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平成23年2月16日付 事務総長定例会見記録

平成23年2月16日付 事務総長定例会見記録

 [配布資料]

事務総長会見記録(平成23年2月16日(水曜)13時30分~於 公正取引委員会事務総局官房第一会議室)

 [発言事項]

東アジア等の海外の競争当局に対する技術支援活動について

 (事務総長)
 本日は私から,東アジア等の海外の競争当局に対する技術支援活動についてお話したいと思います。
 公正取引委員会が行っている技術支援の概要は,お手元の資料1のとおり,JICAの枠組みによるものと国際機関の枠組みによるものの2つに大別されます。
 JICAの枠組みによるものとしては,まず,集団研修があります。毎年,アジアや東欧などの競争当局から10名程度の研修生が約1か月間日本に滞在し,競争法や競争政策の理論と実務について学んでいます。平成6年からほぼ毎年実施しており,今までに合計48か国,174名が研修に参加しました。
 また,特定の国向けに実施する国別研修があり,現在の対象国としてはインドネシア,ベトナム,フィリピンがあります。このうち,インドネシアとベトナムの競争当局に対しては,当委員会の職員1名を現地のアドバイザーとして2年から3年の長期にわたり派遣しているほか,5名から10名程度の職員を2週間ほど日本に招へいして研修を実施しています。また,現地での研修セミナーについては,インドネシアやベトナムに加えてフィリピンに対しても実施しています。
 国際機関等の枠組みによるものとしては,主にAPECの枠組みによるものとICNの枠組みによるものがあります。APECには,各国の競争当局で組織する競争政策,競争法グループという下部組織があり,平成17年から,このグループの議長を公正取引委員会の職員が務めています。このグループの主な活動としては,公正取引委員会の提案により,競争政策に関する能力開発を目的としたトレーニングコースというものを平成14年から毎年度開催しています。
 なお,資料2に記載のとおり,来週2月21日から3月10日の日程で今申し上げましたJICAの枠組みによりインドネシア競争当局の職員11名に対する訪日研修が東京と大阪で実施されます。
 インドネシアでは,平成11年に競争法が制定されており,研修は,インドネシアにおける競争法の充実と法執行の強化に資することを目的として開催されるものです。研修では,我が国の独占禁止法に関する法理論や独占禁止法執行の実務などについて講義や議論が予定されています。
 現在,ASEANにおいては,加盟各国が2015年の競争法導入を目指しております。公正取引委員会としても,今後,ASEANなどに対する支援に積極的に取り組んでいきたいと考えており,このような支援を通じて,それぞれの国における競争環境の整備が進むことを期待しています。

 [質疑応答]

 (問) 2点質問させてもらいます。まず,産活法は,予算関連法案ということで,今後,審議に入ると思いますが,産活法の規定の中に,企業結合に関して,主務大臣との協議が盛り込まれましたが,この協議はどのようなことが行われるのでしょうか。2点目として,例えば,大臣と公正取引委員会との間で協議が行われると,公正取引委員会の職権行使の独立性との関係で,危惧されている点や問題等は生じないのかを教えてください。

 (事務総長) 今,御質問がありましたとおり,産業活力再生法におきましては,その改正法案において,適正な競争が確保されないおそれがある場合に主務大臣に公正取引委員会への協議を義務づけております。協議では,まず主務大臣から意見や根拠が提示され,必要がある場合には公正取引委員会が追加的な情報の提供等を求め,主務大臣がその情報等を提供し,公正取引委員会が独禁法の審査後に独禁法上の問題の有無や根拠を主務大臣に提示するというものです。
 したがいまして,2番目の職権行使の独立性についての御質問になりますが,独禁法の審査の途中段階で審査中の案件の独禁法違反の有無に関して,主務大臣が公正取引委員会に情報や意見を求めるものではなく,協議するものではないので,職権行使の独立性との関係で問題は生じないものと考えています。

 (問) 同じく産活法についてですが,このような法律が必要とされるようになった背景として,グローバル化や日本の産業界を取り巻く環境の変化があると思いますが,公取委の審査の中でも,そのような必要性を感じられる場面があったのでしょうか。

 (事務総長) 産業の状況や経済の状況がいろいろ変化して,おっしゃったようにグローバル化などの状況がありますが,公正取引委員会としては,個別の企業結合案件については,独占禁止法の規定に基づいて企業結合が行われた後においても競争が維持されて,ユーザーや消費者が不利益を被ることがないかという観点から判断していくという点については変わりありませんので,経済の状況が変われば経済の実態も変わってきますので,経済の実態や競争の実態をよく見極めて審査しなければいけないと思いますが,考え方としては,企業結合が行われた後の業界においても競争が維持されて,ユーザーや消費者が不利益となるようなことにならないかという観点から判断していくという点は変わらないということが言えます。

 (問) 例えば,管轄の国交省や経産省と協議の場を設けることができるようになることで,収集できる情報自体も増え,専門的な情報もおそらく集まってくると思いますが,そのような助けが必要になるほど世の中の変化は激しくなっているという認識はお持ちですか。

 (事務総長) 今申し上げたように産活法の協議の場において,主務大臣から意見や根拠が提出されていくということになりますが,公正取引委員会としては独占禁止法に基づいて適切に判断して対応していきたいと考えています。

