EU
欧州委員会,pay-for-delay協定を締結していたとして,ジョンソン・エンド・ジョンソン及びノバルティスに対し総額1600万ユーロの制裁金を賦課
2013年12月10日 欧州委員会 公表
【概要】
欧州委員会は,米国の製薬会社ジョンソン・エンド・ジョンソン(以下「J&J」という。)及びスイスの製薬会社ノバルティスのそれぞれのオランダ子会社が,2005年7月,鎮痛剤フェンタニルのジェネリック医薬品のオランダ市場への参入を遅らせる旨のEU競争法に違反する反競争的協定を締結し実施していたとして,J&Jに1079万8000ユーロ,ノバルティスに549万3000ユーロの制裁金を賦課した。フェンタニルは,モルヒネの100倍以上の効果がある鎮痛剤であり,特にがん患者に用いられる。
欧州委員会のアルムニア副委員長(競争政策担当)は,「J&Jは,ジェネリック鎮痛剤の参入を遅らせるために,ノバルティスに対価を支払った。これら2社は,衝撃的なことに,がん患者を初めとするオランダの患者が安価なフェンタニルのジェネリック医薬品を入手できないようにしていた。本日の決定により,各製薬会社は,本件のような患者と納税者の双方に害を与える競争制限的協定を締結する前に,考え直すことになるだろう。」と述べている。
J&Jは,1960年代にフェンタニルを最初に開発して以来,様々な形態で商品化してきた。2005年,J&Jのフェンタニルのデポ・パッチ製剤のオランダにおける特許保護期間が終了し,ノバルティスのオランダ子会社Sandozは,同製剤のジェネリック医薬品を発売しようとし,既に必要な包装材料を製造していた。
しかし,Sandozは,2005年7月,フェンタニルのデポ・パッチ製剤のジェネリック医薬品の発売開始をする代わりに,J&Jのオランダ子会社Janssen-Cilagと「共同販促協定」と称する協定を締結した。同協定は,Sandozがジェネリック医薬品市場に参入しない大きな誘因となった。実際,当該市場への新規参入者が現れない限りSandozに毎月支払われる金額が,ジェネリック医薬品を販売した場合に予想される利益を超えていたため,同社は,ジェネリック医薬品の発売を行わなかった。共同販促協定は,2社以外の企業がフェンタニルのパッチ製剤のジェネリック医薬品を発売しようとしていた2006年12月に停止された。この共同販促協定により,安価なジェネリック医薬品の市場への参入が17か月遅れ,オランダにおけるフェンタニルの高価格が患者及び納税者を犠牲にして人為的に維持されていた。
社内文書によると,Sandozは,毎月支払われる対価である「ケーキ(利益)の一部」と引き換えに,フェンタニルのデポ・パッチ製剤のジェネリック医薬品のオランダ市場に参入しなかった。Janssen-CilagとSandozは,両社は,競争しないことで,当該医薬品を市場に投入せず高価格を維持できるよう協力する旨合意した。Janssen-Cilagは,共同販促協定を締結するに当たり,潜在的な提携相手は考慮せず,競争事業者であるSandozとの協力を重視した。Sandozは,実際には共同販促活動を限定していたか,行っていなかった。それゆえ,欧州委員会は,共同販促協定の目的は競争制限的であってEU機能条約第101条に違反すると認定した。