EU
欧州委員会、個人事業者による団体協定に関するガイドラインを策定
2022年9月29日 欧州委員会 公表
原文
【概要】
欧州委員会(以下「欧州委」という。)は、2022年9月29日、個人事業者の労働条件に関する団体協定に対するEU競争法の適用に関するガイドラインを策定した。本ガイドラインは、特定の個人事業者が集まり、EU競争法の規定に違反することなく、より良い労働条件を求めて団体交渉するための条件を明示している。
マルグレーテ・ヴェステアー欧州委上級副委員長(競争政策及びデジタル時代に適する欧州(Europe Fit for the Digital Age)担当)は、次のように述べた。
「個人事業者は、デジタル経済及びその周辺分野において、良好な労働条件を求めて個人で交渉することができない場合があるため、厳しい労働条件に直面することが多い。団体交渉は、このような状況を改善するのに有効な方法である。本ガイドラインは、競争法が良好な労働条件を求めて行う団体交渉の障害とならないようにすることで、個人事業者に対して法的確実性を与えることを目的としている。」
団体協定に関するガイドライン
EU機能条約第101条は、事業者間の競争を制限する合意を禁止している。雇用主と労働者の間の労働協約はEU競争法の適用対象ではないが、個人事業者は「事業者」とみなされるため、報酬やその他の取引条件に関する交渉を集団で行う場合、競争法違反のリスクを負うことになる。その結果、個人事業者は、労働条件について集団で交渉することができるかどうか判断できないことが多い。
本ガイドラインは、完全に独力で事業を行い、他人を雇用していない個人事業者に対して適用される。
本ガイドラインは、特定の個人事業者がEU競争法に違反せずに労働条件を改善するために集団で交渉できる条件を明示している。具体的には以下のとおりである。
1 競争法は、労働者と同等の状況にある個人事業者には適用されない。ここでは、以下のような個人事業者が含まれる。
(1)1つの事業に関するサービスを専門的又はほとんど専門的に行っている個人事業者
(2)労働者と一緒に働いている個人事業者
(3)デジタル労働プラットフォームに対して又はこれを通じてサービスを提供している個人事業者
2 欧州委は、交渉上弱い立場にある個人事業者によって結ばれた団体協定に対しては、EU競争法を適用しないこととしている。これは例えば、個人事業者が経済的に優位な立場にある事業者と交渉する際に立場の不均衡に直面する場合や、国内法やEU法に基づいて団体交渉を行った場合である。
欧州委は、欧州競争ネットワーク及び欧州ソーシャルパートナー(European Social Partners)の特別会合を通じて、これらのガイドラインが加盟国レベルでどのように反映されるかを監視していく。欧州委は、2030年までに本ガイドラインについての評価を行う予定である。
本ガイドラインは、プラットフォームにおける労働者の労働条件が適切に設定されることを確保することを求める取組の一部を形成しており、これには、指令制定のための欧州委の提案及びプラットフォームにおける労働者の労働条件の改善に向けた通達も含んでいる。しかし、本ガイドラインは、デジタル労働プラットフォームにおける個人事業者に限定されておらず、オフライン経済において事業活動を行っている個人事業者も対象としている。
背景
欧州委は、2020年6月、EU競争法が個人事業者の労働条件を改善することを目的とした団体協定締結の妨げとならないようにするための取組を開始した。
欧州委は、2021年1月、本取組の影響評価を開始し、その中で公開協議や外部調査などを通じてさらなる証拠を収集した。
欧州委は、2021年12月、ガイドライン案について、利害関係者から意見募集を開始した。
本取組の最終的な影響評価やこれを裏付ける外部調査は、本日(2022年9月29日)、ガイドラインとともに公表された。