ホーム >報道発表・広報活動 >事務総長定例会見 >平成28年 >4月から6月 >

平成28年4月20日付 事務総長定例会見記録

平成28年4月20日付 事務総長定例会見記録

 [配布資料]

独占禁止懇話会第203回会合議事概要について(平成28年4月20日公表資料)

 [発言事項]

事務総長会見記録(平成28年4月20日(水曜)13時30分~於官房第1会議室)

独占禁止懇話会第203回会合議事概要について

 本日は,まず4月7日に開催されました独占禁止懇話会(独禁懇)の概要についてお話しさせていただきたいと思います。今回の独禁懇では4つのテーマ,「知的財産の利用に関する独占禁止法上の指針」の一部改正について,「適正な電力取引についての指針」の改定について,「独占禁止法審査手続に関する指針」の策定について及び学生向け広報活動(独占禁止法教室)について報告し,それぞれ会員の方から御意見等を頂いたところであります。
 今回の独禁懇において会員から頂いた御意見等の内容につきましては,本日公表したお手元の議事概要を御覧いただければと思いますが,そのうちの幾つかの御意見等をここで例示的に紹介させていただきたいと思います。なお,独禁懇で配布した資料につきましては,公正取引委員会のホームページにアップしておりますので,御関心のある方はそれを御参照いただければと思います。
 まず,最初の議題であります「知的財産の利用に関する独占禁止法上の指針」の一部改正につきましては,御意見といたしまして,お手元の資料の2つ目でございますが,「今回の一部改正は技術革新のスピードに対応した適切な見直しと考えられる。パブリックコメントで提出された意見に対する公正取引委員会の考え方に示されているように,今回の一部改正が特許権者の権利を制限するものではなく,知的財産権の保護及び活用のバランスを図ることを明確化するための改正であることを強調することが重要である」という御意見を頂いたところであります。
 また,2つ目の議題,「適正な電力取引についての指針」の改定につきましては,2ページ目の一番上のところにありますが,「区域において一般電気事業者であった小売電気事業者が,他の携帯電話事業者と業務提携してセット割引する場合,排他的条件を付すことが当然と考えられることから,原則として,新規参入者の事業活動を困難にさせるおそれがあるのではないか」という御意見を頂きました。これに対しましては,当方から,御指摘のような事例においては必ずしも排他的条件が付されるとは限らないわけですが,小売電気事業者が,携帯電話事業者との業務提携に際して,自己の競争事業者との業務提携をさせないことにより,その競争事業者の事業活動が困難となる場合には,独占禁止法上違反となるおそれがある旨を回答したところであります。
 3つ目の議題,「独占禁止法審査手続に関する指針」の策定につきましては,例えば,1番目にありますが,「本指針には,『立入検査の円滑な実施に支障がない範囲で弁護士の立会いを認める』とあるが,弁護士が立ち会うことにより立入検査の円滑な実施に支障が生じる場合とは,具体的にどのような場合なのか」という御質問を頂いたところであります。これに対しましては,当方から,基本的には,弁護士が立ち会うことにより立入検査の円滑な実施に支障が生じるとは考えておらず,限られたケースになると思いますけれども,例えば,立入検査の必要性を何度も執拗に尋ねるなどしまして,立入検査の着手や進行を遅らせるような場合には,円滑な実施に支障が生じるものと考えております旨を回答いたしました。
 また,4つ目の議題であります学生向け広報活動につきましては,例えば,「独占禁止法教室については,広報活動という位置付けのようだが,消費者教育であるということを強く意識してほしい。また,本活動を更に拡大するとともに,アウトカム指標を設定するなどして戦略性を持って取り組んでほしい」との御意見を頂いたところであります。私どもとしては,消費者教育であるということも十分認識しているところでありまして,今後は,各地の教育委員会に働きかけるなどして,対象を更に拡大していくことも考えていると回答したところであります。
 公正取引委員会といたしましては,今回頂いた御意見等も踏まえまして,今後とも,適切な独占禁止法等の運用に努めてまいりたいと考えております。

農業分野における独占禁止法違反行為に係る情報提供窓口の設置について

 もう一つ,農業分野の公正取引委員会の取組について,一言申し上げたいと思います。
 先週の4月15日に,農業分野における独占禁止法違反被疑行為に係る情報を広く受け付けるための窓口として,専用の情報提供窓口を設置し,その旨を公表したところであります。今後,農業者をはじめとする皆様に対しまして,この窓口の設置について広く周知し,積極的な情報収集を行っていきたいと考えております。
 また,この独占禁止法に違反する疑いのある行為に係る情報に接した場合に,公正取引委員会として効率的な調査を実施するための農業分野タスクフォースにつきましても,現在,その速やかな設置に向けて,鋭意準備を進めているところであります。

