[配布資料]
「発展途上国に対する競争法・競争政策に関する技術研修の実施について」(平成29年7月21日公表資料)
[発言事項]
事務総長会見記録(平成29年7月26日(水曜)13時30分~於官房第1会議室)
発展途上国に対する競争法・競争政策に関する技術研修の実施について
本日,私の方から二つほどお話しさせていただきたいと思います。
一つは,発展途上国に対します技術研修でございます。経済のグローバル化が進み,我が国企業の海外進出も盛んに行われている中で,進出国において市場メカニズムが十分に機能しない場合や,各国における競争法制が大きく異なる場合には,国際的な事業展開をしていく我が国企業に大きな不利益が及ぶおそれがございます。
他方,発展途上国の側からも,当委員会の法制度の運用につきまして学びたいというニーズが寄せられております。
このため,公正取引委員会は,発展途上国に対する技術支援に力を入れてきておりまして,その取組の一つとしまして,独立行政法人国際協力機構(JICA)の御協力をいただいて,発展途上国に対する競争法・競争政策に関する訪日集団研修を行っております。
お手元に資料をお配りしておりますが,今年度の研修は,7月24日から8月10日にかけまして,神戸,東京で開催することとしております。裏面の別紙に具体的に書かれておりますけれども,今回は17カ国の競争当局等の職員22名の参加をいただいております。
この訪日研修は,平成6年度から行っておりまして,今年で23回目になります。これまでに65カ国,260名の参加をいただいております。
この研修は,発展途上国の競争当局等の職員を対象に,我が国の独占禁止法とその運用に関する知識を習得する機会を広く提供し,発展途上国における競争法の導入又は運用の強化に資することを目的としております。今年度の研修におきましては,学識経験者による独占禁止法及び競争政策の解説,公正取引委員会職員によります独占禁止法違反事件に係る審査手続や企業結合審査の紹介などを行うこととしております。
公正取引委員会が行っております技術支援としましては,このほかに,JICAの協力の下で国別のプロジェクトというものがございまして,インドネシア,モンゴル,ケニアなどを中心に,こちらに来ていただく訪日研修,現地に我々が赴く現地セミナー,あるいは長期専門家派遣などの事業を積極的に実施してきております。
また,昨年の9月からは,ASEAN加盟国の競争当局を対象としまして,それらの国々の競争法の執行力強化のために,日ASEAN統合基金を活用した新たな技術支援プロジェクトも開始しております。
さらに,政府によりますアフリカに対する積極的支援の方針を踏まえて,本年7月にジュネーブにおきまして,UNCTADとの共催によりますアフリカの競争当局を対象としました審査実務セミナーを開催するなど,アフリカの当局に対しても技術支援を行ってきております。
公正取引委員会としましては,発展途上国が競争政策の分野において持続的かつ自立的な発展をしていけるよう,今後とも継続的な技術支援を行ってまいりたいと考えております。
独占禁止法施行70周年について
二つ目でございます。以前にもお話しした点ではございますけれども,今年,独占禁止法の施行70周年を迎えております。そして,公正取引委員会の委員長談話を7月20日に当委員会のホームページなどにも掲載して公表しております。
その内容につきましては,既に公表されておりますので,本日は触れませんけれども,今後,雑誌への寄稿ですとか,学会等における講演など,様々な場で,その考え方,内容などについて発信をしていきたいと考えております。
その第1弾としまして,9月9日に日本経済学会の秋学会におきまして,特別セッションの時間をいただいております。その中で,「競争政策の歴史的回顧と現代的意義」と題しまして,委員長が講演を行う予定になっております。
質疑応答
(問) 昨日,ふくおかフィナンシャルグループと十八銀行の結合について,期限を設けずに延期という発表がありました。公正取引委員会の方では,2次審査を行っていたかと思いますが,期限をつけずに無期延期になった場合に,公正取引委員会としては,申請を一旦取り下げてもらう形になるんですか。公正取引委員会の方の手続としてはどうなんですか。
(事務総長) 既に企業結合の届出は出されておりますので,私どもは,出された届出に従って審査を行っているということでございます。
今,御質問の中にもございましたけれども,届出が出てから30日ということで,第1次審査,それでは十分な分析ができないということで,第2次審査を開始することもございます。これは当事会社側の御判断だと思いますけれども,統合の時期がどうこうということで,私どもがしなければいけない審査の内容であるとか,スケジュールであるとか,そういうものが変わるわけではございません。
(問) ということは,無期延期になっても,継続して当事会社と公正取引委員会の方で必要に応じ話し合っていき,審査は継続するという形でよろしいですか。
(事務総長) 仮にの話も含まれておりますけれども,他の案件もそうですが,当事会社側の方で統合を断念したということがない限りは,届出をされた統合計画の内容については,審査は続けるということになります。
(問) ある人から,1年以内に計画されているものを審査するので,無期限になったら一旦取り下げてもらって,準備ができた段階でまた出すという話も聞いたんですが,そういうわけではないということですね。
(事務総長) 既に届出されておりますし,そういうことはないかと思います。もちろん,当事会社側の判断で一旦取り下げて,ということがなされることがないわけではないと思います。それはあくまで一般論でございますので,本件がどうこうということではございません。
