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海外当局の動き

最近の動き(2020年9月更新)

米国

米国司法省は,コネクテッドカー向け5G技術の推進のために提案されたライセンス・プラットフォームに関し,ビジネスレビューレターを発出

2020年7月28日 米国司法省 公表
原文

【概要】
 司法省反トラスト局は,本日,自動車業界において第5世代移動通信システム(5G)技術をライセンスするためのAvanci(訳注:2016年9月に設立されたラインセス・プラットフォームの運営組織)の新たなプラットフォーム(訳注:パテントプール)について,反トラスト法に係る検討を終了したことを公表した。同検討の一環として,司法省反トラスト局は,自動車メーカー,自動車部品メーカー,潜在的なライセンサーなどの幅広い利害関係者から聴取し,他の類似の新技術に係るパテントプールに発出された過去のレターについても考慮した。司法省は,Avanciの提出した文書に基づけば,Avanciの5Gプラットフォームが競争を阻害するおそれはないと結論付けた。
 司法省が発出したビジネスレビューレターによると,Avanciの5Gプラットフォームは,自動車メーカーに対し,5G技術のライセンスを「ワンストップ」(one stop shop)で提供することにより,自動車のコネクティビティに関連した標準必須特許をより効率的にライセンスできる。
 また,このプラットフォームは,特許侵害の可能性を減少させるほか,5Gの仕様である「リリース15」の開発に重要な貢献をした特許権者に,そのイノベーションに対する報酬の支払を保証する。そして,Avanciは,ライセンサーとライセンシーの双方の意見を踏まえ,特許技術について,FRAND料率に基づいたライセンス料請求すると表明した。
 さらに,Avanciは競争の保護に資する多数のセーフガードを5Gプラットフォームに組み込んでいる。当該セーフガードには,技術上必須となる特許のみをライセンスすること,必須特許について独立した評価を実施すること,本プラットフォーム以外でのライセンスを許可すること(5G技術を組み込んだ自動車以外の他の分野において使用するためにライセンスすること,本プラットフォームのメンバーがライセンスすること及び自動車部品メーカーに対する他のパテントプールを形成することを含む。),競争上機微な情報の共有を防止するメカニズムを形成することが含まれている。司法省の検討において,プラットフォームの特許の必須性に係る評価は,自動車メーカーがコネクテッドカーの製造に必要なライセンスを取得するに当たり有益となり得ることが確認された。また,本プラットフォームのライセンスには,自動車メーカーがライセンスを取得した上で,当該自動車メーカーと取引する自動車部品メーカーが標準必須特許に新たにアクセスできるようにする「Have Made」権が含まれており,当該権利により,自動車部品メーカーは特許侵害をすることなく5Gのコネクテッドカー向け部品を製造することが可能となる。
 なお,司法省は,通常特許ライセンスの保証を自動車部品メーカーに依存している自動車業界において,自動車メーカーを中心とするAvanciのライセンスモデルが成功するかについては評価を行っていない。
 本ビジネスレビューにおける司法省の結論は,Avanciの5Gプラットフォームのみに適用されるものであり,5G関連の特許ライセンスに関する標準又は取決めについての他の合意又はイニシアティブには適用されない。また,司法省は,Avanciの5Gプラットフォームの実際の運用が目的又は効果の面で反競争的であると判明した場合,反トラスト法に基づき異議を唱える権利を留保している。
 

