2022年4月

EU

欧州委、ピエール・カルダン及びそのライセンシーであるアーラーズのライセンス供与及び販売に関する慣行について審査を開始

2022年1月31日 欧州委員会 公表
原文
【概要】
 欧州委員会(以下「欧州委」という。)は、ピエール・カルダン(Pierre Cardin)及びそのライセンシーであるアーラーズグループ(Ahlers Group。以下「アーラーズ」という。)が、ピエール・カルダンのライセンス商品について、特定顧客層に対する販売のみならず、国境を越える販売及びオンライン販売を制限することによって、EU競争法に違反したかどうかを調査するための正式審査を開始した。
 ファッションハウスであるピエール・カルダンは、自社製品の製造及び販売商標について、ライセンス供与している。ドイツのアパレル・メーカーであるアーラーズは、欧州経済領域におけるピエール・カルダン製品の最大のライセンシーである。
 欧州委は、ピエール・カルダン及びアーラーズが、ピエール・カルダンのライセンシーによるピエール・カルダンのライセンス商品について、特定顧客層に対する販売のみならず、オフライン及びオンラインを含む国境を越えた販売を制限することによって、EU競争法に違反している疑いがあることを懸念している。さらに、欧州委は、ピエール・カルダン及びアーラーズが、ライセンス契約によって、ピエール・カルダン製品の並行輸入及び特定顧客層向け販売に関して特定の制限を強いる戦略を策定していたかどうかについて審査する。
 違反事実が認められれば、両社の行為は、事業者間の反競争的な協定を禁止するEU競争法(EU機能条約第101条)に違反するおそれがある。
 欧州委は今後、優先事項として、詳細審査を実施する。正式審査の開始は、結果を予断するものではない。

欧州委、カーゴテック及びコネクレーンズの合併を条件付承認

2022年2月24日 欧州委員会 公表
原文
【概要】
 欧州委は、EU合併規則に基づき、カーゴテック(Cargotec)及びコネクレーンズ(Konecranes)の合併(以下「本件合併」という。)について、承認した。承認は、特定事業の売却を条件としている。
 本日(2022年2月24日)の決定は、カーゴテック及びコネクレーンズの合併計画に対する詳細審査に基づく。両社は、ターミナル自動化ソリューションの提供事業者であると同時に、欧州最大かつ世界有数のコンテナ及び荷役機器メーカーでもある。
 
欧州委の審査
 欧州委は、詳細審査において、ターミナル運営事業者、クレーンや他のコンテナ荷役機器メーカーなどの様々な市場関係者からの意見提出を受けた。
 欧州委は、市場調査の結果、当初届出された本件合併によっては、多岐にわたるコンテナ及び荷役機器の種類について、特に以下の分野において、欧州経済領域内の競争が実質的に減殺され、価格上昇につながるおそれがあることについて懸念していた。
・ゴムタイヤ式ガントリークレーン(訳注:コンテナふ頭に設置される、貨物の積卸しを行うためのクレーンをいう。)
・ストラドル/シャトルキャリア(訳注:コンテナの運搬、積卸し、段積み等を行う、コンテナ専用の特殊運搬車両をいう。)
・移動機器、特にリーチスタッカー(訳注:コンテナの移動、段積み、積卸し等を行うための機械をいう。)、空コンテナハンドラー及び大型リフトトラック(10トン以上)
 合併後の当事会社は、上記各分野において、極めて大きな市場シェアを有し、ごく僅かに残る競合事業者との競争にのみ直面することとなる。欧州の顧客は、既存の参入障壁が大きいために、コンテナ及び荷役機器の新たな供給事業者に効果的にアクセスすることができないであろう。その結果、欧州のターミナル及び法人顧客は、上記の重要な機器の価格上昇及び選択肢の減少に直面することとなる。
 さらに、欧州委の審査の結果、コネクレーンズの移動機器事業及びカーゴテックのスプレッダ(訳注:スプレッダとは、コンテナ用荷役機械に装備され、コンテナの荷役に用いられる専用の吊具装置)事業が垂直統合されることから、本件合併によって、競合する移動機器・スプレッダの供給事業者が、顧客にアクセスしにくくなるおそれがあることが判明した。
 
問題解消措置案
 両社は、欧州委の懸念を解消するために、以下の問題解消措置を提示した。
・ゴムタイヤ式ガントリークレーン、ストラドル/シャトルキャリア市場において、カーゴテックは、全てのクレーン及びストラドル/シャトルキャリア事業の売却を提示した。これには、ポーランドの工場及び売却された製品カテゴリーにおけるカーゴテックのKalmarブランド使用ライセンスが含まれる。
・スプレッダを含む移動機器市場において、コネクレーンズは、フォークリフトのほか、リーチスタッカー、フルコンテナハンドラー及び空コンテナハンドラーの製造及び販売に係る事業の売却を提示した。これには、スウェーデン及び中国の工場のほか、販売代理店との契約が含まれる。
 上記の問題解消措置は、欧州委が指摘した競争上の懸念事項に完全に対応するものである。問題解消措置案に関する市場テストにおいて、複数の顧客、販売業者及び競合事業者から提出された意見に基づき、欧州委は、事業売却によって、当該事業を購入する事業者が、統合後の当事会社と十分に競合することが可能となると判断した。
 したがって、欧州委は、本件合併計画は、問題解消措置に沿って修正することにより、競争上の懸念を生じさせることがなくなるとの結論に達した。本決定は、問題解消措置を完全に遵守することを条件としている。
 
他の競争当局との協力
 米国、英国、オーストラリア、シンガポール、イスラエルなど多数の競争当局が、本件合併計画について、現在も審査中である。欧州委は、これらの当局と定期的に連絡を取り合っている。
 
事業者及び製品
 カーゴテックは、本社所在地がフィンランドであり、特に港湾やターミナルにおける荷役、船舶及び道路輸送向けの機器・サービス(コンテナ荷役機器及びターミナル自動化ソリューションを含む。)について、Kalmerブランドで提供している。
 コネクレーンズは、同じくフィンランドに本社を置き、コンテナ荷役機器や自動化技術など、特に造船所、港湾及びターミナルにおける荷揚げ及び荷役向けの機器・サービスを提供している。
 
 本件合併計画は、2021年5月28日に欧州委に届出が行われ、欧州委は同年7月2日に詳細審査を開始していた。(訳注:英国競争・市場庁は2022年3月29日付けで本件合併の差止めの決定を公表し、これを受けて、カーゴテックは同日付けで本件合併の断念を公表。)

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