2018年4月

EU

欧州委員会は,バイエル(ドイツ)によるモンサント(米国)の買収について,条件付きで承認

2018年3月21日 欧州委員会 公表
原文

【概要】

 欧州委員会は,EU企業結合規則に基づき,ドイツの医薬・農業化学会社バイエルによる米国の種子・植物バイオ会社モンサントの買収を承認した。両社は,種子,農薬及びデジタル農業(注)分野において事業が重複している。欧州委員会は,広範な事業の売却を条件に,両社の結合を承認した。

 (注)衛星写真や気象データ,農家から収集した個人データなどの公開データに,農業的知識やアルゴリズムを適用し,種子の数,農薬や肥料の使用量及び時期といった,農地の最適な管理方法を農家に提供するもの。

 モンサントは,世界最大の種子供給業者であり,米国及び中南米での売上が大部分を占めている。また,モンサントは,世界で最も使用されている除草剤であるグリホシネートを販売している。バイエルは,欧州を中心に活動している世界第2の農薬供給業者であるとともに,多数の穀物種子を供給する,世界的に重要な種子供給業者でもある。本件買収により,世界最大の種子・農薬供給業者が誕生する。
 欧州委員会は,バイエルからの届出を受けて詳細審査手続に入った。その過程で,2000以上の製品市場を評価し,また270万もの書類をチェックした結果,欧州委員会は,本件買収が,欧州及び世界の様々な市場における価格及びイノベーションに関する競争を著しく低下させると結論付けるとともに,バイエルがモンサントの重要な競争事業者である特定の市場において,モンサントの支配的地位を強化させるとの懸念を有した。

 バイエルから提出された問題解消措置は,以下のとおり,全ての競争上の懸念に対応している。
・ バイエルの関連事業及び資産を売却することにより,懸念が生じていた種子及び農薬市場における当事会社の重複が全て解消される。
・ 売却対象には,種子や形質に関するバイエルの世界的な研究開発組織や,モンサントのグリホシネートに対抗する製品を開発するためのバイエルの研究活動が含まれる。また,売却対象にはモンサントの特定の資産も含まれており,将来的に,バイエルの線虫対策の種子処理と競合することになる。
・ 最後に,バイエルは,デジタル農業という成長市場で競争が継続することを確実にするために,全世界のデジタル農業に関する製品群及び新薬候補製品に関するライセンスを供与することを確約した。

 包括売却によって,売却事業の適切な購入者は,欧州の農家及び消費者の利益のために,これらの市場におけるバイエルの競争効果を持続的に代替すること及び技術革新を継続することが可能になる。
 バイエルは包括売却事業の購入者としてBASFを提案している。欧州委員会は,a)BASFが購入者としての全ての要件を満たしているか,b)BASFへの売却により,問題となる事業の重複が生じたり,その他の競争上の懸念が引き起こされないかについて評価しているところである。
 バイエル及びモンサントは,提案された購入者に関する欧州委員会の審査が完了した時にのみ,本件買収を実行することができる。
 本件は,種子及び農薬市場における3番目の事案である。欧州委員会は,同一産業において行われた一連の企業結合計画について,いわゆるプライオリティルール(最初に届出があったものから審査)に基づいて審査した。バイエルとモンサントの本件買収の評価は,ダウとデュポンの企業結合及びケムチャイナとシンジェンタの企業結合後の市場状況に基づいており,これら2件における問題解消措置を考慮に入れている。

国際協力

 欧州委員会は,本件において,米国司法省,オーストラリア,ブラジル,カナダ,中国,インド及び南アフリカの競争当局を含む,多くの競争当局と非常に緊密に協力を行った。

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