EU

欧州委員会は,不当な高価格設定の懸念に対するアスペンの提出した確約案について,意見募集を開始

2020年7月14日 欧州委員会 公表
原文

【概要】
 欧州委員会は,本日,世界的な製薬会社であるアスペンが同委員会の示した不当な高価格設定に関する懸念に対処するために提出した確約案について,利害関係者からの意見募集を開始した。アスペンは,当該確約案において,欧州における6種類の重要ながん治療薬の価格を平均73%引き下げ,かつ,これらの特許切れの治療薬を長期間にわたって確実に継続して供給することを提案している。
 欧州委員会は,2017年5月15日に正式調査を開始して以降,アスペンが重要な特許切れのがん治療薬について不当な高価格を設定することにより,多くの加盟国内市場において支配的地位を濫用してきたことに重大な懸念を有していた。アスペンは,他社から当該がん治療薬事業を買収した後,2012年にエストニア,ドイツ,ラトビア,リトアニア,ポーランド,スウェーデン及び英国において価格の引上げを開始し,その後,アスペンが当該がん治療薬を販売している欧州の全ての国において同様の戦略を実施した。
 アスペンの上記行為は,白血病や他の血液がんの治療に主に使用される多くのがん治療薬に関連したものであり,その中には,アルケラン,ロイケラン及びピュリネソールのブランド名で販売される治療薬が含まれる。
 欧州委員会は,アスペンの収益及びコストに関する会計データについて調査を行った結果,アスペンの販売するがん治療薬の価格が引き上げられた後,同社は欧州におけるがん治療薬の販売において,一貫して非常に高水準の利益を確保していた。また,アスペンのがん治療薬の価格は,医薬品の種類及び販売先の国によって異なるものの,合理的な収益率を考慮するとしても,関連費用を平均約300パーセント上回る価格設定となっていた。
 重要なイノベーション及び商業的なリスクに対して報酬を得る必要がある場合など,高い利益水準を説明できる事例もある。しかし,欧州委員会の調査においては,以下のとおり,アスペンが実現してきた非常に高水準の利益については,正当化事由を確認できなかった。まず,同社の医薬品は特許切れ後50年が経過していることから,当該医薬品への研究開発投資は既に十分に回収されていることになる。また,欧州委員会の予備的評価(訳注:理事会規則第1/2003号第9条第1項に規定された確約手続の過程において,欧州委員会が示す競争上の懸念に係る予備的評価)の結果,2013年から2019年までの間,アスペンの単位コストの上昇幅は僅かであり,アスペンによる価格の引上げは,当該コストの上昇と明らかにつり合いがとれていなかった。
 アスペンの行為は,欧州経済領域(EEA)全体に及んでいた。ただし,イタリア競争当局が2016年にアスペンに対しイタリア国内市場において当該医薬品の価格の引下げを命じる決定を行っていることから,今回の欧州委員会の調査では,イタリアは対象としていない。
 今回の,時には何百パーセントにもなるの価格引上げに当たり,アスペンは,患者及び医師がこれらの特定のがん治療薬を使用する以外にほとんど選択肢を有していないという事実を利用していた。各国の保健当局がアスペンによる価格引上げの申請に抵抗を試みると,アスペンは保険で払戻し可能な医薬品リストから同がん治療薬を外すと脅したり,さらに,一般用医薬品市場から同がん治療薬を撤退させる準備さえした。
 アスペンの行為は,顧客に不正な価格や取引条件を押し付けることを禁止する欧州競争法(欧州機能条約(TFEU)第102条及びEEA条約第54条)に違反する可能性がある。
 
確約案の内容
 アスペンは,欧州委員会の示した競争上の懸念に対処するため,以下の確約案を提案した。
a)アスペンは,欧州全体において6種類のがん治療薬の価格を平均約73%引き下げること。
b)当該価格は,今後10年間アスペンが請求可能な最高額であり,既に2019年10月から有効であること。
c)アスペンは,今後5年間の当該がん治療薬の供給を保証するとともに,更に5年間にわたり供給を継続する,又は他の医薬品供給業者に販売承認を与えること。
 欧州委員会は,全ての利害関係者に対し,官報への掲載日(訳注:2020年7月15日)から2か月以内に,アスペンの提案した確約案について意見を提出するよう求めている。欧州委員会は,提出された全ての意見を考慮し,当該確約案が競争上の懸念に十分に対処しているか,最終的な判断を行う。
 確約案が確定すれば,欧州委員会は,EUの反トラストに係る理事会規則(理事会規則1/2003)第9条に基づき,当該確約案についてアスペンに対し法的拘束力を付与するものとする決定を採択することができる。
当該決定は,欧州競争法違反があったか否かについての欧州委員会の判断を示すものではないが,確約した企業は当該確約を遵守するよう法的に拘束される。当該確約に違反した場合には,欧州委員会は,欧州競争法違反を立証することなく,違反した企業の全世界における総売上高の10%までの額の制裁金を課すことができる。
 
