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海外当局の動き

海外当局の動き

最近の動き(2026年10月更新)

 

米国

FTC、Zillow と Redfin の合意に関する反トラスト法上の懸念を解消するための命令案を承認

2026年8月24日 米国連邦取引委員会 公表

原文

【概要】

1 2026年8月24日、米国連邦取引委員会(以下「FTC」という。)は5州と共に、Zillow 及び Redfin に対する訴訟を解決し、賃借人がアパートを探す際や不動産管理会社が賃貸物件を掲載する際に利用するオンライン・プラットフォームにおける競争を回復させる和解命令(stipulated order)案を提出することを裁判所に通知した。


2 同命令案は、2025年に Zillow と Redfin の間で締結された合意の主要な条項を撤廃するものである。同合意に基づき、Zillow は、Redfin に対し1億ドルを支払い、その代わりに Redfin は、インターネット掲載サービス(以下「ILS」という。)事業を廃止し、Zillow から提供された集合住宅物件情報のみを再掲載し、顧客を Zillow に移行させ、最長9年間は ILS 市場から撤退することとなっていた。また、同命令案は、Redfin に対し、以前よりもはるかに多くの賃貸物件情報を掲載して ILS 市場に再参入すること、及び2025年の合意前よりもはるかに強力な競争事業者となることを確保するために数百万ドルを投資するという、法的拘束力のある確約(commitments)を行うことを求めている。ILS 市場における競争の回復は、コストの低下につながり、賃借人や不動産管理会社に利益をもたらすイノベーションを促進すると期待されている。

3 ダニエル・グルネラ競争局長は、次のように述べた。 
「 本日(2026年8月24日)の和解により、Zillow が Redfin に対し、競争を停止し、全ての顧客を Zillow に引き渡す見返りとして1億ドルを支払った合意が解消される。このような、競争事業者に対し、市場から撤退し競争を停止するよう金銭を支払う行為は、反トラスト法に違反する。本和解は、Redfin による賃貸広告事業の再開という、確実かつ法的拘束力のある確約を含め、裁判で勝訴した場合に得られたであろう結果よりも、賃借人と不動産管理会社の双方にとって、より良く、より迅速で、より確実な結果をもたらすものである。本日の素晴らしい成果は、住宅市場及び米国民が住居を探すために利用する商品及び役務の市場における競争から、米国民が確実に恩恵を受けられるようにするという、トランプ・ヴァンス政権下におけるFTCの公約を実現するものである。」 

【経緯】
4 FTC は、2025年9月に提出した訴状において、Zillow Group Inc.、Zillow Inc.及び Redfin Corporation が2025年2月に違法な合意を締結し、集合住宅賃貸物件向けの ILS 広告市場における Redfin の競争力を排除したと主張した。ILS とは、消費者が賃貸住宅を検索できるウェブサイトである。 当時、Zillow 及び Redfin は、全米最大規模の賃貸物件向け ILS ネットワークのうちの2つを運営していた。そのような ILS ネットワークには、Zillow が所有する Zillow Rentals、Trulia、HotPads や Redfin が所有する Rent.com、ApartmentGuide.com などが含まれていた。FTC は、Zillow と Redfin の合意は競争を回避するための抜け道であり、Zillow が Redfin と実質的な競争を行うことを免れ、既に集中度の高い市場において集中度をさらに高めるものであると主張した。バージニア州、アリゾナ州、コネチカット州、ニューヨーク州及びワシントン州は、FTC による提訴直後に同様の訴訟を提起し、これらの訴訟は2025年11月に併合された。

5 訴状では、Zillow は Redfin に対し、同社が ILS 広告市場から撤退し、最長9年間、同市場に再参入しないようにするために対価を支払ったと主張されていた。Zillow は Redfin に1億ドルを支払い、Redfin は顧客である広告主について契約を終了し Zillow に移行させることに合意した。また、Redfin は、自社のサイトを Zillow の物件掲載情報と同一のものとすることに合意し、顧客である集合住宅物件の広告主に対する独立した競争事業者としての役割を終えることに合意した。

