オーストラリア

豪州競争・消費者委員会,スーパーマーケットのコールズが特定の納入業者に行った行為が非良心的行為(不当な協賛金の徴収等)であるとして民事提訴した件について,同委員会及びコールズが解決策を合意し,共同して豪州連邦裁判所に対し同意命令を申し立てる旨公表

2014年12月15日 豪州競争・消費者委員会 公表
原文

【概要】

 豪州競争・消費者委員会(以下「ACCC」という。)は,Coles Supermarkets Australia Pty Ltd及びGrocery Holdings Pty Ltd(以下,両社を合わせて「コールズ」という。)が特定の納入業者との取引について2011年に行った行為が非良心的行為であるとして民事提訴していたが,本件について,ACCC及びコールズが解決策を合意し,共同して豪州連邦裁判所に対し,次の点を含む同意命令を申し立てる旨公表した。
・ コールズの自白に基づき,コールズが2011年に多くの納入業者に対しオーストラリア消費者法(ACL)違反となる非良心的行為を行っていたことを確認
・ 制裁金
 さらに,本件に関連する納入業者がコールズに支払った額をコールズに返還させるに当たって,本件に関連する納入業者か否かを独立に判断するための枠組みを,コールズがACCCに提供する旨,ACCC及びコールズは豪州連邦裁判所に対し述べている。

本件の背景
 ACCCは,2014年5月5日(第1次民事手続)及び2014年10月16日(第2次民事手続),コールズに対し民事手続を開始した。第1次及び第2次民事手続の詳細は次のとおりである。
1 小売業の積極的連携(ARC)プログラムに関する第1次民事手続(2014年5月5日)
 本件民事手続は,小売業の積極的連携(ARC)プログラムに関するものである。本件において,ACCCは,コールズが2011年にARCプログラムを開始し,自社の企業利益を改善するために,コールズが行ったサプライチェーンの変更によって取引先納入業者に生じたとコールズが主張する利益に基づき,取引先納入業者が継続的な協賛金を支払う旨を取引条件に組み込んだと主張した。
 豪州連邦裁判所は,コールズは,納入業者がARCプログラムに基づく協賛金の支払いを断った場合,以下に挙げるような商業上の結果が生じる可能性があると示唆するなど,各種の措置を採っており,これら納入業者に対するARCプログラムの実施は,非良心的行為に当たると宣言した。
・ 当該納入業者に対する補充サポートの中止
・ ARCプログラムに基づく協賛金の支払いに合意した納入業者のみに対する情報提供
・ 納入業者の商品取扱範囲についてのコールズの決定への潜在的な影響
・ 販促活動への影響
・ 納入業者の分類の変更
・ 当該納入業者からの新商品の購入中止
・ 当該納入業者に対する,以前には提供していた予測情報の提供中止
・ 当該納入業者との取引のための面会拒否
・ 継続中の契約交渉の打切り
以下のような状況があれば,非良心的行為に当たる。
・ コールズは,当該納入業者と比較して交渉上強い立場を有している。
・ 納入業者は,十分な情報を提供されていないにもかかわらず, ARCプログラムによって見込まれる利益を,短期間で考慮・評価するよう強要されている。
2 債権に関する第2次民事手続(2014年10月16日)
 第2次民事手続においては,ACCCは,コールズが,2011年に納入業者数社に対し,「営業利益ギャップ」に対する支払い,廃棄に対する支払い,納入業者による納入不足や配送遅延に対する罰金・制裁といった様々な支払いを要求したと主張した。
 第2次民事手続において,豪州連邦裁判所は,コールズが,一定の納入業者に対して強い交渉力を有している状況において,次のような非良心的行為を行っていたと宣言した。
・ 納入業者との間での事前合意の際に議題になっていなかった営業利益ギャップに対する支払いを納入業者に求めた。
・ 廃棄に対する遡及的な支払いを納入業者に求めた。
・ 支払期日が到来する期末払リベートについて,納入業者との合意に従った控除の中止及び支払いの保留を拒否した。
・ 納入業者との合意もなく契約条件にもなかった営業利益ギャップに対する支払いを要求及び処理し,納入業者に対する返金を拒否した。
・ 納入業者2社が経済的に苦しい状況であることを知りながら,納入業者からの以下の説明について考慮することなく,当該納入業者に対し,商品の廃棄費用の100%の支払いに合意するよう求めていた。
・ (納入業者1社から)廃棄原因についての納入業者からの説明
・ (別の納入業者1社から)当該商品は,廃棄費用を100%負担するという合意に適していないという納入業者からの説明
・ 納入業者との事前合意において議題になっていなかった配送遅延に対する支払いを,納入業者に対し要求し受け取っていた。
・ 商品の納入不足に対し,通知や事前合意なく当該納入業者に制裁を課し,制裁を課した納入業者に対し返金を拒否した。

シンガポール

シンガポール競争委員会,国際航空貨物カルテルについて,航空貨物事業者10社に対し制裁金を賦課

2014年12月11日 シンガポール競争委員会 公表
原文

【概要】

 シンガポール競争委員会(以下「CCS」という。)は,航空貨物事業者11社(DHLグローバルフォワーディングジャパン株式会社,株式会社阪急阪神エクスプレス,ケイラインロジスティックス株式会社,株式会社近鉄エクスプレス,商船三井ロジスティクス株式会社,日本通運株式会社,西日本鉄道株式会社,株式会社日新,株式会社バンテック,ヤマトホールディングス株式会社及び郵船ロジスティクス株式会社)及びこれら各社のシンガポール子会社(以下「関係人」という。)が,日本からシンガポールへの航空貨物輸送サービスの提供に関し,共同して特定の運賃及びサーチャージを決定し,運賃及び顧客情報の交換を行っていたことが競争法第34条に違反しているとして,関係人に対し違反決定書(Infringement Decision)を送付した。さらに,CCSは,関係人が本件違反行為に共同して関与している旨認定し,航空貨物事業者11社のうち10社に対し,総額715万852シンガポールドルの制裁金を賦課した。DHLグローバルフォワーディングジャパン株式会社については,CCSのリニエンシー制度に基づき,制裁金が全額免除された。
 本件は,外国籍企業及びその各シンガポール子会社・支社に対して行われたCCSにおける2件目の国際カルテル事件(注:最初の国際カルテル事件はベアリング事業者によるカルテル事件である)である。

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