英国

英国競争・市場庁は,マンチェスターの2つの病院の合併計画について,合併による患者への利益が競争の喪失による損害を上回るとして承認

2017年8月1日 英国競争・市場庁 公表
原文

【概要】

 英国競争・市場庁(以下「CMA」という。)は,セントラル・マンチェスター大学病院国営保健サービス財団信託(以下「CMFT」という。)とサウス・マンチェスター大学病院国営保健サービス財団信託(以下「UHSM」という。)による合併計画の医療への影響を検討してきた。
 CMAは,調査において,多数の臨床専門科及び産科サービスにおける選択的(すなわち緊急ではない)治療及び手術について,異なる病院の選択肢が減少する地元の患者に対する合併の影響を分析した。また,合併が,救急救命サービス,専門サービス及び地域医療サービスの選択肢の減少につながるかどうかについても検討した。調査では,CMAはグレーター・マンチェスター地域の発展に関する事項~健康・社会福祉事業の権限委譲,単一の病院運営事業者の提案など~を考慮した。
 CMAのパネル委員からなるグループが実施したテストは,提案された合併が,病院が提供するサービスに関して「競争の大幅な減少」をもたらす可能性があるかどうかというものであった。グループは,合併により,特定の選択的サービスや専門的サービスに関する競争が大幅に減少するとし,次に,合併により生じると予想される「関連する顧客の利益」を考慮して,改善策が適切かどうかを検討した。
本日の最終報告で,CMAの独立したパネル委員からなるグループは,合併が患者の治療に多大な利益をもたらすとした。患者への利益は,合併する病院間の競争の喪失に起因するいかなる損害も上回るものである。
 患者への利益には,患者死亡率,臨床的合併症及び感染率の低下が含まれる。
 また,合併による利益を受けると予想される患者には,心臓発作又は脳卒中の危険性がある患者及び血管手術又は腎臓結石除去が必要な患者が含まれる。
 関係する2つの病院はともに,マンチェスターで9つの病院,具体的には,UHSMはウィゼンショー病院及びウィジントン・コミュニティ病院を,CMFTはマンチェスター・ロイヤル診療所,マンチェスター・ロイヤル眼科病院,ロイヤル・マンチェスター小児病院,アルトリンチャム病院,セント・メアリー病院,大学歯科病院及びトラフォード総合病院を運営している。
 合併を検討するに当たり,CMAは国営保健サービス改善委員会の助言を受け,マンチェスターの地方委員,地方自治体及び権限を委譲された健康・社会福祉機関並びにNHSイングランド(注:国営保健サービスの地域運営団体)と相談し,関係者全員が,合併に対し強い支持を表明した。

オーストラリア

オーストラリア連邦裁判所,日本郵船に対してカルテルの罪で有罪判決を下し,2500万ドルの罰金支払を命令

2017年8月3日 オーストラリア競争・消費者委員会 公表
原文

【概要】

 連邦裁判所は,日本の船舶会社である日本郵船(以下「NYK」という。)のカルテル行為に関する刑事事件で,同社に対して有罪の判決を下し,オーストラリア競争・消費者委員会(以下「ACCC」という。)史上2番目に高い2500万ドルの罰金の支払を命じた。
 今日の判決は,2010年競争・消費者法(以下「CCA」という。)に規定される,カルテルに係る刑罰規定に基づき刑事訴追が行われた初めての事件でもある。
 連邦公訴局長官(以下「CDPP」という。)は,ACCCによる広範な調査の結果,NYKは,2009年から2012年までの間,オーストラリア向けの自動車輸送に関して,他の船舶会社と協定を結び又は合意し,CCAのカルテル条項に違反する行為を行ったとして,同社を告発した。
 カルテルは遅くとも1997年2月から行われ,NYKは,アジア,米国及びヨーロッパの他の船舶会社と共同して,オーストラリアに輸送される,日産,スズキ,ホンダ,トヨタ,マツダなどの大手自動車メーカーの車両に影響を与えた。
 ACCCのRod Sims委員長は連邦裁判所の決定を歓迎した。
 「オーストラリア社会は輸入車に大きく依存している。このため,オーストラリア向け輸送における長期にわたるカルテルには重大な関心を持っていた。NYKに対する罰金額は,CCAに基づき課された額では第2位だが,それは同社が有罪答弁を行い,当局に協力したことから大幅な減額が行われたためである。」と,Rod Sims委員長は語った。
 また,Wigney判事は,この罰金額について,「NYKによる早期の有罪答弁,過去及び将来の捜査協力並びに悔悟に対して50パーセントの減額を適用したものである。したがって,早期の有罪答弁や捜査協力が行われなければ5000万ドルになったであろう。」と語った。
 本件の場合,NYKに対する罰金の上限額は,カルテル開始前の直近12か月の,同社のオーストラリア向け売上高の10パーセントに基づいて算出され,それによってNYKに対する罰金額は1億ドルが上限とされた。
 「連邦裁判所のNYKに対する今日の判決は,産業界及び実業界全体に対する強い警告である。CDPPとACCCは,カルテルを犯罪として告発することができ,かつ,その方針である。 また,今日の判決は,早期に有罪答弁を行い,当局に協力したものは,罰金が減免される可能性があることを強調している。」とSims委員長は語った。
 Wigney判事は,判決の中で,「NYKが参加した類のカルテルは,告発され,罰せられるのが至当である。なぜなら,最終的にはオーストラリアの企業や消費者に損害を与えるか,少なくともそのおそれがあるからである。NYKに対する罰金は,オーストラリアで事業を行う多国籍企業に対して,反競争的行為は容認されず,厳しく処罰されるという強力なメッセージを送ることだろう。」と語った。
 なお,2016年11月2日,CDPPは,(NYK以外に)本件カルテルに参加していた,同じく日本の船舶会社である川崎汽船を告発した。また,ACCCは,引き続き他のカルテル参加者に対する調査を続けている。

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