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平成25年11月13日付 事務総長定例会見記録

平成25年11月13日付 事務総長定例会見記録

 [配布資料]

 [発言事項]

事務総長会見記録(平成25年11月13日(水曜)13時30分~於官房第1会議室)

「独占禁止法教室」について

(事務総長)
 本日,私からは,はじめに「独占禁止法教室」の取組についてお話ししたいと思います。
 公正取引委員会では,公正取引委員会の職員を中学,高校,大学の授業に講師として派遣いたしまして,将来を担う生徒・学生に,競争の重要性や独占禁止法の内容,公正取引委員会の役割について分かりやすく説明して,企業が競争することによって消費者は安くて良い商品を買うことができること,また,たくさんの商品の中から自分が欲しい商品を自由に選択できることなど,競争のメリットについての理解を深めてもらうために,全国各地で「独占禁止法教室」を開催しています。
    
 独占禁止法教室の授業内容は,例えば,この中学生向けの授業では,はじめに「市場経済」や「競争」といったキーワードを示して市場経済の仕組みや競争の役割,独占禁止法のポイントといったことについて分かりやすく説明した後,競争の必要性や競争による消費者のメリットを理解してもらうためにシミュレーションゲームを行っております。その後,修学旅行の料金のカルテルのように,生徒の身近で実際にあった独占禁止法違反事件について紹介し,先生や生徒にも公正取引委員会の審査官や違反企業の社長といった役柄に扮してもらいまして,寸劇による模擬の立入検査や事情聴取場面を実演して,公正取引委員会の業務を理解してもらっているところです。
 
 独占禁止法教室の取組は,平成14年度に中学生向けとして始めたものですが,平成18年度からは高校生と大学生向けにも拡大しております。平成25年度の開催状況につきましては,10月31日時点ですけれども,中学校は7校,高校は4校,大学が47校となっておりまして,今年度,これまでに延べ4,105名が受講しております。
 また,この取組を始めました平成14年度から平成25年10月31日までの累計を数えますと,これまでに全国で延べ538校,42,548名の生徒・学生が受講したことになります。都道府県別にみますと,現時点で三重県を除く46都道府県において独占禁止法教室の開催実績があるところです。
 
 このほか,公正取引委員会では,小学生を含めまして,修学旅行などの機会を利用した生徒・学生向けの「庁舎訪問学習」を行っております。庁舎訪問学習では,公正取引委員会の職場見学をしてもらうほか,独占禁止法教室と同様に,競争の重要性や公正取引委員会の役割について,分かりやすく説明し,生徒・学生からの質問に答える時間などを設けているものです。

 なお,今年度,広報用ツールとして,公正取引委員会をより身近に感じていただけるようにということで,キッズ向けのキャラクターであります「どっきん」をあしらったクリアホルダーを作成いたしました。独占禁止法教室や庁舎訪問学習の際に使う資料は,このクリアホルダーに入れて,生徒・学生に配布することとしたいと思っております。
 
 公正取引委員会としては,こうした独占禁止法教室や庁舎訪問学習を広く活用していただければと思っております。希望される学校の方は,公正取引委員会のホームページの中でも案内しておりますが,本局や各地方事務所・支所までお問い合わせいただければありがたいと思います。

JASRACに関する公正取引委員会の審決を取り消す旨の東京高裁の判決について

 続きまして,先週の定例会見でお話ししました一般社団法人日本音楽著作権協会,JASRACと略称いたしますけれども,JASRACに関する公正取引委員会の審決を取り消す旨の東京高裁の判決につきましては,公正取引委員会といたしまして,判決文の内容を十分に吟味した上で検討しました結果,本日,最高裁に対しまして上告受理の申立てを行いましたので御報告いたします。

 上告受理の申立てを行った場合,最高裁に対しまして,50日以内に上告受理申立理由書を提出することとなりますので,提出期限は1月上旬となることが見込まれます。理由書の内容につきましては,最高裁に理解していただけるものとなるように今後十分検討してまいりたいと考えています。
 私からは以上です。

