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平成27年10月7日付 事務総長定例会見記録

平成27年10月7日付 事務総長定例会見記録

 [配布資料]

「下請取引適正化推進月間」の実施について(平成27年9月24日公表資料)

競争政策研究センター共同研究「医薬品市場における競争と研究開発インセンティブ―ジェネリック医薬品の参入が市場に与えた影響の検証を通じて―」報告書(平成27年10月7日公表資料)

 [発言事項]

事務総長会見記録(平成27年10月7日(水曜)13時30分~於官房第1会議室)

「下請取引適正化推進月間」の実施について

 本日,私からは2点,お話をさせていただきたいと思います。
 まず1点目が,「平成27年度下請取引適正化推進月間」についてです。公正取引委員会は,中小企業庁と共同いたしまして,毎年11月を「下請取引適正化推進月間」といたしまして,この期間内に,下請法の普及・啓発に係る取組を集中的に行ってきているところであります。
 推進月間では,事業者の方々に下請法の内容を理解していただくため,中小企業庁と分担いたしまして,全国47都道府県61会場におきまして,下請法に関する講習会を開催する予定であります。また,都道府県や商工会議所,商工会等の各種団体に対しまして,ポスターの掲示や機関紙等への掲載による推進月間の広報等の協力を依頼することとしております。
 そのほか推進月間を一層効果的にPRすることを目的といたしまして,本年度もキャンペーン標語の一般公募を行いました。その結果,特選作品に選定いたしました,「押しつけず 叩かず 決めよう 適正価格」をキャンペーン標語として決定したところであります。
 また,今年度は,政府の動きや政府の重要施策を動画で紹介いたします政府インターネットテレビにおきまして,下請法の概要や推進月間などの取組について紹介する番組が公開される予定となっております。政府インターネットテレビに当該番組が公開されるのは今月中旬の予定と聞いておりますが,番組が公開され次第,公正取引委員会のウェブサイトやメールマガジン等で周知する予定であります。
 公正取引委員会としては,このような下請取引適正化推進月間における講習会の開催や諸々の広報活動を通じまして,事業者の方々に下請法に対する理解を一層深めていただくことを期待しております。

競争政策研究センター共同研究「医薬品市場における競争と研究開発 インセンティブ―ジェネリック医薬品の参入が市場に与えた影響の検証 を通じて―」(概要)について

 もう1点が,競争政策研究センター(CPRC)の共同研究報告書の公表についてであります。お手元に,「競争政策研究センター共同研究『医薬品市場における競争と研究開発インセンティブ』報告書(概要)」という資料をお配りしているかと思いますが,皆様御案内のとおり,CPRCは平成15年6月に発足後,主任研究官や客員研究員等の外部の法学者,経済学者と公正取引委員会職員との「三者協働」による共同研究を毎年度実施することなどを通じまして,独占禁止法及び関連する法律の執行や競争政策の企画・立案・評価を行う上での理論的・実証的な基礎を強化するための活動を展開してきているところであります。今般,CPRCは3つの共同研究の研究結果を報告書に取りまとめ,本日,CPRCのホームページに公表したところであります。
 CPRCの活動をより多くの方に知っていただくため,本日公表した報告書のうち,皆様に身近で関心も高いと思われますジェネリック医薬品に関する内容であります,「医薬品市場における競争と研究開発インセンティブ」という共同研究の研究結果の概要について,簡単に御紹介をさせていただきます。
 この共同研究は,我が国医薬品市場におきますジェネリック医薬品の状況や欧米におけるジェネリック医薬品をめぐる競争法違反事例の検証等を通じまして,競争当局が留意すべき点についての示唆を得ることを目的としております。
 本研究の背景といたしましては,欧米では「リバースペイメント」と呼ばれる行為が,競争法上問題とされた事例が生じてきているということが背景にあります。お手元の資料の4ページ目の概略図を御覧いただければと思いますが,ジェネリック医薬品メーカーがジェネリック医薬品の製造・販売を開始した際,先発医薬品メーカーは,先発医薬品の特許が侵害されたとして,ジェネリック医薬品メーカーに対しまして特許侵害訴訟を提起する場合があります。その訴訟における和解の過程で,ジェネリック医薬品メーカーがジェネリック医薬品を当分の間,販売しないということを約束する見返りに,先発医薬品メーカーが多額の金銭を支払う旨を合意することがあります。この金銭の支払が「リバースペイメント」,あるいは「ペイ・フォー・ディレイ」と呼ばれているものであります。欧米では,この「リバースペイメント」ないし「ペイ・フォー・ディレイ」がジェネリック医薬品の参入を遅らせるための競争回避行為・カルテルであるとされている事例があるわけであります。
 本研究の結果といたしましては,薬価制度をはじめとした我が国の制度・市場構造の下では,現時点においては欧米のような競争法上問題となり得る「リバースペイメント」は比較的発生しにくい環境にあると考えられるわけでありますけれども,しかしながら将来的にジェネリック医薬品のシェアが更に上昇する場合には,欧米と同様に「リバースペイメント」を行うインセンティブが高まるため,公正取引委員会は必要なモニタリングを行い独占禁止法の積極的な適用が図られるよう検討する必要があるということとしております。
 なお,お手元の資料の概略図の次からは,3年間の共同研究報告書の一覧を付けております。皆様方,興味のあるテーマ・報告書がございましたら,CPRCのホームページに全文が出ておりますので御覧いただけたらと思います。

