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平成30年5月23日付 事務総長定例会見記録

平成30年5月23日付 事務総長定例会見記録

[配布資料]

平成29年度における独占禁止法違反事件の処理状況について(平成30年5月23日公表資料)

[発言事項]

事務総長会見記録(平成30年5月23日(水曜)13時30分~於官房第1会議室)

平成29年度における独占禁止法違反事件の処理状況について

 本日,私の方からは,「平成29年度における独占禁止法違反事件の処理状況」についてお話しいたします。お手元の資料は,「処理状況について」という本文と,それから「優越タスクの取組状況」という別添1,それからタスクフォースに関わる資料の別添2,そして「概要」というパワーポイントの資料と,1枚紙の「ポイント」があるかと思います。
 私からは,パワーポイントの「概要」に沿って御説明をしたいと思います。
 まず,最初の頁でございます。平成29年度におきましても,国民生活に影響の大きい独占禁止法違反行為に対して,迅速かつ実効性のある事件審査を行うとの基本方針の下,13件の排除措置命令を行いました。その内訳としましては,価格カルテルが1件,入札談合が5件,受注調整が5件,不公正な取引方法が1件,事業者団体による違反行為が1件となっております。また,平成29年度に違反事業者に対して命令しました課徴金の額は18億9210万円となっております。
 2頁目には,今,申し上げました法的措置を採りました事件を掲げています。ハードディスク用サスペンション,個人防護具や舗装工事の入札談合,制服・作業服に関する受注調整,農協の行為,それから神奈川県LPガス協会の行為などであります。
 このように,正式の措置であります排除措置命令を行うということが,審査事件の処理としては中心になるわけではございますけれども,事案の特性に応じて迅速かつ効果的な処理を行うことによって,競争秩序を早期に回復するということもまた重要であると考えております。
 3頁目のところでございますが,こうした観点から,警告,あるいは注意といった形で迅速に処理したものを掲げております。同時に,こうした行為については,類似の行為が独占禁止法・競争政策上問題があるんだということを明らかにすることによって,その他の違反行為の未然防止にもつながるというふうに考えております。
 ここに幾つか掲げておりますけれども,例えば,北海道電力によります需要家に対する差別的な料金設定ですとか,愛知県のスーパーによります野菜の極端な廉売行為,こうしたものに対して警告を行っておりますし,また,北海道の農協によります,商系業者に生乳を出荷する組合員に対して金銭的不利益を課していたということについては,違反につながるおそれがあったということで注意を行っております。
 さらに,アマゾンジャパンが,いわゆるMFN条項によって,アマゾンマーケットプレイスの出品者の事業活動を制限した疑いがあった事件につきましては,審査の過程で,アマゾンジャパンから自発的な措置を講じるという申出がございまして,その内容を検討しましたところ,違反の疑いを解消するものと認められたことから審査を終了しております。ただ審査を終了するということだけではなくて,法運用の透明性や事業者の予見可能性を高めるとの観点から,その内容を公表しております。
 また,一番下のところにございますけれども,外国に所在する金融機関による米国ドル建て国際機関債の取引に関する受注調整の事案につきましては,独占禁止法違反行為があったと認定はしておりますが,排除措置命令を行う期間を徒過しておりましたので事件としては終了する一方で,こうした行為が違反になるんだということを独占禁止法の運用の透明性の確保,また,他の事業者も参考になるという観点から事案を公表いたしております。
 4頁目のところでは,このようにして取り上げた事業,あるいは事業分野,あるいは商品というものはこれだけ多岐にわたっておりましたということを掲げております。
 次に,中小企業等に不当な不利益をもたらす優越的地位の濫用や不当廉売についても,効率的・効果的な調査を行って,必要な是正措置を講じることとしております。