背景
 アスペンは南アフリカに本社を置く世界的な製薬会社であり,EEA内に複数の子会社を有している。
 EUでは,各加盟国の保健当局が,医薬品価格の設定方法と,社会保障制度の下で払戻しの対象となる治療法について自由に定めることが認められている。各加盟国は,それぞれ経済面及び健康面の必要性に応じ,異なる医薬品価格及び払戻政策の方針を採用している。医薬品価格については通常,製薬会社と加盟国の価格及び払戻しを担当する当局との間で,交渉が行われる。そして,治療上の選択肢がない又はほとんどない重要な医薬品の場合には,当局の交渉力は極めて弱くなる。
 欧州機能条約第102条は,不当な高価格設定を含め,市場支配的地位の濫用を禁じている。これらの規定の実施については,EUの反トラストに係る理事会規則(理事会規則1/2003)で定義されており,各加盟国の競争当局によっても運用される。
 

欧州委員会は,エチレンの購入カルテルに参加したとして3社に対し,総額2億6000万ユーロの制裁金を賦課

2020年7月14日 欧州委員会 公表
原文

【概要】
 欧州委員会は,化学製品メーカーであるOrbia, Clariant及びCelaneseの3社に対し,欧州競争法に違反したとして総額2億6000万ユーロの制裁金を課した(内訳は,Orbia2236万ユーロ,Clariant1億5576万ユーロ及びCelanese8230万ユーロ)。Westlakeは,欧州委員会に対し本件カルテルの存在を明らかにしたことから,制裁金を課されなかった。
 4社は,エチレンの事業者向け市場における購入カルテルに参加し,共謀して,可能な限り低価格でエチレンを購入していた。4社は,いずれもカルテルヘの関与を認め,和解に応じた。
 エチレン購入者は通常,供給契約に基づいてエチレンを購入しているところ,エチレンの購入価格は変動が大きいことから,購入者は価格変動のリスクを減らすため,当該契約において価格算定式が規定している。当該価格算定式においては,エチレン購入者と販売者の個々の交渉価格を踏まえた業界の参考価格である,いわゆる「月ぎめ契約価格」(以下「MCP」という。)が利用されることが多い。
 欧州委員会の調査の結果,2011年12月から2017年3月までの間,4社は,MCPの決定の過程において,4社に有利になるように,エチレン販売者に対する価格交渉戦略を調整したことが明らかとなった。4社のうち,Westlakeは米国に,Orbiaはメキシコに,Clariantはスイスに,Celaneseは米国に,それぞれ本社を置き,違反行為はベルギー,フランス,ドイツ及びオランダに及んでいた。
 多くのカルテルが販売価格を引き上げるものであるのに対し,4社は共謀してエチレンの購入価格を引き下げ,エチレン販売者に不利益をもたらしたものである。具体的には,4社はMCPを引き下げ,4社にとって有利な価格とするため,エチレン販売者とのMCPの決定に係る交渉の前後に,価格交渉の戦略について調整したほか,価格に関連する情報交換を行っていた。これらの行為は,欧州競争法により禁止されている。

制裁金
 各社の制裁金額は,欧州委員会の2006年制裁金ガイドラインに基づき決定された。
 制裁金額の決定に当たり,本件は購入価格に関するカルテルであるため,欧州委員会は,欧州域内における(売上額ではなく)購入額を用いて制裁金額を決定した。
 また,購入額は,厳密にいえばカルテル行為により引き下げられたと考えられることから,制裁金額は,当該違反行為が経済に与えた影響よりも低い水準になると想定された。そこで,欧州委員会は,過小評価を回避するため,同ガイドラインに基づき,裁量により制裁金額を各社それぞれ10%引き上げた。
 さらに,欧州委員会は,制裁金額を決定する際,違反行為の継続期間,違反行為における各社の重要性の程度,各社の企業規模,また,Clariantに関しては過去にも同様の違反行為に対し制裁措置が採られていた事実についても考慮した。
 欧州委員会の2006年リニエンシー告示に基づき,

  •  Westlakeについては,カルテルの存在を明らかにしたことから100%の免責が認められ,総額約1億9000万ユーロの制裁金が免除された。
  •  Orbia, Clariant及びCelaneseについては,欧州委員会の調査への協力度合いに応じて制裁金の減額が認められた。減額は,各社が協力を開始した時期,提出した証拠が欧州委員会によるカルテルの立証に役立った程度を踏まえて決定された。

