[配布資料]
(平成27年11月11日)平成27年度上半期における下請法の運用状況等及び今後の取組
TPP(環太平洋パートナーシップ)協定競争政策章の概要について(PDF:119KB)
[発言事項]
事務総長会見記録(平成27年11月11日(水曜)13時30分~於官房第1会議室)
平成27年度上半期における下請法の運用状況等及び今後の取組
本日,私からは,下請法の運用状況とTPP協定の競争政策に関わる章の2点につきまして,お話をさせていただきたいと思います。
まず,お手元にお配りしております「平成27年度上半期における下請法の運用状況等及び今後の取組」についてお話をさせていただきます。
概要の1ページ目,本文では2ページ目でございますけれども,下請法違反事件の処理状況が記載されております。平成27年度上半期におきましては,勧告2件を行ったほか3,363件の指導を行ったところであります。
2件の勧告については,全て製造委託に関わるものでありまして,勧告の対象となった違反行為の類型は,1件は下請代金の減額,もう1件は下請代金の減額と返品でございました。
また,本文の5ページ目でございますが,親事業者が行った下請代金の減額分の返還など,下請事業者が被った不利益の原状回復について記載されております。平成27年度上半期におきましては,原状回復を行った親事業者は102名であり,下請事業者5,335名に対しまして総額11億1523万円分の原状回復が行われました。
今申し上げましたように,平成27年度上半期におきましても,公正取引委員会は下請法違反行為に対しまして迅速かつ効果的に対処してきたところでありますが,下請法の運用に当たりましては,違反行為の未然防止を図ることも重要でありますので,6ページ目以降に,それに関する取組を記載しておりますが,企業間取引の公正化へ向けた各種の施策を実施してきているところであります。
まず,下請法や優越的地位の濫用規制のより効果的な普及・啓発を図る観点から,下請法基礎講習会,下請法応用講習会,業種別講習会など,参加者の習熟度や業種に応じた各種の講習会や,中小事業者からの求めに応じまして,公正取引委員会の職員が地方に赴きます「中小事業者のための移動相談会」を開催するなど,きめ細かく対応してきているところであります。
さらに,公正取引委員会は,中小企業庁と共同いたしまして,毎年11月を「下請取引適正化推進月間」と定めまして,この期間内に,下請法の普及・啓発を集中的に行ってきているところであります。内容といたしましては,例えば,全国47都道府県61会場におきまして,下請法に関する講習会を開催することとしております。
また,今年度は政府インターネットテレビに,下請法の重要性などを紹介する番組を作成し,公開しているところであります。
そのほか,公正取引委員会は,各地域の下請取引の実情に精通した中小事業者の方々などに下請取引等改善協力委員を委嘱しております。本文の16ページ目から18ページ目に記載してありますように,上半期には,各協力委員から下請取引の現状などにつきまして意見聴取を行ったところであります。協力委員からは,例えば「国内全体の景気は回復傾向にあるかもしれないが,個々の業界や地方の景気動向とは必ずしも一致していないと感じる」とか,「小規模事業者においては,下請取引に関するルールの認知が十分ではなく,取引先から不当な要請を受けても,何が問題なのか分からないケースもあると思う。こうした小規模事業者にも目配りを怠らないでほしい」といった貴重な御意見をいただいたところでございます。このような生の声を,今後の私どもの施策に生かしていきたいと考えております。
先ほど申し上げましたように,指導件数が昨年度上半期より増えており,依然として下請事業者は厳しい対応を迫られている状況の中,公正取引委員会といたしましては,引き続き,下請法違反行為の未然防止に努めるとともに,例えば,下請事業者が受ける不利益が重大だと認められる場合に勧告を行うことを含め,迅速かつ効果的に対処することにより,下請取引等の一層の適正化に努めてまいりたいと考えております。
以上が下請法の話でございます。
TPP協定競争政策章について
もう一つは,TPP協定に含まれております競争政策に関する章についてであります。
皆さん御案内のとおり,11月5日,内閣官房TPP政府対策本部のウェブサイトにおきまして,TPP協定の暫定条文が公表されたところであります。これは10月5日,米国・アトランタで開催されたTPP閣僚会合におきまして,TPP協定が大筋合意に至ったことを受けたものであります。