 5頁目のところですが,優越的地位の濫用行為につきましては,タスクフォースを設けておりまして,そこで効果的・効率的な調査を行ってきております。平成29年度におきましては,冠婚葬祭業者,小売業者などに48件の注意を行っております。どのような事業者や,どのような行為がその対象になったのかという事案の概要につきましては,別添1の資料の中に記載しておりますので,御覧いただきたいと思います。
 次に,不当廉売についてでございますが,廉売行為が市場に及ぼす影響が大きくなる前に対処するということが重要であるという観点から,酒類,石油製品及び家電製品の各小売業につきましては,申告を受けてから原則2カ月以内に処理する方針に基づいて審査を行ってきております。平成29年度におきましては,合わせて457件の注意を行っております。
 次に,公正取引委員会では,デジタルエコノミーや自由化の進展といった,我が国経済の環境変化に対応するため,特定の分野における独占禁止法違反行為に係る情報等について,専門的な検討・分析,それから効率的な調査を行うためのタスクフォースの設置などを行っております。
 7頁目にございますように,まず,IT・デジタル関連分野という技術革新に伴う競争環境の変化が激しい分野につきまして,ITタスクフォースを設置するとともに,情報の受付窓口を設置しております。先ほど申し上げましたアマゾンジャパンに対する件も,このタスクフォースが担当したものでございます。
 次の頁,農業分野についてでございますけれども,農業協同組合の行為につきましては,大分前になりますけれども,ガイドラインを作成しております。農業分野についても,農協と組合員の関係でありますとか,あるいは農協同士の行為などについて,情報収集するための情報窓口や,そうした事案を処理するためのタスクフォースを設置しております。平成29年度におきましては,大分県農業協同組合が,同農協以外にこねぎの出荷を行った組合員に対して,同農協の「味一ねぎ」の銘柄で出荷するこねぎの販売事業や集出荷事業施設に係る利用事業を利用させない行為を行っていたとして,排除措置命令を行っております。また,先ほど御紹介しました北海道の農協に対する注意・公表も行っております。
 次に,電力・ガスといった分野でございます。このうち,電力につきましても,取引の内容について独占禁止法等に触れる行為を取り上げたガイドラインを策定しておりまして,同様に,タスクフォース,それから情報提供窓口を設置しております。この分野につきましても,先ほど御紹介しました北海道電力の事件につきまして,担当して処理をしたところでございます。
 このような各種タスクフォースの取組状況などにつきましては,お手元の別添2の方にまとめております。
 最後になりますけれども,本文の資料を御覧いただいて,12,13頁にあります,審判,審決及び審決取消訴訟について,簡単に御説明いたします。
 平成29年度中に係属しておりました審判事件は245件でございました。平成29年度におきましては,山梨県の塩山地区,それから石和地区における入札談合事件につきまして,合わせて66件の審決を行いました。
 また,審決取消訴訟についても,平成29年度中に15件係属しておりました。このうち,東京高裁におきまして,塩化ビニル管等価格カルテル事件及びEPSブロック受注調整事件の2件について判決がなされ,いずれも原告の請求が棄却されています。さらに,最高裁判所におきまして,ブラウン管価格カルテル事件及び塩化ビニル管等価格カルテル事件で4件の判決・決定がなされ,いずれも原告の上告等が退けられております。
 公正取引委員会としましては,今後とも市場の競争を制限し,消費者の利益を侵害する価格カルテル,入札談合等の重大な違反行為,また,中小企業等に不当に不利益をもたらす優越的地位の濫用や不当廉売などの行為に的確かつ迅速に対処することを通じて,公正かつ自由な競争を促進するとともに,競争環境の整備に向けて積極的に審査活動を行ってまいりたいと考えております。
 なお,本件の担当課は,違反事件の処理につきましては審査局の管理企画課,審判,審決,取消訴訟につきましては審決訟務室となっております。