質疑応答

(問) 内容は今後十分検討されるということだったのですけれども,具体的に,どの点について不服というふうに判断されたのかということについて教えてください。
(事務総長)これまでの経緯を御説明したほうがいいと思うのですけれども,公正取引委員会が平成21年の2月に行いました排除措置命令においては,JASRACが包括徴収の方法によって徴収する放送等使用料の算定において,放送等利用割合,これは放送事業者が利用した音楽著作物の総数に占めるJASRACの管理楽曲の割合のことですけれども,これが当該放送等使用料に反映されないような方法を採用していると。これによって,放送事業者が他の管理事業者にも放送等使用料を支払う場合には,放送事業者が負担する放送等使用料の総額がその分だけ増加することとなるということで,こうした行為は,他の管理事業者の事業活動を排除することにより,競争を実質的に制限するという判断を行ったわけです。
 それで,これに対して審判が行われまして,平成24年6月,昨年の6月の本件審決においては,今申し上げたJASRACのそうした行為は,放送事業者が被審人以外の管理事業者の管理楽曲を利用することを抑制する効果を有し,競業者の新規参入について消極的な要因となることは認められる。他方,証拠によれば,放送事業者がイーライセンス社の管理楽曲の利用について慎重な態度を取ったことは認められるものの,JASRACによる本件行為に,著作権者のイーライセンス社への管理委託を回避させるような効果があったとまでは言えず,排除措置命令における排除効果に係る認定が立証されているとするには十分ではなかったとして,排除措置命令を取り消すとの審決があったものです。
 そして,先週11月1日の株式会社イーライセンス,イーライセンスと略称しますけれども,イーライセンスによる審決取消等請求事件の判決において,東京高裁は,JASRACに対する平成21年2月の排除措置命令を取り消した公正取引委員会の審決につきまして,審決の名宛人以外の者であるイーライセンスの原告適格を認めた上で,JASRACの行為は,放送等利用に係る管理楽曲の利用許諾分野における他の管理事業者の事業活動を排除する効果を有するものと認められるから,本件審決の認定,判断には誤りがあるとして,本件審決を取り消したものです。
 こうした経緯がありますけれども,公正取引委員会が今回最高裁判所に上告受理の申立てをした理由についての御質問ですが,今申し上げたようなことですので,公正取引委員会としては,東京高裁の判決におきます原告適格についての判断,そして,東京高裁の本判決の事実認定の判断に関する問題点について主張して,最高裁の判断を仰ぎたいと考えております。

(問) 原告適格の判断と事実認定の判断と,2つ,今,おっしゃられましたけれども,原告適格の判断は,イーライセンスにそもそも原告の適格がないという御主張なのか,それと事実認定の判断というところは少し幅広いので,高裁の判決の中で具体的にどの点について争われるのかというところを,もう少し具体的に教えてください。
(事務総長) 今申し上げたように,今後50日以内に上告受理申立理由書を提出することになります。ですから,具体的には,今後十分検討して,最高裁に理解していただけるものになるように理由書を検討していきたいと思いますけれども,1つは原告適格についての判断ということについて言えば,競業者であるイーライセンスに本件訴訟における原告適格が認められたこと。それからもう1つの判決の事実認定について申し上げれば,公正取引委員会が事実認定について証拠に基づき合理的に判断したか否かについて,今申し上げたのは公正取引委員会の審決のことですけれども,公正取引委員会の審決において,事実認定について証拠に基づき合理的に判断したか否かについて,判決は実質的証拠に基づくものとはいえないとしたことについて主張していきたいと考えております。

(問) こちらで総長に伺うことではないのかもしれないのですけれども,JASRAC側の対応について何か聞いていらっしゃいますでしょうか。上告するとかしないとかですが。
(事務総長) 公正取引委員会が今日申し上げたのは,公正取引委員会として検討して判断した結果ですから,何かそういったことは承知しておりません。