TPP協定の競争政策に関する章では,競争法の執行に係る手続の公正な実施や締約国間,競争当局間の協力などの規定が設けられているところであります。このうち,「競争法の執行における手続の公正な実施」の一部といたしまして,TPP協定の競争政策章には,各締約国は,自国の競争当局に対して,競争法の違反の疑いについて競争当局と事業者との合意により自主的に解決する制度の導入に関する規定が含まれております。現在,公正取引委員会におきましては,この内容の規定を担保するためにいかなる制度的な対応が必要であるかということを検討しているところでありますが,このような制度は,競争上の問題の早期是正,当局と事業者が協調的に事件処理を行う領域の拡大によりまして,独占禁止法の効果的,効率的な執行に資するものであると考えております。また,「独占禁止法審査手続についての懇談会」におきましても,平成26年12月に取りまとめられた報告書におきまして検討を進めていくことが適当とされた制度であります。検討の結果,独占禁止法を改正する場合には,TPP協定の国内担保法の一つとして,他の国内担保法と同じ時期に,国会に改正法案を提出することになると考えております。
質疑応答
(問) 今後のスケジュールに関してですが,他の担保法と同時にという趣旨だと思うのですけども,他の担保法との兼ね合いは別として,独占禁止法に関しては年明けの通常国会に改正案は出せる状況でしょうか。
(事務総長) 他の担保法も,今,私の理解では,政府部内の担当省庁におきまして,鋭意作業を進めていると思いますが,私どももまだ検討中でございます。今出せる状況にあるかといえば,まだ検討して,なるべく早く改正するかどうかの結論と,改正する場合にはどういう仕組みだとか,具体的な案文について成案を得たいと考えております。今の段階でもう準備ができているという状況にはありません。
(問) TPPの協定の中に自主的に解決する制度の導入の規定が盛り込まれたことについては,公正取引委員会として,どう評価されているのか,あるいは企業活動への影響等をどうみていらっしゃいますか。
(事務総長) 今の独占禁止法そのものには,ここで紹介いたしましたような仕組みは直接には無いわけであります。したがいまして,今までの独占禁止法の制度に加えて,このように事業者と私どもの合意によって競争法上の懸念,あるいは懸念の対象となった行為を早期に無くす,排除して競争状態を回復するという,もう一つのチャネルといいますか,ルートができるということは,私どもにとっても,先ほど申し上げましたように,効果的,効率的な独占禁止法の執行と,競争状態の早期回復ということで,望ましい制度だと思っております。
(問) 日本企業がその12か国の域内で活動する上で,これはプラスになるのですか,マイナスですか。
(事務総長) 日本企業が例えばアメリカに行く,その他,TPPの加盟国に行った場合に,こういう制度があるということは,海外の競争当局から調査を受けると,訴訟に行く場合も含めて,それに対する対応,コストがかかるわけで,そのコストが軽減されるということと,それから,これは制度の仕組み次第でありますけれども,例えばEUの確約でありますとか,アメリカの制度におきましては,違反行為を認定しないということにおきまして,企業側にも更にメリットがあるだろうと思います。
(問) この1ページ目のTPPの関連で,「合意により事件を解決する制度の導入」というのが真ん中の方にあるのですけど,ほかにも幾つか規定の内容が挙げられているのですけど,例えば1つ上の「処分前の事業者による意見陳述の機会の確保」というのは,正に昨年度から始まった意見聴取手続とかが既に整備されているものだと理解していますが,例えばここの1つ下の「被害者の民事的救済」だとか,合意により事件を解決する制度以外で新たに整備が必要なものというのは,この中にあるのでしょうか。
(事務総長) 詳しくは,先ほど申し上げました内閣官房のTPPのところに,英語でございますが,大筋合意のもととなった暫定の条文が出ておりますので,それを見ていただければ,例えばこの被害者の民事的救済を求める権利ということが具体的にどう書いてあるかというのはお分かりになると思いますけれども,そこの点も含めて,先ほど申し上げた,この自主的な解決制度以外は,私どもは現行の独占禁止法のもとで十分担保されていると理解しております。
以上