質疑応答

(問) 今の医薬品のお話で,日本ではまだこういった問題は起こりにくいとおっしゃったのは,なぜでしょう。
(事務総長) 資料の1ページ目に書いてありますように,この報告書は,学者の先生方と,それから我々の職員が三者協働の報告書としてまとめられたわけですが,そこでは今御質問の,なぜ日本で「リバースペイメント」のような事態が当面は発生しないのではないかという理由といたしましては,お手元の資料の2ページ目にありますように,我が国の医療用薬品市場における特徴的な制度というのが書かれてあります。まず薬価制度があるため,欧米のように消費者(患者)向け市場において直接的な価格競争が行われているわけではありません。
 それから2つ目が,パテントリンケージ及び事前調整ということで,欧米では,先発医薬品メーカーがジェネリック医薬品メーカーに対して提起する特許侵害訴訟による事業者間の解決が前提とされているわけでありますが,日本では先発医薬品の有効成分に特許が存在する場合には,ジェネリック医薬品の製造販売承認がなされないというパテントリンケージの考え方が採られておりますし,先発医薬品メーカーとジェネリック医薬品メーカーとの間で特許上の問題の有無を確認し,その結果を厚生労働省に報告するということになっております。このような我が国独特の制度というのが一つあります。
 更に,この市場構造に関する分析で,これは背景にはいろいろとありますが,経済分析の結果,日本ではアメリカ等と異なりまして,ジェネリック医薬品の参入後もジェネリック医薬品間の価格競争に比べまして,先発医薬品とジェネリックとの間の価格競争が限定的であるという結論が出ております。
 それから,アメリカではよく言われるのが,医薬品認証制度についての特別な法律,「ハッチ・ワックスマン法」が定められていることです。これは,最初にジェネリック医薬品で承認申請を行って,当該ジェネリック医薬品が先発医薬品の特許権を侵害しないということを自ら証明したジェネリック医薬品メーカーに対して,そのジェネリック医薬品について180日間の独占販売期間を与えるというものです。日本の場合はこういう制度はありませんので,複数のジェネリックメーカーが同時に参入しようとするということがあります。アメリカの場合は誰に対して訴訟していけばいいのかが明らかになるという事情がありますが,日本にはそのようなものはないという,以上のようなことが背景にありまして,今この報告書で結論として,現在の我が国の制度,市場構造の下では欧米のような「リバースペイメント」のような問題は比較的発生しにくい環境にあるとまとめられていると思います。
(問) TPPが大筋合意に至りましたけれども,発効した場合に日本の競争政策,あるいは公正取引委員会の活動に何か見直しが必要なこととか影響が出ることはあるのでしょうか。
(事務総長) TPPが大筋合意されたということでありますし,TPPの中には競争政策章というのがありまして,その中で定められているように,TPP加盟国の競争当局との協力を通じまして,域内における競争法の執行力の強化,あるいは執行の公正性,透明性の確保を図ることで,このTPPの域内市場における公正かつ自由な競争を促進するとともに,併せて事業活動の予見可能性を高めていきたいと思っております。一言で言えば,域内において自由で公正な競争が行われる環境整備というものをこのTPPの協定の下で私どもとして一層努力していくということだと思います。
 今の御質問のことにつきましては,今後,政府全体でもそうだと思いますが,また,今申し上げました競争政策章につきまして,私どもとして独占禁止法上どのような対応をすべきかにつきまして,速やかに検討していきたいと思っております。

以上

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