2015年6月

EU

欧州委員会,グーグル社に対し,比較ショッピング検索に係る審査の異議告知書を送付した旨及びアンドロイドに係る正式審査を開始した旨公表

2015年4月15日 欧州委員会 公表
原文1
原文2
原文3

【概要】

 欧州委員会は,グーグル社が自社の検索結果ページにおいて自社の比較ショッピング検索を体系的に優遇することによって,欧州経済領域(European Economic Area,以下「EEA」という。)内のインターネット検索市場における支配的地位を濫用した疑いで,グーグル社に対し異議告知書を送付した。欧州委員会の予備的見解によれば,グーグル社の行為は,競合する比較ショッピング検索から人為的にアクセスを誘導し,競合他社の競争力を低下させていたおそれがあり,そのような行為は,技術革新を抑制するだけでなく消費者の不利益となり,EU競争法に違反するものである。
 また,欧州委員会は,別件として,携帯情報端末向けの基本ソフト(以下「OS」という。)であるAndroid(以下「アンドロイド」という。)に関するグーグル社の行為について,競争法審査を正式に開始した。本件については,グーグル社が反競争的な契約を締結したか,又は携帯情報端末向けのOS,アプリケーション及びサービス分野において支配的地位の濫用を行ったかについて重点的に審査する。
1 比較ショッピング
 グーグル社は,EEA諸国のほとんどにおいて90%以上の市場シェアを有し,EEA域内のインターネット検索事業において支配的地位を有している。2002年以降,インターネット上のショッピングサイトで消費者が商品を検索し,小売各社間の価格比較ができるようにする比較ショッピング検索の提供を積極的に行っている。グーグル社の最初の比較ショッピング検索「Froogle」は,「Google Product Search」に改名され,現在の「Google Shopping」に至っている。
 今回の異議告知書においては,一般のインターネット検索市場(markets for general research)と比較ショッピング検索市場は2つの別々の市場である旨説明している。グーグル社は,後者の比較ショッピング検索市場において,多くの競合他社との競争に直面しており,自社のインターネット検索結果ページ上で,競合する比較ショッピング検索と比較して,自社の比較ショッピング検索「Google Shopping」及びその前身である「Google Product Search」を優遇していたとしている。
 グーグル社の具体的な行為は次のとおりである。
・ グーグル社は,自社の比較ショッピング検索について,その価値に関わらず,自社のインターネット検索結果ページ上での掲示位置を体系立てて決め,目立つように表示している。この行為は,2008年から開始している。
・ グーグル社は,自社のインターネット検索結果について,一定のパラメーターに基づいて掲示順位が低下することになり得る「ペナルティシステム」について,他の比較ショッピング検索に適用して,自社の比較ショッピング検索に適用していない。
・ グーグル社の最初の比較ショッピング検索「Froogle」は優遇されていなかった。そして,業績が振るわなかった。
・ グーグル社が次の比較ショッピング検索「Google Product Search」及び「Google Shopping」を体系的に優遇した結果,両サービスは,大幅な成長率を記録し,競合する比較ショッピング検索に損害をもたらした。
・ グーグル社の行為は,消費者及び技術革新に悪影響を及ぼすものである。つまり,インターネット利用者は,検索入力に対する最も関連した比較ショッピング検索結果を必ずしも確認することができないこと,及び競合他社は,自社のサービスがどんなに良くてもグーグル社のサービスと同じように目立つ表示をしてもらえる優遇を受けないことが分かっているため,技術革新を行う動機が低下することを意味する。
2 アンドロイド
 グーグル社は,2005年以降,アンドロイドの開発を行っている。近年,アンドロイドは,EEA域内の携帯情報端末向けOSとして首位を走るまでになり,今日では,欧州のスマートフォンの過半はアンドロイドを搭載している。他の携帯情報端末向けOSとしては,アップル社のiPhoneとiPadでのみ作動するiOS及びマイクロソフト社等のスマートフォンとタブレットに搭載しているWindows Phoneがある。
 欧州委員会は,これまで,2つの苦情を受け付け,また,委員会としても独自に調査をしており,現在入手している情報を基に,現段階として次の3つの疑いについて重点的に審査する。
・ グーグル社が,スマートフォン及びタブレット製造業者に対し,グーグル社のアプリケーション又はサービスを排他的にプレインストールするよう要求又は奨励することによって,競合他社によるアプリケーション又はサービスの開発及び市場参入を違法に妨害した疑い。
・ グーグル社が,アンドロイド端末へのグーグル社のアプリケーション又はサービスのインストールを希望するスマートフォン及びタブレット製造業者に対し,アンドロイドを改良し競合する可能性のあるバージョン(いわゆる「Androidフォーク」)を開発すること及び市販することを妨害した疑い。
・ グーグル社が,グーグル社の他のアプリケーション,サービス及びインターフェイスとアンドロイド端末に搭載しているグーグル社製の特定のアプリケーション及びサービスとを抱き合わせ販売することによって,競合他社がアプリケーションやサービスを開発すること及び市場に参入することを違法に妨害した疑い。

欧州委員会,中東欧のガス市場において支配的地位を濫用した疑いで,ガスプロム社に対し異議告知書を送付

2015年4月22日 欧州委員会 公表
原文

【概要】

 欧州委員会は,Gazprom(以下「ガスプロム社」という。)の中東欧ガス市場におけるいくつかの事業活動がEU競争法に違反する支配的地位の濫用行為に該当する疑いで,同社に対し異議告知書を送付した。
 今回の審査に基づく欧州委員会の予備的見解によれば,ガスプロム社は,EU8か国(ブルガリア,チェコ共和国,エストニア,ハンガリー,ラトビア,リトアニア,ポーランド及びスロバキア)のガス供給市場で競争を妨害し,これらのガス供給市場において,支配的地位を濫用する包括的戦略を実施し,EU競争法に違反していたとしている。
 ガスプロム社の具体的な行為は次のとおりである。
・ ガスプロム社は,EU8か国の卸売業者及び事業者である顧客数社とのガス供給に係る契約において,地域制限を課していた。これらの制限は,輸出禁止及び購入したガスの特定地域での利用を求める条項(仕向地条項(destination clauses))を含んでいる。また,ガスプロム社は,ガスの輸出について卸売業者に許可制を課し,特定の状況下ではガスの転売先変更を禁止するといった手段で,国境を越えたガスの取引を妨げていた。欧州委員会は,これらの手段が,EEA内におけるガスの自由な取引を妨げていたとしている。
・ これらの地域制限によって,EU5か国(ブルガリア,エストニア,ラトビア,リトアニア及びポーランド)におけるガスの価格は高騰し,ガスプロム社が,当該5か国の卸売業者に対し,同社の経費又は標準価格と比較して著しく高い価格を請求するといった不当な価格政策を追求することを可能にしたおそれがある。これらの不当な価格は,供給契約において,ガス価格を石油製品のバスケット価格に連動させるというガスプロム社の価格体系(price formula)に一部起因しており,顧客よりも同社にとって不当に有利なものであった。
・ ガスプロム社は,ブルガリア及びポーランドにおいて,ガス輸送用インフラ施設について卸売業者がガス供給契約と関係のない確約を行うという条件を付けてガス供給することで,支配的地位を利用していたおそれがある。例えば,卸売業者が,ガスプロム社の推進するパイプライン事業に投資するかどうか,又はパイプラインに対するガスプロム社の支配が強まることを受け入れるかどうかによって,当該業者とガス供給契約を締結するかどうかが決められていた。

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