ドイツ
ドイツ連邦カルテル庁,オーディオブックの販売に関して,アマゾン社の子会社であるオーディブル社及びアップル社に対する行政手続を開始
2015年11月16日 ドイツ連邦カルテル庁 公表
原文
【概要】
ドイツ連邦カルテル庁は,アマゾン社の子会社であるオーディブル社及びアップル社に対し行政手続を開始した。アップル社のダウンロードショップであるiTunes Storeでのオーディオブックの販売に関し,アップル社はオーディブル社との間で,同社からのオーディオブックの仕入れに係る長期契約を締結している。
ドイツ連邦カルテル庁のムント長官は,「両社は,ドイツのデジタルオーディオブック市場において強い立場にあることから,我々は,これらの競争業者間の合意について更に入念に審査することを余儀なくされている。オーディオブックの出版事業者は,自社のデジタルオーディオブックの販売に関し,十分に代替的チャネルを有する必要がある。今回の行政手続は,オーディブル社がアップル社のiTunes Storeにオーディオブックを排他的に販売していることなどオーディブル社の様々な行為に対し異議を唱えるドイツ書籍出版・流通協会からの申告に基づき開始したものである。ドイツ連邦カルテル庁は,同様の申告を受けている欧州委員会と密接に連絡を取り合っている。」と述べている。
オーディブル社は,ドイツのオーディオブック大手販売業者であり,同社からもアマゾン社のサイトからも,アクセスできるオーディオブックのダウンロード業務を専門とし,また,ドイツ及び欧州最大のオーディオブック生産業者のうちの1社である。iTunes Storeを運営しているアップル社は,ダウンロードという形式で,音楽,ビデオ,アプリ以外にも,電子書籍とオーディオブックも販売する,電子メディアに係るサイト取引の最大手業者の一つである。
カナダ
カナダ競争局,オンタリオ州住宅用給湯器市場において競争制限的行為を行ったとして,既に市場から撤退しているダイレクト・エナジー社に対し,カナダ競争審判所が100万カナダドルの行政制裁金を賦課した旨公表
2015年10月30日 カナダ競争局 公表
原文
【概要】
カナダ競争局は,ダイレクト・エナジー社との間において,オンタリオ州住宅用給湯器市場における競争を制限し顧客の選択を制限したとする懸念を払拭する合意に達した旨公表した。
カナダ競争審判所に登録された同意命令によれば,2014年にオンタリオ州給湯器レンタル市場から撤退したダイレクト・エナジー社は,100万カナダドルの行政制裁金を支払うことになり,今後10年間,オンタリオ州住宅用給湯器市場へ再度参入する場合におけるコンプライアンス・プログラムの制定及び保持を義務付けることで,今後の法令遵守を促している。
カナダ競争局は,2012年12月,リライアンス・コンフォート社及びダイレクト・エナジー社が,消費者の競争業者への乗り換えを防ぐために,給湯器の反競争的な返品条件及び手続を課していた疑いで,カナダ競争審判所に対し審判申請を行った。カナダ競争局は,両社のこのような行為の結果,たとえ多くの消費者が新しい給湯器を購入するか,または別のレンタル業者に乗り換えることを望んでいたとしても,レンタル契約を継続すること以外選択の余地が無くなったとしている。カナダ競争局は,2014年11月,ダイレクト・エナジー社のオンタリオ州給湯器レンタル事業を買収したエナケア社から,ダイレクト・エナジー社の反競争的条件及び行為を引き継がない旨の確約を受領するのと同時に,リライアンス・コンフォート社との間で,競争上の懸念を払拭する合意に達した旨公表した。カナダ競争審判所は,2014年12月,たとえダイレクト・エナジー社が当該市場から撤退していたとしても,同社に対し命令を出すことができるという判決を下していた。
カナダ競争局,ケベック市発注の下水道サービスに係る入札談合事件に関与した業者が1万カナダドルの罰金を科された旨公表
2015年12月17日 カナダ競争局 公表
原文
【概要】
カナダ競争局は,グループ・エステティクス社がケベック市発注の特殊な下水道サービスに係る契約の入札談合事件への関与を認め1万カナダドルの罰金を科された旨公表した。本件では,これまで法人4社及び個人1名が事件への関与を認めており,法人に対しては総額15万カナダドルの罰金が科され,個人に対しては100時間の奉仕活動が命じられている。
2011年11月22日,カナダ競争局による審査の結果,2008年と2009年のケベック州及びケベック市発注の下水道サービス37件の入札において談合を行っていた疑いで,法人6社及び個人5名が刑事訴追された。また,2012年12月には,他の法人1社及び個人2名に対しても刑事訴追がなされた。市当局は本件談合の存在を認識しておらず,被害者である。カナダ競争局は,刑事免責プログラムにより本件談合の存在を認識し,リニエンシー・プログラムに基づき同業他社の協力を得て審査していた。
韓国
韓国公正取引委員会,不公正取引行為の評価に関するガイドラインの改正案を作成
2015年11月6日 韓国公正取引委員会 公表
原文
【概要】
韓国公正取引員会は,不公正取引行為の評価に関するガイドライン(以下「評価ガイドライン」という。)の改正案を作成し,その事前行政通知を行った。評価ガイドラインは,不公正取引行為を明確にする事例を示しており,不公正取引行為の類型及び基準は,公正取引法第23条及び施行令第36条第1項において定められている。