 (問) 今回,協議の規定ができたことで,今までであれば認めらなかった案件が認められるようになるなどの可能性や影響がありますか。

 (事務総長) 今回の協議の規定があることによって,独占禁止法の判断が変わるということはありませんので,公正取引委員会が従来から行ってきているように,今,申し上げた独占禁止法の考え方で,独占禁止法の規定に基づいて判断していくということは何ら変わるものではありません。

 (問) では,産活法に基づいて,経産大臣や国交大臣などと協議をしても,あまり意味がないということでしょうか。

 (事務総長) 意味がないということを申し上げているものではありません。繰り返しになりますが,主務大臣から意見や根拠が提示されて,必要がある場合には公正取引委員会が追加的な情報の提供を求める。そして,公正取引委員会が独禁法の審査後に独禁法上の問題の有無や根拠を主務大臣に提示するということで,独禁法の審査の途中段階で審査中の案件の独禁法違反の有無に関して主務大臣が公正取引委員会に情報や意見を求めるものではなく,協議するものではないので,職権行使の独立性との関係の問題はないということです。

 (問) まだ改正法案が通っておりませんが,例えば,目的として迅速化が1つ挙げられていると思いますが,情報提供を受けることだけで実際に迅速化が図れるかについてはどのようにお考えでしょうか。

 (事務総長) 産活法改正法案は,今後,国会において審議されるものと思いますので,国会の審議を経て改正法が成立した場合には,公正取引委員会としても適切に対応していきたいと考えています。迅速性とおっしゃいましたが,産活法を別にしても企業結合については,今,非常にスピード感が大事だということを言われているところで,公正取引委員会としては,しっかりとした審査をしなければいけませんが,同時に迅速性ということにも配慮して手続や審査を進めていきたいと考えております。

 (問) 今おっしゃったのは基本的な姿勢の御説明だったと思うのですが,法案が実際に施行された後に迅速化に貢献することはあるのでしょうか。すなわち,実際にこの法律ができ,協議の場が設けられて,これまでよりも広範囲な情報が集まるようになったときに,公正取引委員会の審査のスピード自体がさらに速まるということもあるのでしょうか。

 (事務総長) それは今後の個別案件ごとの話になっていくと思います。今,御質問のあったような主務大臣からの情報ということに限らず,公正取引委員会としても必要な情報はいろいろな形で収集して審査していくわけですが,その中で今申し上げたように迅速性にも配慮しながら企業結合の審査を進めていきたいと考えております。

 (問) 新日鉄と住友金属のその後ですが,まだ正式な申請はしていないと思いますが,今回の申請の後に,または審査の時に,公取委はどのような資料を提出するように求めるのでしょうか。また,その後,特に動きはないでしょうか。

 (事務総長) 2点目からお答えしますと,新日鉄と住友金属の合併の件は,先々週に,平成24年10月を目途に統合するべく検討を開始するということに合意したという発表を当事会社がされたばかりなので,今後,当事会社がどのように検討を進められていくかということで,特に,その後何かあったわけではございません。
 また,企業結合があった場合の各届出書類は様式が定まっておりますので,それに沿って届出が出されることになります。
 一般論として申し上げますと,届出を出された場合,30日以内に公正取引委員会として問題がないと判断するか,さらに詳細に審査をしなければいけないということで会社側に追加で資料を求める場合がございます。追加で求める資料は公正取引委員会が,その企業結合案件に問題があるか,どのような競争の実態があるかを判断するための資料です。どのようなことを考慮して公正取引委員会が判断していくかは企業結合ガイドラインに書いてあり,当事会社の地位や競争業者の地位,輸入の可能性などいろいろな事情がありますが,そのようなことに関する状況などを報告として求めることになります。
 具体的にどのような情報を求めるかは,案件ごとに違いますので,今申し上げたような中から必要な情報を求めていくということになります。

 (問) 例えば,決算の書類なども必要になってくると思いますが,例えば,年度をまたいだ場合,間もなく来年度になるのですが,そのような場合は,新しい見通しをしっかりしてから,提出するのでしょうか。

 (事務総長) 通常,直近のものをお願いしていると思います。年度をまたいだ場合の取扱いでありますが,その時点でできている一番新しいものをお願いしていると思います。

 (問) 企業結合を早くしてくださいという流れがある中で,担当者の増員などはお考えになっていらっしゃるのですか。

 (事務総長) 今,政府全体として定員を減らすべく努めておりまして,その中でも公正取引委員会は増員を認めていただいておりますが,企業結合の今の人員も,以前に比べればかなり増員が行われているところです。企業結合の大きな案件も増えてきていますので,単に増員するというだけではなく,今もエコノミストの方や弁護士の方を任期付採用して,企業結合の審査の担当部署にも配置しており,質量ともに充実して,迅速な審査に対応する態勢をとっていきたいと考えています。

 (問) 産活法の改正で,今回の改正で公取委としてプラスの意義を感じられますか。

 (事務総長) プラスの意義といいますか,今回,協議の規定が設けられましたが,国会で審議される前の段階ですので,そのような改正法が成立した場合には,公正取引委員会として適切に対応していきたいと考えています。

 以上

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