[配布資料]
(平成27年6月3日)平成26年度における下請法の運用状況及び企業間取引の公正化への取組
[発言事項]
事務総長会見記録(平成27年6月3日(水曜)13時30分~於官房第1会議室)
平成26年度における下請法の運用状況及び企業間取引の公正化への取組について
本日,私からはお手元にお配りしております「平成26年度における下請法の運用状況及び企業間取引の公正化への取組」につきまして,お話をさせていただきたいと思います。
まず,平成26年度の下請法の運用状況についてですが,概要ペーパーの1ページ目,本文の2ページ目にありますように,下請法違反事件の処理状況につきましては,平成26年度は7件の勧告を行いました。そのほか,5,461件の指導を行いましたが,この指導件数は,昭和31年の下請法施行以降,過去最多となるものであります。
7件の勧告は,全て製造委託に係るものでありました。また,違反行為類型でみますと,下請代金の減額が6件,返品が2件,買いたたきが1件となっております。
平成26年度における下請法の事件処理の特徴といたしましては,まず1点目としまして違反措置件数が平成25年度の4,959件から5,468件,これは指導と勧告合わせた数字でございますが,5,468件に増加いたしました。その中でも,本文の9ページ目に記載しておりますように実体規定違反件数が平成25年度の2,250件から約2倍の4,529件に増加しております。さらに,2点目の特徴として,この実体規定違反の中でも,特に買いたたきが平成25年度の86件から8倍を超える増加率で735件となっておりますし,支払遅延は平成25年度の1,488件から約2倍の2,843件と大きな増加をみせております。
次の本文12ページ目に,親事業者が行った下請代金の減額分の返還など,下請事業者が被った不利益の原状回復について記載しております。平成26年度におきましては,原状回復を行った親事業者が209名でありまして,下請事業者4,142名に対して総額8億7120万円分の原状回復が行われたところであります。
次に本文14ページ目に,下請法違反行為を自発的に申し出た親事業者に係る事案について記載しております。平成26年度におきましては,親事業者からの自発的な下請法違反の申出は47件ございました。また,平成26年度に処理した自発的な申出は26件でありまして,そのうち1件につきましては,違反行為の内容が下請事業者に与える不利益が大きいなど勧告に相当する事案でありました。自発的な申出に係る原状回復の状況につきましては,下請事業者396名に対しまして,総額5217万円分の原状回復が行われたところであります。
親事業者からの自発的申出につきましては,平成25年度の件数は12件でございましたので,親事業者のコンプライアンス意識の向上などが,自発的申出件数が多くなった要因ではないかと考えております。今後とも,より一層この制度が活用されることを望む次第であります。
今申し上げましたように,平成26年度におきましても,公正取引委員会は,下請法違反行為に対しまして迅速かつ効果的に対処してきたところでありますが,加えて,下請法の運用に当たりましては,違反行為の未然防止を図るということも非常に重要でありますので,公正取引委員会としては,企業間取引の公正化へ向けた各種の施策をかねてより実施してきているところであります。
本文15ページ目以降の「第2 企業間取引の公正化への取組」において,様々な取組が書かれてあります。下請法や優越的地位の濫用規制のより効果的な普及・啓発を図る観点から,例えば,下請法基礎講習会,下請法応用講習会,業種別講習会など,参加者の習熟度,業種に応じた各種の講習会を開催し,きめ細やかに対応してきているところであります。
中でも下請法基礎講習会につきましては,平成26年度は全国47都道府県全てで開催したところでありまして,平成27年度も引き続き全国47都道府県全てで開催する予定としております。
また,これらの講習会のほかに,中小事業者からの求めに応じまして,公正取引委員会の職員が地方に出向く「中小事業者のための移動相談会」を開催したり,事業者団体が開催する研修会などに講師を派遣しているところであります。
さらに,公正取引委員会は,中小企業庁と共同いたしまして,毎年11月を「下請取引適正化推進月間」といたしまして,この期間内に,下請取引適正化推進講習会を全国47都道府県で開催するなど,下請法の普及・啓発を集中的に行っているところであります。
