2021年8月

EU

欧州委員会,欧州国債の取引カルテルに関与したとして投資銀行に3億7100万ユーロの制裁金を賦課

2021年5月20日 欧州委員会 公表
原文

【概要】
 欧州委員会は,Bank of America,Natixis,野村證券,RBS (現NatWest),UBS,UniCredit及びWestLB (現Portigon)(以下これら事業者を「7社」という。)が,欧州国債(EGB)の発行市場及び流通市場(the primary and secondary market)におけるカルテルに参加し,EU競争法に違反したと認定した。
 野村證券,UBS及びUniCreditには,総額3億7100万ユーロの制裁金が課された。NatWestは,カルテルを欧州委員会に明らかにしたため,制裁金を免れた。Bank of America及びNatixisは,違反行為が制裁金賦課の対象期間外であったため,制裁金は課されなかった。Portigon社は,制裁金の基準となる前年度の売上げがなかったことから,制裁金は課されなかった。
 7社は,「閉鎖的な信頼の輪」の下で活動する欧州国債のトレーダーのグループを通じてカルテルに参加していた。各社のトレーダーは,主にブルームバーグ端末の多人数チャットルームで定期的に連絡を取り合っていた。そして,チャットルームにおいて,各社のトレーダーは取引上の機密情報を交換していた。各社のトレーダーは,オークション開催までの間に入札価格,入札数量,顧客向けの価格等を互いに連絡し合い,情報を更新していた。また,各社のトレーダーは,ユーロ圏の加盟国がユーロ建て債券を発行する際のオークションにおける自らの入札戦略や,債券流通市場での取引パラメータについて,繰り返し情報を更新しながら情報交換を行っていた。
 本件違反行為は,欧州金融危機の最中,具体的には2007年から2011年までの間に行われ,欧州経済領域全域に影響を及ぼした。
 7社の行為は,価格に関する受注調整などの反競争的な商慣行を禁止するEU競争法に違反する(EU機能条約第101条及びEEA協定第53条)。
 本日の決定は,金融商品の取引に影響を及ぼすカルテルを巡る過去の事件とともに,欧州委員会が金融部門を含む全ての市場における反競争的行為に対処する決意を示している。
 

欧州委員会がFacebookを反競争的行為の疑いで調査

2021年6月4日 欧州委員会 公表
原文

【概要】
 欧州委員会は,Facebookがクラシファイド広告等の広告市場において他の広告主と競争するために,広告主から収集したデータを用いることがEU競争法に違反する否かを評価するため,同社に対して正式審査を開始した旨を公表した。また,正式審査では,EU競争法に違反して,Facebookがクラシファイド広告サービス「Facebook marketplace」を自社のソーシャルネットワークへ接続しているか否かについても評価することとなる。
 Facebookは,登録したユーザーがプロフィールを作成し,写真やビデオをアップロードし,メッセージを送り,他の人々とつながることができるソーシャル・ネットワーキング・サービスである。また,Facebookは,ユーザーが互いに物品を売り買いできるプラットフォームであるFacebook Marketplaceと呼ばれるクラシファイド広告サービスを提供している。
本審査において,欧州委員会は,Facebookがソーシャルネットワーク及びオンライン広告における地位により,事業活動を行っている隣接市場,特にオンライン上のクラシファイド広告(online classified ads)市場における競争を阻害することが可能となっているか否かについて詳細に調査する。
 Facebookと直接競合する事業者は,Facebook上で自社のサービスを広告する際,商業上価値のあるデータをFacebookに対して提供することがある。Facebookは,当該データを提供した事業者と競争する際に,事業者から提供された当該データを利用している可能性がある。
 これは特に,多くの欧州の消費者が物品を売買するプラットフォームであるオンライン上のクラシファイド広告市場での競争について当てはまる。オンライン上のクラシファイド広告提供事業者は,Facebookのソーシャルネットワーク上で自社のサービスを広告している。同時に,Facebookのオンライン上のクラシファイド広告サービスであるFacebook Marketplaceと競合関係にある。
予備審査の結果,欧州委員会は,Facebookがオンライン上のクラシファイド広告サービスにおける競争をゆがめていると懸念している。特に,Facebookは,自社のFacebook Marketplaceが競合事業者との競争に勝つために,Facebookのソーシャルネットワーク上で競合事業者が広告を行う際に競合事業者から収集したデータを利用している可能性がある。例えば,Facebookは,ユーザーの嗜好に関する正確な情報を競合事業者の広告活動から入手し,Facebook Marketplaceの修正に当該データを利用することができた可能性がある。
 また,欧州委員会は, Facebook Marketplaceをソーシャルネットワークに組み込むことが,顧客へのアプローチに当たって競合他社よりも優位に立つ又は競合するクラシファイド広告事業者を排除する抱き合わせ行為に該当するか否かについても調査する。 

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