(問) 原告適格というのは,基本的な質問なのですが,判断する根拠になる法律とか条文というのは,どういったところから判断することになるのでしょうか。今回のこういう審決の取消訴訟の原告適格というものですが。
(事務総長) 今まで公正取引委員会の審決で,それが更に訴訟で争われたことはあるわけですけれども,今回,公正取引委員会は,JASRACの排除措置命令に対してこれを取り消す旨の審決を行ったということを今御説明したところです。公正取引委員会の関係で,これまで,今までの審決の取消訴訟において,審決の名宛人以外の者に原告適格が認められた事例は初めてであるということで,これは法律論的な問題点があるのではないかということです。
(問) 法律論というのは,行政不服審査法とか独禁法上の問題なのか,それとも行政手続法とか行政訴訟法とか,そんな感じなのでしょうか。
(事務総長) そういった意味では,原告適格というのは別に独占禁止法だけの問題ではなくて,いろいろな問題一般についてで原告適格があるかというのは,一般論としては,よくいろいろ議論される分野の話であります。
(問) 本件だと,もともとは公取委さんがJASRACさんを調べた事案なわけですよね。
(事務総長) はい。
(問) それで,審判の中でも,確か70条に,独禁法の中でも参加人規定みたいなものがあって,利害関係がある第三者は審判段階で参加してもいいですよということは言っていると思うのです。だから,そういった延長線上で関係しているのだから,取消訴訟の原告になったっていいじゃないかと,全く関係ない人が訴えているという感じもしないのですけれども,そこの点はどうなのでしょうか。
(事務総長) ですから,そこのところが法律的な議論として,今後,主張していきたいというところです。
(問) 現段階では,何がおかしいのか,ざっくりとした項目というか,指摘できるような点というのはあるのでしょうか。そのイーライセンスにですが。
(事務総長) そういった意味では,一言で申し上げれば,今まで審決取消訴訟において審決の名宛人以外の者に原告適格が認められた事例はないということです。
(問) 事例はないということが根拠になるということですか。
(事務総長) はい。
(問) 分かりました。

(問) もし,仮に最高裁で審理されて,結局,結果が高裁と同じだった場合,また公取委で審判をして,また審決というふうになると思うのですけれども,その時間はどのくらいかかるのでしょうか。
(事務総長) 公正取引委員会がこれまで最高裁に上告受理申立てをした事案は4件あります。それで,今の御質問は,まず,上告受理申立てに対する判断がどのぐらいかかるかということなのかと思いますけれども。
(問) そうです。そこから最後まで,公取でまたもう一回,仮に審決をやり直した場合です。
(事務総長) まず上告受理申立てに対する判断が,いつごろになるかというところですけれども,特に時間的な決まりがあるわけではないのですけれども,これまでの,今申し上げた公正取引委員会の関係での4つの事案を見ますと,大体,2年から3年ぐらいかかっている場合が多いのですが,今後,今回の件もそういうことになるということではないのですけれども,これまでの例で言えばそういうことになっております。
(問) 審決までにですか。
(事務総長) いえ,まず最高裁の上告受理に対する判断にそれぐらいの期間がかかっているということになりますので,今おっしゃった審判を仮に再開するということになったとしたら,その後の話ということになります。
(問) その後の話と仮定して,仮に審判をして,また審決となると,最後の審決が出るのは,今から何年後ぐらいになるのですか。
(事務総長) ですから,そこは仮定の話なので,まだどのぐらいになるかということは,今の段階では申し上げられないです。

(問) すごい素人的な質問なんですけど,今後,独禁法の改正案が通って,審判がなくなった後になって最高裁の判断が出てというふうになったらどうなるのでしょうか,もし,審判制度がそのときに無くなっていたらですが。
(事務総長) それは,今,独占禁止法の改正法案も,現在国会でこれから審議をしていただきたいと思っている段階なので,今言った時系列の関係がどうなるのか分からないので,今の段階でどうなるのかは申し上げられません。

(問) 4件というのは,審決関係で4件ということですか。
(事務総長) これまで,公正取引委員会が審決に関して上告受理申立てをした事案,これは,平成17年に法改正があって審決の位置付けが変わっていますけれども,そういったものを別にして,これまで審決について最高裁に上告受理申立てをしたのは4件あります。そのうち,公正取引委員会の主張が認められた事案というのは,1件を除いて認められております。3件で認められているということです。
(問) 3件ですか。分かりました。

(問) 1点だけ確認なんですけれども,先ほど上告の理由について説明をいただいたのですが,高裁の判決が,確か包括徴収について排除効果があるというような,それに近い認定をされたと思うのですけれども,そこについて,包括徴収のやり方そのものについては,特に争ってはいないわけですか。
(事務総長) 包括徴収自体について争うということではなくて,これは上告受理申立てですから,公正取引委員会が事実認定について,証拠に基づいて合理的に判断したか否かということについての裁判所の判断について主張していきたいということです。ですから,高裁の判決を前提としています。

以上

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