2015年12月

EU

欧州委員会,国際スケート連盟(ISU)の定める適格性規則について正式審査を開始

2015年10月5日 欧州委員会 公表
原文

【概要】

 欧州委員会は,国際スケート連盟(以下「ISU」という。)(注)非公認のイベントに参加した選手に対して,冬季オリンピック並びにISU主催の世界選手権及び欧州選手権といった大会に出場することを永久に禁止する旨定めたISUの規則について,正式審査を開始した。
 欧州委員会は,ISUの規則において,ISUと無関係のアイススケートイベントの開催を希望する事業者に対し過度に不当な障壁を課すことによって,アスリートがその実力を発揮する機会を不当に妨げているのではないかという点を主に審査する。実際,ISUの規則は,非公認のイベントに参加しようとするアスリートに対して,公認イベント出場への永久禁止により脅威を与えている。このような行為は,新たに参入しようとする(alternative)イベント運営業者の当該市場への参入を妨げ,又は市場から排除するおそれがある。当該行為が事実であると確認された場合,EU競争法違反である反競争的合意又は市場支配的地位の濫用行為に当たるおそれがある。

注: ISUは,フィギュアスケート競技及びスピードスケート競技の運営に当たり,国際オリンピック委員会(IOC)が承認する唯一の団体であり,その加盟者は,各国のアイススケート連盟である。

欧州委員会,中国商務部(MOFCOM)と企業結合審査の協力の枠組みに関するベスト・プラクティスに署名

2015年10月15日 欧州委員会 公表
原文

【概要】

 欧州委員会競争総局は,北京において,中華人民共和国商務部(以下「MOFCOM」という。)と企業結合審査の協力に関するベスト・プラクティスに署名した。
 署名した実務的なガイダンスは,欧州委員会とMOFCOMとの企業結合審査の協力及び調整を強化するために特化した枠組みを構築するものである。競争当局間が協力すること,特に両当局が情報を共有し,審査の重要な段階において,相互に,また,関連当事者とも今後の予定について話し合うことは,審査の効率性を高めるとともに関連当事者の負担を軽減させるものである。また,この実務的なガイダンスは,企業結合審査手続全体を通じて,関連市場の定義,競争阻害性,競争上の影響評価,企業結合承認のための措置といった手続や内容に関する意思疎通を促進するものである。

注:欧州委員会とMOFCOMとは,2004年に中国・欧州競争政策対話枠組協定(Terms of References on the EU-China Competition Policy Dialogue)を締結しており,欧州委員会と国家発展改革委員会及び国家工商行政管理総局とは,2012年に審査協力に関する覚書(Memorandum of Understanding on Cooperation)を締結している。

欧州委員会,光学ディスクドライブの価格カルテルを行ったとして,ソニー社等8社に対し,総額1億1600万ユーロの制裁金を賦課

2015年10月21日 欧州委員会 公表
原文

【概要】

 欧州委員会は,光ディスクドライブ(以下「ODDs」という。)供給業者8社に対し,コンピューター製造業者2社が行った入札においてEU競争法に違反する協調行動を取っていたとして,総額1億1600万ユーロの制裁金を賦課した。
 ODDsは,CD,DVD,ブルーレイ等の光ディスクに貯蔵されたデータを読み取り,又は,記録するものである。それらは,例えば,パソコン,CDプレーヤー,DVDプレーヤー,ビデオゲーム機内で使われている。本件で制裁金の対象となった反競争的行為は,デル社及びヒューレット・パッカード社製のノート型パソコン及びデスクトップパソコンに使われるODDsの入札における共謀に関するものである。
 本決定の対象となった違反行為に関わった8社は,フィリップス社,ライトオン社,両社の共同出資会社フィリップス&ライトオンデジタルソリューションズ社,日立エルジーデータストレージ社,東芝サムスンストレージ・テクノロジー社,ソニー社,ソニーオプティアーク社及びクアンタストレージ社である。
 制裁金額は,欧州経済領域(以下「EEA」という。)内に関係する製品(the products concerned in the EEA)の各社の売上高を基にしており,フィリップス社,ライトオン社及び両社の共同出資会社フィリップス&ライトオンデジタルソリューションズ社は,欧州委員会の2006年リニエンシー告示に基づき,カルテルの存在を最初に明らかにしたとして,総額6350万ユーロの制裁金の支払が全額免除された。日立エルジーデータストレージ社は,欧州委員会のリニエンシー・プログラムに基づき,審査に協力し,カルテルの長期間の立証を可能にしたとして制裁金が50%減額された。また,欧州委員会は,フィリップス社,ソニー社及びソニーオプティアーク社はデル社が行う入札に関してのみカルテル行為に関与したという事実を制裁金を課す際に考慮した。
 欧州委員会が審査した結果,2004年6月から2008年11月にかけて,カルテルに関与した事業者は,ノート型パソコン及びデスクトップパソコンに使われるODDsに係る応札意欲について情報交換し,入札結果の共有及びその他事業上の機密に係る情報の交換を行っていたことが明らかになった。彼らは,デル社及びヒューレット・パッカード社が行う入札において積極的な競争を回避するために,並行的かつ互恵的に連絡を取り合うためのネットワークを構築していた。
 カルテルの交渉はEEA外の世界中で行われた。カルテルに関与した事業者のうち,フィリップス社のみが欧州に本社を置き,残りの7社はアジアに本社を置いている。各事業者がカルテルに関与した期間は1年未満から4年以上と様々である。
 当該事業者は,自らの行為が違法であることを認識しており,当該カルテル交渉の隠匿及び合意の発覚防止に努めていた。例えば,彼らは,社内文書において関係する競争事業者の名称を挙げることを避け,略語又は普通名詞を用いていた。
 また,カルテル参加事業者は,反競争的合意がなされた証拠を残さないように対面による会合を行うようにし,競争事業者との話合いが顧客に漏洩しないようにした。カルテル参加事業者のうち数社は,駐車場や映画館といった簡単に発覚しない場所で会合を行っていた。

