2016年2月

EU

欧州委員会,クアルコム社に対し,忠誠リベートの支払の疑い及び略奪的価格設定の疑いで,2つの異議告知書を送付

2015年12月8日 欧州委員会 公表
原文

【概要】

 欧州委員会は,クアルコム社が競争業者であるアイセラ社を市場から撤退させる目的で,クアルコム社の3G(UMTS)及び4G(LTE)規格によるベースバンドチップセット(以下「チップセット」という。)のみを使用している大口顧客に対して不当にリベートを支払っていた疑い及びチップセットを不当に原価割れで販売していた疑いについて,クアルコム社に対し,チップセットの世界市場において支配的地位を濫用していたおそれがあるとする予備的見解を示した下記の2つの異議告知書を送付した。チップセットは,モバイル端末の通信機能を担っており,音声及びデータ通信の双方で用いられている。クアルコム社は,チップセットの世界最大の供給業者である。
1 忠誠リベートの支払に関する異議告知書
 1つ目の異議告知書においては,クアルコム社が,2011年以降,大手スマートフォン・タブレット製造業者に対し,当該事業者のスマートフォン及びタブレットにクアルコム社製のチップセットのみを使用するという条件を付けて,相当額を支払っていたとしている。
 欧州委員会の予備的見解によれば,このような条件を課すことで,製造業者はクアルコム社の競争事業者からチップセットを調達する意欲が低下し,チップセット市場における競争と技術革新を阻害したとしている。クアルコム社と製造業者との間で締結した当該契約は,未だ効力を持っている。
2 略奪的価格設定に関する異議告知書
 2つ目の異議告知書においては,クアルコム社が,2009年から2011年にかけて,市場における競争を阻害する目的でチップセットを原価割れで販売することによって「略奪的価格設定」を行っていたとする予備的見解を示している。このような行為は,アイセラ社が,高度なデータ転送速度を実現し提供することで,市場の最先端にいるクアルコム社を脅かす存在へと成長している際に行われたとみられる。欧州委員会の予備的見解によれば,クアルコム社は,アイセラ社を市場から撤退させる目的で,同社の顧客のうちの2社に対して原価割れ価格でチップセットを一定量販売することによって,アイセラ社からの脅威に対応したとしている。

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