6 10年間有効となる本命令案では、Redfin と Zillow に対し、合意を修正し、ILS 市場における競争を回復することを目的として、以下の規定を実施することが求められている。 
(1) 反競争的条項の撤廃 
 本命令案により、ILS 広告市場において Redfin が Zillow と独立して競争することへの制限が撤廃される。この条件には、Redfin が広告サービスを販売することや自社の顧客の物件情報を掲載することに対するあらゆる制限又は制約の撤廃や、Redfin が非公開又は競争上機微な事業情報を Zillow に明かすことを義務付ける条項の撤廃が含まれる。
(2) Redfin に対する ILS 市場への再参入の義務付け
  Redfin は、本命令案が確定してから6か月以内に ILS 賃貸広告事業を再開することを確約した。これには、顧客の物件掲載情報を Redfin が保有する賃貸物件サイト全体で広告掲載できるようにするための技術的なインフラを構築することも含まれる。さらに、Redfinは、ILS 事業のためにゼネラルマネージャー、営業担当者及び十分な訓練を受けたカスタマーサポートチームを採用し、同事業を促進するための広告を展開する。Redfin は、ILS 事業を複数年にわたって運営することを確約しており、ILS の顧客が将来にわたって豊富な選択肢から選べることを保証する。
(3) Redfin の成功を促進するための確約
  Redfinの再参入は、同社が ILS 事業を成長させるインセンティブ及び成長可能性を確保するための確約によって支えられる。重要なのは、Redfin が、追加の物件掲載を確保するための競争を妨げていた反競争的な制約に縛られることなく、Zillow の物件情報も引き続き配信し続けることである。その結果、Redfin は2025年の合意以前よりも大幅に多くの物件情報を掲載して再参入することになる。さらに、Redfin は、ILS 事業を成長させるために数百万ドルを支出するとともに、今後数年にわたり同事業に多額の投資を行うことを確約している。
(4) Zillow の従業員の採用を促進
  Redfin の市場再参入を促進するため、Zillow は、Redfin が Zillowの 従業員と面接を行えるよう、従業員に関する情報を提供することが義務付けられている。また、Zillow は、これらの従業員が Redfin に就職することを妨げる可能性のある競業避止義務、引抜禁止条項、その他の障害を全て放棄しなければならない。さらに、Zillow は、Redfin がこれらの従業員を採用し、雇用を維持することを妨害することを禁止される。
(5) Redfin との契約締結の促進
  Redfin が ILS 事業を再開してから9か月間、Zillow は、3か月以内に契約を解約できない ILS の顧客に対し、追加費用や違約金なしで契約を再交渉できるようにする。これにより、顧客は、重要な競争事業者である Redfin の再参入による利益を享受することができる。Zillow は、Redfin が広告事業を再開した後、速やかに、契約上、このような柔軟な対応が可能であることを顧客に通知しなければならない。また、Zillow は、ILS の顧客が Redfin と契約を締結することを妨げ、又は阻害することを目的とした、その他のいかなる行為も行ってはならない。 

7 本命令案に基づき、Redfin は、所定の期間内に ILS 事業を再開するという確約を履行しなかった場合、金銭的制裁の対象となり、また、命令案の要件の遵守状況について FTC に定期的に報告しなければならない。さらに、Zillow 及び Redfin は、集合賃貸物件に関するシンジケーション契約(注1)を締結する際、いずれか一方の当事者が ILS の顧客を巡って競争することを制限する条項が含まれている場合は、事前に FTC に通知しなければならない。
(注1)集合住宅の賃貸物件について、物件広告を他のサイトにも掲載するための契約。
 
8 委員会は、2対0の議決で合意された最終命令案を承認した。FTC は、同命令案をバージニア州東部地区連邦地方裁判所に提出した(注2)。同命令案には、アリゾナ州、コネチカット州、ニューヨーク州、バージニア州及びワシントン州の司法長官も当事者として参加している。 
(注2)合意に基づく最終命令案は、連邦地方裁判所の裁判官によって承認・署名されると法的効力を有する。


米国

KKR、合併前の事前届出を義務付けている HSR 法に度重なる違反をしていたとして、過去最高額となる2億5000万ドルの民事制裁金の支払に合意

2026年8月26日 米国司法省公表

原文

【概要】

1 米国司法省(以下「DOJ」という。)は、2026年8月26日、KKR & Co. GP LLC(注)(以下「KKRという。」)に対し、KKR が事前の企業結合審査手続(antitrust review process)を繰り返し無視したとする申立てを解決するため、2億5000万ドル(約383億6250万円)の民事制裁金を支払うことを求める同意判決案を提出した。

 DOJ の訴状によれば、KKR は、1976年ハート・スコット・ロディノ法改正法(以下「HSR法」という。)を遵守しなかったことにより、少なくとも16件の個別の企業結合案件において審査手続(antitrust scrutiny)を回避していた。

 (注)ニューヨーク州ニューヨークに本社を置き、運用資産総額が7440億ドル(11兆4218億8800万円)を超える世界最大級の投資会社の一つである。


2 スタンリー・ウッドワード司法次官は、次のように述べた。 

 「この歴史的な2億5000万ドルの民事制裁金は、DOJ が HSR 法を徹底的に執行することに全力を尽くしているという強力なメッセージを送るものである。当該制裁金の額は DOJ がこれまでに HSR 法に基づき課した民事制裁金の20倍以上に相当する。HSR 法の要件は、DOJ に違法性の疑いのある取引を調査する機会を与えることで、競争を保護するものである。法的義務を無視する企業は、深刻な結果に直面することになるだろう。」 


3 HSR 法は、競争を阻害する恐れがある合併や買収を禁止するクレイトン法第7条の執行を競争当局が円滑に行うようにするため、一定規模を超える合併、買収又はその他の企業結合の当事者に対し、DOJ 及び米国連邦取引委員会(以下「FTC」という。)に事前届出を行うよう義務付けている。KKR は、企業買収及び企業売却を事業とする高度な運用を行う未公開株式投資会社(sophisticated private equity firm)として、HSR 法とその要件に精通している。2021年以降、KKR は HSR 法に基づき100件以上の事前届出を行うことが求められていた。 