質疑応答

(問) 農業関連の窓口設置のことですけれども,昨今の農協改革の流れの中で,今回,専用の窓口を設置するに至った経緯,どういったことが期待できるかをお願いできますでしょうか。
(事務総長) 公正取引委員会といたしましては,かねてより農業分野における独占禁止法違反行為につきましても厳正に対処をするとともに,いわゆる農協ガイドライン,正式には「農業協同組合の活動に関する独占禁止法上の指針」を作成,公表し,独占禁止法の考え方を明確化することによってその未然防止を図るなど,取り組んできたところであります。
 その上で,昨年成立した農業協同組合法改正法が本年4月に施行されるなど,一連の農業改革が行われている中で,公正取引委員会としても,今後この農業分野において一層の競争の確保が重要であるという認識の下で,今申し上げたような窓口の設置,それから農業分野タスクフォースを設置するということについて決定をしたものであります。
 窓口の設置,それから近々スタートします農業分野タスクフォースの活動によって,より広い情報が私どもの方に提供され,それに基づいて農業分野タスクフォースが必要な調査をし,適正な対応をとっていく,そのことによって,農業分野における競争環境が一層整備されるということを強く期待しております。
(問) こういう窓口を設置することによって,主に農家の方だと思うのですが,情報を寄せやすくなるというのはあると思うのですけれども,逆に農協側への注意喚起という狙いもあるのでしょうか。
(事務総長) 情報窓口を設置するわけですから,違反と疑われるような行為をした場合には,公正取引委員会に情報が寄せられるということが,農協の方々にとってある程度の牽制効果はあると思いますけれども,基本的には,農業に従事している方から直接,幅広く情報を頂くことを狙ったものであります。
(問) 農業分野タスクフォースの設置に向けて準備を進めているということですけれど,位置付けとしては,既にある優越タスクフォースと同じように,農業分野でも排除措置命令まで至っているものも過去にはありますが,注意なり警告なりを迅速に数多く処理していく,そういう仕事のやり方になるのでしょうか。
(事務総長) 初めから数のことを念頭に置いているわけではありませんが,農業分野における独占禁止法の違反被疑情報が寄せられた場合に,それを効率的に調査し,効果的な対処方法を考える,事案の性格に応じて排除措置命令まで行くものもあれば,警告,注意でとどまることもありますけれども,農業分野タスクフォースにおいて集中的に調査,処理するという点で,優越タスクフォースと似た発想で設置をしようと考えているところであります。

(問) 農業分野タスクフォースは,どのくらいの人数,規模になりますでしょうか。
(事務総長) 詳細につきましては,今まさに検討しているところで,具体的なことを申し上げる段階にはないと思いますけれども,審査局の管理職であります審査長をヘッドとして,それから農業分野という特殊性もありますので,本局のほか,地方事務所等の審査担当職員をメンバーとして構成したいと考えております。
(問) 農業分野で,例えば優越みたいな行為とか,典型的にどういった違反行為というのが考えられるのでしょうか。
(事務総長) それはまだ情報が来ないから分かりませんが,想定されるものとしては,この数年みても,公正取引委員会として,農業協同組合に対しまして,直近で言えば,昨年の1月16日に福井県経済農業協同組合連合会に対して,これは私的独占の事件として排除措置命令を出しましたし,また,警告でございますけれども,平成26年9月11日に山形県の庄内地区に所在する農業協同組合について,3条後段違反ということで措置を採ったものもあります。これからどういう情報が寄せられるか,様々だと思いますけれども,独占禁止法の定める不当な取引制限,私的独占,あるいは不公正な取引方法,過去の事例をみると,多種多様にありますので,独占禁止法に違反する疑いのある情報が寄せられた場合には,迅速厳正に対処していくということでございます。具体的にどんな事件がということについては,過去の事例をみていただければと思います。
(問) 3条なり19条,不公正な取引方法なり,どちらかに重きを置くというのではなくて,幅広くということですか。
(事務総長) 優越タスクフォースは名前から優越ということになりますけれども,農業分野における独占禁止法違反事件を効率的に審査するという目的で設置するものでございますから,あらかじめ独占禁止法の違反行為類型としてこれであると想定しているものではありません。

