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海外当局の動き

海外当局の動き

最近の動き(2023年5月更新)

米国

FTC、体制を強化するため、技術室を新たに設立

2023年2月17日 米国連邦取引委員会 公表

原文
【概要】

 米国連邦取引委員会(以下「FTC」という。)は、本日(2023年2月17日)、FTCの法執行及び政策立案を支援の一環として、デジタル市場における技術的課題に対応する能力を強化する新たな部署として、技術室(Office of Technology)を設立した。
 
 リナ・カーンFTC委員長は、次のように述べた。
「FTCは、1世紀以上にわたり、組織内の専門知識を強化することにより、新しい市場や変化し続ける技術に追いつくよう対応してきた。技術室の設立は、違法行為に対処し、米国民を保護し続けるため、我々が技術の発展や市場動向を完全に把握する組織内技術を確保するという点で、当然に必要なことであった。」
 
 技術室には専属の職員及び財源が充てられることとなっており、最高技術責任者であるステファニー・T・グエンが室長となる予定である。
 
 グエン最高技術責任者は、次のように述べた。
「私は、FTCの技術的専門性を強化し、デジタル経済の急速な発展という課題に対処するためのこの重要な時期に技術室の室長を務めることを光栄に思う。私は、FTCの優秀な職員と一緒に働き続け、技術に関するチームを設立することを楽しみにしている。」
 
 技術室は、消費者を保護し競争を促進するという使命を達成する後押しをするために専門性を強化する。具体的には、技術室は以下のことを行う。
 
・法執行のための審査及び法的措置の強化及び支援
 技術室は、商業活動及びその基礎となる技術に対するFTCの審査を支援する。これには、適切な審査手法の開発を支援すること、審査活動を通じて受領したデータ及び書類の評価及び分析を支援すること並びに効果的な問題解消措置の策定を支援することが含まれる。
 
・職員及び委員会に対する、政策及び研究のイニシアチブに関する助言及び関与
 技術室は、FTCの職員及び委員会と共に働き、FTC法第6(b)条に基づく研究、報告書、報告要請、政策提言、議会への報告及びその他の活動を含む法執行以外の活動についても技術的な専門知識を提供する。
 
・FTCの業務に影響を与える市場動向及び新技術の強調
 技術室は、ワークショップ、研究会及び意見募集を通して、国民及び外部の利害関係者と関わり、重要な傾向及びベストプラクティスを明らかにしていく。
 
 技術室の設立は、組織内の技術的専門知識を拡大するためのFTCの長年の努力に基づくものであり、また、この設立により、世界中の他の反トラスト及び消費者保護の執行機関と肩を並べるものとなる。
 
 FTCは、投票の結果、4対0で技術室の設立を承認した。


EU

欧州委員会、アップルに対しApp Storeのルールに関する懸念を明確にする新たな異議告知書を送付

2023年2月28日 欧州委員会 公表

原文

【概要】

 欧州委員会(以下「欧州委」という。)は、アップルに対し、音楽ストリーミングサービス提供事業者向けのApp Storeのルールに関する競争上の懸念を明確にするために異議告知書を送付した。
 今回の異議告知書の送付は、アップルが、①音楽ストリーミングアプリ開発者(以下、「アプリ開発者」という。)に自社のアプリ内課金決済システムの利用を強制すること(in-app purchase system (IAP)の利用制)、② アプリ開発者がiPhone及びiPadユーザーに別の音楽ストリーミングサービスを案内することを制限すること(「顧客誘導禁止条項」)により、アップルが支配的地位を濫用したとの予備的見解を示した異議告知書の送付(注:2021年4月30日に送付)に続く手続である。
 
 本日(2023年2月28日)送付した異議告知書は、欧州委が、①のIAPの利用強制に関する反トラスト法上の適法性についてはもはや見解を示さないこととし、②のアップルがアプリ開発者に課した契約上の制限について、iPhone及びiPadユーザーに対してアップルのアプリ以外のより低価格な代替的音楽ストリーミングサービスがあることを知らせ、ユーザーがそれらを選択することを妨げている点に重点を置くことを明確にしたものである。
 
