[配布資料]
独占禁止法に関する相談事例集(平成28年度)について(平成29年6月21日公表資料)
独占禁止法に関する相談事例集(概要)(平成28年度)(PDF:142KB)
事業者団体等が実施する研修会等への講師派遣(御案内)(PDF:87KB)
[発言事項]
事務総長会見記録(平成29年6月21日(水曜)13時30分~於官房第1会議室)
独占禁止法に関する相談事例集(平成28年度)について
本日は,まず相談事例集について御紹介したいと思います。
公正取引委員会では,毎年度,独占禁止法に関する相談事例集を取りまとめて公表しており,本日,平成28年度の相談事例集を公表することといたしましたので,お手元の概要版に沿って簡単に御紹介したいと思います。
この概要版の1頁目には独占禁止法に関する相談件数を記載しております。公正取引委員会では,事業者や事業者団体がこれから行おうとする行為が独占禁止法上問題とならないかどうかについての相談を受け付けておりまして,平成28年度については合計1,428件の相談が寄せられたところであります。
2頁目には相談事例集の趣旨を記載しています。相談事例集は,事業者等から寄せられた個別の相談の中から,相談者以外にも参考になる事例を選びまして,独占禁止法上の考え方を分かりやすく説明したものであります。今回の平成28年度の相談事例集には,合計12の事例を掲載しておりますが,そのうちいくつかの事例について御紹介したいと思います。
まず,3頁目からの「事例1」でございますが,これは,家電メーカーが販売委託先の小売業者に対して家電製品の販売価格を指示することについて,主に再販売価格の拘束の観点から検討したものであります。
御案内のとおり,メーカーが,流通業者の販売価格を拘束する行為は,「再販売価格維持行為」と呼ばれ,流通業者間の価格競争を減少・消滅させることになるため,原則として違法としています。一方,本件は,商品売れ残りのリスク,商品の滅失・毀損といった在庫管理のリスク,並びに消費者への販売における代金回収のリスクにつきまして,小売業者が負担しているとまではいえず,当該小売業者は単なる取次ぎとして機能しており,実質的にみてメーカーが販売していると認められ,独占禁止法上問題となるものではないと回答したものであります。
その下の「事例3」でございますが,これは,家電メーカーが,共同研究開発の参加者である部品メーカーに対しまして,成果である技術の供与及び当該技術を用いた製品の販売を第三者に行うことを一定期間制限する際,特定の競争者に対してのみ制限期間を長期とすることについて,主として拘束条件付取引の観点から検討したものであります。
第三者への技術の供与等を合理的な期間に限って制限すること自体は,技術の競争者への流出を防止するとともに,共同研究開発に要した投資の回収のために必要とされる範囲のものと考えられることから,原則として独占禁止法上問題となるものではないと考えておりますが,一方で,特定の競争者に対してのみ制限期間を長期とすることにつきましては,技術を用いた製品が広く使用され,当該技術が競争上重要なものとなれば,当該特定の競争者における取引の機会を減少させるおそれがあり,また,制限期間に差を設けることに特段の合理的な理由も見当たらないことから,本件については,独占禁止法上問題となるおそれがあると回答したものであります。
次に,4頁目の「事例7」でございますが,これは,食料品メーカー2社が,商品配送の効率化のため,遠隔の地域に所在する卸売業者への配送を共同化することについて,主に不当な取引制限の観点から検討したものであります。
本件は,まず第一に,2社が製造販売する食料品の販売価格に占める物流経費の割合は小さいこと,加えまして2点目に,2社ともに食料品の販売価格に関する情報は物流子会社に対しても一切伝えない等,適切な情報遮断措置を採ることとしていることから,独占禁止法上問題となるものではないと回答したものであります。
この平成28年度の事例集には,今,御紹介した事例も含め,先ほど申し上げましたように全部で12の事例を掲載しております。その個別の内容について御質問等のある方は,相談指導室の方にお問い合わせいただければと思います。
なお,相談事例集は,毎年度,公正取引委員会のホームページに掲載しておりますが,前回の平成27年度の相談事例集につきましては,公表日であります平成28年6月15日から平成29年3月末日までの約9か月間に約1万4000件と多くのアクセスをいただいたところであります。
これらの相談事例集のほか,公正取引委員会では,独占禁止法等につきまして理解を深めていただくため,事業者団体等が主催する研修会等への講師派遣を行っております。詳細は,本日,併せてお配りしております公正取引委員会ウェブサイトの関連ページに記載しておりますので,事業者団体等の皆様には積極的に御活用いただきたいと考えております。