 加えて,欧州委員会は,各社がカルテルヘの参加とその責任を認めた事実を踏まえ,欧州委員会の2008年和解告示に基づき,各社に課される制裁金の額を10%減額した。

背景
 エチレンの価格は変動が大きいことから,業界ではエチレン供給契約において,専門の市場情報提供業者が公表するMCPを用いることが多い。
 翌月のエチレンのMCPの決定に当たっては,2組の異なる供給者と購入者のペアが,それぞれ価格で合意に至らなければならない(2+2ルール)。翌月の価格について1組のペアが合意に達すると,当該合意内容を民間の独立した市場情報提供業者に通知する。もう1組のペアが,先のペアと同一の価格で合意した場合,当該価格が翌月のMCPとして市場情報提供業者によって公表される。MCPは,ベルギー,フランス,ドイツ及びオランダにおける長期供給契約の価格算定式の一部として用いられている。
 本件違反行為の目的は,4社の有利になるように,毎月のエチレン販売者とのMCPの交渉に共同して影響を及ぼすことにあった。本件カルテル行為は,可能な限り低価格でエチレンを購入することを目的としており,エチレン販売者との交渉中に,MCPの決定の基礎となる価格に関連する情報交換が行われていた。
 

欧州委員会は,消費者向けIoTに関するセクター調査を開始

2020年7月16日 欧州委員会 公表
原文

【概要】
 欧州委員会は,本日,欧州域内における消費者関連商品・サービス向けのIoT(Internet of Things:モノのインターネット)の競争に関するセクター調査を開始した。
 本件調査は,ネットワークに接続し,音声アシスタントや携帯端末などにより,遠隔操作が可能となる消費者関連商品・サービスに重点を置く。これらの商品・サービスにはスマート家電やウェアラブル端末が含まれる。本件調査を通じて得られた市場に関する知識は,欧州委員会による当該セクターにおける競争法の執行に用いられることとなる。
 欧州域内における消費者関連商品・サービス向けのIoTは発展の比較的初期段階にあるにもかかわらず,特定の企業が競争を構造的にゆがめている兆候がみられる。特に,特定の自社優遇や独自規格の運用に結び付いた行為だけでなく,データアクセス及び相互互換性の制限に関連した行為もみられる。IoTのエコシステムは強いネットワーク効果及び規模の経済によって特徴付けられることが多く,それにより支配的なデジタルエコシステム及びゲートキーパーが急速に台頭し,ティッピング(tipping,訳注:市場が特定の企業に偏ること)のリスクが現れるおそれがある。
 そのため,本件調査を通じて,欧州委員会は,その特性,普及の程度及び競争上の論点となり得る事項の影響を一層理解し,欧州競争法の観点からそれらを評価するため,市場情報を収集することとなる。
 本件調査では,ウェアラブル端末(例:スマートウォッチ,フィットネストラッカー),スマートホームに関連して使用される冷蔵庫,洗濯機,スマートテレビ,スマートスピーカー,照明システム等のインターネットに接続された消費者向けデバイスなどが対象となる。また,音楽及び動画ストリーミングサービス等のスマートデバイスを通じて入手できるサービス及び当該サービスにアクセスするために使用される音声アシスタントに関する情報も収集する。
 本件調査結果の分析後,欧州委員会が特定の競争上の懸念があると認めた場合には,欧州委員会は,制限的な取引慣行及び市場支配的地位の濫用に関する欧州競争法の遵守を確保するため,事件調査を開始することができる。
 本件調査は,特に,人工知能(AI),データ及びデジタルプラットフォームに関する規制イニシアティブなど,欧州委員会のデジタル戦略の枠組みにおいて開始された他の活動を補完するものである。
 欧州委員会は,2021年春に暫定報告書を公表し,パブリックコメントを実施した上で,2022年夏に最終報告書を公表する見込みである。

 