 欧州委は、アップルの顧客誘導禁止条項はEU機能条約(TFEU)第102条に違反する不公正な取引条件であるとの予備的見解を示している。
 
 特に、欧州委は、アップルがアプリ開発者に課している顧客誘導禁止条項により、アプリ開発者が消費者に対し、より低価格で音楽ストリーミングサービスを利用できるサイトや方法について情報提供することが妨げられていることを懸念している。これらの顧客誘導禁止条項は、(i) iPhone及びiPadのApp Storeにおけるアプリの提供にとって必要なものでも相応なものでもなく、(ii) アップルの携帯端末で音楽ストリーミングサービスを利用するユーザーに高い料金を支払うことになるという不利益をもたらし、(iii) 消費者の有効な選択を制限することによって音楽ストリーミングアプリ開発者の収益にも悪影響を与えるものである。
 
 2020年6月、欧州委は、本件について正式な審査手続を開始した。2021年4月、欧州委はアップルに異議告知書を送付し、同社は2021年9月にこれに回答している。
 
 本日の異議告知書は、欧州委の異議申立ての内容を明確にすることにより、2021年の異議告知書に取って代わるものである。
 異議告知書の送付は、審査結果に予断を与えるものではない。


英国

CMA、デジタル市場に関する助言を受ける専門家として、Rod Sims元ACCC委員長など9人を任命

2023年2月23日 英国競争・市場庁 公表

原文

【概要】

 英国・競争市場庁(CMA)は、技術革新、オンライン競争、世界最強の事業者の一部による市場支配に取り組む最前線の専門家を任命した。
 
 これは、オンライン市場の問題により迅速に対処し、消費者が自由で公正な競争の恩恵を受けられるようにするため、CMAが政府から新たな権限を与えられる準備を進めていることを反映している。これは、例えば、被害が発生してから問題に取り組むのではなく、むしろ最も強力な事業者が従わなければならない適切な規則を制定することができるようにすることを意味している。
 
 CMAに助言を与える専門家は、以下のとおりである。
 
・    Annabelle Gawer主任教授 サリー大学サリービジネススクール デジタル経済学部教授、デジタル経済センター長
・    Anja Lambrecht教授 ロンドン・ビジネススクール マーケティング学部教授
・    Neil Lawrence教授 ケンブリッジ大学DeepMind(機械学習)学部教授、アラン・チューリング研究所シニアAIフェロー
・    Geoffrey Myers ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス&ポリティカル・サイエンス客員教授、英国情報通信庁(Ofcom)の元競争経済担当ディレクター
・    Mark Nottingham インターネット標準の専門家、インターネット技術タスクフォースへの貢献者、ワールドワイド・ウェブ・コンソーシアム(W3C)の理事会メンバー
・    Nigel Shadbolt  オックスフォード大学ジーザスカレッジ校長、オックスフォード大学コンピュータ・サイエンス学部教授研究員、オープン・データ・インスティテュート会長
・    Rod Sims オーストラリア国立大学クロフォード校公共政策学部教授、オーストラリア競争・消費者委員会(ACCC)前委員長
・    Dina Srinivasan 研究者、弁護士、イェール大学サーマン・アーノルド・プロジェクト・フェロー。
・    Mahlet Zimeta データ及びテクノロジー政策の専門家、オープン・データ・インスティテュート元公共政策責任者、王立協会上級政策顧問。
 
 Will Hayter CMA デジタルマーケットユニット(Digital Markets Unit)担当シニアディレクターは、次のように述べた。
 
「我々は、英国の消費者及び事業者が、公正な競争によってのみもたらされるオンライン市場のイノベーションの恩恵を引き続き享受できるように取り組んでいく。オンライン市場の動きは速く、競争ルールが現在に適合しているだけでなく、将来のデジタルの課題にも対応できるようにする必要がある。そのために、我々は、洞察と助言を与えてくれる一流の専門家を招聘している。デジタル市場で措置を採り続け、新しい競争促進体制を準備するために、同専門家及び政府と協力することを楽しみにしている。」


