EU
欧州委員会、アマゾンによるiRobotの買収計画について第二次審査を開始
2023年7月6日 欧州委員会 公表【概要】
欧州委員会(以下「欧州委」という。)は、EU企業結合規則に基づき、アマゾンによるiRobotの買収計画について、第二次審査を開始した。 1 概要
欧州委は、EU企業結合規則に基づき、アマゾンによるiRobotの買収計画について、第二次審査を開始した。欧州委は、当該買収によってアマゾンがロボット掃除機市場における競争を制限し、オンライン販売市場における供給者としての地位が強化されることを懸念している。
アマゾンはオンラインマーケットプレイス(Amazon Store)を運営しており、そこでは小売業者が商品(ロボット掃除機を含む)を宣伝し、顧客に販売している。アマゾンは当該オンラインマーケットプレイスでロボット掃除機を含む様々な製品の小売業者としても活動している。また、アマゾンは音声アシスタント「Alexa」も提供している。iRobotはロボット掃除機を製造し、アマゾンのオンラインマーケットプレイスにおいても販売している。
2 欧州委の競争上の懸念
欧州委の第一次審査によれば、本件買収計画により、アマゾンは (i) ロボット掃除機の製造及び供給市場における競争を制限する可能性、(ii) 第三者販売者(及び関連広告サービス)に対するオンラインマーケットプレイスサービス提供のための市場又はその他のデータ関連市場における地位を強化する可能性があることが明らかになった。
具体的には、欧州委は次のとおり判断した。
アマゾンのオンラインマーケットプレイスは、複数のEU加盟国においてロボット掃除機を販売する上で特に重要な販路となっている。
アマゾンは、複数の手段によって、iRobotのライバル企業がアマゾンのオンラインマーケットプレイスでロボット掃除機を販売できないようにする又はライバル企業のオンラインマーケットプレイスへのアクセスを低下させることにより、iRobotのライバル企業を排除する能力及び意図を有している可能性がある。その方法としては、(i)アマゾンのマーケットプレイスで表示される販売事業者にとって無料及び有料の両方の検索結果(広告も含む)において、iRobotのロボット掃除機を優遇すること、(ii)iRobotのライバル企業が特定の広告サービスを利用することを妨げること、又は(iii)iRobotのライバル企業がアマゾンのマーケットプレイスでロボット掃除機を宣伝するコスト及び販売するコストを引き上げることが考えられる。このような市場閉鎖戦略は、ロボット掃除機の製造及び供給市場における競争を制限し、消費者にとって価格の上昇、品質の低下、イノベーションの低下を招くおそれがある。
また、アマゾンは、iRobotのライバル企業がアマゾンのAlexaのソフトウェアの既存又は将来のアプリケーションプログラムインターフェースや「Works with Alexa」(WWA)認証(訳注:Alexaと互換性があることの認定)にアクセスできないようにすること、又はそのようなアクセスを低下させることによって、iRobotのライバル企業を排除する能力と意図を有している可能性がある。Alexaのソフトウェアとの相互運用性とWWA認証へのアクセスは、ロボット掃除機メーカーやサプライヤーが競争する上で重要なセールスポイントとなっていると考えられる。
アマゾンは、(i)iRobotのロボット掃除機のユーザーによって提供された情報、(ii)iRobotのロボット掃除機によって収集された情報、(iii)iRobotが第三者から収集した情報を含む、iRobotの顧客データを獲得することになる。このデータは、第三者販売者(及び関連広告サービス)に対するオンラインマーケットプレイスサービス提供のための市場又はその他のデータ関連市場において、アマゾンに重要な優位性を提供する可能性がある。例えば、iRobotのデータにより、アマゾンは自社のマーケットプレイスにおける自社製品の無料の検索結果や広告のランキングを向上させたり、広告のパーソナライズやターゲティングの精度を向上させたりすることができ、ライバルである他のマーケットプレイス供給事業者がアマゾンのオンラインマーケットプレイスサービスに対抗することがより困難になる可能性がある。このため、本件買収はアマゾンのライバル企業の参入や事業拡大の障壁を高め、消費者に不利益をもたらす可能性がある。
欧州委は、今後、本件買収の影響について第二次審査を行い、競争上の懸念が認められるかどうかを判断する。
欧州委は、本件審査において他の競争当局と緊密に協力してきており、第二次審査においてもこのような協力を継続する。
本件買収計画は2023年6月1日に欧州委に届出が行われており、欧州委は、2023年11月15日までの90営業日以内に決定を下すことになる。
なお、第二次審査の開始は、審査の結果に予断を与えるものではない。