EU
欧州委員会,TV用ブラウン管カルテル事件の2012年決定を支持する欧州普通裁判所の判決を歓迎
2015年9月9日 欧州委員会 公表
原文
【概要】
欧州委員会は,TV・コンピューター用ブラウン管のカルテル事件における実質的論点及び制裁金額を決める一般的な原則に関する欧州委員会の決定について,その大部分を支持する2015年9月9日の欧州普通裁判所の判決を歓迎した。これらの判決は,次の点で重要である。
第1に,外国製部品を用いて製造され,それ自体は欧州経済領域内で販売されていない製品に係るカルテルに対して,欧州委員会が制裁する権利を確認している。特に,欧州普通裁判所は,本件カルテルが欧州経済領域外で形成されたにもかかわらず,欧州委員会の司法管轄内にあることを支持している。本件カルテル合意は,欧州経済領域への直販品又は加工品の価格及び流通量に直接に影響を及ぼしている。
第2に,欧州普通裁判所は,東芝の本件カルテルへの関与に関し,同社の本件カルテル全体に対する認識を十分に立証していないという点を除き,欧州委員会による本件の認定の相当部分を支持している。欧州普通裁判所は,欧州及びアジアにおける様々な会合や数種類の製品が,単独かつ継続的なEU競争法違反行為の不可欠な部分であると認定した。本件カルテル参加者は,液晶ディスプレイのような代替的な技術が当該製品に取って代わり始めた後もなお共謀を繰り返し,需要の低下に対抗して共同して対応策をとった。
第3に,本件カルテル参加者のうち数社は,ジョイントベンチャーを結成し,これを通して,カルテルに参加し続けていた。欧州普通裁判所は,確立された判例法に沿って,Philips(以下「フィリップス」という。)及びLG Electronics(以下「LG電子」という。)並びに東芝及びパナソニックの各ジョイントベンチャーに関し,株の保有率に関わりなく親会社がジョイントベンチャーの違法な反競争的行動に責任を負うという欧州委員会の決定を支持した。欧州普通裁判所は,フィリップス,LG電子及びパナソニックがジョイントベンチャーを形成する前から本件カルテルに参加していたという欧州委員会の認定に同意している。
最後に,欧州普通裁判所は,欧州委員会によるリニエンシー認定を含め,制裁金の算定方法についても支持した。しかし,パナソニック,東芝及びMTPD(パナソニックと東芝の子会社)の制裁金については,これらの事業者が欧州委員会が根拠としたものよりも詳細な売上高に関する資料を提供したとして制裁金を減額した。重要なのは,サムソンSDIがカルテルの性質を軽視して,他のカルテル参加事業者と接触していたことが共謀的だとする欧州委員会の判断を,欧州普通裁判所が支持したことである。