2023年5月

EU

欧州委員会、アップルに対しApp Storeのルールに関する懸念を明確にする新たな異議告知書を送付

2023年2月28日 欧州委員会 公表

原文

【概要】

 欧州委員会(以下「欧州委」という。)は、アップルに対し、音楽ストリーミングサービス提供事業者向けのApp Storeのルールに関する競争上の懸念を明確にするために異議告知書を送付した。
 
 今回の異議告知書の送付は、アップルが、①音楽ストリーミングアプリ開発者(以下、「アプリ開発者」という。)に自社のアプリ内課金決済システムの利用を強制すること(in-app purchase system (IAP)の利用強制)、② アプリ開発者がiPhone及びiPadユーザーに別の音楽ストリーミングサービスを案内することを制限すること(「顧客誘導禁止条項」)により、アップルが支配的地位を濫用したとの予備的見解を示した異議告知書の送付(注:2021年4月30日に送付)に続く手続である。
 
 本日(2023年2月28日)送付した異議告知書は、欧州委が、①のIAPの利用強制に関する反トラスト法上の適法性についてはもはや見解を示さないこととし、②のアップルがアプリ開発者に課した契約上の制限について、iPhone及びiPadユーザーに対してアップルのアプリ以外のより低価格な代替的音楽ストリーミングサービスがあることを知らせ、ユーザーがそれらを選択することを妨げている点に重点を置くことを明確にしたものである。
 
 欧州委は、アップルの顧客誘導禁止条項はEU機能条約(TFEU)第102条に違反する不公正な取引条件であるとの予備的見解を示している。
 
 特に、欧州委は、アップルがアプリ開発者に課している顧客誘導禁止条項により、アプリ開発者が消費者に対し、より低価格で音楽ストリーミングサービスを利用できるサイトや方法について情報提供することが妨げられていることを懸念している。これらの顧客誘導禁止条項は、(i) iPhone及びiPadのApp Storeにおけるアプリの提供にとって必要なものでも相応なものでもなく、(ii) アップルの携帯端末で音楽ストリーミングサービスを利用するユーザーに高い料金を支払うことになるという不利益をもたらし、(iii) 消費者の有効な選択を制限することによって音楽ストリーミングアプリ開発者の収益にも悪影響を与えるものである。
 
 2020年6月、欧州委は、本件について正式な審査手続を開始した。2021年4月、欧州委はアップルに異議告知書を送付し、同社は2021年9月にこれに回答している。
 
 本日の異議告知書は、欧州委の異議申立ての内容を明確にすることにより、2021年の異議告知書に取って代わるものである。
 異議告知書の送付は、審査結果に予断を与えるものではない。

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