[配布資料]
米国及びEUにおけるカルテル・入札談合に対する法執行状況について(PDF:197KB)
企業における独占禁止法コンプライアンスに関する取組状況について(PDF:296KB)
[発言事項]
事務総長会見記録(平成25年9月25日(水曜)13時30分~於官房第1会議室)
米国及びEUにおけるカルテル・入札談合に対する法執行状況について
(事務総長)
本日,私からは,米国とEUにおけるカルテルや入札談合に対する法執行の状況について,お話ししたいと思います。
近年,競争法を有する国や地域の数が増加するとともに,特にカルテルや入札談合といった悪質な競争法違反行為に対しては,米国やEUを中心として世界的に厳罰化の傾向が強まっているところです。
そこで,本日は,米国及びEUにおけるカルテル・入札談合に対する法執行の状況について紹介させていただきたいと思います。
まず,制度の仕組みについてお話ししますと,米国においては,カルテルや入札談合は最も悪質な競争法違反行為として,刑事罰の対象となります。違反した企業や違反に関与した役員・従業員に対しては罰金や禁固刑が科されます。2004年に刑事罰の罰金と禁固の上限の引上げが行われまして,個人に対しては,それまで3年以下の禁固だったものが10年以下の禁固という形で引き上げられ,カルテル・入札談合に対する法執行はますます厳しいものとなっています。
次に,EUですけれども,EUは,カルテル・入札談合に対しては制裁金が課されます。この制裁金は,違反企業が属する全グループ企業の直近の事業年度における全世界総売上高の10%を上限として賦課することができるため,制裁金の水準は非常に高額となります。2006年の制裁金ガイドラインにおきまして,カルテル・入札談合といったハードコアカルテルに対しては,違反行為の関連売上高の30%を算出しまして,これに継続年数を掛け,更に関連売上高の15から25%を,エントリーフィーと呼ばれておりますが,上乗せして基本額が算定されるという形になっているところです。
具体的な法執行の状況について,法人に対する罰金額,制裁金額は,直近の2012年度で見ますと,日本円換算で米国が約1172億円,EUが約2483億円となっておりまして,我が国の課徴金額の約251億円を大きく上回っているところです。
また,一事業者当たりの制裁金等の額を見ても,2012年度では日本円換算で米国が約36億円,EUが約67億円となっています。
また,米国では,今,個人に刑事罰が科せられると申し上げましたけれども,刑事罰の対象となった個人の平均収監月数を見ますと,2010年度が30か月,2011年度が17か月,2012年度が25か月というように,非常に長い収監月数となっているところであります。
次に,これまで個別企業に対して科せられました罰金額,制裁金額を見ますと,米国におきましては,これは1999年の事件ですけれども,ビタミンカルテル事件,また,直近では2012年の液晶ディスプレイパネル事件におきまして,それぞれスイス企業,台湾企業に対して5億ドルの罰金額が科せられておりまして,これが過去最高の金額となっております。また,自動車用部品カルテル事件におきましては,日本企業に対して4億7000万ドルの罰金が科せられているところです。EUにおいては,自動車用ガラスカルテル事件において,フランス企業に対して9億ユーロの制裁金が,これは当時の命令ベースですけれども最高の金額となっております。また,事件別では,テレビ用・PC用のブラウン管のカルテル事件におきまして,昨年,2012年に総額で14億7000万ユーロ,日本円換算にしますと約2,000億円近い金額の制裁金が課されているところであります。
価格カルテルや入札談合については,我が国においても悪質な独占禁止法違反行為として厳正に対処してきておりますけれども,このように米国及びEUを始めとする諸外国においてもその摘発はますます厳しいものとなっております。また,経済のグローバル化を背景として,我が国企業を含む多くの企業が国際カルテルを結んでいたとして摘発されておりますけれども,例えばワイヤーハーネス等の自動車部品に係る事件審査において,日本の公正取引委員会は,米国やEU等の競争当局とほぼ同時に調査を開始するなど,個別事件における各国の競争当局間の国際協力・連携も進んでいるところであります。
したがいまして,日本企業においては,グローバルな観点から独占禁止法のコンプライアンスを推進していくことが重要になっております。公正取引委員会が昨年の11月に公表いたしました「企業における独占禁止法コンプライアンスに関する取組状況」の報告書では,企業グループとしての一体的な取組の状況ということで,国内の傘下のグループ会社に対する関与に比べますと,海外の傘下のグループ会社に対する独占禁止法コンプライアンスへの関与が手薄になっているという調査結果となっております。こうしたことを踏まえ,違反行為の未然防止や早期発見のための取組に当たりましては,海外も含めた企業グループ全体で一体的にコンプライアンスを進めていくことが重要ということを指摘しているところであります。
我が国企業におきましては,引き続きコンプライアンスへの取組をグローバルな形で進めていただきたいと考えております。
私からは以上です。
質疑応答
(問) お伺いしたい項目は2点あります。1点目が,昨日,東京エレクトロンとアメリカのアプライドの企業統合の発表がありまして,今後,ちょっと分からないのですが,半導体装置で世界シェア25%という中で,いろいろな部品なり製品の項目があると思うのですけど,今後の独禁法上の審査に当たって,何かポイントとなりそうな点などはございますでしょうか。
次は別な話で,一部,報道でありますけれど,公的支援のあった企業に対して,いわゆる競争条件を確保するような法的な枠組みを与党あるいは国交省の方で,今,検討を進めていると。主体的には,公取委の方が何らかのガイドラインを作るような方向というように報道がなされていますけれども,その点についての御見解をお聞かせください。
(事務総長) まず,1点目の企業結合の御質問ですけれども,その報道を私も見ましたが,先週もこの会見の場で企業結合の流れについて御紹介しましたけれど,一定規模以上の企業結合については,事前に公正取引委員会に届出をしていただいて,それに対して,まず第一次審査ということで30日間の審査期間があります。先週,ほとんどの案件はこの第一次審査で終了していることを御紹介しましたが,更に詳細な審査をした上で競争への影響を検討した上で判断する必要がある案件については,二次審査に進んで,昨年の件数でいうと6件程度だったと思いますけれども,検討を進めることになっております。
それで,公正取引委員会としては,二次審査に進んだ案件につきましては,これを公表して,第三者からの意見も求めて,結論を得た段階でその結論を公表しております。
今の個別の案件につきましては,もし今後,そういった形で流れに乗れば,競争への影響がどうなるかを検討していくことになると思いますけれども,今の段階では,まだ個別のケースの発言については差し控えたいと思います。一般的なことしかお答えできませんが,企業結合の件については,一言で言えば,業界の実態なりを検討し,競争への影響がどうなるかを検討していくことになると思います。
それから,2点目の公的資金に関する再生事業者についての法案については,御指摘のような法案が議員立法として検討されていることは承知しています。公正取引委員会としては,議員立法として検討されている法律ですのでコメントは差し控えたいと思います。
以上