CMA、環境サステナビリティ協定に関するガイダンス案の意見募集を開始

2023年2月28日 英国競争・市場庁 公表

【概要】

 CMAが公表した環境サステナビリティ協定に関するガイダンス案は、事業者が安心して環境目標を達成するのに資することが期待されている。
●CMAは、環境サステナビリティに向けた事業者の取組を支援するガイダンス案を公表し、意見募集を開始した。
●CMAは、事業者からの環境サステナビリティ協定に関する相談にもより力を入れて対応し、相談者に対して個別の助言を提供する用意がある。
●カーデルCMAチーフエグゼクティブは、次のように述べた。
「本ガイダンス案は、事業者が競争法に抵触するのを過度に恐れることなく、気候変動などに関する協定が競争法上問題とならない場合についての予測可能性を高めるのに資するものである。」
 
 2022年3月、CMAは、英国政府に対して環境サステナビリティに関する提言を発出した。その一環として、CMAは、サステナビリティ目標に向けて事業者が連携する際に、何が適法で、何が適法でないかをより明確にする必要があることを明らかにした。
 
 EUからの離脱は、CMAに対して、これまで以上に事業者に安心感を与え、環境サステナビリティ協定に関連する(CMAの)執行アプローチを明確にする機会を与えた。
 本日(2023年2月28日)、CMAが提案した新たなガイダンス案は意見募集にかけられた。同ガイダンス案は、サプライチェーンの同じレベルでビジネスを行う事業者間の環境サステナビリティ協定に競争法がどのように適用されるかを説明している。この新しいガイダンスは、一般的に、事業者が競争法に抵触するのを過度に恐れることなく、気候変動や環境サステナビリティについて行動を起こすことを支援するものである。
 
 サラ・カーデルCMAチーフエグゼクティブは、次のように述べた。
「気候変動への取組と環境サステナビリティの促進は、CMA及び英国内の多くの事業者にとって優先事項である。我々(CMA)は、事業者が気候変動問題に協力して取り組むために更に努力したいと思いながらも、競争法によって、連携して取り組むことが妨げられるのではないかと懸念する声を聞くことが多くなっている。我々は、このような事業者が競争法違反をむやみに恐れることなく、共に問題に取り組むことができるよう支援することを約束する。
 本ガイダンス案は、我々がこれまで行ってきたことよりもさらに踏み込んだものである。気候変動への対応に真に貢献する協定が競争法上問題とならない場合について、事業者に対してより確実性をもたらすものである。また、環境サステナビリティを促進する協定に関与する事業者は、懸念がある場合、我々に相談することができる。我々はそうした事業者に対して個別のアドバイスを提供できることを保証する必要がある。」
 
 カーデルCMAチーフエグゼクティブは、2023年1月に開催されたスコットランド競争フォーラム(Scottish Competition Forum)におけるスピーチの中で本ガイダンス案を公表する計画を明らかにしていた。また、最新の年次計画案の中でも、CMAは英国のネット・ゼロへの移行を支援することを2023年の重要目標のうちの1つとして掲げている。
 
 ガイダンス案の中で、CMAは、ある事業者が他の事業者と環境サステナビリティに関するイニシアチブで連携する際に、自らの意思決定に役立てることができる明確な実務例(working examples)を提供している。CMAは、このガイダンスに沿った協定については好意的(look favorably)に受け止め、執行対象として優先させる可能性は極めて低い旨を説明している。また、ガイダンス案では、オープンドア・ポリシー(open-door policy)と称して、事業者がCMAに対して非公式な助言を求めることを促している。
 
 ガイダンス案は、事業者間の水平協定に関するより広範な文書の一部である。これは、CMAのサステナビリティ・タスクフォースが2022年3月に政府への環境サステナビリティ・アドバイスを発表した後に行った作業に続くものである。
 ガイダンス案については、2023年4月11日を期限として意見募集を実施している。


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