4 DOJ の訴状では、2021年から2022年にかけて、KKR は、少なくとも16件の個別の企業結合について、完全かつ正確な事前届出を行わなかったと主張されている。具体的には、KKR は、これらの企業結合のうち少なくとも8件について HSR 法に基づく届出書類を改ざんし、少なくとも2件について HSR 法に基づく事前届出を一切行わず、さらに、少なくとも10件についてHSR法に基づく事前届出に必要な書類を組織的に省略することにより、HSR 法に違反したとしている。 


5 HSR 法は、同法違反に対し、違反行為1件につき1日当たり5万ドル(約771万6500円)を超える民事制裁金を課すことを定めている。求められている2億5000万ドルの民事制裁金は、HSR法違反に対して課された民事制裁金としては過去最大規模である。



EU

欧州委、UPM と Sappi による合弁事業計画に対し異議告知書を送付

2026年8月26日 欧州委員会 公表

原文

1 概要 

 欧州委員会(以下「欧州委」という。)は、UPM-Kymmene Corporation(以下「UPM(注1)」という。)及び Sappi Limited(以下「Sappi(注2)」という。)に対し、両社が計画している合弁事業が、雑誌や書籍などの印刷物に使用される各種コミュニケーション用紙(注3)市場における競争を制限するおそれがあるとの予備的見解を通知した。

  UPM 及び Sappi は、欧州経済領域(以下「EEA」という。)において、コミュニケーション用紙製品の最大手2社である。本合弁事業は、UPM の欧州及び米国におけるコミュニケーション用紙事業と、Sappi の欧州におけるコミュニケーション用紙事業並びに Sappi の特殊紙事業の一部及びその他の付随的事業を統合することになり、EEA 市場の首位企業が誕生することになる。 

  特に、欧州委は、本合弁事業により価格引上げが可能となり、その結果、顧客の選択肢が減少することを懸念している。 

(注1)フィンランドに本社を置くグローバルな素材ソリューション企業であり、紙製品、パルプ、電力、ラベル用紙、製材、木質パネル製品に加え、生化学製品、バイオマス、合板ソリューションの開発、製造、販売を行っている。 

(注2)南アフリカに本社を置く、木材繊維を主原料とする再生可能資源から日常的に使用される素材を製造するグローバル企業である。Sappi は、パルプやバイオマテリアルなどの原材料に加え、通信用紙、特殊紙、包装用紙などの最終製品を供給している。 

(注3)雑誌、書籍、販促物などの印刷に用いられる印刷用紙。 


2 異議告知書 

 2026年4月28日、欧州委は、本合弁事業により、UPM 及び Sappi が EEA、英国及びスイスにおける特定のコミュニケーション用紙、具体的には、雑誌用紙及び上質コート紙の市場において競争を制限することになるかどうかを評価するため、詳細審査を開始した。これら2種類の用紙は、雑誌、書籍、販促物等の印刷物に使用されている。 

 欧州委は、影響を受ける市場及び本合弁事業が及ぼし得る潜在的な影響を把握するため、広範な審査を実施した。この審査には、特に、当事会社から提供された内部文書の分析並びに競争事業者及び顧客からの意見・データの収集が含まれている。 

 この詳細な審査の結果、欧州委は、UPM と Sappi による合弁事業が市場支配力を獲得し、雑誌用紙の一種である機械パルプコート紙と、上質コート紙の顧客に不利益を与える形で、価格を引き上げ、品質を低下させることが可能となることを懸念している。欧州委は、現時点において、関連する事業を合弁事業に統合することが、コスト削減、環境面での改善又はレジリエンスの向上という点で、潜在的な悪影響を相殺するのに十分な利益をもたらすとは確信できていない。 

 異議告知書は、審査における正式な手続における段階の一つであり、欧州委が当事会社に対する異議を書面で通知するものである。異議告知書を送付することは、調査の結果を予断するものではない。UPM 及び Sappi は、今後、欧州委の異議告知書に対して回答し、欧州委の事件記録を閲覧し、口頭審理を要請することができる。 


3 背景 

 本合弁事業は、2026年3月19日に欧州委に届出された。欧州委は、2026年4月28日に詳細審査を開始し、2026年11月11日までに最終決定を下すことになっている。 

 欧州委には、一定の売上高基準を上回る企業が関与する企業結合を審査する義務があり(EU企業結合規制第1条参照)、EEA  又はその相当部分において、有効な競争を著しく阻害することとなる企業結合を防止しなければならない。 

 届出がされた企業結合の大多数は競争上の問題を生じさせず、通常の審査を経て承認される。欧州委は、企業結合の届出が行われてから、通常、25営業日以内に承認を与えるか(第1次審査)、又は詳細審査(第2次審査)を開始するかを決定する。 

 欧州委は、本件のほか、現在、第2次審査の企業結合審査を2件継続している。 

 ① MMG による Anglo American のニッケル事業の買収計画 

 ② Saipem と Subsea7 による合併計画


   

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