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米国
DOJ、数十億ドル規模の商取引に影響を与えた世界的共謀に関し、世界最大級のコンテナ製造業者4社及び幹部7名を起訴
2026年5月19日 米国司法省 公表
1 世界最大級のコンテナ製造業者4社及び中国国籍の幹部7名が、遅くとも2019年11月から2024年1月までの4年以上にわたり、世界標準となっている非冷蔵タイプの海上輸送用コンテナ(以下「標準型ドライコンテナ」という。)のほぼ全てについて、生産量制限し及び価格制限する共謀を行ったとして、シャーマン法第1条違反で起訴された。この数年間にわたる共謀により、2019年から2021年にかけて標準型ドライコンテナの価格は約2倍に高騰し、新型コロナウイルス感染症のパンデミック及び世界的なサプライチェーン危機の中で、コンテナ製造業者の利益は約100倍となった。幹部の1人であるVick Nam Hing Ma(以下「Ma」という。)は逮捕され、現在、米国への身柄引渡手続は保留中である。他の6名の経営幹部である被告は現在も逃亡中である。 【概要】
2 被告のMaは、54歳の中国人で、シンガマス・コンテナ・ホールディングス(Singamas Container Holdings Ltd、以下「シンガマス」という。)のマーケティング・ディレクターを務めていた。Maは、2026年4月14日にフランスで逮捕され、現在、米国への身柄引渡手続は保留中である。Maの逮捕を受け、本日(2026年5月19日)、カリフォルニア北部地区連邦地方裁判所は、Ma及び共謀者10名を、世界中のほぼ全ての標準型ドライコンテナの生産量を制限し、価格を制限した共謀罪で起訴する旨の更新された起訴状を公開した。標準型ドライコンテナは、毎年、数十億ドル相当の商品を海上輸送し、米国の家庭へ届けるインターモーダル・コンテナ(注1)である。更新された起訴状では、Maの共謀者10名を含む合計11名の被告が起訴されている。これらの被告が属する4社の概要は、以下のとおり。
(1) シンガマスは、香港特別行政区の法律に基づいて設立された上場企業であり、ドライコンテナの製造及び米国その他の地域の需要者への販売を行っていた。
(2) 中国国際海運コンテナ(グループ)(以下「CIMC」という。)は、中国の法律に基づいて設立された上場企業であり、ドライコンテナの製造及び米国その他の地域の需要者への販売を行っていた。
(3) 上海ユニバーサル物流設備(以下「東方」(Dong Fang)という。)は、中国の法律に基づいて設立された企業である。東方は、「東方国際コンテナ(Dong Fang International Containers)」と呼ばれる海上輸送コンテナブランドの所有、管理及び事業運営、ドライコンテナの製造及び米国その他の地域の需要者への販売を行っていた。
(4) CXIC Group Containers Co. Ltd.(以下「CXIC」という。)は、中国の法律に基づいて設立された企業である。CXICは、ドライコンテナの製造及び米国その他の地域の需要者への販売事業を行っていた。
(注1)コンテナに入った貨物を開けずに積み替えることで、トラック、鉄道、船舶、航空機などの異なる輸送機関を複数組み合わせて運ぶような、共同一貫輸送の物流形態をいう。
3 DOJのオミード・A・アセフィ反トラスト局長代行は、次のように述べた。
「国際的な価格カルテルは、我々の経済的自由の根幹を脅かすものである。被告らは、サプライチェーンが最も必要とされていた新型コロナウイルスのパンデミック時に、世界の海上輸送コンテナの供給を人質に取った。その結果、一般の米国民は、生活必需品により高い価格を支払い、より長く待たされることになった。反トラスト局は、消費者を保護し、米国民を搾取して不正な利益を得る者に対し、世界のどこにいようとも責任を追及する。」
4 DOJのダニエル・W・グラッド反トラスト局次長(刑事執行担当)代行は、次のように述べた。
「本日(2026年5月19日)公表した起訴は、反トラスト局サンフランシスコ事務所、我々のパートナーである連邦捜査局(以下「FBI」という。)、連邦調達庁監察総監室、カリフォルニア州北部地区連邦検察局及び米国郵政公社監察総局の、職員らの尽力によって実現した。これらの法執行の専門家チームが協力して、迅速かつ徹底的な捜査を行った結果、起訴状記載の容疑事実を立証する準備が整っている。」