公正取引委員会としては,事業者等におきまして,相談事例集を活用することなどにより,独占禁止法の考え方への理解が一層深まり,違反行為の未然防止が図られることを期待しているところであります。
「流通・取引慣行に関する独占禁止法上の指針」の改正について
もう1点,流通・取引慣行ガイドラインの改正につきまして,一言したいと思います。
御案内のとおり,公正取引委員会は,今年の4月7日から5月10日までの間,流通・取引慣行ガイドライン改正案のパブリックコメント手続を行ったところであります。今回のパブリックコメント手続に対しましては,事業者,団体,学者,弁護士等の各方面合わせて23名から様々な御意見が提出されたところでありますが,全体的には今回の改正を評価してくださる内容が多く見られたと認識しております。
公正取引委員会は,提出された御意見を慎重に検討し,それらを踏まえ,改正案を一部修正した上で,先週6月16日に成案を公表したところであります。修正の内容は,実質的な内容というよりは,文言上の明確化を図るもの等であります。
公正取引委員会としては,本改正の内容を十分関係者に周知し,事業者及び事業者団体の独占禁止法違法行為の未然防止とその適切な活動の展開に役立てるとともに,引き続き,独占禁止法を厳正・適正に運用していきたいと考えております。
質疑応答
(問) こちらの相談事例集なんですけれども,これは去年,設けられた農業であるとかITであるとかガスであるとか,相談窓口があったかと思うんですけど,そちらに寄せられた相談案件も入っているかどうか教えてください。
(事務総長) 年度的なこともありますが,そもそも農業,デジタル,電力,ガス等の,ガスは最近設けたばかりでありますが,その窓口は審査局の中に設けましたので,主として我々が想定しているのは,こういう違反と思われる行為が事業者側にあったと,その事業者の取引相手あるいはライバルの事業者等から,私どもに,例えば,申告でありますとか情報が寄せられることを想定しております。その中に,本来,相談指導室に来るべき,今後,こういう行為について企画しているけども,独占禁止法上,どう判断するかという,将来の行為についての話が,仮に,そういう窓口に寄せられれば,相談指導室の方に回して,そこで判断させていただくということでございます。繰り返しになりますけれども,各種分野の情報窓口,専門の情報窓口は,違反行為と思われるものが行われた場合に,それについての情報を寄せていただくために設けたものであります。
(問) 相談件数なんですけれども,平成27年度より少し増えているような感じだと思うんですが,ここ数年,増加傾向にあるとか,ここしばらくの傾向のようなものについて,教えていただければと思います。
(事務総長) ここには2年度分しか書いてありませんが,少し遡りますと,今回,今年に急に増えたというわけではありませんで,私の記憶が正しければ,平成26年度の相談件数は1,400件くらいだと思いますから,特別,件数でどうこうということはないと思います。ただ,その内容は,それぞれの時々の経済情勢等を反映したもので,いろいろ相談が寄せられることはあると思いますけれども,その件数の多くは単純な独占禁止法の解釈の問題でありますとか,そういう質問でございますので,今後,将来,企業が予定している活動について,独占禁止法上問題となるかどうか,それについて,この事例集で,他の事業者の参考にもなるものとして挙げるというのはそんなに多いものではありません。
(問) 先ほど,毎年,経済の状況によって,いろいろ多少の変化があるということなんですけども,今年は何か特徴的なものはありましたでしょうか。
(事務総長) これは寄せられる相談ですから,先ほど申し上げた趣旨は,それぞれの経済情勢の中で,企業が企画している行動について我々に寄せられるということを申し上げたかったわけであります。この事例集は,他の事業者にとって参考となる事例ということでございますので,その時々の経済情勢を直接反映したケースそのものとも違うと思いますし,事業者の相談がどこまでその時々の経済情勢を的確に反映しているかというのも,なかなか我々,そこまで分析しておりませんので,一概に申し上げることはできません。これは私の個人的な感想でございますけれども,3年前の平成26年度に,我々の流通・取引慣行ガイドラインにつきまして,規制改革会議等で取り上げられて,一部,内容の明確化でありますとか,セーフハーバーの議論が出た当時は,そもそも単純な照会も含めた件数も多いんですが,事例集自体も,平成26年度は確かこの流通関係のものが結果的に多かったというふうに私は認識を持っていますので,そういうところで,その時々の事業者が,直面している経済情勢等が一部反映されているものだったと思っています。ただ,これはあくまでも私の印象でございまして,別にその経済情勢がどうであって,それに対してどういう相談があったかと分析をしているわけではありませんので,そういうものとして受けとめていただきたいと思います。
以上