2015年7月

EU

欧州委員会,アマゾン社の電子書籍の販売に関する正式審査を開始した旨公表

2015年6月11日 欧州委員会 公表
原文

【概要】

 欧州委員会は,Amazon(以下「アマゾン社」という。)の電子書籍の販売における特定の取引方法に関する競争法上の正式審査を開始した。欧州委員会は,アマゾン社が出版社と結んだ契約に含まれている特定の条項について,重点的に審査する。これらの条項は,出版社に対し,競争事業者に提示した有利又は代替的な条件についてアマゾン社に通知し,その競争事業者に提示された条件と同様の,又はより有利な条件をアマゾン社にも提示すること,又は,他の手段を通じて,少なくとも競争事業者と同程度の条件の提示をアマゾン社が確実に受けることを義務付けている。
 欧州委員会は,他の電子書籍販売業者が新しい革新的な商品やサービスを開発することでアマゾン社と競争することが,当該条項によって更に困難になるのではないかと懸念している。欧州委員会は,当該条項が,様々な電子書籍販売業者間における競争を制限し,消費者の選択を減らし得るかについて審査する。仮に,そのような事実を確認できれば,当該行為は,市場支配的地位の濫用及び制限的商慣行を禁止するEU競争法に違反するものである。
 電子書籍は,近年,人気が急上昇し,オンライン販売業者の重要性が増している。現在,アマゾン社は,欧州最大の電子書籍販売業者である。最初に,欧州委員会は,欧州経済領域(EEA)内最大の電子書籍市場,すなわち英語及びドイツ語の電子書籍について重点的に審査する。
 欧州委員会は,アマゾン社が出版社と結んだ電子書籍に関する契約に含まれる特定の条項が,市場支配的地位の濫用及び制限的商慣行を禁止するEU競争法に違反しているのではないかと懸念している。本件審査においては,特に,アマゾン社を他の電子書籍販売業者との競争から保護しているようにみえる条項について重点的に審査する。当該条項は,次のとおりである。
・ 競争事業者に提示した有利又は代替的な条件について,通知を受ける権利
・ 競争事業者に提示した条件と少なくとも同程度の条件を受ける権利
現在,欧州委員会は,当該条項が消費者に損害を与え,公平な競争環境(level playing field)の妨げとなっているか,様々な電子書籍販売業者間における競争を潜在的に減殺し,消費者にとって害を及ぼすことになるかについて,更に審査する。

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