欧州委員会,熱安定剤カルテルに係る同委員会の2009年決定に沿って,カルテルの手助け役であったACトロイハント社の法的責任を認めた欧州普通裁判所を支持した欧州司法裁判所の判決を歓迎

2015年10月22日 欧州委員会 公表
原文

【概要】

 欧州委員会は,同委員会の2009年決定を支持した欧州普通裁判所の判決に対する控訴を棄却した欧州司法裁判所の判決を歓迎した。欧州委員会は,ACトロイハント社がカルテルを手助けしていた(facilitate)として,同社に対しEU競争法上の法的責任を認める決定を2009年に行っていた。
 今回の判決は,コンサルティング会社がカルテルをまとめる(organize)といった,いわゆるカルテルの助長行為(facilitation of cartel)について欧州司法裁判所が初めて判決を下したという点で画期的であり,次の2つの点において重要である。
 第一に,欧州司法裁判所は,ACトロイハント社と熱安定剤供給業者との間で行われた業務委託契約が欧州競争法に違反する合意であるとした。欧州域内の競争を歪曲する合意は,当事者が同一市場で事業を行っているか否かを問わず,欧州連合の機能に関する条約(以下「TFEU」という。)第101条によって摘発される。また,欧州司法裁判所は,ACトロイハント社のようなカルテルの手助け役が法的責任を免れ得るとなれば,反競争的取引慣行を禁止するTFEU第101条の有効性が脅かされることになるだろうとした。
 第二に,欧州司法裁判所は,制裁金を課す基準として売上高を用いる代わりに,一定額(lump sum)として制裁金を課す権限を欧州委員会は有しているとした。コンサルティング会社であるACトロイハント社は,スズ安定剤及びエポキシ系熱安定剤市場で事業を行っていなかったため,当該市場における売上げは全くなかった。
 欧州普通裁判所は,2014年2月,ACトロイハント社に関して,熱安定剤カルテルに係る欧州委員会の2009年決定を支持した。同社は,当該決定の撤回又は制裁金の減額を求めて,欧州司法裁判所に対し控訴した。今回の判決は,ACトロイハント社のあらゆる主張を退けるものである。
 欧州委員会は,ACトロイハント社及び熱安定剤供給業者数社が,スズ安定剤(1987年から2000年)及びエポキシ系熱安定剤(1991年から2000年)のカルテルに関与したとする決定を2009年に行った。スズ安定剤は,ポリ塩化ビニルを最終製品に加工する過程で,熱による分解を防ぐために用いられるものであり,主に硬質ポリ塩化ビニル及び可塑化ポリ塩化ビニルで用いられる。エポキシ系熱安定剤は,可塑化ポリ塩化ビニル製品向けの可塑剤及び熱安定剤として用いられる。供給業者らは,両製品の価格カルテル,顧客割当て,市場分割及び事業上の機密に係る情報の交換を行った。
 ACトロイハント社は,当該違反行為において重要な役割を担っており,特に同社のチューリッヒにある事業所において定期的にカルテルの会合を開催することによって,供給業者から報酬を受け取っていた。同社は,当該会合に積極的に参加し,供給業者らの売上データの情報収集及び情報提供を行い,当該合意の実施状況を監視し,当該合意が実施されなかった場合には調整役として行動することを申し出たり,供給業者らに対して妥協策を探るよう促したりしていた。

ページトップへ