更新された起訴状に記載された事実関係の概要は、以下5から8のとおり。
5 2019年3月の時点で既に、共謀者数名は、標準型ドライコンテナの生産量を制限し、価格を制限する計画について協議を開始していた。2019年11月14日頃、CIMCのYongbo Wan及びTianhua Huang、東方のQianmin Li 、CXICのYuqiang Zhang 並びに共謀企業Aの幹部が、深圳市にあるCIMCの本社で会合を開催した。その目的は、標準型ドライコンテナの価格を引き上げることであった。そのため彼らは、CIMC、東方、CXIC及び共謀企業Aによる標準型ドライコンテナの生産量について、以下のような様々な手段によって制限することに合意した。
(1) 標準型ドライコンテナの各生産ラインが1日に稼働できるシフト数及び時間を制限すること。
(2) 合意された制限を超えないよう監視するため、49のドライコンテナ生産ライン全てに監視カメラ87台を設置すること。
(3) 新たなコンテナ製造工場を建設しないこと。
(4) 生産量制限合意への違反に対して金銭的制裁を科す仕組みを備えた基金を設立すること。
6 参加者は、シンガマス及び共謀企業Bが後日、生産量制限協定に参加することを想定していた。これらの企業は、遅くとも2020年3月までには実際に同協定に参加していた。
7 共謀者らは、共謀期間を通じて、生産量制限協定の運用を見直していた。共謀者らは、2020年9月までに、特定の需要者向けに製造する標準ドライコンテナの数量を制限することで合意した。対象需要者には、欧州、中国、その他の地域に拠点を置くコンテナリース会社、海運会社、物流会社に加え、米国に拠点を置く大手コンテナリース会社、海運会社、物流会社も含まれていた。また、少なくとも2022年9月頃から2023年11月頃までの間、共謀者らは、各社が生産するコンテナのコンテナ総容積に上限を設けることで合意した。例えば、2023年11月20日頃、シンガマスのMaは、同社のCEOであり共同被告であるSion Seng Teoに対し、各共謀企業及びその生産ラインごとに分類された、共謀に基づく「総許容生産能力」及び「許容生産量」を提示した。
8 CIMCのコンテナ製造事業部門の利益は、2019年の約1980万米ドル(約32億円)から、2020年には約2億8800万米ドル(約462億円)、2021年には約17億5000万米ドル(約2805億円)へと、ほぼ100倍に増加した。シンガマスの純利益は、2019年の約1億1000万米ドル(約176億円)の損失から、2020年には約460万米ドル(約7億円)の利益、2021年には約1億8680万米ドル(約299億円)の利益へと増加した。
9 更新された起訴状は、被告らに対し、シャーマン法第1条に違反する取引制限の共謀を問うものである。同法違反の場合、個人に対しては10年以下の禁錮刑及び100万米ドル(約1億6000万円)以下の罰金、法人に対しては1億米ドル(約160億円)以下の罰金が科される。罰金は、シャーマン法違反によって得られた利益額の2倍又は同法違反により被害者が被った損害額の2倍のいずれかが法定上限を超える場合には、その額まで引き上げることができる。連邦地方裁判所の裁判官は、米国量刑ガイドライン及びその他の法定要素を考慮した上で、刑を決定する。
10 本件の起訴は、反トラスト局サンフランシスコ事務所のマシュー・チョウ、ダニエル・トゥーミー、アルバート・サンバット及びクリストファー・J・カールバーグが担当し、カリフォルニア北部地区連邦検事局及び反トラスト局国際課が支援した。本件の捜査は、FBI、米国郵政公社監察総監室及び米国連邦調達庁監察総監室が担当した。DOJ国際局及びフランス当局は、Maの逮捕に当たり、重要な支援を行った。
11 反トラスト法違反又は関連する犯罪について自発的に独自情報を提供し、その結果、100万米ドル(約1億6000万円)以上の罰金その他の賦課が生じた場合、内部告発者は報奨金の受給資格を得る可能性がある。報奨金の額は、賦課額の15%から30%の範囲内で決定される。