オーストラリア

オーストラリア競争・消費者委員会は,GoogleによるFitbitの買収計画について予備的懸念を表明

2020年6月18日 オーストラリア競争・消費者委員会 公表
原文

【概要】
 オーストラリア競争・消費者委員会(以下「ACCC」という。)は,本日,GoogleによるFitbitの買収計画について,Googleが消費者のヘルスデータにアクセスすることによって参入障壁が高まり,支配的地位を固定化し,複数のデジタル広告及びヘルス市場において競争に悪影響を及ぼす可能性があるとして,予備的懸念を表明した。
 Fitbitは,ウェアラブル端末を製造する企業であり,10年以上にわたって,ユーザーから毎日の歩数,心拍数及び睡眠データを含むヘルス情報を収集してきた。
 ACCCのSims委員長は,以下のように述べた。
 「当方の懸念は,GoogleによるFitbitの買収によって,Googleがより包括的なユーザーデータを構築することが可能となり,ひいては自らの地位を強化し,潜在的な競争者に対する参入障壁を高めることである。」
 「ACCCによるデジタルプラットフォーム調査で判明したことは,Googleの実質的な市場支配力は,自社の検索及び位置情報の集中並びにサードパーティのウェブサイト及びアプリ経由で収集されたデータに基づいて形成されているということである。」
 「Googleは,今日に至るまで,スタートアップ企業やFitbitのような成熟した企業の買収によって,自らの地位を確固たるものにしてきた。Googleは,ユーザーのデータへアクセスできることにより,広告主にとって非常に価値の高いものとなり,その結果,Googleは,限られた競争に直面するにとどまる。」
 「ACCCの調査は,特定のオンライン広告サービス及び新興のデータ利用型のヘルス市場に重点を置いている。我々は,FitbitのデータがGoogle並びに前記広告及びヘルス市場における競争者にもたらす独自性及び潜在的価値について調査する予定である。」
 ACCCが今回懸念を表明した他の主要な論点は,GoogleがWearOS,Googleマップ,Google Play Store又はAndroidスマートフォンの相互互換性といった重要な関連サービスを供給する際に,自社のウェアラブル端末を,競争者の端末よりも優遇するおそれがあるかどうかである。
 ACCCが今回懸念を表明した問題点については,2020年7月10日まで意見を募集しており,同年8月13日に最終的な決定を公表する予定である。
 (訳注:その後,最終決定の公表予定は2020年12月9日まで延期する旨が公表された。)
 

韓国

韓国公正取引委員会は,Apple Koreaに対する同意議決手続を開始

2020年6月18日 韓国公正取引委員会 公表
原文

【概要】
1.同意議決手続の申請の背景
 2019年6月4日,Apple Koreaは,韓国公正取引委員会(以下「KFTC」という。)に対し,優越的地位を濫用した疑いに係る調査について,同意議決手続の開始を申請した。
 KFTCは,Apple Koreaの取引相手である現地携帯電話会社に対する利益還元の強制を含む,支配的地位の濫用の疑いについて調査してきた。Apple Koreaは,携帯電話会社に対し,携帯電話端末の広告及び無償の修理サービスの提供に係る費用を支払うことを強制した疑いがある。また,Apple Koreaは,携帯電話会社に対し,特許権や契約解除に関して一方的な条件を設定し,販売助成金の支給や広告に干渉することにより,不当に不利益を強制し,それらの事業活動を妨げていた疑いがある。
 Apple Koreaは,KFTCに対し,法的に争うことを避け,同意議決を申請することによって,携帯電話会社との関係を改善し,消費者や中小企業と相互の利益を共有しようとしている。
 Apple Koreaは,是正策として携帯電話会社の費用負担を軽減し,負担を共有するための協議を実施することを提案した。また,当該是正策には,Apple Koreaが,携帯電話会社にとって一方的に不利な条件を改善し,その事業活動への干渉を減らし,中小企業,プログラム開発者及び消費者と相互の成長を促進するため,一定の支援資金を配分することが含まれている。

2.同意議決手続の開始
 2020年6月17日,KFTCは,以下の状況を考慮して,同意議決手続の開始を決定した。

  •  携帯電話端末及び電気通信市場は,ICTを利用し,ダイナミックかつ急速な変化を特徴とする基幹産業であること。また,消費者の日常生活に密接に関係するため,当該市場における不公正な取引に迅速に取り組むことが重要であること。
  •  本件は,優越的地位の濫用に関するものであり,事業者の自発的な是正を通じて取引相手との関係を改善することが期待されること。
  •  是正策に含まれる相互成長に向けた計画は,中小企業,プログラム開発者及び消費者に明白な利益を提供することが予想されること。

 今回の手続は,同意議決手続を開始するか否かを決定したにとどまり,是正策の詳細を明確に決定したものではない。したがって,是正策の詳細は,利害関係者からの意見を集約した後,KFTCによる検討及び議決が行われ,最終決定される。