先ほど申し上げましたように,指導件数は過去最多となり,依然として下請事業者は厳しい対応を迫られている状況の中,公正取引委員会としては,引き続き下請法違反行為の未然防止に努めるとともに,例えば,下請事業者が受ける不利益が重大であると認められる場合には,勧告を行うなど厳正,迅速かつ効果的に対処することにより,下請取引等の一層の適正化に努めるまいる所存であります。
質疑応答
(問) 昨年度,違反行為は過去最多ということで,特にその要因として,支払遅延と買いたたきがすごく増えているということですが,その背景というのは,どのようなものがあると分析されていますでしょうか。
(事務総長) 平成26年度の違反行為,特に買いたたきや支払遅延の違反件数が増加したということの背景,要因といたしましては,様々なものが考えられると思いますけれども,この1つには,下請取引を巡る経済情勢の厳しさというものも挙げられると思います。多少細かくなりますけれども,平成26年度に措置を採った事件のほとんどは,私どもが平成25年度に行いました親事業者,下請事業者に対する書面調査を端緒としているところでありますが,この書面調査が対象とした期間は,おおむね平成24年の半ばから平成25年の末にかけてでございます。
この調査対象期間当時は,為替の水準がおおむね円安の方向に振れておりまして,こうした為替の動きを背景といたしまして,原材料,エネルギーコストが上昇局面にあるなど,下請取引を巡る経済情勢には厳しいものがあったと認識しております。
加えまして,このような厳しい経済情勢を踏まえまして,私ども公正取引委員会としては,特に買いたたきに関しまして,先ほど申し上げました書面調査の質問の記載を,回答される事業者の方により分かりやすく工夫したところでありまして,その上で,いただいた情報につきましては,特に買いたたきにつきまして,きめ細かく精査したということもございますので,これも買いたたきの違反行為が増加した1つの要因と考えております。
(問) グラフを見ても,違反件数は右肩上がりに増えていまして,近年特に伸び率が上がっているようで,円安もまだ続いていると思いますけど,改めて今後の下請法分野の監視への取組とか決意のようなことをお願いしたいと思います。
(事務総長) かねてよりいわれていることでございますけども,下請法違反行為というものは,それを受けている下請事業者は,公正取引委員会に申告といいますか,違反行為について情報を提供するということをためらわれる,そういう特殊な取引環境にあると思います。したがいまして,私どもとしては,先ほど申し上げましたように,親事業者と下請事業者の両事業者に対しまして書面調査を行うことによりまして,できるだけ積極的に情報を収集するということに努めてきているところであります。この積極的な情報収集活動を更に強めるとともに,今申し上げましたように,経済,特に下請取引を巡る経済環境というものは,楽観できる状況にないということが我々の認識でございますので,今後ともその書面調査,あるいはその他の情報収集活動を通じて,下請違反行為の是正というものに努めていきたいと思っています。また,先ほど申し上げたように,何よりも,親事業者がコンプライアンス意識を高めて,下請法違反行為を起こさないということも大事でございますので,併せて親事業者,下請事業者に対しまして,どういう行為が下請法違反になるのかということについての普及・啓発活動にも,引き続き力を入れていきたいと思っております。
(問) 今もお話ありました総件数自体は,ここ数年右肩上がりで増えているかと思うのですけれども,一方で勧告件数をみると,右肩下がりで減少しているようにみえるのですが,単純にみると不思議な感じがしますが,この辺りどのようなことで,勧告件数が減ってきているようにみておられますか。
(事務総長) 勧告につきましては,下請法違反行為の中で,下請事業者に与える不利益の程度が大きいものにつきまして,私どもとして勧告,公表をさせていただいているところでございます。結果として,最近数年間は,今御指摘のとおり,以前の年度に比べると少なくはなっておりますけれども,先ほども申し上げましたように,違反行為に対する指導件数,あるいは私どもが新規に着手した件数は増えておりますので,この勧告件数については,平成26年度に措置した違反行為につきまして,先ほど申し上げました,下請事業者に与える不利益の程度が非常に大きい勧告相当事案が7件であったと御理解いただければと思います。
以上