争法に詳しい弁護士や裁判官が出席しまして,それぞれの取組状況等を紹介するという国際会議でありまして,出席者も300名を超える大規模なものです。
このワークショップでは,毎回,主要国の競争当局トップによるラウンドテーブル討議が行われておりまして,そのほか,国際カルテルの仮想事例に基づきまして各国における審査の状況や競争当局間の審査協力等に関しましてロールプレイング形式で紹介をするというプログラムを3日にわたって開催しているものであります。
今回のラウンドテーブルでは,日本,米国,EU,英国,カナダ,オーストラリア,韓国,ブラジルといった8か国によって,このラウンドテーブルが開催されまして,公正取引委員会からは後藤委員が,我が国の最近のカルテルについての取組についてプレゼンテーションを行いました。それから,ロールプレイング方式のプログラムには第四審査長が出席しまして,日本の弁護士の出席者と一緒に日本における事件審査の状況の紹介等を行ったということであります。
また,その翌週の2月15日から19日にかけまして,同じくパリにおきまして,OECD競争委員会の2月会合が開催されまして,公正取引委員会からは,前週に引き続きまして後藤委員が出席しております。
今回の会合では,「銀行業における競争,集中及び安定」というテーマで討議が行われたほか,OECD加盟国以外の国,地域からも参加を募りまして,「競争に係るグローバルフォーラム」が開催され,「国家補助と競争」や「公共調達と入札談合」をテーマに討議が行われたということであります。
公正取引委員会といたしましては,こうした会合に積極的に参加し,国際協力の分野についての進展に協力・貢献をしていきたいと考えております。
競争政策研究センター第7回国際シンポジウムについて
(事務総長) 2点目でありますが,これは,CPRC,競争政策研究センターの国際シンポジウムについてでありまして,先週の金曜日,2月19日の午後に,大手町のKKRホテル東京におきまして,「東アジア諸国の経済発展における競争政策の役割」と題する国際シンポジウムを開催いたしました。
このシンポジウムでは,ソウル国立大学のサンスン・イ教授,タイ開発調査研究所のデュンデュン・ニコムボリラク部長,シンガポール国立大学のバートン・オング准教授,中国社会科学院のシンチュー・チャン教授といった方々から基調講演が行われまして,その後,競争政策研究センターの所長である一橋大学の小田切宏之教授,あるいは早稲田大学の浦田秀次郎教授を交えましてパネルディスカッションが行われました。
韓国のサンスン・イ教授からは,韓国のような輸出型の経済の国においては,企業結合審査というのは輸出先の海外市場における競争状況も競争効果分析を柱として動学的視点で分析する必要があるという御主張がありました。
また,タイのデュンデュン・ニコムボリラク氏は,競争法が存在することが万能な解決策ではなく,競争当局の独立性と透明性を確保する制度,それから,競争当局による競争の唱導ということが極めて重要だというお話がありました。
シンガポールのバートン・オング准教授からは,シンガポール経済は多国籍企業に依存して発展してきていることから,多国籍企業への競争法の適用は慎重に行われており,こういった産業発展の歴史が競争法の運用に影響を与えることがあるというような御報告があったところです。
それから,中国のシンチュー・チャン教授からは,審査において経済分析を積極的に用いて確固たる論証をしていくことが重要であるというような御報告がありました。
これらの講演に対しまして,パネリストの浦田秀次郎教授からは,産業を活性化するためには規制緩和と競争政策をコンビネーションで行うことが重要であるというコメントをされたということであります。
こうしたシンポジウムの議事録等に関しましては,後日,競争政策研究センターのホームページに掲載される予定になっておりますので,詳しくはそちらを御参照いただければと思います。
当日は,225名の方に御参加をいただきまして,アンケート調査もさせていただいておりますが,大変充実したシンポジウムであったというお言葉をちょうだいしております。今後とも,こうした競争政策に関しての国際的な交流拠点として,このCPRCを位置づけておりまして,そうした機能をこれからも果たしていくため,外部の方々の意見も参考にしつつ,一層有意義な国際シンポジウムを開催するということに努めてまいりたいと考えております。
[質疑応答]
(問) OECD競争委員会の会合で「国家補助と競争」というのがテーマになったとおっしゃったと思うのですが,それについて具体的にはどういった議論が行われたのでしょうか。
(事務総長) このOECD競争委員会の会合は,様々なテーマで開催されておりますが,今回はグローバルフォーラムの1日目で「国家補助と競争」に関してのラウンドテーブルが開かれました。これは,御案内のとおり,EU等においては,個々個別の国ごとの政策や補助金についての考え方を示していることもありますし,そういうことが競争条件に影響を与えるということもあるということで,いろいろ御議論があったと聞いておりますが,詳細については,必要であれば,担当に確認していただければと思います。
(問) あと,司法書士協会が報酬に上限を設けることを検討しているということで,場合によっては,公正取引委員会の判断を仰がなければいけないということですが,公正取引委員会としては,報酬に上限を設けるということに対しては,どのようにお考えでしょうか。
(事務総長) これはまだ具体的に御相談があったという状況ではありませんので,どういうことを御検討になるかということかとは思うのですが,こうした司法書士を含む資格者団体の活動に関しては独占禁止法上の指針を平成13年に公表しておりまして,これにおいては,どういうものが独占禁止法上問題になるかならないかということが決められております。
したがいまして,今後,どういう活動をすることが独占禁止法上の問題になるかならないかについての御相談があれば,こうしたガイドラインに沿った形で検討させていただきまして,御返事申し上げるということになるだろうと思います。
一般的な考え方から申し上げますと,いわゆる報酬の目安となる基準を事業者団体が独自に作り,それによって競争が制限される,あるいはその団体の構成員である事業者の事業活動を制限することになると,独占禁止法の第8条第1号,あるいは第8条第4号というような規定に違反するおそれがあるということであります。
一方,過去のデータ的なもの,実勢と申しましょうか,実態を収集して,それを情報提供することであって,今後の事業者の標準報酬になるとか,具体的にいくらにしなさいと制約するものでなければ,そのような情報提供活動自身は,独占禁止法上の問題にはならないということもガイドラインでは書いておりますので,そういうことを踏まえさせていただいて,御相談があれば応じていくということになるだろうと思います。
以上