2023年6月

EU

欧州委員会、排除型市場支配的地位の濫用に関するガイドラインの導入及び執行優先順位に係るガイダンスの改定に関する意見募集を開始

2023年3月27日 欧州委員会 公表

原文

【概要】
 欧州委員会(以下「欧州委」という。)は、排除型市場支配的地位の濫用に関するガイドラインの導入に関する意見募集(Call for Evidence)を開始した。また、それと併せて、2008年の排除型濫用行為の執行優先順位に係るガイダンスを改正する欧州委員会コミュニケーション(Communication from the Commission、以下「コミュニケーション」という。)を公表した。
 
 本日(2023年3月27日)発表した施策は、市場支配的地位の濫用に関する規制(EU機能条約(以下「TFEU」という。)第102条)に係る2008年以来の大きな政策的取組であり、欧州の消費者及び経済全体の利益のために、市場支配的地位の濫用に関する規制が、明確かつ効果的に、積極的に適用されるようにすることを目的としたものである。
 
1 排除型市場支配的地位の濫用に関するガイドライン
 TFEU第102条は、EU競争法において、その適用を明確にするガイドラインが存在しない数少ない分野の一つである。しかし、その執行は、競争が効果的に機能し、消費者が競争市場の利益を享受できることを確保するために重要である。そこで、欧州委は、排除行為に対するTFEU第102条の適用に関するガイドラインの採択を目指し、本日、意見募集を開始した。
 この取組は、EUの裁判所の判例法や、欧州委がTFEU第102条の執行を通じて得た幅広い経験を反映させることを目的としている。本ガイドラインは、消費者、企業、各国の競争当局や裁判所にとって有益な法的確実性を高めることを目的としている。
 
 利害関係者は、意見募集に対して4週間以内にコメントを出すことができる。欧州委は、2024年半ばまでに意見募集を踏まえたガイドラインの原案を公表し、2025年に採択することを目指している。本ガイドラインが採択された場合、欧州委は、今回のコミュニケーションで改定を行った執行の優先順位に係る2008年のガイダンスを撤回する予定である。
 
2 執行の優先順位に係る2008年のガイダンスを改定するコミュニケーション
 最終的なガイドラインが採択されるまでの間、欧州委は、優先的に事件として取り上げる排除行為を決定するための方法について、一定の明確化を行うこととしている。
 
 そのため、欧州委は、2008年のガイダンスの一部を改定するコミュニケーションを採択した。本コミュニケーションでは、例えば、ネットワーク効果やその他の高い参入障壁を特徴とする市場において、支配的な事業者ほどは(未だに)効率的でない競合他社を排除する行為ついて、欧州委が調査し得ることを明確にしている。また、支配的な事業者が特定の供給に関して不当なアクセス条件を課している場合(いわゆる「構造的供給拒否」(constructive refusal to supply))に、当該供給が不可欠であるという証拠がない場合でも欧州委は調査し得ることを明確にしている。
 本コミュニケーションによる改定は、TFEU第102条に関するEUの裁判所の判例法やそれに伴う欧州委の執行実務における重要な進展を、市場の発展も考慮に入れながら行ったものであり、濫用的な排除行為に関する欧州委の執行の優先順位の土台となる原則について透明性を高めることを目的としている。
 
3 マルグレーテ・ヴェステアー欧州委上級副委員長の発言
「市場支配的地位の濫用に関する規制の厳正な執行は、消費者及びより強い欧州経済の双方に利益をもたらす。我々は、TFEU第102条の適用に関する多くのEU裁判所の判例法を注意深く分析してきた。今、これらの判例法を反映したガイドラインの作成に着手する時期に来ている。その間、我々は、市場や判例法の進展を考慮し、我々の執行活動が進化してきた分野の透明性を確保するため、執行の優先順位に係る2008年のガイダンスを改定する。」

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