(問) 今のに関連して,改めてなんですけれども,無期限の統合の延期を決めたということで,その辺についての公正取引委員会側のコメントといいますか,受け止めをお聞かせ願いたいと思います。
(事務総長) 先ほどの御質問に対するお答えの中でも申し上げましたけれども,現在,この長崎の地銀の件につきましては,第2次審査を行っているところでございます。その統合スケジュールについて,どのようにされるのかというのは,当事会社の方の御判断でありましょうから,私どもの方でそれについて何か申し上げるということは適当ではないと思っております。
先ほどの御質問のお答えにもございましたけれども,私どもとしては,当事会社の方で,統合について進めていきたいという御意思をお持ちなのであれば,引き続き審査は継続いたしますし,その際には当事会社とも十分コミュニケーションを取りながら進めてまいりたいと思います。
(問) 両行がですね,シェアを下げるために,融資の額といいますか,一部の融資の額を他の金融機関に融通するとかですね,そういうことも説明していきたいという考えがあるようなんですが,その辺についてはいかがでしょう。
(事務総長) 何か似たようなことの繰り返しで恐縮ですけれども,私どもとしては,当事会社から提出していただいた資料,あるいはその分析でありますとか,それから様々な市場における状況というものを把握しながら,審査を進めているところでございますので,その上で,当事会社の側で競争上の問題を解消するために,何か御提案があるということであれば,それは真摯に,先ほど申し上げたような十分なコミュニケーションを取りながらですね,お話はお聞きしていきたいと思います。
私どもで,具体的に何かこういうことをしなさい,してはならないということを申し上げているわけではありません。
(問) ふくおかFG絡みのことなんですが,一般論でもいいんですが,問題解消措置の一環としてですね,当事会社は,御案内のとおり,第三者委員会で貸出を定期的に監視検討する評価の仕組みを容認するということを昨日の会見で言っているんですが,今までの事例で,問題解消措置で第三者委員会を導入したことで問題解決の一助にした例というのはあるのかということと,そもそも,公正で自由な競争を確保するための番人の公正取引委員会として,こういう第三者委員会で監視するというのは,金融庁とか経産省とか,そういうところが多いようですけど,そういった措置自体の評価というのはどういうふうに考えているのか,お願いします。
(事務総長) 個別の,問題解消するのかといった評価という点については,今,ここでそれを申し上げるのは適当ではないと思います。御質問の前半の方にございました,そうした第三者監視をするようなものがあるのかということですと,全ての案件をつまびらかに掘り返したわけではありませんけれども,あまり聞いたことはないなと。
ただ,これまでの問題解消措置の中で,適当であるとして認めたその問題解消措置を具体的にきちんと実行しているかというのをトラスティーといいますけれども,それを第三者に監視をさせる,そうしたものを盛り込んだものはあったと思います。
(問) 本件のものとは違う仕組みですよね。事後評価という感じですけど。
(事務総長) 類似のものということで,申し上げたものです。
(問) 今のふくおかの件でですが,一般論になってしまうかもしれないんですが,よく言われることでありますが,市場画定の範囲をめぐってですね,公取委と当初,往々にして認識がずれることがあると思うんですけれども,いずれにしても,今回,金融ということで,IT化,そうしたフィンテックとかが進む世の中で,そういう市場画定の範囲の考え方とかをめぐっても,これまでと違う考え方が必要ではないかという見方もありますけれども,こうしたことに対して公正取引委員会はどのように考えていらっしゃるでしょうか。
(事務総長) やはり個別の事案に関わることですので,一般論としてしかお答えようがないかと思うんですけれども,その一般論というのは,個別の事案に則して,私どもは判断していきます。アプリオリに市場はこうでなければいけないと考えているわけではありませんので,それぞれの統合案件に応じて,その競争が行われている範囲はどこなのかというのは,経済の実態に則して判断していくことになります。ですから,結果として,ここが取引分野になると認定したものが,狭い場合もあれば,極端なことを言えば,全世界というケースもあります。その競争が,地理的な分野ということであれば,どの地域で行われているか,同様に,どの商品・サービスについて競争が行われているのかということも,やはりその実態に則して判断するということで,一概に小さいところしか駄目だとか,これは絶対に全世界でしかあり得ないといったようなですね,硬直的な考え方は採っていないと思います。
(問) 金融庁,以前から地銀再編というのを長官が言い出しっぺと称されているんですけど,そもそも,今回のようなケースというのは割と容易に想定できたと思うので,事前にそういう考え方のすり合わせとか,協議とかですね,金融庁から公正取引委員会に持ちかけても然るべきものなのかどうか,そういうのがあればこういう混乱も起きていないような気もするんですが,その辺についてはいかがでしょうか。
(事務総長) 私どもは独占禁止法の権限に基づいて,企業結合案件であれば,それが競争制限をもたらすものになるのかどうかということを判断するわけですし,また,金融庁は金融庁で,金融行政の観点から,こうこうこうした方針ということでありますしょうから,それは個別ケースにおいて,お互いの考え方が必ずしも着地点として同じものにならないということは,あることもあるでしょうし,ないこともあるでしょうし,それはあらかじめ何か調整をしてというようなものではないのではないかなというふうに思います。
(問) 個別の事案。
(事務総長) 個別の事案について,それぞれ判断,考えていくことだと思います。
以上