(問) 独占禁止法研究会の関連でお尋ねしたいと思います。今週で第3回,まだ序盤だとは思うのですけれども,資料の中で,公正取引委員会が現行制度の問題点,課題として挙げられている事例が幾つかあって,大まかなくくりとして,技術的に現行の画一的制度では実態にそぐわなくて問題が生じているというパターンと,単純に調査を進める中で,企業側が協力するインセンティブがないという中で,効率的な調査ができていないという問題があるのかと思うのですけれども,裁量型が仮に導入されるとなれば,技術的な当てはめがうまくいかないという問題と,企業側が調査に協力しやすくはなっていないという問題,その2つはリンクして解決していくものでしょうか。それともそれぞれ別個の問題でしょうか。
(事務総長) 今後の独占禁止法研究会における議論ということでございますので,今の2つの指摘された点がどうかかわってくるかというのは,私として予断をもって言えませんが,いわゆる裁量型課徴金というときには,確かに調査に対する協力を促すインセンティブを与えるような裁量制だけではなくて,先ほどの御指摘の1点目,例えばグローバル化した企業活動の中で行われる独占禁止法違反行為,競争法違反行為に対して,個別事案に応じて適正な課徴金を課せられない,それによって,独占禁止法違反の抑止が期待されている課徴金制度の目的を達せない,そういうことがあります。その点からは裁量制といっても,協力を促すインセンティブ等をもたらすような裁量制とは違うと言えるかもしれませんが,この2つが全く別個のものかというのは,この段階で私がどうこう言うのは,適当ではないと思います。
 その上で個人的な意見を申し上げるならば,協力を促すようなインセンティブというものと,1点目の,個別具体的な事案に応じて,適切な措置をグローバル経済の下でやっていくということがリンクする場合もあり得るだろうと思います。対象企業が私どもに調査協力することによってグローバル化の下であるいは他の競争当局との協力が促進されるということもあり得るでしょうし,全く別の2つの議論になるかというのは,今の段階で私はそうだというような断言はできないと思います。
(問) 経済がグローバル化する中での,違反の実態に見合った課徴金を課すことが現行制度では困難な部分もあるという話でしたけれども,幾つか現行制度の技術的な課題として,グローバル化に対応できていないという部分も事例として挙げられていましたし,一方で,いわば日本国内で完結している違反についても業種別の算定率の違いですとか,除斥期間の関係とかで,当てはまらないという事例も問題点として挙げてはいると思うのですけれども,そういった中で,グローバル化対応というのは,数ある課題の中でも優先的に今後の公正取引委員会の仕事のやり方として,優先的に解決しなければいけない課題だと考えているのでしょうか。
(事務総長) 答えからすると,そういう課題の一つだと考えています。経済,企業活動がグローバル化していても,国内で完結する違反行為があるというのはおっしゃるとおりですが,しかし,国内でのみ活動している人が外国の競争当局から違反を指摘されることもあり,全く国内で完結して,海外の市場なり海外当局と関係のない,競争法と関係のないものは,思うよりは範囲が狭いのではないかという気もします。もちろん国内で完結する違反行為というのもあると思いますが,それはきちっと取り締まっていく,その上でも,やはり今の画一的な課徴金制度というのは,いろんな問題点があるというのは事実でございますので,それを含めて課徴金制度の見直しについて,幅広い観点から研究会で御検討いただくのだと思います。
(問) 日本でも裁量型の制度を導入することによって,海外当局とより連携しやすくなるということはあるのでしょうか。現行,裁量型を持っていない日本の公正取引委員会では協力できないとなっていた部分まで海外当局と協力が進む,そういった狙いというのはあるのでしょうか。
(事務総長) これは一般論としてお答えさせていただきますけれども,グローバル化が進んでおりますので,各国の競争法の体系,法制度なり運用があまりに違っていると,その中で活動する企業にとって,企業結合審査のことを一つ考えれば明らかだと思いますけれども,余計なコンプライアンスコストがかかるということは事実だと思います。それから,リニエンシーにしてもそれぞれの制度が違うと,各国にまたがる活動をしている企業にとっては,コンプライアンスコストがかかるということもありますので,可能な範囲内ではありますが,各国競争法の整合性がとられることは重要だと思います。
 課徴金につきましては,日本の画一的に賦課する制度というのは,一方で予見可能性という観点からはメリットのある制度だと思いますが,他方で,先ほど申しましたそれぞれの個別の事情に応じて適正な水準の課徴金を課す,そのことによって違反行為を抑止するという課徴金の目的が,画一的な今の課徴金制度の下で十分果たせるかどうかというのが問題意識でございますので,そういう点でも日本の課徴金制度は多くの外国の制度とは違う点がある。そこは先ほど申し上げたような一般論の観点に立っても,なるべく整合性を図ることは望ましいと,私どもは考えております。
 いずれにいたしましても研究会で委員の方の御議論があるところでございますので,あくまでも私の個人的な意見として承っていただければ幸いです。

以上

ページトップへ