3.今後の予定
 KFTCは,可能な限り早期にApple Koreaと協議した後,是正策を補完・明確化した暫定的な同意議決案を提案する予定である。
 その後,KFTCは,利害関係者から30日から60日の期間を設定して,意見を受け付けることとしている。
 

韓国公正取引委員会は,Medtronic Koreaに対し,優越的地位を濫用したとして是正措置を命令

2020年6月29日 韓国公正取引委員会 公表
原文

【概要】
 韓国公正取引委員会(以下「KFTC」という。)は,Medtronic Koreaが,国内ディーラーに対し,指定した病院及び地域にのみ医療機器を販売することを強制し,また,病院や代理店への販売価格について情報開示を強制したとして,Medtronic Koreaに対し,是正措置を命ずることを決定した。当該是正措置には,是正命令及び2億7000万ウォンの課徴金が含まれる。Medtronic Koreaは,金額ベースで韓国における医療機器の最大の輸入業者であり,米国の親会社から外科用機器を輸入し,病院に直接又は国内ディーラーを通じて供給している。
 
○ディーラーの営業地域及び取引相手の指定及び制限に関する行為
 2009年10月から2017年4月までの間,Medtronic Koreaは,計145のディーラーに病院を割り当てた。これらのディーラーは,低侵襲治療及び循環器再建治療に関連する63の医療機器を供給していた。Medtronic Koreaは,これらのディーラーと契約を締結する際の契約条項及び条件において,ディーラーが他のディーラーに割り当てられた病院や指定した営業地域外で営業活動を行った場合,契約を終了でき,又はアフターセールスサービスを拒絶できることとした。その結果,ディーラーは割り当てられた病院及び地域にのみにMedtronic Koreaの医療機器を供給しており,競合する供給業者を選択する機会を病院から排除することにより,競争が制限されていた。
 Medtronic Koreaが供給する低侵襲治療に関連する19の機器のうち,8機器の市場シェアは50%を超えている。したがって,ディーラー間の競争が制限された場合,ユーザーは低価格で医療機器を購入する機会も制限される。
 Medtronic Koreaの行為は,公正取引法第23条第1項第5号(拘束条件付取引)及び施行令第7項第b号別表1-2(取引地域又は取引先の制限)に違反するため,KFTCは,是正命令及び2億7000万ウォンの課徴金を課した。
 
○ディーラーに対する価格情報の提供の強制に関する行為
 2016年12月から2017年10月までの間,Medtronic Koreaは,計72のディーラーに対し,病院や代理店への販売価格に関する情報を提供することを要求した。これらのディーラーは,低侵襲治療に関連する24の医療機器を供給していた。Medtronic Koreaは,ディーラーに価格情報を提供させるために,以下の手段を採っていた。

  •  Medtronic Koreaは,ディーラーに価格情報を提供することを義務付けた。
  •  契約には,ディーラーが情報を提供しない場合,又は情報の正確性が3か月連続で85%を下回った場合,Medtronic Koreaは書面の通知によって即座に契約を終了できるとする条項が含まれていた。
  •  契約には,Medtronic Koreaが要求した際,ディーラーが適時に価格情報を提供したか否かはディーラーの業績評価に反映されるとする条項も含まれていた。

 Medtronic Koreaは,医療機器市場における大手事業者である。Medtronic Koreaは取引先を容易に変更できる地位にあるのに対し,Medtronic Koreaがディーラーとの取引を終了した場合,ディーラーは他の供給業者を見出すことはできない。そのため,Medtronic Koreaは,ディーラーに対し優越的地位にある。また,価格情報がMedtronic Koreaに開示された場合,ディーラーの利益率も明らかになり,ディーラーはMedtronic Koreaとの価格交渉において一層弱い立場に置かれることとなる。したがって,価格情報は営業秘密として保護するに値する。そして,医療機器法(Medical Devices Act)を含む関連法に照らしても,Medtronic Koreaによる価格情報の要求には何ら法的根拠がなく,当該情報はアフターセールスサービス及び市場活動と何ら関係がないにもかかわらず,Medtronic Koreaはディーラーに対し価格情報を提供することを強制していたものである。こうした行為は,ディーラーの事業活動の自立性を不当に制限するものである。
 KFTCの決定は,支配的地位にある企業がディーラーの取引先や営業地域を制限することが法に違反することを明確にし,反競争的行為を事業上の慣習であるとして正当化することに対し警告を発したものである。また,本決定は,価格情報を含む営業秘密を開示するようディーラーに要請・強制することが「代理店取引の公正化に関する法律」に違反することを明らかにした(訳注)。
 (訳注:代理店取引の公正化に関する法律は,供給業者(代理店に商品・役務を供給する事業者)と代理店が対等の地位で相互補完的に均衡ある発展をすることを目指す(第1条)ものであり,代理店取引に広く見られる不公正取引行為の禁止を中心に規定されており(第6条ないし第12条),公正取引法第23条第1項第4号(取引上の地位濫用)に優先して適用される(第4条)。)

