2023年10月

EU

欧州委員会、マイクロソフトが違法にTeamsとOffice365などとの抱き合わせ販売を行っている疑いで正式審査を開始

2023年7月27日 欧州委員会 公表

原文

【概要】

 欧州委員会(以下「欧州委」という。)は、マイクロソフトが、コミュニケーション及びコラボレーション(共同作業)のための製品である「Teams」を、企業向け製品として人気がある「Office 365」及び「Microsoft 365」に抱き合わせること(tying)又はセット販売すること(bundling)により、EU競争法に違反しているかどうかを判断するため、正式審査を開始した。
 マイクロソフトは、プロダクティビティソフトウェア、ビジネスソフトウェア、クラウドコンピューティング、パーソナルコンピューティングを提供する世界的なテクノロジー企業である。「Teams」は、クラウドベースのコミュニケーション及びコラボレーションのための製品であり、例えば、メッセージング、通話、ビデオ会議、ファイル共有などの機能を提供するとともに、マイクロソフト及びサードパーティのワークプレイスツールやその他のアプリケーションを統合している。
 新型コロナウィルスの流行により、リモートワークへの移行が加速し、企業のクラウドへの移行と、コミュニケーション及びコラボレーションのためのクラウドベースのソフトウェアの導入が加速した。クラウドへの移行により、社内にデータセンターを維持する必要がなく、異なるプロバイダーから複数のソフトウェアを利用できるようにするサービスを提供する新しい企業やビジネスモデルの出現が可能となった。審査対象製品を含むクラウドベースのソフトウェアは、通常、サブスクリプション形式で顧客に提供されている。
 マイクロソフトは、ビジネス顧客向けのクラウドベースのプロダクティビティパッケージとして定着している「Office 365」及び「Microsoft 365」に「Teams」を含めている。欧州委は、マイクロソフトのこの戦略が欧州経済領域(EEA)におけるコミュニケーション及びコラボレーション製品市場における競争を制限し、当該市場における地位を濫用・維持していないか、懸念している。
 すなわち、欧州委は、マイクロソフトが、自社のプロダクティビティパッケージのサブスクリプション契約を結ぶ際に、「Teams」へのアクセスを含めるかどうかの選択肢を顧客に与えないことにより、同製品に販売上の優位性を与えている可能性や、自社のプロダクティビティパッケージと競合する製品との相互運用性を制限している可能性を懸念している。
 これらの行為は、反競争的な抱き合わせやセット販売に該当する可能性があり、コミュニケーション及びコラボレーションのための他の製品のサプライヤーがマイクロソフトと競争することを妨げ、EEA内の顧客に不利益をもたらす可能性がある。
 これらが立証されれば、審査中の行為は、市場支配的地位の濫用を禁止するEU機能条約(TFEU)第102条に違反する可能性がある。
 欧州委は、優先的に対応する事項として、詳細な審査(正式審査)を実施する。正式審査の開始は、審査の結果に予断を与えるものではない。

欧州委員会、アドビによるフィグマの買収計画について、第2次審査を開始

2023年8月7日 欧州委員会 公表

原文

【概要】

 欧州委員会(以下「欧州委」という。)は、アドビによるフィグマの買収計画について、EU企業結合規則に基づき、詳細審査(第2次審査)を開始した。欧州委は、本件買収が実行されれば、双方向性のある製品設計ツール及びデジタル資産作成ツールの供給の世界市場における競争が減殺される懸念があるとしている。
 
 アドビは、創造的な設計ソフトウェアツール(Illustrator、Photoshop等)、双方向性のある製品設計ツール(アドビ XD)等を提供する世界的なソフトウェア企業である。フィグマは、双方向性のある製品設計のためのウェブ上のコラボレーションツール (フィグマ Design) やホワイトボードツール(訳注:オンライン会議用のホワイトボード)を提供している。
 
欧州委の予備的審査による競争上の懸念
 欧州委の予備的審査の結果、本件買収が実行されれば、以下の製品の世界市場における競争が制限されるおそれがあることが判明した。
1 双方向性のある製品設計ツールの供給市場
①    フィグマは標記市場において明らかに第1位の事業者であり、アドビは最大の競争相手の1社である。アドビとフィグマは熾烈な競争相手であり、本件買収が実行されれば重要な競争圧力が失われるおそれがある。
②    他の対抗可能な競合事業者が適時に市場に参入する可能性は低い。
2 デジタル資産作成ツールの供給市場
①    フィグマがアドビのデジタル資産作成ツールに制約を及ぼす現在の影響力を排除する。
②  フィグマがアドビの資産作成ツールの効果的な競争相手に成長する可能性を失わせる。
 
 また、欧州委は、本件買収により、フィグマをアドビのCreative Cloud Suiteに抱き合わせることとなり、双方向性のある製品設計ツールの競合事業者を排除する可能性があるかどうかについて、さらに審査する。
 
 欧州委は今後、本件買収の影響について詳細審査を行い、当初の競争上の懸念が確認されるか判断する。また、予備審査の間、他の競争当局と緊密に協力しており、詳細審査の間も同様に協力を継続する。
  本件買収計画は、2023年6月30日に欧州委に届出が行われた。欧州委は、現在のところ、90営業日以内(2023年12月14日まで)に決定を行う。詳細審査の開始は、審査の結果に予断を与えるものではない。

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