質疑応答

(問) 課徴金の額の件で,公正取引委員会が金額を多くするということが目的ではないことは重々承知した上で,敢えて聞きますけれども,どうもリーニエンシー導入以降は一番少ない額になっているんですが,率直な所感を伺えますでしょうか。
(事務総長) 質問の中でもおっしゃっていただきましたけれども,公正取引委員会としては,競争的な環境を確保するために,違反事件を迅速かつ効果的に処理していくというのが一番の目標だと考えております。その結果として,事案の内容によっては,課徴金の額が大きくなるケースもあれば,さほどでもないというケースが出てくるということでございますので,確かに,絶対値として大きな額と言うつもりは全くございませんけれども,1年1年の額の多い少ないを見ていくよりは,処理した事案の内容を見ていただきたいというふうに考えます。

(問) パワーポイントの6頁なんですが,29年度,数字が随分減っているみたいですけど,過去5年と比べると。何か理由というのがあれば,例えば,何か法改正があったとか。
(事務総長) 今御指摘のところは,不当廉売の注意に関する数字でございますけれども,御覧いただきますと分かりますように,酒類,それから石油製品に関する注意の件数が前年に比べてかなり減っている。石油製品につきましては,去年が普段に比べて倍ぐらい多かったというのもありますけれども,例えば,お酒についていえば,酒類業組合法におきまして「酒類の公正な取引に関する基準」が作成されて,それが浸透していく過程で,販売価格に対して,こういうことを順守しなければいけないということが明確に出されて,また,我々もそうですけれども,国税庁による調査というのもきちんと行われて,そうしたことが注意につながるような行為が減ってきたことの一つなのかなというふうに思います。
 また,石油製品につきましても,石油の元売会社が販売業者に対する仕切価格の事後的な修正を行わなくなったなどの取引慣行の変化が出てきておりますので,そうしたことが,やはり不当な価格設定に対して影響を及ぼしつつあるのではないかなというふうに考えております。
 ただ,我々はどうしても,事件として問題なのではないかということを提示されて,それから調査するということになりますので,今申し上げたこともですね,いわば,そうした出口のところから振り返ってみると,そういうことも原因の一つになり得るのかなという程度のものです。

(問) 総長のお話の中で,事件に対してですね,迅速かつ効果的に取り組むという中で,今日の午前中にも1件発表ありましたけれども,事業者側の自発的な改善措置を経て審査を終了させるというような事案が,去年のアマゾンに続いて,今回のみんなのペットという業者がありましたけれども,こういう動きは今後も加速していくというふうに考えてよろしいんでしょうか。どのようなお考え,もしお持ちであれば教えていただけますか。
(事務総長) 私が申し上げた中にも,違反事件があったとして,それを迅速に処理して,競争環境を早期に回復するということが,やはり独占禁止法の執行当局として求められる一つの大きな役割であろうと思います。
 その中でも,カルテル,入札談合のような悪質な行為であれば,正式な措置を採り,あるいは,場合によっては刑事告発も行うといった姿勢で臨むということが,その違反行為をなくしていくという上で重要なことだと考えております。
 他方,通常の取引慣行の中で生じ得る問題の中には,そうした行為を取りやめていただくことにより,競争状況が回復するということもあるわけであり,また,それによって歪められた競争環境というものが早期に回復されれば,その競争相手にとっても,その方がより望ましいということもあり得るわけですので,そうした事象が存在する場合には,例えば,自発的な措置を行うことによって,その内容が十分ということであれば,それをもって事件を終結するということはあり得ると思います。それは,事案の内容,悪質性であるとか,広がりであるとか,そうしたものを考慮して,そうした事案の処理にするのが適切かどうかというのは,やはり個別に判断していくことになるかと思いますけれども,今後,そうした事件の処理の仕方というのもあり得ることだと思います。
 また,現在,国会で御審議いただいておりますけれども,TPP11の改正法によりまして,元のTPP協定の締結に伴う法律の中で設置していました確約制度が導入されるということになれば,そうした処理の仕方について,明確な,いわば法律的な根拠が与えられることになりますので,仮にそれが施行されるということになった場合には,それをどういうふうに使っていくかというのも,また併せて考えていかなければいけないと考えています。

(問) 今の質問に関連することなんですけれども,去年のアマゾンと今朝のみんなのペット,両方とも,プラットフォーム事業だったと思うんですけれども,アマゾンの前は,たしか10年ほど,確約的な自発的な措置によって,調査が終了されたということがなかったというふうに伺っているんですが,やはり,何か,プラットフォームビジネスで,いろいろな新しいビジネスモデルが出てきたから,その独占禁止法の兼ね合いが,新しいやり方であるとか,プラットフォームと自発的な措置による調査の終了,何か関連するようなものはあるとお考えでしょうか。
(事務総長) 率直に申し上げて,プラットフォーム事業だから,何か我々の調査ないし処理の仕方が変わったということはないというふうに考えています。ただ,プラットフォームビジネスは,御案内のように,トゥーサイディッド・マーケットに関わるものですし,ネットワーク効果を持ちやすいということからすると,何か不正な行為が行われたとして,時間が経てば経つほど,元に戻すのが難しくなるということはあるかと思いますので,違反の疑いを持った場合には,より迅速な処理というのが必要になる,それは常に念頭に置かなければいけないと思います。
 ただ,今回発表したような,あるいはアマゾンの際に行ったような処理の仕方が常に行われるという意味ではないと思いますけれども。

以上

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