2021年5月

米国,EU,カナダ及び英国

米国連邦取引委員会ほか各国競争当局は,製薬業界における企業結合の分析に係る多国間ワーキンググループの設立を発表

2021年3月16日 米国連邦取引委員会,カナダ競争局,欧州委員会及び英国競争・市場庁 公表
原文(米国連邦取引委員会) 原文(カナダ競争局) 原文(欧州委員会) 原文(英国競争・市場庁) 

【概要】
 米国連邦取引委員会(以下「FTC」という。)の主導の下,カナダ競争局,欧州委員会競争総局,英国競争・市場庁(以下「CMA」という。),米国司法省及び3つの州の司法長官が協力し,製薬業界における企業結合の影響の分析方法をアップデートするための多国間ワーキンググループを設立した。
 その概要は以下のとおり。
 
 本共同プロジェクト(以下「本プロジェクト」という。)は,緊密な協力関係にある各国競争当局及び関連する経験を有する米国国内の他の当局の専門知識を活用して,この重要な市場において,最も効果的な執行を確保することを目指すものである。本プロジェクトの目標は,製薬業界における企業結合分析を検証し,改善するための具体的で実行可能な手順を示すことである。
 本プロジェクトは,各競争当局が,製薬業界における企業結合により引き起こされる,様々な競争上の懸念を詳細に分析し,それに対処していくための新しいアプローチを確保するものである。
 本プロジェクトにおいては,例えば,以下の事項について検討がなされる。
・ 現在の競争制限発生のメカニズム(theories of harm)をどのように拡大,改善していくことができるか。
・ 製薬業界における企業結合がイノベーションに対して及ぼす影響の範囲。
・ 企業結合審査において,価格カルテル,リバース・ペイメント,他の規制の濫用などの製薬業界特有の行為をどのように考慮する必要があるか。
・ 新たな競争制限発生のメカニズムに基づいた場合,企業結合に異議を申し立てるためには,どのような証拠が必要か。
・ 新たな競争制限発生のメカニズムが適用される事案について,どのような問題解消措置が有効か。
・ 問題解消措置において,売却資産を効果的に行うのに適当な買手企業を選定するための,売却資産の範囲及び買手企業の特徴について,競争当局にはどのような知見があるか。
 
 各競争当局のコメントは以下のとおり。
 FTCのRebecca Kelly Slaughter委員長代行は,「近年,医薬品の価格が高騰し,製薬業界における反競争的行為に対する懸念が続く中,製薬会社間の企業結合件数が多いことを踏まえ,製薬業界における企業結合審査のアプローチを再考することが不可欠である。我々は,国内外の執行当局と協力し,製薬業界の反競争的な企業結合に対処するために積極的なアプローチを採るつもりである。」と述べた。
 カナダ競争局のMatthew Boswell長官は,「製薬業界はカナダの保健分野の重要な一部であり,我々は他国の競争当局と緊密に協力して,企業結合及びあらゆる種類の潜在的な反競争的行為に関する新たな課題を引き続き把握していく。」と述べた。
 欧州委員会Margrethe Vestager上級副委員長(競争政策担当)は,「市民のニーズを満たすには,製薬業界が革新的で機能性の高い環境にあることが不可欠である。これまで,欧州委員会は,製薬業界での効果的な競争を確保するために,国際的な製薬会社の企業結合を精査するための新たな取組を採用してきた。我々は,必要な医薬品の公正な価格に貢献し,新たな医薬品の開発を保護してきた。本プロジェクトの取組は,我々にとって最も緊密な世界各国の競争当局の一部が結集して,近年学んだ教訓を検証し,市民の利益のために活発な競争を促進する新たな方法を模索していくものであり,本プロジェクトの取組を心から歓迎する。」と述べた。
 CMAのAndrea Coscelli主席常任委員は,「大手製薬会社は社会で重要な役割を果たしており,その事実は新型コロナウイルス感染症の世界的蔓延と戦うためのワクチンの急速な展開により,我々一人一人が身をもって知ることとなった。しかし,大手製薬会社が合併したり,革新的競合他社の買収を決定した場合,競争当局が協力して,反競争的な企業結合から消費者を保護することが不可欠である。そのため,海外の競争当局と協力し,製薬会社の企業結合審査へのアプローチを検討できることを非常に嬉しく思う。英国の消費者を保護するために適切なアプローチを採ることが重要である。」と述べた。


 

 

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