12 起訴状は、あくまでも容疑の申立てに過ぎない。全ての被告人は、法廷において合理的な疑いを超えて有罪が証明されるまでは、無罪と推定される。
その他
ニュージーランド
ニュージーランド商務委員会、ニュージーランド銀行協会によるアーマーガードとの共同交渉を条件付きで承認
2026年5月15日 ニュージーランド商務委員会 公表
1 ニュージーランド商務委員会(以下「商務委員会」という。)は、ニュージーランド銀行協会及び銀行グループその他の関係者が、現金輸送サービス(注1)に関してエバーグリーン・インターナショナルLLC(以下「アーマーガード」という。)(注2)と共同交渉を行うことを求める申請について、一定の条件付きで承認する旨の最終決定を下した。 【概要】
(注1)銀行、公共部門、金融機関及び一般顧客向けの多額の現金の輸送、管理、処理に加え、ATMへの現金補充、並びに多額の現金の保管及び管理が含まれる。
(注2)エバーグリーン・インターナショナルLLCは、アーマーガードとして営業を行っている。
2 これにより、参加者はアーマーガードが提供する現金輸送サービスについて、共同交渉を行う権限を有するとともに、共同交渉を支援するための協議や情報交換を実施し、共同契約又は個別契約を締結することが可能となる。これらの交渉によって合意された条項は、11年間にわたって効力を有するものとする。
3 商務委員会の判断は、2025年11月に暫定認可の発出について却下した時点から、その後の検討を経て変化したものである。当時は、暫定認可がアーマーガードに不確実性をもたらし、潜在的な投資延期を招く可能性があるとの懸念があった。しかし、さらなる検討と証拠の収集を経て、商務委員会は、認可による公共の利益が競争上の不利益を上回るとの結論に至った。
4 商務委員会のジョン・スモール委員長は、次のように述べた。
(1) 商務委員会は、本件において共同交渉によって得られる公共の利益は、潜在的な競争上の不利益を上回ると判断している。
(2) 共同交渉を実施すれば、より効率的な契約条件と業務運営の効率化が実現する可能性が高い。本件における公共の利益は必ずしも定量的に評価できるものではないものの、これらの重要なサービスに関する共同交渉は、最終的に公共の利益に資するものであると考える。
(3) このリスクを軽減するため、商務委員会は認可(注3)に当たり、法的監督に関する要件及び情報共有に関する条件を付している。これらの要件及び条件により、銀行は認可条件を遵守し、現金輸送業務以外の事項に関する協調行為を回避することが保証される。
(注3)商務委員会は、1986年商業法第58条の規定に基づき、本法に違反する可能性のある協定であっても、当該協定があらゆる状況において公共の利益をもたらす、あるいはその可能性が高いと商務委員会が判断した場合に限り、認可を付与することができる。商務委員会が発行した認可ガイドラインでは、競争を制限する可能性のある反競争的協定やカルテル条項を含む協定が、同法第58条の規定に基づき認可される場合の基準及び申請審査の手続について詳述している。
英国
CMA、マイクロソフトのビジネスソフトウェア・エコシステムについてSMSの指定に関する調査を開始
2026年5月14日 英国競争・市場庁 公表
1 本日(5月14日)、競争・市場庁(以下「CMA」という。)は、マイクロソフトのビジネスソフトウェア・エコシステムを対象とした戦略的市場地位(Strategic Market Status、以下「SMS」という。)の指定に関する調査(以下「SMS調査」という。)を開始するとともに、調査対象範囲の詳細について公表した。これは英国のデジタル市場・競争・消費者法が施行された2025年1月以降で、CMAが実施する4件目のSMS調査となる。 【概要】
2 英国では数十万の企業や公共部門がマイクロソフトのビジネスソフトウェア(Windows、Word、Excel、Teams、そして近年導入が進むCopilotなど)を日常的に利用しており、そのエコシステムには1500万人以上のビジネスユーザーが存在している。マイクロソフトのエコシステムは、英国経済の生産性向上にとって重要な役割を果たしている。