今回のガイドライン改正案は,不公正取引行為類型の反競争的効果を評価するための基準を更に明確化するものであり,当該不公正取引行為の競争に及ぼす影響に基づいて違法性が評価される。不公正取引行為の類型としては,取引拒絶,差別的取扱い,競争者の排除,拘束条件付取引などがある。
○ 評価ガイドラインの主な変更点
・ 反競争的効果の評価基準
今回のガイドライン改正案は,第一に,不公正な取引行為の違法性を評価する観点から,反競争的効果の意味を明らかにしている。反競争的効果は,市場価格の上昇や商品の減少などであり,競争業者ではなく競争の保護を示している。第二に,主に反競争的効果の観点から評価される不公正な取引行為について,問題となっている事業者が市場支配力を有しているか決定し,それから反競争的効果が立証されることを求めている。第三に,事業者が市場支配力を有するか否かを判断する際に用いられる市場占有率の具体的な基準を明らかにしている(10%以上の場合,20~30%の場合,30%以上の場合)。第四に,既に確立されている競争法理論を踏まえて,行為類型ごとに反競争力の評価基準を明らかにしている。
・ 抱き合わせ販売の違法性の評価基準
今回のガイドライン改正案は,抱き合わせ販売の違法性を評価する評価基準を合理的なものとし,競争手段を用いているか否かではなく,主に反競争的効果の観点から評価することとしている。抱き合わせ販売の違法性を評価する4つの基準は次のとおりである。
[1] 2つの異なる商品が存在するかどうか
[2] 抱き合わせ販売が行われているかどうか
[3] 抱き合わせ販売を行っている事業者が主たる商品市場において重要な地位を有しているかどうか
[4] 抱き合わせ販売を行っている事業者が従たる商品市場において競争者を排除しているかどうか
・ 取引上の優越的地位の評価基準
取引上の地位が相手方に優越している事業者であるか否かについては,取引上の地位を評価する補完的な基準の下で,代替的取引先の確保の容易さではなく,継続的取引の存在又は取引依存度に基づいて評価される。
・ 不公正な技術利用又は従業員の引き抜きの違法性の評価基準
「事業者の現在及び将来の事業計画に深刻な影響を受ける」の表現において,「深刻な(seriously)」を「相当な(considerably)」に代えることで基準を緩和し,「倒産の可能性」のフレーズは,当該基準において削除している。
オーストラリア
豪州競争・消費者委員会,中国国家発展改革委員会との間でカルテル審査における協力に関するMOUに署名
2015年11月5日 豪州競争・消費者委員会 公表
原文
【概要】
豪州競争・消費者委員会(以下「ACCC」という。)及び中国国家発展改革委員会は,MOU(memorandum of understanding)に署名した。
ACCCのロッド・シムズ委員長は,「本合意は,豪州及び中国の両市場に影響を及ぼす国際的なカルテル審査に関し,両当局間における協力の強化に道筋をつけるものである。本合意によって,両当局は情報及び証拠の交換を行い,反競争的行為に応じて審査活動を調整することが可能になる。このことによって,両当局は,可能であれば審査の方向性を調整し,利用可能な資源を最大限に活用することが可能になるだろう。」と述べている。
ACCCは,本合意により,中国の3つの競争当局すべてと協力関係について合意するに至った。
豪州競争・消費者委員会,不公正な契約条項から小規模事業者を保護する新法施行を前に,事業者に対して契約書が公正であるか確認するよう呼びかけ
2015年11月17日 豪州競争・消費者委員会 公表
原文1
原文2
原文3
【概要】
豪州競争・消費者委員会(以下「ACCC」という。)は,他の事業者,一般的には,規模のより大きな他の事業者から押し付けられる不公正な契約条項から小規模事業者を保護する改正法が,12か月間の経過期間を経て,2016年11月12日から施行されることから,他の事業者との取引の際に利用している標準様式契約を慎重に再確認するよう呼びかけた。本改正法は,対消費者取引に係る不公正な契約条項に関する現行の規制を拡充するものであり,ACCC,豪州証券投資委員会及び地方の公正取引関係部局がこの法律の執行に当ることとなる。
本改正法は,一方が被用者20人以下の事業者であり,かつ年間30万ドル以下の契約又は1年以上の契約期間の場合は100万ドル以下の契約についての標準様式契約に適用される。標準様式契約は,申し出を受けるかどうかという形でなされ,申し出を受ける側が契約文言について交渉する余地はないかあってもほとんどない。
※ 現行の2001年オーストラリア証券投資委員会法(Australian Securities and Investments Act 2001)及びオーストラリア消費者法(Australian Consumer Law)には,不公正な契約文言から消費者を保護する規定がある。今回の法改正においては,小規模事業者との取引にまで拡張し,仮にこの規定に反した条項が入っていると裁判所が認定した場合には,当該条項は無効とされ,当事者を拘束しないこととなる。