[発言事項]
事務総長会見記録(平成26年3月5日(水曜)13時30分~於官房第1会議室)
独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構が発注する北陸新幹線融雪・消雪基地機械設備工事の入札談合に係る告発について
本日は,昨日の告発につきまして,昨日の担当審査長からのレクと重なる部分も多くなると思いますが,一言申し上げたいと思います。
公正取引委員会は,独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構が発注します北陸新幹線の融雪・消雪基地機械設備工事の入札談合につきまして,昨年の9月4日以降,犯則調査を行ってきたところでありますが,独占禁止法に違反する犯罪があったと思料し,独占禁止法第74条第1項の規定に基づきまして,昨日,高砂熱学工業株式会社ほか7社及び犯罪当時に被告発会社8社で設備工事の請負等の業務に従事した8名を検事総長に告発したところであります。
同日,東京地検は我々の告発を受けまして,これらの事業者等を東京地裁に独禁法違反の罪で公判請求をしたと承知しております。
皆様御案内のとおり,公正取引委員会は告発する方針を定めて,公表しております。その中で,公正取引委員会は,国民生活に広範な影響を及ぼすと考えられる悪質かつ重大な事案,あるいは違反を反復して行っている事業者等に係る違反行為のうち,公正取引委員会の行う行政処分によっては独占禁止法の目的が達成できないと考えられる事案について,積極的に刑事処分を求めて告発を行う方針であると明記しているところであります。
本件につきまして申し上げれば,本件は,まず被告発会社8社はいずれも全国的な事業活動を展開しておりまして,東証一部上場企業も5社含まれていること,それから,本件の対象工事は国,地方自治体が支出する公的資金によって建設される北陸新幹線関係の工事でありまして,高度に公共的な財・サービスに連なる社会的インフラ整備に係るものでありますから,国民生活全般に密接に関連していると考えられます。さらに,3番目には,東京地検が立件いたしました平成18年の防衛施設庁の談合事件におきまして,関係人の従業員の一部は談合罪により罰金処分を受けております。関係人は入札談合は違法行為であることを認識した上で,本行為を行っていたと考えられるということなどから,先ほど申し上げた告発方針に挙げられております国民生活に広範な影響を与える悪質・重大事案であると考えられますし,また,同時に公正取引委員会の行う行政処分によっては独占禁止法の目的が達成できない事案と考えられ,告発することとしたものであります。
平成2年に,先ほど申し上げた告発方針を定めましてから,本件が15件目の事案でありますし,平成17年の法改正によりまして,犯則調査権限が導入されてから6件目の事案となります。また,平成24年6月のいわゆるベアリングの価格カルテル事件の告発以来の告発となりますが,入札談合事件の告発としては平成19年の5月に告発いたしました緑資源機構発注の事件以来であります。
今後,価格カルテルはもとより,入札談合を抑止する上で,今回の告発,それから検察による起訴が大きな意義を持つと考えているところでございます。
公正取引委員会としては,今後とも,先ほど触れました告発方針に基づきまして,告発を相当とする事案が認められる場合には,積極的に刑事告発を行っていきたいと考えております。
今日,私からは以上です。
質疑応答
(問) 今おっしゃった入札談合の事件としては,緑資源以来7年振りの刑事告発だと思うのですが,行政だと地方案件というのは結構あるのですけれども,最近の大規模な談合事件の摘発は,要するにこれぐらい間隔が空いているというのか,これは事件が巧妙化しているからとか,いろいろあると思うのですけど,総長としてはどういうふうに受け止められているか教えてください。
(事務総長) その質問の趣旨は,地方談合を我々もかなり摘発していますけれども,なぜ告発に至らなかったかと,そういうことですか。
(問) 公取がやっているものとしては,大きい事件はなかなかできていないと言いますか。
(事務総長) 最近,特段入札談合で大きいものがないという認識は私は持っておりませんし,一般論として,こういうITの時代でございますし,カルテル,入札談合を含め,独占禁止法違反行為に対する取り締まりが難しくなっている,違反行為が更に巧妙化しているということは事実であると思いますが,一方で,我々もITの進展等に伴いまして,デジタルフォレンジックチームを作って,そういう電子的な証拠を積極的に収集するように努めておりますし,また,情報収集も行っております。最近,規模の大きな入札談合の摘発がないという認識が正しいかどうかはともかく,私どもとしては,巧妙化しているから摘発がしにくくなっているという認識はしておりません。
(問) あともう1つ,ちょっと意地悪な質問なんですけれども,犯則審査部が出来てから6件目の告発で,2006年からだから8年ぐらい経つかと思うのですけど,6件で2年振りということのペース的なものとか,数的なものについて,現時点でどういうふうに受け止められているのでしょうか。
(事務総長) この前のベアリングの事件前はもっと空いていたわけで,それは,やはり先ほどの告発方針に基づいて,我々が立証できる事案が出てきているかどうかという話だと思います。それだけ空いたということは,結果としてはそうなったと。今回の入札談合事案の調査は,告発までは6か月ということで,それ以前のベアリングのカルテル等と比べると,迅速に行われてきております。先ほど申し上げましたけれども,そういう情報に接した場合には,我々として厳正に対処していくという方針は何ら変わりありません。ただ,どのくらい期間が空くかというのは,我々の方針,あるいは取締りの姿勢とは別に,そういう事案についての情報をどれだけ我々が収集できるかということにもかかっておりますので,結果としてそうなったということと受け止めていただきたいと思います。
(問) 分かりました。
以上