3 ビジネスソフトウェア分野は急速な変化を遂げており、AI機能の高度化と日常的な業務ツールにおけるエージェント型AI(注1)への移行が顕著である。このような状況において、英国が最大の恩恵を受けるためには、需要者が市場で最良のツールにアクセスし、多様な競争事業者が提供するソフトウェアやAIサービスを自由に組み合わせて利用できる環境が不可欠である。したがって、ビジネスソフトウェア市場における競争が適切に機能していることが極めて重要である。
(注1)目標を与えられると、自ら計画を立て、必要な情報を収集し、複数の作業を実行して目標を達成するAIのこと。
4 CMAは、英国の需要者がマイクロソフト製品と他のプロバイダー製のソフトウェアとを効果的に組み合わせて利用できない場合があると聞いており、それにより、英国の需要者は最適な製品を最も競争力のある価格で入手することを制限されている可能性がある。今回のSMS調査では、マイクロソフトがビジネスソフトウェア分野でSMSを有しているかどうかを検証するとともに、マイクロソフトがその地位を利用して需要者の選択肢を制限している可能性について検討する。具体的には、製品の組合せ供給、相互運用性の制限及びデフォルト設定が、需要者による他社サービスへの切替えを妨げ、マイクロソフトが競争事業者から受ける競争圧力を弱めていないかを検証する。調査対象には、AIサービスの競争事業者がマイクロソフトのビジネスソフトウェアとどのように統合し、需要者がそのニーズに最適な形で複数サプライヤーのAIソフトウェアを利用できるかについても含まれる。
5 今回のSMS調査では、マイクロソフトが定める生産性向上ソフトウェア、PC及びサーバー用オペレーティングシステム、データベース管理システム、セキュリティソフトウェアなどといった英国の組織が利用する多様なビジネスソフトウェア製品に関する条項を詳細に検証する。
6 仮にSMS指定がなされれば、CMAは、クラウド市場調査(注2)で明らかになった主要な懸念事項(特に、マイクロソフトによるソフトウェアライセンスに関する慣行がクラウドサービス市場の競争を減じているとみられること)についても踏み込むべきかを検討することが可能となる。
(注2)CMAは、2025年7月に公表した最終報告書で、英国内のクラウド市場の競争不全を指摘するとともに、マイクロソフト及びAmazon Web Services(以下「AWS」という。)を戦略的市場地位(SMS)に指定し、市場集中やライセンス慣行による競争阻害に対処すべきと提言した。https://assets.publishing.service.gov.uk/media/688b20e6ff8c05468cb7b120/summary_of_final_decision.pdf
7 CMAは、新興テクノロジー企業、ビジネスソフトウェアの需要者、競争事業者(セキュリティ分野の事業者を含む。)といった英国内外の組織に対し、それぞれの経験についての情報提供を求めている。
8 CMAのチーフエグゼクティブであるサラ・カーデルは、次のように述べた。
(1) ビジネスソフトウェアは、英国経済の機能を支える基盤であり、小規模事業者から主要な公共サービスや重要なインフラに至るまでにあらゆる分野で活用されている。英国では数十万の需要者がマイクロソフトのシステムに依存していることから、これらのサービスが良好な成果をもたらすことを確保することが極めて重要である。
(2) 我々の目的は、これらの市場がどのように発展しているか、マイクロソフトがその中でどのような立場にあるかを理解し、英国の組織が選択の自由、イノベーション、競争力のある価格の恩恵を十分に享受できるよう、必要に応じて具体的な措置を検討・実施することにある。
9 CMAはこの調査を比例的かつ透明性のある方法で実施し、9か月以内に完了させる予定である。今後は需要者、競争事業者、新興テクノロジー企業を含む幅広い関係者との連携を強化し、マイクロソフトから証拠を収集した上で、2027年2月13日までにSMS指定の可否について最終判断を下す方針である。また、判断に至る前に、一般向けの意見募集を実施する予定である。
10 SMS調査と並行して、CMAは2026年3月に、AWS及びマイクロソフトに対し、クラウド市場における需要者による選択を支援するために既に公表した措置について、両社が着実に実施するよう求めるとともに、必要な追加措置がないかを検討するため、広範な関係者との協議を開始したことを公表している。