ドイツ

ドイツ連邦カルテル庁,スーパーマーケット・エデカによる同業者テンゲルマンの買収を禁止

2015年4月1日 ドイツ連邦カルテル庁 公表
原文

【概要】

 ドイツ連邦カルテル庁は,スーパーマーケットのEDEKA(以下「エデカ社」という。)によるTengelmann(以下「テンゲルマン社」という。)の買収を禁止した。ドイツ連邦カルテル庁は,今回の買収計画について,ベルリン州,オーバーバイエルン行政管区ミュンヘン市及びノルト・ライン・ウェストファーレン州における多くの集中度が高い地域市場及び市町村地区において,競争状況を著しく悪化させるおそれがあるとの見解を示した。
 テンゲルマン社の買収は,地域の消費者の選択肢を大幅に制限し,消費者が別の小売業者に乗り換える可能性を大幅に制限するおそれがある。
 また,重要な競争事業者が消滅することにより,残りの競争事業者は,今後,より自由に価格を引き上げることができるようになる。
 今回の買収計画が実施されれば,調達市場における競争上の問題をも引き起こすことになる。つまり,買収実施により,ナショナルブランド商品の製造事業者は,重要な独立系の納入先を一つ失うことになる。特に,ナショナルブランド商品の調達における,エデカ社,REWE(以下「レーベ社」という。)並びにKaufland社及びLidl社を擁するSchwarz groupで構成される小売業者上位グループの強い交渉力は,他の競争事業者のそれと比較して更に強くなる。
 連邦カルテル庁が異議告知書を送付した後に当事会社が提出した妥協案(いわゆる確約)は,影響を受ける市場における競争上の問題を解決するには十分ではなかった。
 連邦カルテル庁は,今回の買収計画を判断するに当たり,レーベ社及びエデカ社のような総合小売店からAldi社のような格安小売店(hard discounters)まで,食品小売分野のあらゆる流通経路を検討した結果,今回の対象市場について,消費者の購買行動に依拠する地域市場と画定した。また,大都市圏では,地区ごと及び街区ごとに実際の競争が行われていると画定した。今回の審査において,テンゲルマン社は,影響を受けるほとんど全ての地域市場において10%から約30%の市場シェアを有する重要な競争事業者であること,潜在的な買収事業者にとって有利となる重要な店舗を有していることが明らかになった。詳細審査の結果,今回の買収計画は,多くの重要な市場において競争圧力を著しく減少させるおそれがある旨明らかにした。そのうちの幾つかの市場においては,主要な事業者としてのエデカ社の市場における地位を更に強化するおそれがある。一方,エデカ社ではなく,同社と激しく競争しているレーベ社のシェアが最も高い地域市場においても,今回の買収は効果的な競争を著しく妨げるおそれがあることが分かった。それは,両社とも,消費者からすれば非常によく似た流通形態であり,両社間の競争が激しいためである。

