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海外当局の動き

海外当局の動き

最近の動き(2026年9月更新)

 

米国

DOJ、米国最大級の家主Willow Bridgeとの間で、情報共有及びアルゴリズムを使用した価格調整に関する申立てを解決するための同意判決案で合意

2026年7月6日 米国司法省 公表

原文

【概要】

1 2026年7月6日、米国司法省(以下「DOJ」という。)反トラスト局は、全米の賃貸市場におけるアルゴリズムを使用した価格調整、競争事業者の競争上機微なデータの利用、その他の反競争的行為に対するノースカロライナ州中部地区における現在進行中の執行措置の一環として、Willow Bridge Property Company LLC(テキサス州ダラスに本社を置く住宅用不動産管理会社。以下「Willow Bridge」という。)に対するDOJの申立てを解決するための同意判決案を裁判所に提出した。本同意判決案は、同一の執行措置において、RealPage Inc.(以下「RealPage」という。)及び大手の家主3社(Cortland Management LLC、Greystar Management Services LLC及びLivCor LLC)との間で同意判決案の合意に成功したことに続くものである。


2 2025年1月7日にDOJが提出した訴状によれば、Willow Bridgeは、他の共同被告である家主5社と共に、価格設定アルゴリズムを通じて互いの競争上機微な情報を用いて賃貸価格を設定する計画に積極的に関与していた。Willow Bridge及びこれらの他の家主は、競争上機微なデータを共有し、RealPageのアルゴリズムを用いて推奨賃貸料を生成していた。同アルゴリズムには、価格を一致させるような反競争的な仕組みも組み込まれていた。さらに、Willow Bridge及び他の家主は、価格戦略、賃貸価格及びRealPageのソフトウェアで使用する特定パラメータを含む競争上機微な事項についても互いに協議していた。

3 スタンリー・ウッドワード司法次官は、次のように述べた。
 「米国の消費者にとって手頃といえる価格は競争が活発になって初めて実現するものであり、そのためには企業が独立して価格設定を行うことが必要である。企業が機微なデータを共有し、AIツールやアルゴリズムを操作して市場で一致した価格設定を行うことは許されない。これは違法であるだけでなく、米国民の日常的な住宅需要につけ込む行為である。DOJはこれを決して容認しない。」 

4 ニコール・サリーンDOJ反トラスト局次長は、次のように述べた。
 「企業家主は、あまりにも長い間、賃貸住宅市場の安定を損ねてきた。反トラスト局は、価格設定アルゴリズムが賃借人に害を及ぼすことを阻止するため、引き続き積極的な措置を講じていく。」

 5 DOJが提出した同意判決案について裁判所が承認した場合、Willow Bridgeには、次の義務が課される。 
 (1)  競争事業者の競争上機微なデータを用いて推奨賃貸料を生成する反競争的アルゴリズム、又は特定の反競争的な仕組みを含む反競争的アルゴリズムを使用しないこと。
 (2)  競争上機微な情報を競争事業者と共有しないこと。
 (3)  同意判決で定められた条件に基づいて認証されていない第三者の価格設定アルゴリズムを使用する場合、裁判所によって任命された監督者を受け入れること。
 (4)  競争者である家主が参加するRealPage主催の会合に出席・参加しないこと。
 (5)  他の被告に対する米国における訴訟に協力すること。

6 Tunney法の規定に基づき、同意判決案は、競争上の影響に関する記述とともに、連邦官報に掲載される。関心のある者は誰でも、60日間の意見募集期間中に、DOJ反トラスト局技術・デジタルプラットフォーム課長代理宛てに同意判決案に関する意見書を提出することができる。ノースカロライナ州中部地区連邦地方裁判所は、意見募集期間終了後、公共の利益に適うと判断した場合、最終判決を下すことができる。

EU

欧州委、DMA違反でグーグルに制裁金を賦課

2026年7月23日 欧州委員会 公表

原文

【概要】

   2026年7月23日、欧州委員会(以下「欧州委」という。)は、デジタル市場法(以下「DMA」という。)に基づき、グーグルに対して2件のDMA違反(①検索における自己優遇(Self-preferencing)、②アプリストアにおけるステアリング制限(anti-steering) )を認定し、合計8億9000万ユーロ(約1660億円)の制裁金を賦課した旨を公表した。同法に基づく制裁金としては過去最高額(注)となる。公表文の概要は以下のとおり。 

(注)欧州委による DMAに基づく制裁金としては、Apple(5億ユーロ(約930億円))、Meta(2億ユーロ(約370億円))に続く決定事例となる。 


 1 決定に係る公表文の概要
 ⑴  検索における自己優遇(4億6000万ユーロの制裁金) 
 欧州委は、グーグルがGoogle検索において、ショッピング、ホテル、交通機関、スポーツ結果などに関する自社サービスを検索結果の上位に表示したり、視覚的効果を用いたりするなどして、第三者の類似サービスよりも優遇したと認定し、DMAに基づく義務に違反すると判断した。

 ⑵  アプリストアにおけるステアリング制限(4億3000万ユーロの制裁金) 
 欧州委は、グーグルがGoogle Playを通じてアプリを配信する開発者に対し、ウェブサイトや代替アプリストアなどのより安価な代替購入経路を顧客に知らせ、そちらへ誘導して購入させることを制限していたと認定した。また、グーグルが徴収するステアリング関連の手数料水準及び課金期間がDMAの基準を超えていると判断した。

 ⑶   欧州委がグーグルに求めた是正措置 
 欧州委はグーグルに対し、違反状態を是正するため、①検索結果において第三者のサービスを自社サービスと公平かつ非差別的に扱うこと、②アプリ開発者がGoogle Play外でも自由にオファーを宣伝し、需要者と契約を締結できるようにすることを求める。

