イギリス

英国競争・市場庁,支配的地位を濫用した疑いで,医薬品製造業者ファイザー社及び販売店フリン・ファーマ社に対し,異議告知書を送付

2015年8月6日 英国競争・市場庁 公表
原文

【概要】

 英国競争・市場庁(以下「CMA」という。)は,競争法に違反している疑いで,医薬品製造業者Pfizer(以下「ファイザー社」という。)及びFlynn Pharma(以下「フリン・ファーマ社」という。)に対し異議告知書を送付した。
 CMAの予備的見解によれば,ファイザー社及びフリン・ファーマ社各社は,てんかん治療薬(anti-epilepsy drug)であるフェニトインナトリウムカプセルについて,英国で過剰に不公正な料金を請求することによって,英国及びEU競争法に違反する支配的地位の濫用を行っていたとしている。
 フェニトインナトリウムカプセルは,てんかん治療において,発作の防止及び抑制用に使用されており,英国の5万人以上の患者にとって重要な薬である。
 ファイザー社は,2012年9月以前は,フェニトインナトリウムカプセルを製造し,英国の卸売業者及び薬局に対して,エパヌチン○R(Epanutin○R)というブランド名で販売していた。ファイザー社は,2012年9月に当該治療薬のジェネリック薬の販売を開始したフリン・ファーマ社に対し,エパヌチン○Rの英国における販売権を売却した。ファイザー社は,当該治療薬の製造を引き続き行い,ファイザー社が英国で過去に販売した価格よりも著しく高い価格,つまりファイザー社の過去の価格の8倍から17倍の価格で,フリン・ファーマ社に対して当該治療薬を販売し,フリン・ファーマ社は,ファイザー社が過去に請求した価格よりも25倍から27倍高い価格で当該治療薬を顧客に対して販売した。
 国営医療制度(以下「NHS」という。)は,2012年9月以前は,フェニトインナトリウムカプセルに対する支払が年間約230万ユーロであったが,このフリン・ファーマ社及び他のフェニトインナトリウムカプセル供給業者に対する支払が2013年には実に5000万ユーロ超,2014年には4000万ユーロ超であった。
 アン・ポープCMA反トラスト局上級課長は,「事業者は,一般に価格を設定する自由を有しているが,支配的地位を有する事業者の場合,彼らの行為が健全な競争を害さないこと,また,彼らの価格設定が過剰で不公正でないことを保障する特別な責任を負っている。CMAが本件で問題としている価格は,過去の価格に比べてかなり高く,また,NHSにおける医薬品支出の大幅な増大につながった。」旨述べている。

英国競争・市場庁,競争法事件の新たな賠償スキームの権限に係るガイダンスを公表

2015年8月14日 英国競争・市場庁 公表
原文

【概要】

 英国競争・市場庁(以下「CMA」という。)は,競争法違反を犯した事業者の被害者に対する損害賠償を促す新たな権限に係るガイダンスを公表した。このガイダンスの下,自発的に損害賠償計画を策定した事業者には,一定の状況において,CMAから競争法違反として課された制裁金の最大20%を減額することができる。このガイダンスは,事業者がCMAに対して損害賠償計画の承認をどのように申請できるのか,当該申請や損害賠償の水準を決める手続的枠組み及び当該計画の実施方法をCMAがどのように判断するのかについて詳述している。このスキームは,違反行為によって影響を受けた消費者あるいは事業者が自ら裁判所に訴訟を提起することを妨げるものではない。
 CMA及び競争法に係る権限を共管する事業規制当局が,自発的な損害賠償計画を承認することができる新たな権限は,2015年10月1日から発効する。これは,2015年消費者権利法による一連のより広範な改正の一つであり,競争法違反により被害を受けた者が,容易,迅速かつ安価に損害賠償を受けられるようにすることを意図したものである。