フランス

フランス競争委員会,リーニエンシー・プログラムの手続に係る告示を改正した旨公表

2015年4月3日 フランス競争委員会 公表
原文

【概要】

 フランス競争委員会(以下「当委員会」という。)は,リーニエンシー・プログラムの手続に係る告示(以下「手続告示」という。)の改正について採択した。今回の2009年3月告示の改正は,特に,欧州競争ネットワーク(ECN)の2012年11月改正版欧州型リーニエンシー・プログラムに加えて,リーニエンシーに係る2015年4月15日の研究結果を考慮したものである。この改正告示案を検討する意見募集が,本年2月27日から3月20日まで行われた。意見募集を行った結果,競争法弁護士及びビジネス関係者から数多くの意見及び提案が集まり,今回の改正告示案が改善され,いくつかの点について明確化を図ることができた。
1 改正告示の貢献
 新たな告示は次の3つの目標を遂行するものである。
・ リーニエンシー・プログラムの実務の明確化
 当委員会の経験及び市場参加者との議論に基づき,リーニエンシーに関するいくつかの実務的な部分については手続告示の中に規定されるべきであるとされたが,一連の改正は,この方針に基づき行われている。第一に,手続の実務において既に中心的な役割を担っているリーニエンシー担当官(特にリーニエンシーの申請を希望する事業者にとって最初の接点となる担当官)の機能を明確化した。これは,意見募集の結果を考慮したものである。
 また,新たな告示は,リーニエンシー申請の審査に係る主要な手続について,特に,申請の根拠となる情報や証拠の提出期限が終了した時点から,リーニエンシー通報の受理に先立って開催される当委員会の開催時点までに行われる申請に対する審査手続について説明している。この論点も,意見募集の結果に基づき組み込んだものである。
・ 最新の改正告示以降に採用した方針の反映
 当委員会は,最近の意思決定手続においていくつかの方針を採用しており,これらを告示に盛り込んだ。明確化された点は2点ある。一つ目は,当委員会に協力する場合の事業者の義務を明らかにすることであり,二つ目は,どの法人が,一つの同じリーニエンシー申請から利益を得ることになるのかについて詳細に規定することである。
・ 欧州連合の2012年改正リーニエンシー・プログラムの改正点の反映
 新たな告示は,欧州連合の2012年改正リーニエンシー・プログラムでの主な改正点,つまり,申請の類型や到着順に関係なく,いずれの申請も略式申請を認めるという範囲を拡大するという点等を採用している。この改正は,リーニエンシー申請が幾つかのEU加盟国競争当局が管轄権を有する可能性のある場合に,当該申請によって生じる行政上の負担を減らすためのものである。
2 その他の改正点
 規定振りの幾つかの点についてより正確にしたほか,意見募集を踏まえて次の2つの点について実質的な変更を行った。
 第一に,リーニエンシー申請者間での公正性を図るため,立入検査時点での公表については,既に2014年に2回実施しているが,当委員会としては,これを規則的に行うこととしている。この方針については,意見募集においても大方の賛同を得ているが,立入検査時点での公表内容については,より詳細に規定すべきだとする意見があった。これらの妥当性ある意見を踏まえて,当委員会は,現在の手続告示において,立入検査後の公表では検査対象企業名を載せないほか,推定無罪の原則を踏まえた表現振りとする旨規定した。また,立入検査後の公表時に,審査を続行する根拠がない又は検査対象企業にとって有利な方向で審査が終結すると決定した場合に2番目の公表を行う旨を明らかにする旨規定した。
 第二に,制裁金の減額水準を決定する上で,申請の順位と提出された証拠の価値についてどうバランスを採るかについては,現行では,タイプ2の申請を行う企業の申請意欲を高める観点で十分な見通しを提供していないとの意見があった。また,欧州委員会のモデルの例に倣ってあらかじめ定められた減額の幅を規定すべきだとの提案があった。当委員会としては,申請の順位と提出された証拠の価値についてバランスを採りながら,上記の意見等に配慮することとした。

中国

中国江蘇省物価局,独占的価格協定を行ったとして,メルセデス・ベンツブランドを展開するドイツ法人ダイムラー社の中国合弁会社奔馳公司に対し3億5000万元,南京等3地区のベンツ車販売業者に対し総額786万9000元の制裁金をそれぞれ賦課

2015年4月23日 中国江蘇省物価局 公表
原文

【概要】

 中国江蘇省物価局は,独占的価格協定を行っていたとして,メルセデス・ベンツブランドを展開するドイツ法人ダイムラー社の中国合弁会社奔馳公司に対し3億5000万元,一部のベンツ車販売業者に対し総額786万9000元の制裁金をそれぞれ賦課した旨公表した。
 審査結果によると,奔馳公司及び江蘇省内のベンツ車販売業者は,Eクラス及びSクラスの完成車並びに一部の自動車部品の最低販売価格の制限について合意し,これを実施した。このような行為は,中国独占禁止法第14条の規定に違反し,関連市場における競争を阻害し,かつ,制限するものであり,消費者の利益を損なうものである。2013年1月から2014年7月までの間,奔馳公司は,電話や口頭による通知又は販売店会議の召集という形式によって,江蘇省における異なる地域のEクラス及びSクラスの完成車の最低販売価格を制限していた。奔馳公司は,販売業者に対する審査力の強化を通じて,価格制限を実行しなかった販売業者に対して,警告をしたり補助を削減したりする等の多様な方式により,独占的価格協定の実施を促進させた。また,蘇州所在のベンツ車販売業者については2010年11月以降,南京及び無錫所在のベンツ車販売業者については2014年1月以降,奔馳公司の組織の下で何度も召集された地区会議において,一部の自動車部品の価格を決定する独占的価格協定について合意し,これを実施した。このような行為は,中国独占禁止法第13条の規定に違反するものである。
 奔馳公司は,独占的価格協定を合意し,これを実施する過程において,主導的及び推進的な役割を果たした。中国江蘇省物価局は,中国独占禁止法第46条及び第49条の規定に基づき,奔馳公司に対して前年度売上高の7%に当たる3億5000万元の制裁金を賦課した。また,奔馳公司の組織の下で独占的価格協定を合意し,これを実施したベンツ車販売業者に対して,それぞれ前年度売上高の1%に当たる制裁金を賦課し,そのうち,独占的価格協定の合意に関する関連情報を自発的に報告し,重要な証拠を提出したベンツ車販売業者に対しては,法に基づき,処罰を免除又は軽減した。南京,無錫及び蘇州3地区のベンツ車販売業者に対し,総額786万9000元の制裁金を賦課した。

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