2025年11月

EU

欧州委によるグーグルに対する29億5000万ユーロ(約5100億円)の制裁金の賦課(アドテクを巡る支配的地位の濫用)

2025年9月5日 欧州委員会 公表

原文

【概要】

1 公表文
(1) 欧州委員会(以下「欧州委」という。)は、アドテクノロジー(注1)(以下「アドテク」という。)業界における競争を阻害し、EU競争法に違反したとして、グーグルに対して29億5000万ユーロ(約5100億円)の制裁金を賦課した。同社は競合するアドテクサービス提供者、広告主及びパブリッシャー(ウェブサイトやアプリ等における広告枠の提供者)にとって不利益となる形で、自社のアドテクサービスを優遇(以下「自社優遇」という。)していた。欧州委はグーグルに対し、①自社優遇を禁止すること、②アドテクサプライチェーンにおける利益相反(訳注:グーグルは、パブリッシャー向け広告サーバーやアドエクスチェンジ等を自社で運営しており、自社サービスを優遇することで、競合他社を排除し、広告主やパブリッシャーに不利益を与えている。)を解消する措置を講じること、を命じた。この命令に基づき、グーグルは60日以内に具体的な実施計画を欧州委に報告しなければならない。
(注1) インターネット広告の配信・運用・効果測定を効率化し、その成果を最大化するための技術やプラットフォームの総称をいう。

(2) 違反行為
 グーグルは、広告を主な収益源としており、特に、自社のウェブサイトやアプリ上で広告枠の販売事業や、オンライン広告の掲載を希望する広告主と広告枠を提供するパブリッシャーとの仲介事業を行っている。
 広告主及びパブリッシャーは、検索クエリ(注2)と連動しないリアルタイム広告(ニュースサイト上のバナー広告等)を掲載する際に、アドテク業界で利用されるデジタルツールに依存している。
 アドテク業界では次の3つのデジタルツールが提供されている。
① パブリッシャー向け広告サーバー(パブリッシャーが自身のウェブサイトやアプリ上の広告スペースを管理するために使用するもの)
② 広告主向け広告購入ツール(広告主が広告を出稿する際に使用するもの)
③ アドエクスチェンジ(広告主とパブリッシャーとを結びつけるプラットフォーム)
 グーグルは、①パブリッシャー向け広告サーバー「DoubleClick For Publishers(DFP)」、②広告主向けの広告購入ツール「Google Ads」及び「DV 360」、③アドエクスチェンジ「AdX」、といったアドテクサービスを提供している。 
 欧州委による調査の結果、グーグルは、 ①DFPを通じたパブリッシャー向け広告サーバー市場、②Google Ads及びDV360を通じた広告主向け広告購入ツール市場において、それぞれ支配的地位にあると認定された。両市場の地理的範囲は欧州経済領域(EEA)全域である。 
 欧州委は、グーグルが、少なくとも2014年から現在に至るまで、具体的に次に掲げる行為を行うことで支配的地位を濫用し、EU機能条約第102条に違反していたと認定した。
 ・ 支配的な地位にあるDFPが運営する広告選定プロセスにおいて、競合他社の最高入札額を事前にAdXに通知するなどして、AdXを優遇した。
 ・ Google Ads及びDV360がアドエクスチェンジに入札する方法を操作し、AdXを優遇した。例えば、Google Adsは競合するアドエクスチェンジを回避し、主にAdXに入札していたため、AdXが最も魅力的なアドエクスチェンジとなった。
 欧州委は、「グーグルによるこれらの行為がAdXに対して意図的に競争上の優位性を与え、AdXと競合するアドエクスチェンジを排除した可能性があった。これによってAdXがアドテクサプライチェーンにおける中心的な役割を維持し、グーグルは自らが提供するサービスに対して高額な手数料を課すことが可能となった」と結論付けた。
(注2) ユーザーが検索エンジンに入力する、検索したい情報を示す語句や文のこと。

(3) グーグルに対する措置
 欧州委は、グーグルに対し、自社優遇の終了とアドテクサプライチェーンにおける利益相反の解消措置を講じるよう命じた。グーグルは60日以内に是正措置案を提出しなければならず、欧州委はその内容を評価し、問題の解消が認められない場合には、グーグルの聴聞権を保障した上で、適切な是正措置を課す手続を進める。欧州委は、グーグルによる一部事業の売却が利益相反を解消する唯一の手段であるという予備的見解を示しているものの、まずはグーグルの提案を精査する方針である。 
 グーグルに対する29億5000万ユーロの制裁金額は、2006年制裁金ガイドラインに基づき、違反期間、重大性、関連売上高、及び過去の違反歴等を考慮して決定された。 
 司法省反トラスト局もグーグルによる同様の行為を調査しており、欧州委が、グーグルによる支配的地位の濫用が存在すると結論付けたことは、2025年9月22日に予定されている米国での是正措置に関する審理を前に重要な意義を有する(注:9月22日に是正措置に関する審理が開始されている。) 。

(4) 背景
 欧州委は、2021年6月、アドテク分野におけるグーグルによる反競争的な行為の疑いについて正式調査を開始し、2023年6月に異議告知書を送付した。これを受けて、グーグルは、同年12月に同異議告知書に対する見解を欧州委に回答した。

2 テレサ・リベラ上級副委員長(競争担当)のステートメントの概要
 本日(2025年9月5日)、欧州委は、グーグルがアドテク業界で支配的地位を濫用し、EU競争法に違反したとする決定を採択し、制裁金を賦課した。これは、EUが競争法の執行において揺るぎない姿勢で臨むことを改めて示すものである。 
 この決定により、欧州委は、デジタル市場において公正かつ実力に基づく競争条件を確保することに寄与する。 
 デジタル広告はオンライン経済の基盤であり、今日我々が依存する無料のオンラインコンテンツ及びサービスの大半を資金面で支えている。
 グーグルはアドテク業界を機能させる重要なツールの多くを支配している。 グーグルは、自社のオンラインディスプレイアドテクサービスを優遇し、競合他社やオンライン広告主、パブリッシャーを害する形で権力を濫用した。 
 グーグルによる違法行為の結果、広告主は高いマーケティングコストを強いられ、その負担は製品・サービスの価格上昇という形で欧州の消費者に転嫁された可能性が高い。またグーグルの戦略はパブリッシャーの収益を減少させ、サービスの質の低下や消費者向け購読料の上昇を招いたおそれがある。
 デジタル市場におけるグーグルの支配的地位の濫用に関する決定は今回が初めてではなく、自社優遇及び利益相反は10年以上続き、EEA全体に影響を及ぼしている。 
 また、本件行為は世界的にも確認されており、2025年4月17日、米国連邦裁判所は司法省による訴訟の主要な主張を支持する判決を下している。今後、同裁判所はグーグルに対する是正措置を審理する予定である(注:上記1(3)を参照)。
 したがって、グーグルはアドテク事業における利益相反を是正するため、大西洋両岸で一貫した是正措置を講じるべきである。共通の成果を達成することは、グーグル自身や世界中の市民を含む全ての関係者に利益をもたらす。
 引き続き、我々は、欧州と民主主義の中核的価値である法の支配の下、防御権を尊重し、法適用における予測可能性及び透明性を確保しながら行動しなければならない。我々の創設条約(founding Treaties)、法律、そして中核的価値は議論の余地がない。

 

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