オーストラリア

豪州競争・消費者委員会,連邦裁判所がビザ・ワールドワイド社に対し1800万ドルの制裁金の支払いを命じた旨公表

2015年9月4日 豪州競争・消費者委員会 公表
原文

【概要】

 豪州連邦裁判所は,豪州競争・消費者委員会(以下「ACCC」という。)により提起された裁判において,Visa Worldwide Pte. Ltd.(以下「ビザ・ワールドワイド社」という。)に対し,反競争的行為を行っていたとして1800万ドルの制裁金の支払いを命じた。ビザ・ワールドワイド社はオーストラリアにおいてVISAのネットワークに接続するサービスを提供するための契約を金融機関と結んでいるVisa Inc.の子会社である。
 オーストラリアで外国旅行者がVISAカードの電子決済を利用しようとした場合,ビザ・ワールドワイド社はオーストラリアの小売業者にはオーストラリアドルで支払い,カード所持者に対しては,後で本国の通貨で請求するという決済サービスを常に提供してきた。ビザ・ワールドワイド社は,これらのサービスを提供することによって,外国通貨取引収入や手数料という形で,多額の収入を得ている。多通貨決済サービス(Dynamic Currency Conversion,以下「DDC」という。)は,ビザ・ワールドワイド社の通貨決済サービスと競合するサービスであり,これにより,国際カード保持者は,オンライン上を含め小売業者の現地通貨ではなくカード保持者の母国通貨での取引決済を選択できる。消費者がDDCを選択した場合,取引した時点で為替レートが確定し,カード保持者に対して開示される。
 ビザ・ワールドワイド社は,2010年5月1日から同年10月6日までの間,DDCの電子決済サービス利用のさらなる拡大を禁じるVISAルールへの変更を行うことによって,オーストラリアを含む世界各地において,VISAのネットワーク上での競合会社による通貨決済サービス提供を一時停止した。この禁止条項により,2010年4月30日時点まで顧客にDDCを提供していなかった小売店,ホテル及びレストランは,それ以降,DDCの提供を選択することができなかった。これにより,当該期間中にDDCを利用し得た事業者が新たに利用できなくなり,DDCの利用拡大が阻害された。豪州連邦裁判所は,このようなビザ・ワールドワイド社の行為が競争・消費者法第47条に違反するとした。

中国

中国広東省発展改革委員会,再販売価格等に係る独占的協定を行ったとして,日産自動車の中国合弁会社に対し1億2330万元,広州地区取次販売業者17社に対し総額1912万元の制裁金をそれぞれ賦課

2015年9月10日 中国広東省発展改革委員会 公表
原文

【概要】

 中国広東省発展改革委員会は,再販売価格等に係る独占的協定を行っていたとして,日産自動車株式会社と東風汽車との中国合弁会社である東風汽車有限公司(以下「東風日産」という。)に対し1億2330万元を,広州地区取次販売業者17社に対し総額1912万元の制裁金を賦課する旨公表した。
 中国広東省発展改革委員会は,2014年8月以降,東風日産に対する独占禁止法審査を行ってきた。その結果,2012年から2014年7月にかけて,東風日産は,広東省内の取次販売網における見積り及び最終的な取引価格を厳格に限定し,2013年には,価格管理措置に違反した広州地区取次販売業者に不利益を課したことが明らかになった。すなわち,東風日産及び広州地区取次販売業者は,関連車種の再販売価格について,独占的協定を実施し,関連市場における競争を排除・制限することによって,消費者の利益を損なわせたものであり,このような行為は,中国独占禁止法第14条の規定に違反するものである。
 また,2012年4月から2014年7月にかけて,広州地区取次販売業者は,東風日産の協力会の組織の下,数回にわたって会議を開催し,関連車種の価格を決定する独占的価格協定について合意し,これを実施した。このような行為は,中国独占禁止法第13条の規定に違反するものである。
 東風日産は積極的に審査に協力し,審査開始後,直ちに関連の違法行為を取りやめ,法の規定に基づいて取次販売の取決めや商務規定等の管理政策を修正し,広州地区取次販売業者は合意価格を停止し,域内の価格取決めを破棄した。
 中国広東省発展改革委員会は,中国独占禁止法第46条及び第49条の規定に基づき,東風日産に対して,関連市場における前年度売上高の3%にあたる1億2330万元の制裁金を賦課する旨決定し,また,東風日産の要求を順守する形で独占的価格協定を合意し,これを実施した取次販売業者に対して,関連市場における前年度売上高の2%から4%にあたる総額1912万元の制裁金を賦課する旨決定した。

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