EU
欧州委員会,価格カルテルを行っていたとして,スマートカード(ICカード)チップ製造業者に対し,1億3804万8000ユーロの制裁金を賦課
2014年9月3日 欧州委員会 公表
原文
【概要】
欧州委員会は,インフィニオンテクノロジーズ(以下「インフィニオン」という。),フィリップス,サムスン及びルネサスエレクトロニクス(当時,日立製作所と三菱電機の合弁会社であった。以下「ルネサス」という。)(以下「4社」という。)が欧州経済領域(EEA)におけるスマートカード(ICカード)チップ市場において,カルテルを禁止しているEU競争法に違反して市場行動を調整していたとして,総額1億3804万8000ユーロの制裁金を課した。4社は,2003年9月から2005年9月までの間,相互に連絡してカルテルを行っていた。
なお,ルネサスは,欧州委員会の2006年リニエンシー告示に基づき,同委員会にカルテルの存在を明らかにしたことにより制裁金の支払が全額免除されている。
スマートカードチップは,携帯電話のSIMカード,キャッシュカード,身分証明書やパスポート,有料TV視聴カード,その他様々な製品に使用されている。スマートカードチップは,SIM部品に使用される場合,主に電話番号等を記憶するメモリーに使用される。一方,その他の製品に使用される場合は,主に機密性を保持するための暗号処理装置などの安全装置に使用される。
4社は,顧客からの値下げ要求に対する各社の対応を調整するため,相互連絡ネットワークを通じてカルテルを行っていた。4社は,価格設定,顧客,契約交渉,生産能力や設備稼働率及び将来の市場行動に関する営業の機密情報について話し合い,情報交換を行っていた。このようなカルテルは,カルテル及び制限的な商慣行を禁止している欧州連合の機能に関する条約(欧州機能条約)第101条及び欧州経済領域協定第53条に違反している。
欧州委員会は,当初,本件について,4社のうちの何社かが欧州委員会の2008年和解告示に基づいて和解に応じる意向を示したことから,和解によって処理することを検討していた。しかしながら,和解協議の進展が見られなかったため,欧州委員会は,2012年,和解協議を打ち切り,通常手続に戻すことを決定した。
欧州委員会,新しい競争担当委員候補として,デンマークの前経済内務大臣マルグレーテ・ヴェスタエアー氏(Ms.)を公表し,指示書を送付
2014年9月10日 欧州委員会 公表
原文
【概要】
欧州委員会のジャン=クロード・ユンカー次期委員長は,欧州委員会の新体制について公表し,次期競争担当委員候補として指名したマルグレーテ・ヴェスタエアー氏(Ms.)に対し指示書(Mission letter)を送付した。本指示書の抄訳は以下のとおりである。
あなたは,欧州連合にとって特に困難な時期に欧州委員会の新体制のメンバーになる。
先日の協議を踏まえ,あなたに競争担当委員に就任していただきたい。本指示書においては,我々の任期中にあなたが責任を持って達成しなければならない個別の目標のみならず,欧州委員会のメンバーとしてあなたに期待したい事項を明示する。
競争担当委員の地位
あなたは,競争担当委員として,雇用,成長,投資及び競争力担当副委員長,デジタル単一市場担当副委員長及びエネルギー同盟担当副委員長が指揮し調整するプロジェクトに貢献してほしい。原則として,競争政策,国家補助政策の一般的な方針及びそれらに関連する分野の法令を定める際には,雇用,成長,投資及び競争力担当副委員長と密接に連携してもらいたい。
我々の任期中,重点的に取り組んでほしい事項は,次のとおりである。
・ デジタル単一市場,エネルギー政策,金融サービス,産業政策及び脱税との戦いなどの分野における雇用及び経済成長に係る我々の課題に対し,適切に貢献できるように競争政策に係る政策手段や専門知識の結集。これに関し,競争政策上の課題の評価についての経済学的又は法的な手法を開発していくことが重要であり,また,欧州委員会の幅広い活動を支援する上で,市場監視方法を更に改善することが重要である。
・ EU及び世界全体での競争文化の促進のみならず,反トラスト・カルテル,企業結合及び国家補助の分野における競争法の効果的な執行の追求及び市場の動向を踏まえた競争政策に係る政策手段の維持。
・ 当該分野における欧州委員会の世界的な評価の維持及び強化並びに国際協力の促進。
あなたがその責務を果たす上で,欧州委員会競争総局(DG COMP)があなたの直属の機関となる。