 ⑷  グーグルの対応及び欧州委の今後の対応 
 グーグルは既に検索結果の表示方法(無料サービス、広告等)やステアリングルールに関する変更を提案・テスト等しており、欧州委はこれらをコンプライアンスに向けた進歩として評価し監視していく。
 また、欧州委は、本日(7/23)の決定を踏まえ、AI Overviews及びAI Modeに対して当該決定の原則をどのように適用するかということに関するグーグルの提案にも留意し、グーグルとの対話を継続する。 

 2 テレサ・リベラ上級副委員長による声明 
 グーグルは、DMAの実効的な遵守に十分に至っておらず、本日(2026年7月23日)、我々はこれらの違反に対して、断固かつバランスの取れた措置を採った。優れた製品は品質の高さゆえに成功すべきであり、検索エンジンを運営事業者が所有しているからという理由だけで成功してはならない。 
 また、欧州の需要者は、たとえアプリストアの運営事業者が手数料を受け取らない場合でも、最良のオファーに申し込む方法をアプリ開発者から示される権利がある。これこそがDMAに期待されることであって、全ての欧州市民の利益のために、デジタル市場における公正性、選択の自由、そしてイノベーションを保護することにつながる。

その他

中国

中国国家市場監督管理総局によるTrip.comに対する行政処分(市場支配的地位の濫用)

2026年7月27日 中国国家市場監督管理総局 公表

原文

【概要】

 2026年7月25日、中国国家市場監督管理総局(以下「SAMR」という。)は、市場支配的地位を濫用したとして、オンラインホテル予約プラットフォーム大手事業者である携程集団有限公司(日本では「Trip.com(注1)」として知られている。以下「携程」という。)に対し、独占禁止法に基づき、35億2182万元(約852億円(注2))の制裁金を賦課し、違法所得(注3)16億5806万元(約401億円)を没収する行政処分を行った。

(注1)Trip.com Group Limitedは、中国の上海に本社を置く多国籍旅行代理店であり、本店所在地はケイマン諸島である。中国人向け旅行予約サイトとして「携程(Ctrip)」及び「去哪儿(Qunar)」を運営している。

(注2)1元=24.2円で換算。 

(注3)ホテル価格を直接調整して得た「手数料収入」のことであり、携程に対しホテルに返還させる「契約保証金」は含まない。 

 

本件は、中国において、市場支配的地位の濫用行為として「全ネット最安値」(最恵国待遇:MFN)を理由に処分が行われた初めての案件である。

 

本件の概要は以下のとおり。


 1 経緯 

 2026年1月14日 調査開始をSAMRが公表 

 2026年7月25日 行政処分をSAMRが公表 


 2 違反行為の概要 

 2020年以降、携程は、中国国内のオンラインホテル予約プラットフォームサービス市場における支配的地位を濫用し、以下の2種類の独占行為を実施した。 

① 「特牌」認定ホテルに対する独占的提携の要求

 トラフィック配分(集客機会の配分)、利益面の支援等をインセンティブとして提供することで、取引額が高く、サービス品質が優れ、ユーザーからの人気が高いホテルが「特牌」認定を選択するよう誘導するとともに、「特牌」認定ホテルに対して競合プラットフォームとの提携を禁止している。


 ② 「金牌」・「無牌」認定ホテルに対する「全ネット最安値」の強制 

 複数プラットフォームで事業を展開するホテルに対して、携程プラットフォームでの価格を全ネット最安値に設定するよう要求するとともに、直接の価格調整許可を要求し、ホテルの価格が競合プラットフォームよりも高いことが判明した場合、携程は「調価助手」(価格調整アシスタント)、等の技術ツール及び人的手段を通じて価格を引き下げている。


  携程は、技術的手段を用いて、ホテルの独占的提携及び「全ネット最安値」の実施状況を監視し、トラフィックの制限、認定取消し、契約保証金の差引き等の懲罰的措置を通じて、これらの行為の実施を強制している。


 3 行政処分の概要 

 ① 違法行為の停止 

 ② ホテル事業者から強制的に差し引いた契約保証金1億2278万元の返金 

 ③ 違法所得16億5806万元の没収 

 ④ 35億2182万元の制裁金(注4) 

(注4)前年度(2025年度)の中国国内売上高469億5766万元の7.5%に相当。 


 4 本件のポイント 

 ○ 違反行為として認定された、①独占的提携及び②「全ネット最安値」(最恵国待遇:MFN)の要求は、各種ガイドライン等でも明示されている典型的な市場支配的地位の濫用行為。ただし、「全ネット最安値」を理由に実際の処分が行われたのは初めて。

 ○ SAMRは、近年中国で問題となっている「内巻式」競争(注5)の観点からも、本件は問題があるとしている。 

 ○ 制裁金、違法所得の没収及びホテルへの返金の合計金額は約53億元(約1283億円)。近年、大手プラットフォーム事業者に対する独占禁止法による行政処分は低調となっていたところ、本件は数年振りの大型案件。 

 ○ プラットフォーム経済分野における独占禁止法執行において、初めて違法所得の没収も命令。違法行為の停止命令の一環としてホテル事業者に対する返金を命じていることも特徴的。

 ○ なお、携程は同日プレスリリースを行い、「全面的に受け入れ、断固としてこれに従うとともに、各是正要求を厳格に実施してまいります」と述べた上で、具体的な是正策を公表している。 

(注5)過剰な資源の投入に依存した非合理的で消耗的な過当競争のこと。


   

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