EU
欧州委員会,IlluminaによるGRAILの買収に関し,暫定措置に向けて異議告知書を送付
2021年9月20日 欧州委員会 公表
原文
【概要】
欧州委員会は,Illumina及びGRAILに対して異議告知書を送付し,両社がEU合併規則の下での待機義務(事業者は,欧州委員会の審査対象となる企業結合について,欧州委員会に届け出て,承認されるまで実施してはならない。)に違反した疑いを受け,暫定措置を採る予定であることを通知した。本暫定措置は,IlluminaによるGRAILの買収に関する欧州委員会の審査が行われている間,効果的な競争を回復,維持することを目的としている。
2021年7月22日,欧州委員会は,IlluminaによるGRAILの買収計画をEU合併規則に基づいて評価するため,詳細審査を開始した。しかしながら,2021年8月18日,欧州委員会による同買収計画の審査が終了していない段階で,IlluminaはGRAILの買収を完了した旨を公表した。
異議告知書において,欧州委員会は,Illumina及びGRAILが合併を完了することは待機義務に違反しており,効果的な競争を回復又は維持するための暫定措置を講じることが適切であるとの予備的見解を示している。
欧州委員会が審査中の企業結合が承認前に実施されたことを受けて,欧州委員会が暫定措置を採ろうとするのは,本件が初めてである。本暫定措置は,欧州委員会の合併審査の結果が出るまでの間,当該合併が競争に与え得る回復不能な悪影響及び合併当事者の不可逆的な企業結合の可能性を防ぐことを目的としている。
想定される暫定措置は,GRAILを分離したままにしておくというIlluminaによる一方的な提案に留意しながらも,同社の提案を超えて,その提案において特定された多くの重大な欠陥に対処するものである。
GRAIL及びIlluminaは現在,欧州委員会の異議告知書に対して書面及び口頭で意見を出す機会を与えられている。当事会社の意見を聴取した後,欧州委員会は暫定措置に拘束力を持たせることができ,Illumina及びGRAILはそれを遵守する法的義務を負うことになる。両社は,暫定措置を遵守しない場合,履行強制金又は制裁金を賦課される可能性がある。
これと並行して,2021年8月20日付けで公表したとおり,欧州委員会は,IlluminaとGRAILが欧州委員会の詳細審査を待たずに合併を実施する決定をしたことが,制裁金の賦課につながり得るEU合併規則違反に該当するか否かについて,引き続き審査を行う。Illumina及びGRAILに法的責任があると欧州委員会が認定した場合,両社の全世界年間売上高の10%を上限とする制裁金を賦課する可能性がある。