 

インドネシア

インドネシア事業競争監視委員会は,配車アプリサービス大手GRAB及び提携先のレンタカー会社TPIに対し,総額490億ルピアの制裁金を賦課

2020年7月2日 インドネシア事業競争監視委員会 公表
原文

【概要】
 インドネシア事業競争監視委員会(以下「KPPU」という。)は,7月2日,配車アプリサービス大手グラブ・インドネシア(以下「GRAB」という。)及びその提携先であるレンタカー会社テクノロギ・プンガンクタン・インドネシア(以下「TPI」という。)に対し,独占的行為及び不公正な事業競争の禁止に関するインドネシア共和国法1999年第5号(以下「競争法」という。)第14条及び第19条(d)の規定に違反したとして,GRABについて300億ルピア,TPIについて190億ルピアの制裁金の支払を命じた。本件は,インドネシアの中心地都市圏であるグレーター・ジャカルタ地域(ジャカルタ,ボゴール,デポック,タンゲラン及びブカシ),マカッサル,メダン及びスラバヤにおける,GRABの配車サービスアプリ「Grab app」に関連したサービスに係る事案である。
 本件は,KPPUにより調査が開始され,垂直的統合(競争法第14条),抱き合わせ(競争法第15条第2項)及び差別的行為(競争法第19条(d))(注)について,調査が行われた。当初KPPUは,TPIに登録し同社のレンタカーを利用するドライバーに対し,GRABが配車オーダーを優先的に与えていた行為について,競争法の複数の規定に違反し得るとしていた。
 審問手続を踏まえ,KPPUは,GRABとTPIによるサービス供給の協力に係る合意は,インドネシアにおける配車サービスを支配することが目的であり,TPIに登録していないドライバーの割合や当該ドライバーの配車オーダー数の減少をもたらしたと判断した。
 KPPUは,TPIが提供するレンタカーサービスに関して,GRABによって抱き合わせが行われようとした事実は確認できないとしたものの,GRAB及びTPIが,TPIに登録しているドライバーに対し,オーダーの付与,配車停止期間及びその他の面で優遇措置を講じるなど,TPIに登録していないドライバーに対し,差別的行為を行っていたと評価した。当該行為により,GRAB及びTPIによる独占的行為が可能となり,TPIに登録していないドライバーに対して不公平な競争環境を生み出した。
 KPPUは,審問手続における事実認定を踏まえ,GRAB及びTPIの上記行為について,競争法第14条及び第19条(d)違反は立証されたが,競争法第15条第2項違反は立証されないと判断した。そして,当該違反認定に基づき,KPPUはGRABに対し,競争法第14条違反について75億ルピア,競争法第19条(d)違反について225億ルピアの制裁金の支払を命じた。また,TPIに対し,競争法第14条の違反について40億ルピア,第19条(d)違反について150億ルピアの制裁金の支払を命じた。KPPUは,両者に対し,同決定の効力発生後30日以内に制裁金を支払うよう命じた。

(注)
第14条(垂直的統合)「事業者が,他の事業者との間で,特定の商品又はサービスの,直接又は間接の生産工程に含まれている複数の製品の生産を支配することを目的として,不公正な事業競争又は社会に損失を引き起こすこととなるおそれがある協定を締結することは禁止される。」
第15条(2)(抱き合わせ)「事業者が,他の者との間で,特定の商品又はサービスの受領者が,それを供給する事業者から,当該商品又はサービス以外の商品又はサービスについても購入しなければならないものとする協定を締結することは禁止される。」
同法第19条(d)(差別的行為)「事業者が,単独で又は他の事業者と共同して,独占的行為又は不公正な事業競争を引き起こすこととなる,下記のうちいずれか又は複数の行為を行うことは禁止される。」「(d)特定の事業者に対して差別的行為をすること」

 
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